寂れた村の中を二人の参加者が歩を進める。
前を先導する少女はしっかりとした足取りで進む。
後ろをおずおずと歩く少女は目を伏せながらも意志を灯し前をむこうとしている。
二人の異なる少女は神社から出て廃村の散策を行っているところであった。
前を先導する少女はしっかりとした足取りで進む。
後ろをおずおずと歩く少女は目を伏せながらも意志を灯し前をむこうとしている。
二人の異なる少女は神社から出て廃村の散策を行っているところであった。
「誰も、いませんね……」
「そうだね……」
「そうだね……」
地面の砂利を踏む足音しかしない辺りを二人の声が寂しげに響く。
人影は何も見えず、二人だけの道中が続く。
人影は何も見えず、二人だけの道中が続く。
「あの、佐藤さん」
「なあに、芽衣ちゃん」
「これって現実なんでしょうか? 私にはまだ実感がわかないんです」
「なあに、芽衣ちゃん」
「これって現実なんでしょうか? 私にはまだ実感がわかないんです」
芽衣はポツポツと最初に起きた凄惨な光景について語りだした。
二人の少女の首が爆発したこと、殺し合いの開催の宣言。
全ては夢であればいいのに。そのような願望を交えながら。
二人の少女の首が爆発したこと、殺し合いの開催の宣言。
全ては夢であればいいのに。そのような願望を交えながら。
「わからないんです! もう何が何だか……頭の中がごっちゃになって!」
芽衣は頭を抱えてその場でうずくまる。現実から目を逸らしたい。
こんな殺し合いは嘘で目が覚めたら自宅なのだ。
こんな殺し合いは嘘で目が覚めたら自宅なのだ。
「……」
良美には芽衣をどう慰めたらいいかわからなかった。
大丈夫だよとありきたりで根拠のない言葉を放てばいいのか?
その場限りの嘘で乗り切ったとしてもこの先は長い。
再び同じ壁にぶつかってしまうだろう。
大丈夫だよとありきたりで根拠のない言葉を放てばいいのか?
その場限りの嘘で乗り切ったとしてもこの先は長い。
再び同じ壁にぶつかってしまうだろう。
「私は、死にたくない……お兄ちゃんに会いたい!」
どうする? こんな時レオ君だったら……。
良美はこの同じ島にいるであろうレオのことを思い浮かべる。
何もかもがどん底に落ちていた自分を救ってくれた大切な人。レオだったらこんな場合でも上手くやれるのだろうか。
自分みたいな欠陥人間では人の気持ちをわかってあげることなどやはり無理なのだろうか。
良美はこの同じ島にいるであろうレオのことを思い浮かべる。
何もかもがどん底に落ちていた自分を救ってくれた大切な人。レオだったらこんな場合でも上手くやれるのだろうか。
自分みたいな欠陥人間では人の気持ちをわかってあげることなどやはり無理なのだろうか。
「もう、いやだよ……! 家に帰りたい……!」
「芽衣ちゃん……」
「はぁ……こんな殺し合いの場で大きな声を出しているなんて……緊張感足りてないんじゃない?」
「芽衣ちゃん……」
「はぁ……こんな殺し合いの場で大きな声を出しているなんて……緊張感足りてないんじゃない?」
芽衣の声にかぶさるかのように二人の前方から透き通ったカナリアのような声が流れてきた。
その声は良美にとって聞き覚えがある声で暗闇から現れたその姿は一番の親友である霧夜エリカそのものだった。
こんなに早くに会えるなんて。良美の心には喜びの炎が猛々しく燃え上がった。
加えて、自分より賢いエリカのことだから芽衣を慰めることも造作ではない。
そう、思っていた。
その声は良美にとって聞き覚えがある声で暗闇から現れたその姿は一番の親友である霧夜エリカそのものだった。
こんなに早くに会えるなんて。良美の心には喜びの炎が猛々しく燃え上がった。
