「……ナナ、だっけ? 君はポポっていう同じ格好をした男の子と合流したい」
「うん。で、リュカはダスターっていう口臭の酷いおじさん、クマトラっていう勝気な女の子、ボニーっていう男の子を探したいんだよね」
「ボニーは犬だよ。性別は合ってるけど」
「って犬まで参加してるの!? あっ、でもアレの事があるから犬がいてもあんまりおかしくないか……」
「うん。で、リュカはダスターっていう口臭の酷いおじさん、クマトラっていう勝気な女の子、ボニーっていう男の子を探したいんだよね」
「ボニーは犬だよ。性別は合ってるけど」
「って犬まで参加してるの!? あっ、でもアレの事があるから犬がいてもあんまりおかしくないか……」
金色の髪とボーダーシャツが特徴的な少年リュカとアイスクライマーの片割れナナは廃校の中、自分達の知り合いの情報を交換していた。
二人とも教室を出た途端にこの廃校の中に飛ばされ、数十分後に出会った(それぞれ別の部屋に落ちていたからだ)。
最初はどちらとも警戒していたがリュカの方からゲームに乗っていないと言い、ナナも乗っていないと答えて警戒心を解いた。
そして、今情報交換しているのである。
ナナが何かを思い出しながら一人で納得しているのを見て、リュカは首をかしげながら尋ねる。
二人とも教室を出た途端にこの廃校の中に飛ばされ、数十分後に出会った(それぞれ別の部屋に落ちていたからだ)。
最初はどちらとも警戒していたがリュカの方からゲームに乗っていないと言い、ナナも乗っていないと答えて警戒心を解いた。
そして、今情報交換しているのである。
ナナが何かを思い出しながら一人で納得しているのを見て、リュカは首をかしげながら尋ねる。
「アレって?」
「あっ、さっき教室にいた時ね、あたし二足方向っていうのかな? そういう感じの動物を見たの」
「え……。そんなのがいたの?」
「うん。でもそんな風な人だったかもしれない……」
「あっ、さっき教室にいた時ね、あたし二足方向っていうのかな? そういう感じの動物を見たの」
「え……。そんなのがいたの?」
「うん。でもそんな風な人だったかもしれない……」
話している中、表情が暗くなっていくナナを見て、リュカは教室で起きた悲劇の事を思い出す。
確かにあの酷すぎる光景は誰にとっても思い出したくないものだ。
確かにあの酷すぎる光景は誰にとっても思い出したくないものだ。
恐らくその光景のインパクトが強すぎて、見かけた人に対しての記憶があやふやになってしまっているのだろう。
リュカはそう納得すると、ナナを元気付ける。
リュカはそう納得すると、ナナを元気付ける。
「ナナ、怖がらないで。確かにあの女の人は……死んじゃったけど、僕たちはまだ生きてる」
ナナは知らないがリュカは既に二人も大切な人を失っている。
だからと言って死に慣れているとはいわないが、ナナよりはまだ受け止められる状態だった。
しかし教室の光景を思い出し、体が若干震えているナナはリュカに対して反論する。
だからと言って死に慣れているとはいわないが、ナナよりはまだ受け止められる状態だった。
しかし教室の光景を思い出し、体が若干震えているナナはリュカに対して反論する。
「で、でもハンマーが無いのにどうやって戦えばいいの!? 愛用のハンマーいつの間にか無くなっちゃってるし……」
「……ナナ、ポーキーの説明聞いてなかったの?」
「へ? ……あ」
「……ナナ、ポーキーの説明聞いてなかったの?」
「へ? ……あ」
支給品という存在を忘れていたナナに、リュカは思わず呆れそうになった。
この際だから二人はお互いの支給品を確認する事にした。
先にナナがデイパックを開けて、支給品の武器を取り出した。
この際だから二人はお互いの支給品を確認する事にした。
先にナナがデイパックを開けて、支給品の武器を取り出した。
「「……花」」
支給品を見た二人の第一声はそれだった。
何故「花」と言ったかというと、支給品を見れば一目瞭然。支給品が花のステッキだったからだ。
