Last update 2007年10月27日
音信不通 著者:BEAT
郵便受けに5日分の新聞が刺さっていた。あいつは、何かから逃げている、直感的にそう思った。
旅行ならまだしも、事件に巻き込まれているのでは?という噂が近所に立ってはいけないと思ったので、俺はあいつの郵便受けの新聞を一時預かる事にした。よくよく見てみると、それは経済新聞だった。
<やはり、そうだ。原因はあの日に在る>
2ヶ月前、俺は叔父の関連会社が一部上場する事を受けて、株を買う事を決めた。それをあいつにも伝えると、その足であいつは銀行へ向かった。
「これ全額、叔父さん所の株買ってくれよ」
あいつの行動は理解に苦しんだ。
「もっと良く考えろよ、利益になるとは言っていたけど、損する可能性だって有るんだぞ」
「こういうのってインサイダー取引っていうんじゃないのか?叔父さんも中途半端な情報ならお前にわざわざ言わないって。そんなの身内殺しじゃないか」
あいつの言う通り、叔父の株は上場と同時に上昇を開始して、俺はアルバイトの半年分の金額を手中に収めた。俺よりも2倍、3倍多く投資しているあいつは、築かれた富にご満悦の様子だった。
それからあいつは大学に現れなくなった。俺とあいつの共通の友人の話だと、休学してインターネットで商売している、との事だった。大学はあくまで就職が最終目的であるから、あいつの選択にとやかく言う事もせず、家を訪ねる事もしなかった。
更に3週間前、アルバイトの帰りにやつのアパートの前を通ると、黒塗りのベンツが停まっていた。あれは自分で購入したのか?はたまた来客なのか?ちょっと気になったので、その場であいつにメールしてみた。5分待っても、10分待っても、あいつからの返信は無かった。
1週間前、あいつの母親から俺の携帯に電話があった。
「あの子、どうしてるか知らないかしら?仕送り送ったのにお礼の電話が無いのって初めてなのよ。ちょっと家の様子を見て来てくれない?」
その言葉を受けて、俺は自転車にまたがった。あいつの家に到着、ベンツの姿は確認出来なかった。
インターホンを押す、反応が無い。電気メーターを見る、動いている、あいつは居留守を使って居るのだろうか?どうする事も出来なかったので
「お袋さんが心配してたぜ」
と、送信してその場を後にした。
そして現在に至る。あいつらしくない経済新聞の購読、突然の音信不通、この状況を見て、何も感じ取れないやつはどうかしてる。
あいつは少なくても5日間は家に帰っていない。インターネットで大博打を打って、多重債務者になったのか?それとも出鱈目な儲け話に乗って痛い目に遭っているのか?どちらにせよ心配だ。
そんな時だった。俺の携帯がメールを受信した。アドレスは渦中のあいつのものだった。
「題名:ひどく疲れた」