加えて、自分より賢いエリカのことだから芽衣を慰めることも造作ではない。
そう、思っていた。
「エリー……?」
だから、エリカが打刀をこちらに向けて、その目には明らかな敵意がともっていたことに驚きを隠し切れなかった。
刃の切っ先が怪しく光る。銀色の光が血を欲しているかのように。
それに怯えを示して芽衣がヒッと小さな声を出して後ろに一歩下がる。
刃の切っ先が怪しく光る。銀色の光が血を欲しているかのように。
それに怯えを示して芽衣がヒッと小さな声を出して後ろに一歩下がる。
「ど、どうしたのエリー。それ本物だよね?」
「当たり前じゃない、本物以外にどう見えるっていうのよ」
「じゃあ、何でそれを私たちに向けているの? 芽衣ちゃんが怖がっているから収めてくれないかな?」
「当たり前じゃない、本物以外にどう見えるっていうのよ」
「じゃあ、何でそれを私たちに向けているの? 芽衣ちゃんが怖がっているから収めてくれないかな?」
良美は芽衣をかばうように前に立つ。芽衣はまだ事情はまだ飲み込めないがこれが普段のやり取りとは違うことはわかった。
ここまでの道中で聞いた良美が最高の友達と称した霧夜エリカの噂とは違うことに。
無論、一番事情が飲み込めないであろうのが良美だ。
なぜ? それだけが頭に入っている。
ここまでの道中で聞いた良美が最高の友達と称した霧夜エリカの噂とは違うことに。
無論、一番事情が飲み込めないであろうのが良美だ。
なぜ? それだけが頭に入っている。
「見てわからない? 私は乗ることに決めたの」
「どうして! ここにはみんなが……」
「そうね。ここには対馬クンにカニっち、スバル君にフカヒレ君……それによっぴーもいる」
「なら協力して……!」
「どうして! ここにはみんなが……」
「そうね。ここには対馬クンにカニっち、スバル君にフカヒレ君……それによっぴーもいる」
「なら協力して……!」
その言葉をエリカは軽く笑うことで一蹴する。その笑みはいつも見せている優雅な微笑みではなく、どこまでも残酷で酷薄な笑みだった。
エリカは軽く刀を振ることで動作を確認。問題なし。何時でも戦闘可能。
エリカは軽く刀を振ることで動作を確認。問題なし。何時でも戦闘可能。
「そんな甘い理想で生き残れる? 無理でしょう」
軽く地面を踏む音と同時に良美に迫る。手に持った刀を横に大きく振り抜く。
それを良美は腰に差していた短刀で受け止める。
ギチギチと金属特有のこすれあう音とエリカの舌打ちが重なりあう。
そのまま鍔迫り合いが続く。数分後、体制立て直しのために一時後退。
空気が少し弛緩した。
それを良美は腰に差していた短刀で受け止める。
ギチギチと金属特有のこすれあう音とエリカの舌打ちが重なりあう。
そのまま鍔迫り合いが続く。数分後、体制立て直しのために一時後退。
空気が少し弛緩した。
「私は死にたくないの。世界を牛耳る夢だってまだ叶えてないのに死ねる訳ないじゃない」
ボソリと喋ったその言葉には感情がなかった。ただ与えられた原稿を読んでいるかの如く何も感じない。
手に震えはなくしっかりと刀の持ち手を握っている。一見すると迷いはない。もう覚悟も完了しているように見える。
手に震えはなくしっかりと刀の持ち手を握っている。一見すると迷いはない。もう覚悟も完了しているように見える。
「その為によっぴーを……殺す。この島にいる全員を殺してでも私は生きてみせる」
だけど良美にはわかった。僅かにエリカが目を逸らして何かに耐えている姿を。
エリカの一番の親友だからこそわかるその差異。だからこそ。
エリカの一番の親友だからこそわかるその差異。だからこそ。
「なら、私はエリーを止めるよ。例え何があっても私はエリーの親友だから……!