ハズレかと思ったが付いていた説明書を見るとこれは「リップステッキ」という代物らしく、直接叩くか花粉を浴びさせると相手の頭に体力を奪う花を咲かせる力を持っているらしい。攻撃力そのものは低いがある意味脅威だ。
何故「花」と言ったかというと、支給品を見れば一目瞭然。支給品が花のステッキだったからだ。
ハズレかと思ったが付いていた説明書を見るとこれは「リップステッキ」という代物らしく、直接叩くか花粉を浴びさせると相手の頭に体力を奪う花を咲かせる力を持っているらしい。攻撃力そのものは低いがある意味脅威だ。
「よ、世の中にはこんなのがあるのね……」
「ぼ、僕のを見てみようか」
「ぼ、僕のを見てみようか」
リュカはナナのリップステッキに若干戸惑いながらも自分のデイパックから支給品を取り出す。
そして支給品をその目に見た時、リュカの体は一瞬にして蛇に睨まれた蛙のように固まった。
そして支給品をその目に見た時、リュカの体は一瞬にして蛇に睨まれた蛙のように固まった。
「リュカ? ちょっとどうしたの?」
ナナが固まったリュカを見て、心配しながら話しかける。
まさかやばいアイテムだったのではないかと思い、リュカが動き出す前にリュカの支給品を奪い取る。
それでもリュカは動かない。もう手遅れなのかと思いながらリュカの支給品を見る。
まさかやばいアイテムだったのではないかと思い、リュカが動き出す前にリュカの支給品を奪い取る。
それでもリュカは動かない。もう手遅れなのかと思いながらリュカの支給品を見る。
リュカの支給品は服だ。何の変哲も無い服。リュカのサイズにピッタリ合いそうな黒い服だった。
「特に変なところ無いわよ……?」
丁寧に畳まれていた黒い服を広げて全体を眺めながら、ナナは呟く。
お洒落とは無縁そうな若干分厚い服だがそれ以外に特に怪しい部分は無いとナナには判断出来た。
そう、“ナナ”にとってはだ。
お洒落とは無縁そうな若干分厚い服だがそれ以外に特に怪しい部分は無いとナナには判断出来た。
そう、“ナナ”にとってはだ。
「……どこが?」
だが、“リュカ”にとって支給品の服は「可笑しい服」だった。
ナナは漸く硬直から抜け出したリュカの言葉に対し、ナナは広げたままの服をリュカに見せる。
ナナは漸く硬直から抜け出したリュカの言葉に対し、ナナは広げたままの服をリュカに見せる。
「どこって、この服の何処におかしいところがあるの?」
リュカは、その服を見て大きく目を見開いた。
自分と同サイズの黒い上着にオレンジのズボン。
その服はリュカにとって酷く見覚えのある……仮面の男であり、ポーキーの操り人形と化した双子の兄クラウスの服。
自分と同サイズの黒い上着にオレンジのズボン。
その服はリュカにとって酷く見覚えのある……仮面の男であり、ポーキーの操り人形と化した双子の兄クラウスの服。
「あ、あぁ……」
口からこぼれてくるのは言葉にならない声。
その服を見た途端、己と兄の悲劇を思い出した。
母の呼ぶ声、己をかばう父、ただポーキーの言葉に従って自分と戦う兄。
最後の最後で、兄は己から死んだ。
闇のドラゴンの針を抜いても、死んだ兄と母は戻ってこなかった。
最初は悲しかったけれども今はその事実を受け止めて生きていけると、思っていた。
だが、今、リュカの中で何かがはじけ飛んだ。
その服を見た途端、己と兄の悲劇を思い出した。
母の呼ぶ声、己をかばう父、ただポーキーの言葉に従って自分と戦う兄。
最後の最後で、兄は己から死んだ。
闇のドラゴンの針を抜いても、死んだ兄と母は戻ってこなかった。
最初は悲しかったけれども今はその事実を受け止めて生きていけると、思っていた。
だが、今、リュカの中で何かがはじけ飛んだ。
「り、リュカ、大丈夫?」
再び硬直してしまったらしいリュカを見て、ナナはリュカを心配する。
だが、リュカはそれに答えず、床に放置されたままのリップステッキを手に取り、それでナナを思い切り叩いた。
「きゃぁ!?」
