カップルウォッチャーととろ/新たなる力
「おうおうそこのバカップルよォ!」
「黙って見てりゃあイチャイチャベタベタ! ムカつくぜェ! ああムッカつくんだよォ! ブッ殺してやっか
ら歯ァ食い縛れや! ああんッ!?」
「ナンとかいえやコラ!」
「た、たーくん……こ、この人達は……」
「まさか、……噂の不良なのか!?」
「黙って見てりゃあイチャイチャベタベタ! ムカつくぜェ! ああムッカつくんだよォ! ブッ殺してやっか
ら歯ァ食い縛れや! ああんッ!?」
「ナンとかいえやコラ!」
「た、たーくん……こ、この人達は……」
「まさか、……噂の不良なのか!?」
噂がある。仁科学園を震撼させる恐怖の噂。
幸せの撲滅を野望に抱き、カップルの仲を裂こうと示威行為に及ぶ、度し難き者達がいる。
それは懐かしのバンカラスタイル、“リーゼント”、“モヒカン”、そして“ハゲ”をリスペクトしてやまな
いズッコケ三人組であるらしい。
嘘か真か、そいつらは幸せ絶頂のカップルを発見するや、秘境マダガスカルに棲息するある種のキツネザルを
思わせる奇声を上げつつ跳びはね、身の毛もよだつ手つきで襲い掛かってくるという。そして人類の限界を優に
超える怪力で愛し合う二人を引き離し、ああ、その先を口にすることは……。
幸せの撲滅を野望に抱き、カップルの仲を裂こうと示威行為に及ぶ、度し難き者達がいる。
それは懐かしのバンカラスタイル、“リーゼント”、“モヒカン”、そして“ハゲ”をリスペクトしてやまな
いズッコケ三人組であるらしい。
嘘か真か、そいつらは幸せ絶頂のカップルを発見するや、秘境マダガスカルに棲息するある種のキツネザルを
思わせる奇声を上げつつ跳びはね、身の毛もよだつ手つきで襲い掛かってくるという。そして人類の限界を優に
超える怪力で愛し合う二人を引き離し、ああ、その先を口にすることは……。
「ち、違う! 僕達は幼馴染みで、ちょっと恋愛の相談に乗っていただけなんだ! 付き合っているとか、そん
なんじゃない!」
「……え、あ。ほ、ほんとうだよ! たーくんは……その……」
「たーくん、たーくんと……その親しげな感じがトサカに来るんだっつうの!」
「ブッ! あンまぁい展開にツバが出るぜ」
「殺されてーか」
なんじゃない!」
「……え、あ。ほ、ほんとうだよ! たーくんは……その……」
「たーくん、たーくんと……その親しげな感じがトサカに来るんだっつうの!」
「ブッ! あンまぁい展開にツバが出るぜ」
「殺されてーか」
昼休みに連れ立って屋上にやって来た男女にその三人は牙を剥いた。噂の通りに。
しかし見よ。
その男はリーゼントか。――いいや?
その男はモヒカンか。――いいや。
ならばその男はハゲか。――いいや!
その男達は、ああ、天を突く三角形の被り物をしている。目許だけが視界を確保するために開いた覆面。額に
はバツによってその価値を否定されるハートマークがある。
威嚇的なヘアスタイルを誇示しないということは、そう、有り得ない。噂の彼らはコソコソと立ち回らない。
だから違う。かの不良達ではない。
この何者かは、幸せ撲滅計画を装い、凶行の罪を擦りつけようとしている! まさに外道。
だが、噂以上の情報を知らぬ二人は真実に気づけない。この場で行われる悪魔の所業も、いずれ噂の一部とな
るだけだ。
しかし見よ。
その男はリーゼントか。――いいや?
その男はモヒカンか。――いいや。
ならばその男はハゲか。――いいや!