この島にいる人の思いと命を犠牲にしてまで叶えたい願いとして貫く覚悟はあるの? エリー……本当は迷ってる」
「わかったような口を聞かないで。私の生きたい気持ちに偽りなんてない!
よっぴーは生きたいって思わないの? 誰だって死にたくないのよ」
この島にいる人の思いと命を犠牲にしてまで叶えたい願いとして貫く覚悟はあるの? エリー……本当は迷ってる」
「わかったような口を聞かないで。私の生きたい気持ちに偽りなんてない!
よっぴーは生きたいって思わないの? 誰だって死にたくないのよ」
血を吐くかのように重く言葉の弾丸を良美に放つ。
死にたくない。ただそれだけなんだと。
生への渇望は普通の人間なら誰しもが大なり小なり持つもの。
ただエリカの場合それが大きかっただけ。
罪ではないのだ、この場で殺し合いに乗ることは。
死にたくない。ただそれだけなんだと。
生への渇望は普通の人間なら誰しもが大なり小なり持つもの。
ただエリカの場合それが大きかっただけ。
罪ではないのだ、この場で殺し合いに乗ることは。
「……思うよ。私だって生きていたい。もっともっとエリーとおしゃべりしたりショッピングにだって行きたいよ!
レオ君とだってまだデートし足りないし、たくさんたくさん……!
私もわかるよ……エリーの生きたいって思いは間違っていない。私にエリーは否定出来ないよ」
「知ったような口を聞かないで。そこまで言うなら、黙って死んでよ」
レオ君とだってまだデートし足りないし、たくさんたくさん……!
私もわかるよ……エリーの生きたいって思いは間違っていない。私にエリーは否定出来ないよ」
「知ったような口を聞かないで。そこまで言うなら、黙って死んでよ」
エリカが再び強く地面を蹴り良美に迫る。刀を縦に横に力強く。
自分の中の迷いを振り払うかのように。
自分の中の迷いを振り払うかのように。
「確かに否定はしないよ――――だけど“肯定”もしないっ!」
苛烈な斬撃を短刀で受け、時には躱す。鋼の旋律が廃村を即興の舞台として奏でられる。
鋼の打ち鳴らす音は徐々に速く、そしてしなやかに。
鋼の打ち鳴らす音は徐々に速く、そしてしなやかに。
「そこよ、隙あり」
「っ……!」
「っ……!」
刃が良美の体を捉えた。だが、左の腕を軽くかすった程度で戦闘は続行可能。気にもせずに次に来る刃の迎撃に当たる。
それでも時間が経つに連れて良美の身体は傷だらけになっていく。
それでも時間が経つに連れて良美の身体は傷だらけになっていく。
「佐藤さん!」
「大丈夫、まだいけるから」
「よそ見をしている暇があるのかしら、よっぴー。ダンスを踊る時は相手だけを見てよ、ね!」
「大丈夫、まだいけるから」
「よそ見をしている暇があるのかしら、よっぴー。ダンスを踊る時は相手だけを見てよ、ね!」
刃の切っ先が良美の血で赤く染まる。まだ致命傷は受けていないが細かい傷はどんどん増えていく。
元々エリカは素のスペックが良美より高い、加えて護身術も習っている。
この戦いは最初から良美の不利で始まったのだ。
ここで良美が拳銃などの強力な武器を持っていたら話は違っただろう。
だが良美の手持ちで最高と呼べるのは今手にしている短刀なのだ。互いに近接の武器しか持っていないのなら後は身体能力で決まるのは歴然だ。
それでも良美はここまで持っていたほうだ。だがその粘りも虚しく、ついに足がもつれて地面に倒れ込む。
元々エリカは素のスペックが良美より高い、加えて護身術も習っている。
この戦いは最初から良美の不利で始まったのだ。
ここで良美が拳銃などの強力な武器を持っていたら話は違っただろう。