いきなりの攻撃にナナは小さな悲鳴を上げ、衝撃でしりもちをついてしまう。
そのままリュカはナナが起き上がる前に、ナナの上に馬乗りする。
そのままリュカはナナが起き上がる前に、ナナの上に馬乗りする。
「リュカ……? どう、したの……?」
怯えと恐怖心、それとリップステッキによって出てきた花の能力によってリュカを押し返す事が出来ず、ナナはただ目に涙を貯めながら己を押し倒している少年に尋ねる。
少年はその問いに答えず、ナナの首を両手でつかんで力一杯握り締めていく。
少年はその問いに答えず、ナナの首を両手でつかんで力一杯握り締めていく。
「りゅ、か……!?」
明らかに自分を殺そうとしている。
すぐにそう理解したナナは己の首を力いっぱい握り締めているリュカの手首をつかみ、押し返そうとするが花のせいで力が入らず押し返せない。
すぐにそう理解したナナは己の首を力いっぱい握り締めているリュカの手首をつかみ、押し返そうとするが花のせいで力が入らず押し返せない。
「う、あ」
そして数分も立たない内にナナの呼吸は止まり、リュカの手首をつかんでいた手から完全に力が消えた。
リュカは呼吸が止まったのを確認すると両手をナナの首からゆっくりと放していく。
もうナナの頭に花は無い。自分が絞めている最中に消えてしまったのだろうか、それとも死んだから消えてしまったのかはリュカには分からない。
けれどもナナに動く気配は全く無かった。それを見てリュカは死んでしまったのだと確信する。
リュカは呼吸が止まったのを確認すると両手をナナの首からゆっくりと放していく。
もうナナの頭に花は無い。自分が絞めている最中に消えてしまったのだろうか、それとも死んだから消えてしまったのかはリュカには分からない。
けれどもナナに動く気配は全く無かった。それを見てリュカは死んでしまったのだと確信する。
「……ごめんね」
リュカはとてもとても小さな声で謝った。
最初、リュカは殺し合いに参加するつもりはなかった。ポーキーを倒すという考えが最初に出てきた。
だが「優勝すれば願いを一つだけ叶える」という言葉に揺れてしまった。
けれどもその言葉だけではリュカは殺し合いに参加しようとは思わなかった。
……だが、己の支給品を見てその思考は一瞬にして吹き飛んだ。
敵として現れたクラウスの服を見て、思い出してしまったのだ。
母がドラゴによって殺され、父がクラウスを探し続けて、クラウスが己の敵として現れ、そしてクラウスが己の雷で死んだ事。
リュカはバラバラにされた家族の事を思い出し、そしてもう一度一緒にいたいと思った。
その後の思考はとても簡単なもの。
「兄と母を蘇らせ、家族でふわふわオムレツを食べる」
その為に、リュカは殺し合いを行う判断をした。
だが「優勝すれば願いを一つだけ叶える」という言葉に揺れてしまった。
けれどもその言葉だけではリュカは殺し合いに参加しようとは思わなかった。
……だが、己の支給品を見てその思考は一瞬にして吹き飛んだ。
敵として現れたクラウスの服を見て、思い出してしまったのだ。
母がドラゴによって殺され、父がクラウスを探し続けて、クラウスが己の敵として現れ、そしてクラウスが己の雷で死んだ事。
リュカはバラバラにされた家族の事を思い出し、そしてもう一度一緒にいたいと思った。
その後の思考はとても簡単なもの。
「兄と母を蘇らせ、家族でふわふわオムレツを食べる」
その為に、リュカは殺し合いを行う判断をした。
「ポポって人に会ったら、すぐに君の下につれていってあげるから」
そう呟いて、ハッと気が付く。
このゲームにはダスター、クマトラ、ボニーが参加している事を。
優勝する為には彼等も殺さなければいけない。出来るのだろうか、自分に?
否、出来ない。共に旅した大切な仲間だ、彼等を殺す事なんてリュカにはとても出来ない。
そこで、ふとある事に思いついた。
このゲームにはダスター、クマトラ、ボニーが参加している事を。
優勝する為には彼等も殺さなければいけない。出来るのだろうか、自分に?