その男達は、ああ、天を突く三角形の被り物をしている。目許だけが視界を確保するために開いた覆面。額に
はバツによってその価値を否定されるハートマークがある。
威嚇的なヘアスタイルを誇示しないということは、そう、有り得ない。噂の彼らはコソコソと立ち回らない。
だから違う。かの不良達ではない。
この何者かは、幸せ撲滅計画を装い、凶行の罪を擦りつけようとしている! まさに外道。
だが、噂以上の情報を知らぬ二人は真実に気づけない。この場で行われる悪魔の所業も、いずれ噂の一部とな
るだけだ。
「いいぜバカップル!」
「お前らがどんなところでも思い通りにイチャつけるっていうんなら!」
「まずはその幸福をぶち殺す!」
「お前らがどんなところでも思い通りにイチャつけるっていうんなら!」
「まずはその幸福をぶち殺す!」
訴えられても文句はいえなさそうな決め台詞は、彼らの魂の叫びにも聞こえた。
『幸福殺し(カップルブレイカー)』。黒いグローブの手の平に刺繍された謎の文字列には、ご丁寧にカタカ
ナでルビまで振ってある。かつて購買部から限定発売された、ネタとしても需要なさげな伝説のグッズだ。
『幸福殺し(カップルブレイカー)』。黒いグローブの手の平に刺繍された謎の文字列には、ご丁寧にカタカ
ナでルビまで振ってある。かつて購買部から限定発売された、ネタとしても需要なさげな伝説のグッズだ。
「たーくん……」
「安心しろ。お前が好きだっていうそいつと付き合い出すまでは、僕が守ってやるから!」
「安心しろ。お前が好きだっていうそいつと付き合い出すまでは、僕が守ってやるから!」
怯える女子生徒を勇ましくも背後に庇う男子生徒に、怪人“幸福殺し”達の魔手が伸ばされる。
ああ――
幸福が――
殺されてしまう――
ああ――
幸福が――
殺されてしまう――
「そこまでよ! 卑劣な模倣犯集団、“幸福殺し”!」
――そんなときだった。
どこからともなく、声が。毅然としながら甘さの抜けない、それは少女のもの。
給水塔の上に、謎の人影があった。
学園の最高峰に白ブーツを突き刺すように立つそいつは、その場の者達の視線を集めて微笑む。艶やかな唇が
蠢き、断罪の言葉を吐く。
どこからともなく、声が。毅然としながら甘さの抜けない、それは少女のもの。
給水塔の上に、謎の人影があった。
学園の最高峰に白ブーツを突き刺すように立つそいつは、その場の者達の視線を集めて微笑む。艶やかな唇が
蠢き、断罪の言葉を吐く。
「他人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に堕ちろ!」
羞恥心をドブに捨ててきたような決め台詞と大胆なポーズ。両手の人差し指と親指で、ハートとも毒の矢じり
ともつかぬ歪んだ形をつくってみせる。
それは奇天烈な風体をした女だった。
とてつもなく奇天烈な風体をした女だった。
頭の上半分に被さったヘルメット、ハートを己がトレードマークとして強調するアイシールドのためにその正
体は不明。ブレザー制服に毒々しい赤マント。白い手袋に包まれた手には、ショッキングピンクに彩られた魔法
のステッキを携える。
“幸福殺し”に勝るとも劣らない不審な女は、太陽からの逆光の中で声を張った。
ともつかぬ歪んだ形をつくってみせる。
それは奇天烈な風体をした女だった。
とてつもなく奇天烈な風体をした女だった。
頭の上半分に被さったヘルメット、ハートを己がトレードマークとして強調するアイシールドのためにその正
体は不明。ブレザー制服に毒々しい赤マント。白い手袋に包まれた手には、ショッキングピンクに彩られた魔法
のステッキを携える。
“幸福殺し”に勝るとも劣らない不審な女は、太陽からの逆光の中で声を張った。
「女の子はね、みんな恋に恋したいって夢見てるの! その夢を奪い去るものはどんな奴も許さない! 恋の悩
みにズバッと参上、恋の悩みをズバッと解決! このリンゴと蜂蜜のブレザー制服美少女戦士、カップルウォッ