だが良美の手持ちで最高と呼べるのは今手にしている短刀なのだ。互いに近接の武器しか持っていないのなら後は身体能力で決まるのは歴然だ。
それでも良美はここまで持っていたほうだ。だがその粘りも虚しく、ついに足がもつれて地面に倒れ込む。
「これで、最後よ!」
「まだ、死ねないよっ!」
「まだ、死ねないよっ!」
良美が倒れこんだ隙を突いてエリカは大きく上段から打刀を振り下ろす。決着はついた。そうエリカは思った。
だが彼女は誤解していた。良美のあきらめの悪さを。
良美は態勢なんてなりふり構わず、後ろに大きく跳んだ。
刀による斬撃は躱すことができたがそのまま地面に身体を突っ込んであちこちに痣を作る。
それでもまだ死んでいない。例えかっこ悪い避け方でも、泥だらけになろうとも。
生きているということにはかわりない。
だが彼女は誤解していた。良美のあきらめの悪さを。
良美は態勢なんてなりふり構わず、後ろに大きく跳んだ。
刀による斬撃は躱すことができたがそのまま地面に身体を突っ込んであちこちに痣を作る。
それでもまだ死んでいない。例えかっこ悪い避け方でも、泥だらけになろうとも。
生きているということにはかわりない。
「今までエリーには何度も助けられてきたね。私の性質も、家庭環境も、本性も……全部受け入れてくれた」
フラフラになりながらも立ち上がる。両足は地面にしっかりと縫いついている。
まだ腕は動く。脚に力を込められる。意志を持って戦えると再度確認して短刀を構えた。
まだ腕は動く。脚に力を込められる。意志を持って戦えると再度確認して短刀を構えた。
「嬉しかったんだよ、すごく。私はずっとずっと独りだったから」
冷めた家庭環境から生まれた闇。誰も見てくれない。
性的に興奮しやすいという生まれ持った体質。誰にも打ち明けられない。
打ち明けたところで知った人は気持ち悪がり遠ざかっていく。そうしてまた独り。
他人との距離がわからないというのが拍車を掛ける。
心を許せる親友なんていなかった。ただ無為に時間が過ぎていく人生にエリカは一筋の光をくれた。
性的に興奮しやすいという生まれ持った体質。誰にも打ち明けられない。
打ち明けたところで知った人は気持ち悪がり遠ざかっていく。そうしてまた独り。
他人との距離がわからないというのが拍車を掛ける。
心を許せる親友なんていなかった。ただ無為に時間が過ぎていく人生にエリカは一筋の光をくれた。
「いつも、エリーに助けられてばっかりだった」
そんなエリカを裏切ろうとした。ただの自分のエゴで。
最愛の恋人であるレオに窘めれられて最悪の事態だけは避けることはできた。
無論エリカは気にしなかったが、それは重くのしかかった。
最愛の恋人であるレオに窘めれられて最悪の事態だけは避けることはできた。
無論エリカは気にしなかったが、それは重くのしかかった。
「だから今度は私の番」
エリカが、レオが自分の全てを受け入れてくれた時のように。
例え醜く這いずりまわろうとも。どんなに否定され、嘲笑われようとも。
今度こそ彼女の親友だって自慢して言えるようになりたいから。
例え醜く這いずりまわろうとも。どんなに否定され、嘲笑われようとも。
今度こそ彼女の親友だって自慢して言えるようになりたいから。
「エリーがどんなにひどいことをしても、親友だから。私は、エリーの味方だから」
「……!」
「……!」
エリカの顔が歪む。普段の飄々とした表情は崩れ落ちてそこにはない。
今にも泣きそうな顔で直視できないのか良美から目をそらしている。