否、出来ない。共に旅した大切な仲間だ、彼等を殺す事なんてリュカにはとても出来ない。
そこで、ふとある事に思いついた。
「……殺されてたら?」
自分以外の誰かに殺されたのなら、リュカの意思なんて無視されてしまっている。
この二人と一匹は自分以外の誰かに殺してもらえばいい。そして、兄と母と一緒に蘇らせればいい。
簡単にこの考えは思いつき、リュカは悩んだ事に呆れたかのように一人苦笑する。
この二人と一匹は自分以外の誰かに殺してもらえばいい。そして、兄と母と一緒に蘇らせればいい。
簡単にこの考えは思いつき、リュカは悩んだ事に呆れたかのように一人苦笑する。
「なんだ、ぜんぜん心配ないじゃんか……」
自分が全員を殺す意味なんて無い。
キマイラ達との戦いも四人で力を合わせてきた。
自分一人では何も出来なかったのが、良く分かる。
あの冒険のように色々な人の力を借りて、ゲームに優勝しよう。
リュカの思いは、あっという間に固まった。
キマイラ達との戦いも四人で力を合わせてきた。
自分一人では何も出来なかったのが、良く分かる。
あの冒険のように色々な人の力を借りて、ゲームに優勝しよう。
リュカの思いは、あっという間に固まった。
「クラウス、母さん、待ってて」
リュカはそう言うと己のデイパックにナナのデイパックに入っていた食料を詰め、その決意を忘れない為に己の服を脱ぎ捨て、クラウスの服を身に着ける。
ナナの首を絞める際に放り投げたリップステッキを拾い、ふと窓の外を見る。
外には村と住宅街があり、あそこになら人はいるだろうとリュカは考え、若干重くなったデイパックを持って部屋から出て行った。
――――優勝して、バラバラになった家族を元に戻す為に。
ナナの首を絞める際に放り投げたリップステッキを拾い、ふと窓の外を見る。
外には村と住宅街があり、あそこになら人はいるだろうとリュカは考え、若干重くなったデイパックを持って部屋から出て行った。
――――優勝して、バラバラになった家族を元に戻す為に。
【エリア7/廃校一階の教室/一日目-6時35分】
【名前:リュカ@MOTHER3】
[状態]:健康
[装備]:仮面の男の服@MOTHER3 リップステッキ@スマブラDX(残り回数14回)
[所持品]:支給品一式(食料はナナの食料もあるため、他の参加者より多い)
[思考・状況]
第一行動方針:住宅街に向かい、人を探す。
第二行動方針:集団の中に入り、共に行動する。
第三行動方針:自分と無関係な人は殺していく。
第四行動方針:ダスター、クマトラ、ボニーは他の誰かに殺してもらう。
基本行動方針:色々な人と協力(利用)し、優勝する。
最終行動方針:優勝して、母と兄とダスター達を蘇らせる。
[備考]:ゲームクリア後から参戦しています。
リップステッキの効果時間は大きいほど短く、小さいほど長いです。このロワでは体力を徐々に奪っていきます。大きい程奪われる体力も大きいです。
リュカの服はナナの死体がある教室に捨てられたままです。
[現在位置]:H-5、エリア6の村に向かって移動中
【名前:リュカ@MOTHER3】
[状態]:健康
[装備]:仮面の男の服@MOTHER3 リップステッキ@スマブラDX(残り回数14回)
[所持品]:支給品一式(食料はナナの食料もあるため、他の参加者より多い)
[思考・状況]
第一行動方針:住宅街に向かい、人を探す。
第二行動方針:集団の中に入り、共に行動する。
第三行動方針:自分と無関係な人は殺していく。
第四行動方針:ダスター、クマトラ、ボニーは他の誰かに殺してもらう。
基本行動方針:色々な人と協力(利用)し、優勝する。
最終行動方針:優勝して、母と兄とダスター達を蘇らせる。
[備考]:ゲームクリア後から参戦しています。
リップステッキの効果時間は大きいほど短く、小さいほど長いです。このロワでは体力を徐々に奪っていきます。大きい程奪われる体力も大きいです。
リュカの服はナナの死体がある教室に捨てられたままです。
[現在位置]:H-5、エリア6の村に向かって移動中
【ナナ@アイスクライマー 死亡】
【残り59人】
【残り59人】
| 『後れてきた者』 | 投下順 | 『届かぬ心 届かぬ願い』 |
| 『後れてきた者』 | 時系列順 | 第十話 |
| GAME START | リュカ | 『DARKNESS・MANNER』 |
| GAME START | ナナ | GAME OVER |