チャーが、問答無用に大成敗しちゃうんだから!」
みにズバッと参上、恋の悩みをズバッと解決! このリンゴと蜂蜜のブレザー制服美少女戦士、カップルウォッ
チャーが、問答無用に大成敗しちゃうんだから!」
幸せ撲滅計画とともに語られる、それはもうひとつの噂。
謎の美少女戦士、カップルウォッチャー。
あらゆる“カップルの敵”を駆逐する謎の存在だ。
謎の美少女戦士、カップルウォッチャー。
あらゆる“カップルの敵”を駆逐する謎の存在だ。
「ゲゲッ! テメーは噂のデバガメ女!?」
「そんなカッコで恥ずかしくねえのか!?」
「カッコのことだけはあんた達にどうこういわれる筋合いはないっ!」
「そんなカッコで恥ずかしくねえのか!?」
「カッコのことだけはあんた達にどうこういわれる筋合いはないっ!」
すっかり蚊帳の外に追いやられている感のある一般生徒二人がうんうんと肯いた。
「……知っているぞ、謎の美少女戦士カップルウォッチャー。お前の弱点それは……物理的な抑止力がないとい
うことだ!」
うことだ!」
“幸福殺し”の中心人物の指摘に、カップルウォッチャーの挑発的な微笑がまたもや凍りついた。
彼女もデビュー戦以降いろいろと対策を練っていたというが、まだ万全ではないらしい。
彼女もデビュー戦以降いろいろと対策を練っていたというが、まだ万全ではないらしい。
「と、通りすが……」
「俺達がゲームなんぞに騙されるかっての。舐めてんのかよお前」
《力づくで来られるとなると……もう打つ手なしザビ!》
「俺達がゲームなんぞに騙されるかっての。舐めてんのかよお前」
《力づくで来られるとなると……もう打つ手なしザビ!》
魔法の国からやって来たマスコットキャラ・ザザビーちゃんの幻覚も、カップルウォッチャーの視界の隅で頭
を抱える。クソの役にも立たない動物だった。
を抱える。クソの役にも立たない動物だった。
「せんぱ……」
「あいつなら今ごろ、文芸部の霧崎に奴隷のようにこき使われているだろうさ」
「あいつなら今ごろ、文芸部の霧崎に奴隷のようにこき使われているだろうさ」
肝心なときに。いや、もともと彼に頼るのは筋違いなのだが。
観衆がいない分、これは前回の幸せ撲滅計画戦よりはるかにまずい状況だった。
観衆がいない分、これは前回の幸せ撲滅計画戦よりはるかにまずい状況だった。
(後ろの彼に期待できるとしても、二対三の不利! しかもあたし、か弱い女の子だよ!)
さしものカップルウォッチャーも、負け戦を覚悟した。
けれど。
もしかしたら“恋の神様”なるものは実在するのかもしれない。
階下より屋上を隔絶する扉が開かれた。誰かがやって来る。
果たして運命の門を潜り抜けたのは、背の低い少女がひとりだけ。
カップルウォッチャーは彼女を知っている。
その名は、金城葎。創作部に所属し、主として玩具を手掛ける少女だ。
類稀な手先の器用さに中学時代から惚れこんでいたカップルウォッチャーは先日、意を決して“あるお願い”
をしたのだった。
けれど。
もしかしたら“恋の神様”なるものは実在するのかもしれない。
階下より屋上を隔絶する扉が開かれた。誰かがやって来る。
果たして運命の門を潜り抜けたのは、背の低い少女がひとりだけ。
カップルウォッチャーは彼女を知っている。
その名は、金城葎。創作部に所属し、主として玩具を手掛ける少女だ。
類稀な手先の器用さに中学時代から惚れこんでいたカップルウォッチャーは先日、意を決して“あるお願い”
をしたのだった。
「完成、したの?」
期待の通りに、金城葎は何かをその繊手に握っていた。
「近森さん」
「謎の美少女戦士ね」
「謎の美少女戦士さん、これ。頼まれていたもの」
「謎の美少女戦士ね」
「謎の美少女戦士さん、これ。頼まれていたもの」
金城葎はぽつりぽつりと言葉を発して、謎の物体を差し出す。
ショッピングピンクの輪の中に♂と♀の意匠がひとつずつ、鎖のように連なっている。その外側には羽の生え
たハートの飾り。
あれは――何だ?