今にも泣きそうな顔で直視できないのか良美から目をそらしている。
「こんな殺し合い“程度”で私の思いは崩れないよ? 上等だよ、最後まで貫くんだから」
「……やめてよ」
「……やめてよ」
蚊の鳴くような小さな声がエリカの口から漏れた。
最初の意気はもはやなくそこにいるのはただのか弱い少女。
この時、エリカは良美の気迫に押されていた。普段とは逆の立場だ。
加えて良美がここまで啖呵を切れることに驚きも含まれていた。
ただ生きたくて乗った自分との余りにも違いすぎる。
最初の意気はもはやなくそこにいるのはただのか弱い少女。
この時、エリカは良美の気迫に押されていた。普段とは逆の立場だ。
加えて良美がここまで啖呵を切れることに驚きも含まれていた。
ただ生きたくて乗った自分との余りにも違いすぎる。
「だから、ね。エリー……」
「もう、止めろォォぉぉおおおおおおおっっ!!!!!」
「もう、止めろォォぉぉおおおおおおおっっ!!!!!」
絶叫と共に跳躍。これ以上良美と話していると自分の汚さが浮き彫りになるような気がした。
選んだ道を引き返したくなる、このまま良美の優しさに委ねてしまいそうで。
それは恐怖だ。確固たる自分を崩すという甘え。到底許せるものではない。
選んだ道を引き返したくなる、このまま良美の優しさに委ねてしまいそうで。
それは恐怖だ。確固たる自分を崩すという甘え。到底許せるものではない。
「私は決めたのよ、絶対に生き残ってみせるって! どんな汚いことだってするって!」
「じゃあどうしてエリーは私を後ろから刺さなかったの? その方が確実に殺せるのに」
「……っ!?」
「やっぱりエリーは優しいね。それに、まだ迷っている証拠だよ」
「違う……私は迷ってなんかいないわ!」
「じゃあどうしてエリーは私を後ろから刺さなかったの? その方が確実に殺せるのに」
「……っ!?」
「やっぱりエリーは優しいね。それに、まだ迷っている証拠だよ」
「違う……私は迷ってなんかいないわ!」
斬撃が徐々に苛烈になっていく。右から下へ。大っく浮き上がらせてからの横に一閃。
時には突きを交えながらの多種多様な連撃を良美は短刀で受け、身を捩らせて躱すことでギリギリで踏みとどまっていた。
ここで逃げることは簡単だ、だけどそれではエリカの心には言葉は届かない。
時には突きを交えながらの多種多様な連撃を良美は短刀で受け、身を捩らせて躱すことでギリギリで踏みとどまっていた。
ここで逃げることは簡単だ、だけどそれではエリカの心には言葉は届かない。
「もうこれ以上私を迷わせないで……」
「迷わせるよ、迷わせて迷わせて最後には私のいる場所へ引きずり込む!」
「迷わせるよ、迷わせて迷わせて最後には私のいる場所へ引きずり込む!」
打刀による高速の突きが首筋を軽く掠める。良美の死を予言しているかの如く血がたらりと垂れ落ちた。
だが、それがどうした。死んでいないなら問題はない。
口が残っていればエリカを引き戻す言葉が放つことができる。
腕が残っていれば身振りでエリカの手を握って落ち着かせることができる。
脚が残っていればエリカと共に歩いていくことができる。
まだ全部が残っているじゃないか、十全だ。
だが、それがどうした。死んでいないなら問題はない。
口が残っていればエリカを引き戻す言葉が放つことができる。
腕が残っていれば身振りでエリカの手を握って落ち着かせることができる。
脚が残っていればエリカと共に歩いていくことができる。
まだ全部が残っているじゃないか、十全だ。
「じゃあ聞くわよ……どうやってここから脱出するの? この首輪の解除方法は?
