――神は死んだ。
「神々の黄昏」により、神々は互いを裁き、互いを殺し、そして滅んだ。
奇跡は沈黙し、祈りは宛先を失った。
天にあった玉座は空席となり、世界は初めて、理由のない重さを知った。
その余波は、想像よりも静かだった。
だが確実に、世界の数は削り取られていった。
無数に枝分かれしていた世界は収束し、崩れ、重なり合い、
残ったのは――九つの世界だけだった。
それぞれの世界は、かつて神々が分け与えた概念の残骸を宿している。
第一世界
そこは幻の世界。思ったことが現実になる。
意志と幻想の境界は溶け、眠りと覚醒の差すら曖昧だ。
願いは即座に形を持ち、同時に悪夢もまた逃げ場を失う。
第二世界
力の世界。人の強さが際立つ。
血肉、技、精神――何をもって「強い」とするかが試され、
弱さは隠せず、強さは否応なく可視化される。
第三世界
可能性の世界。創られ、滅び、また創られる。
文明も生命も仮設のように生まれては消え、
失敗すら次の創造の素材として積み上げられていく。
第四世界
獣の世界。人が獣となり、獣は人となる。
理性と本能は入れ替わり、姿形は流動的だ。
牙を持つ者が言葉を操り、二本足の者が咆哮する。
第五世界
魔法の世界。球状の大地に人はいる。
空間を満たすマナが法則を書き換え、
大地は丸く閉じ、魔法は科学よりも日常に近い。
第六世界
機械の世界。浮き島を人は渡る。
歯車と演算が空を支配し、
落下は死ではなく、次の構造への入口となる。
第七世界
妖魔の世界。想像上の生き物が跋扈する。
噂や伝承、恐怖や憧れが肉を得て歩き回り、
想像力の弱い者から先に喰われていく。
第八世界
無限の世界。終わりのない旅路を人はする。
地平線は決して近づかず、到達は存在しない。
それでも歩き続けること自体が、生の証明となる。
第九世界
魂の世界。その世界の物には全て魂がある。
石も刃も家も道も意思を持ち、
対話せぬ者は、世界そのものに拒まれる。
九つの世界は、今も互いに軋みながら存在している。
それが安定なのか、崩壊前夜なのか、誰にも分からない。
世界が一つになるのか、あるいは無限になるのか――
未来は依然として不透明な状態にある。
神なき宇宙において、
法則は自らを疑い、因果は時に歯車を噛み違える。
そして、その中心には
人が生きる世界がある。
神に守られず、神に裁かれることもなく、
それでも歩みを止めない存在。
これは、神の時代が終わった後に始まる物語。
九つの世界を舞台に、
統合か分岐か、その引き金を握る――
数多の人の物語である。
最終更新:2026年01月24日 23:38