ショッピングピンクの輪の中に♂と♀の意匠がひとつずつ、鎖のように連なっている。その外側には羽の生え
たハートの飾り。
あれは――何だ?
今!
カップルウォッチャー携える魔法のステッキのヘッドが付け替えられる。
間髪入れず、ポケットに用意していた単三電池二本を石突から装填。
ステッキ先端部で天使の羽の生えた赤いハートが強烈に発光、恋のときめきを思わせる電子音が高らかに響き
渡った。
カップルウォッチャー携える魔法のステッキのヘッドが付け替えられる。
間髪入れず、ポケットに用意していた単三電池二本を石突から装填。
ステッキ先端部で天使の羽の生えた赤いハートが強烈に発光、恋のときめきを思わせる電子音が高らかに響き
渡った。
※
“先輩”先崎俊輔は、学生食堂でぼそぼそと坦々麺を啜っていた。
遅めの昼食である。文芸部部長霧崎からの頼まれ事を鬼の速攻で片づけはしたものの、既に昼休みも後半だ。
この時間になると、出遅れ組や混雑を嫌ってピークを避けた層が疎らに席を埋めているだけだった。
遅めの昼食である。文芸部部長霧崎からの頼まれ事を鬼の速攻で片づけはしたものの、既に昼休みも後半だ。
この時間になると、出遅れ組や混雑を嫌ってピークを避けた層が疎らに席を埋めているだけだった。
『以上、やもり先生によるウナギの捌き方の実演でした! これでオトコのコに精をつけてもらって、あわよく
ば既成事実を作っちゃおうという先生のメッセージ、肉食系女子はちゃんと受け取ったかなー!』
『やだっ、ち、違いますよぉっ! も~何てこというのB72ちゃんってばぁ!』
『いた、あ痛っ! し、CMの後は、定番の蒲焼を料理(つく)ってもらうよ!』
ば既成事実を作っちゃおうという先生のメッセージ、肉食系女子はちゃんと受け取ったかなー!』
『やだっ、ち、違いますよぉっ! も~何てこというのB72ちゃんってばぁ!』
『いた、あ痛っ! し、CMの後は、定番の蒲焼を料理(つく)ってもらうよ!』
顔を真っ赤にした家庭科の白壁やもり教諭が、二年の女子報道部部員(B72)の背中をばしばし叩く。
学生食堂据え付けのテレビでは、放送委員会を介して、生徒会や教師からの事務連絡、あるいは報道部の真偽
の疑わしいニュース番組や教師のミニ授業などが流れている。
購買部の送るCMも人気の番組のひとつだった。
幸福殺しグローブや、恋を叶える伝説の樹盆栽、家庭で楽しめるショウジョウバエ培養セットなど、心底しょ
うもない商品を売り出すことで話題の購買部である。
すわまた何をトチ狂ったかと、食堂にいる生徒のうち七割くらいは画面に注目した。
そして彼らは、見た。
学生食堂据え付けのテレビでは、放送委員会を介して、生徒会や教師からの事務連絡、あるいは報道部の真偽
の疑わしいニュース番組や教師のミニ授業などが流れている。
購買部の送るCMも人気の番組のひとつだった。
幸福殺しグローブや、恋を叶える伝説の樹盆栽、家庭で楽しめるショウジョウバエ培養セットなど、心底しょ
うもない商品を売り出すことで話題の購買部である。
すわまた何をトチ狂ったかと、食堂にいる生徒のうち七割くらいは画面に注目した。
そして彼らは、見た。
吹き荒べ恋の嵐!