よっぴーにそれができるの? できないでしょう!」
「そうだね、私は確かに何にもできない。機会になんて詳しくないし、脱出方法なんて考えてなかったよ。
だけど、それがどうしたの?」
「……えっ?」
よっぴーにそれができるの? できないでしょう!」
「そうだね、私は確かに何にもできない。機会になんて詳しくないし、脱出方法なんて考えてなかったよ。
だけど、それがどうしたの?」
「……えっ?」
エリカの動きが止まった。何を言っているんだと言わんばかりにぽかんと口が開く。
世界が静止する。
世界が静止する。
「私がエリーを信じるのには関係ないよ」
その言葉にエリカは歯を食いしばる。己の迷いが表面に浮き上がっていく。
今度こそ決めたはずの決意が、音を立てて崩れ始めた。
今度こそ決めたはずの決意が、音を立てて崩れ始めた。
「…………確かによっぴーは信用できるかもしれない。対馬クンやスバル君、フカヒレ君、カニっちも。
でも、他の人は? 生き残るために後ろから襲いかかったり寝首をかいたりするかもしれない。こんな状況だもの、到底信用はできないわ」
「エリー……!」
でも、他の人は? 生き残るために後ろから襲いかかったり寝首をかいたりするかもしれない。こんな状況だもの、到底信用はできないわ」
「エリー……!」
エリカは剥がれかかっていた無表情の仮面を再構成して貼り直す。打刀を握る手に力が戻る。
良美を殺せるのかという迷いは依然と消えない。それでも。
良美を殺せるのかという迷いは依然と消えない。それでも。
「全員で円満に脱出っていうのが理想なんだろうけど……あいにくと私はそこまで楽観主義者じゃないの」
殺さなきゃ生き残れない。優勝する上で親友との戦いは避けられないのだ。
なら迷いは早めに断ち切る方がいい。
打刀を下から大きく振り上げる。大きく浮き上がる斬撃に良美は思わず短刀を離してしまう。
息もつかせぬ間に良美の腹に掌底一打。グルンと目が回る感覚が脳内に入った時には良美は既に地に伏せていた。
なら迷いは早めに断ち切る方がいい。
打刀を下から大きく振り上げる。大きく浮き上がる斬撃に良美は思わず短刀を離してしまう。
息もつかせぬ間に良美の腹に掌底一打。グルンと目が回る感覚が脳内に入った時には良美は既に地に伏せていた。
「恨んでくれても構わないわ、その恨みを背負ってでも私は生き抜いてみせるから」
この島にいる全員の怨念の声を受けようともそれを正面から受け止めよう。
良美との邂逅で崩れかかった人を殺してでも生きるという意志は再度輝きを見せる。
人を殺したら駄目だという倫理は通用しない、生き残った人間こそが正義なのだ。
良美との邂逅で崩れかかった人を殺してでも生きるという意志は再度輝きを見せる。
人を殺したら駄目だという倫理は通用しない、生き残った人間こそが正義なのだ。
「さようなら、よっぴー」
裂帛の気合をあげながら良美へと接近。上段から下段へと切り上げる。
それにて終焉。身体が二つに分かれ、血が吹き出そうと――。
それにて終焉。身体が二つに分かれ、血が吹き出そうと――。
「そんな事、させません……!」
何かが破裂した音と同時にエリカの二の腕を何かが掠った。
抉れた肌からは赤の液体がたらりと落ち、白のセーラー服を朱色に染める。
抉れた肌からは赤の液体がたらりと落ち、白のセーラー服を朱色に染める。
「あらら……まさかそんな隠し玉を持っていたなんてね。油断したわ」
「良美さんから離れてください……! さもないと……!」
「良美さんから離れてください……! さもないと……!」
音の震源にいたのは今まで傍観を決め込んでいた芽衣。目尻には透明な液体が溜まって今にも溢れそうだ。
顔だけを見ればどうってことはないのだが、彼女の手にある拳銃がエリカの動きを止めるに至った。
顔だけを見ればどうってことはないのだが、彼女の手にある拳銃がエリカの動きを止めるに至った。
「撃てるの? それを私の心臓目がけて放てるの?」
「撃てます……現にさっき」
「へぇ~。じゃあさもう一回撃ちなさい」
「え……?」
「撃てるんでしょ? 殺せるんでしょ? 早く殺ればいいじゃない!」
「撃てます……現にさっき」
「へぇ~。じゃあさもう一回撃ちなさい」
「え……?」
「撃てるんでしょ? 殺せるんでしょ? 早く殺ればいいじゃない!」
エリカはじりじりと一歩一歩ではあるが確実に芽衣に近寄っていく。芽衣の指は止まったまま。
銃口から弾丸は発射されない。
そして一足一刀の間合いに入りそうな時にエリカの脚が強く地面を踏みしめて。
銃口から弾丸は発射されない。
そして一足一刀の間合いに入りそうな時にエリカの脚が強く地面を踏みしめて。
「っ……!」
「そっくりそのまま返すよ……ダンスを踊る時は相手だけを見てよね、エリー」
「そっくりそのまま返すよ……ダンスを踊る時は相手だけを見てよね、エリー」
横に大きく跳躍した。そしてエリカがいた場所を銀色の閃光が駆ける。
そこにはボロボロの姿の良美が短刀を握って立っていた。
息も絶え絶えだが目の意志は前よりも強く。絶対に諦めない、ただそれだけが頭の中にあった。
そこにはボロボロの姿の良美が短刀を握って立っていた。
息も絶え絶えだが目の意志は前よりも強く。絶対に諦めない、ただそれだけが頭の中にあった。
「はぁ……やっぱ多勢に無勢かしらね。スバル君の時といい運が向かないわ。
拳銃相手に刀一本なんて馬鹿のやることね」
「エリー待ってよ!」
拳銃相手に刀一本なんて馬鹿のやることね」
「エリー待ってよ!」
打刀を鞘に納めてエリカは踵を返す。良美が呼びかけるが振り向かず。
無言でその場から走り去ってしまった。
良美としては追いかけれるなら追いかけたかったが身体はボロボロな上に芽衣を放っておくわけにはいかない。
数分後、そこには戦場の跡の欠片も見えず平常に戻った。
緊張の糸が切れたのか芽衣はその場でへたりこんでしまった。
無言でその場から走り去ってしまった。
良美としては追いかけれるなら追いかけたかったが身体はボロボロな上に芽衣を放っておくわけにはいかない。
数分後、そこには戦場の跡の欠片も見えず平常に戻った。
緊張の糸が切れたのか芽衣はその場でへたりこんでしまった。
「ただ見ているだけで震えてる方がもっと嫌だったんです……私は殺すつもりなんか全然なかったんです……」
一人呟くその姿は在りし日の自分を見ているような錯覚を受けた。誰にも頼れずにただ震えている。
ならここで自分が取る行動は一つだ。あの日自分もそうされて変われたから。
ならここで自分が取る行動は一つだ。あの日自分もそうされて変われたから。
「もう、いいんだよ」
「え……?」
「ごめんね、私が不甲斐なかったから……辛い思いをさせちゃったね」
「え……?」
「ごめんね、私が不甲斐なかったから……辛い思いをさせちゃったね」
ただ、抱きしめて人の温もりに触れさせること。
あの雨の日のように円満に終わるとまではいかないかもしれない。
所詮自分はレオの真似事をしているに過ぎないのかもしれない。
それでも、何もしないでいるよりは全然マシだ。
例え行動が借り物でもたった一人で苦しんでいる少女を救えるのなら十全。
救えずとも少しでも重みを和らげることができたら。
あの雨の日のように円満に終わるとまではいかないかもしれない。
所詮自分はレオの真似事をしているに過ぎないのかもしれない。
それでも、何もしないでいるよりは全然マシだ。
例え行動が借り物でもたった一人で苦しんでいる少女を救えるのなら十全。
救えずとも少しでも重みを和らげることができたら。
「今なら私しかいないから泣いても大丈夫だよ」
「でも……みっともないですよ……」
「そんなことはないよ、遠慮なく吐き出していいから」
「うう……あ、ああああ……」
「でも……みっともないですよ……」
「そんなことはないよ、遠慮なく吐き出していいから」
「うう……あ、ああああ……」
あの時の自分は助けられる側に立っていた。
だから今度は助ける側に立とう。
だから今度は助ける側に立とう。
「泣ける時に泣かなくちゃ駄目だよ。私も芽衣ちゃんも人間なんだから」
「あああああぁぁぁああああ嗚呼あぁぁぁぁぁああああああ!」
「あああああぁぁぁああああ嗚呼あぁぁぁぁぁああああああ!」
空の彼方。徐々に白く染まりつつ有る黒。
少女の心も、涙が流れるのと同時に白に染まっていく。
今だけは。泣いて何もかも流したいから。
胸には強さを、乗り越えられる強さを、頬には涙を、大粒の涙を。
少女の心も、涙が流れるのと同時に白に染まっていく。
今だけは。泣いて何もかも流したいから。
胸には強さを、乗り越えられる強さを、頬には涙を、大粒の涙を。
【C-5/一日目・早朝】
【春原芽衣@CLANNAD】
[状態]:号泣
[装備]:なし[道具]:支給品一式、ワルサーTPH(6/6+1)、予備マガジン×10、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:お兄ちゃんに会いたい
1:殺し合いには乗らない。
2:佐藤良美と行動。
[状態]:号泣
[装備]:なし[道具]:支給品一式、ワルサーTPH(6/6+1)、予備マガジン×10、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:お兄ちゃんに会いたい
1:殺し合いには乗らない。
2:佐藤良美と行動。
【佐藤良美@つよきす】
[状態]:肉体疲労(大)、全身に擦り傷と切り傷、腹に軽度の打撲
[装備]:
[道具]:支給品一式、斬徹が作ってくれた短刀@操り世界のエトランジェ、不明支給品0~2(短刀以上の武器はない)
[思考・状況]
基本:レオ君を探す
1:殺し合いには乗らない。
2:春原芽衣と行動。
3:知り合いとの合流。
4:エリカをこちらの世界に引き戻す。
※佐藤良美End後からの参戦です。
[状態]:肉体疲労(大)、全身に擦り傷と切り傷、腹に軽度の打撲
[装備]:
[道具]:支給品一式、斬徹が作ってくれた短刀@操り世界のエトランジェ、不明支給品0~2(短刀以上の武器はない)
[思考・状況]
基本:レオ君を探す
1:殺し合いには乗らない。
2:春原芽衣と行動。
3:知り合いとの合流。
4:エリカをこちらの世界に引き戻す。
※佐藤良美End後からの参戦です。
【霧夜エリカ@つよきす】
【状態】肉体疲労(大)、右腕に軽い掠り傷、迷い?
【持ち物】 ディパック(支給品一式)、打刀、不明支給品0~1
【思考】
基本:生き残るために殺し合いに乗る。
1:容赦はしない……でも生徒会の仲間は?
2:生徒会の仲間以外は信じることはできない。
3:結局殺せなかった……
【状態】肉体疲労(大)、右腕に軽い掠り傷、迷い?
【持ち物】 ディパック(支給品一式)、打刀、不明支給品0~1
【思考】
基本:生き残るために殺し合いに乗る。
1:容赦はしない……でも生徒会の仲間は?
2:生徒会の仲間以外は信じることはできない。
3:結局殺せなかった……
【斬徹が作ってくれた短刀@操り世界のエトランジェ】
神の手との決戦の際に如月斬徹が睦月透真の為に作ってくれた短刀。軽くて使いやすい。
刃が飛び出して長くなる仕掛けもある。
神の手との決戦の際に如月斬徹が睦月透真の為に作ってくれた短刀。軽くて使いやすい。
刃が飛び出して長くなる仕掛けもある。
【ワルサーTPH】
1968年にドイツのワルサー社が発表した小型の自動拳銃。
1968年にドイツのワルサー社が発表した小型の自動拳銃。
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