カップルウォッチャーよ、今こそ愛のかたちを見せてくれ!
カップルウォッチャーよ、今こそ愛のかたちを見せてくれ!
『あたしにまかせて!』
《カップルウォッチャーに変身だザビ!》
《カップルウォッチャーに変身だザビ!》
♂(おとこのこ)と♀(おんなのこ)を、マッチ・メイキング!
運命の赤いレーザーポインターで、ハートに照準!
運命の赤いレーザーポインターで、ハートに照準!
『問答無用に大成敗しちゃうんだから!』
決めろ必殺のハッピネスハートブレイク!
光る! 鳴る! 単三電池二本は別売り!
光る! 鳴る! 単三電池二本は別売り!
『その恋に、幸多かれっ!』
これがそうなのかッ――マジカルステッキ“レッドストリンガー”ァァッ!
「何コレ?」
「正気か」
「購買部にもほどがある」
「俺ちょっと購買部に行ってくるわ。可愛い妹のために、な!」
「正気か」
「購買部にもほどがある」
「俺ちょっと購買部に行ってくるわ。可愛い妹のために、な!」
妹は嘘だろ。
先輩は心の中だけで呟いて、何事もなかったかのようにゴマダレのからまった麺を味わうのだった。
先輩は心の中だけで呟いて、何事もなかったかのようにゴマダレのからまった麺を味わうのだった。
※
戦いは終わった。
CM一本終わる時間のうちに悪は滅びていた。
超高校級マジカルステッキ“レッドストリンガー”、その第二形態ドングリスナイパーライフルモードは、岩
をも砕く破壊力。男女の体力差にのぼせた“幸福殺し”など敵ではなかった。
CM一本終わる時間のうちに悪は滅びていた。
超高校級マジカルステッキ“レッドストリンガー”、その第二形態ドングリスナイパーライフルモードは、岩
をも砕く破壊力。男女の体力差にのぼせた“幸福殺し”など敵ではなかった。
「つ、強え……」
「なんでドングリなんだよ」
「……がくっ」
「え? なんかおかしいかな」
「なんでドングリなんだよ」
「……がくっ」
「え? なんかおかしいかな」
最期に胡乱げな眼差しを送って倒れ伏した“幸福殺し”に、ターゲット層不明のスーパーヒロインは小首を傾
げてみせる。
げてみせる。
《ザビビ! 見事なお手並みだザビ!》
「そこのお二人さん、怪我はない?」
「そこのお二人さん、怪我はない?」
荒事の最中には校舎に身を寄せていた男女に、カップルウォッチャーは近づいていった。
“彼氏”がちゃんと“彼女”の楯となっていたことを嬉しく思う。彼らなら、きっと苦難に耐えて幸せを掴む
ことができるだろう。
“彼氏”がちゃんと“彼女”の楯となっていたことを嬉しく思う。彼らなら、きっと苦難に耐えて幸せを掴む
ことができるだろう。
「そっか。その恋に、幸多かれっ!」
エールを送ってからカップルに背を向け、カップルウォッチャーは颯爽と歩み去った。
「あ、あのね。たーくん!」
「何?」
「恋の相談のことなんだけど……その、あれ、何ていおうとしたんだっけ……。ええと、あの……」
「う、うん」
「わた、私が、好きなのは。私の好きな人はね! ほんとは――」
「何?」
「恋の相談のことなんだけど……その、あれ、何ていおうとしたんだっけ……。ええと、あの……」
「う、うん」
「わた、私が、好きなのは。私の好きな人はね! ほんとは――」
昼休みの終わりを告げるチャイムが、祝福の鐘のように鳴り響く。
後にはドングリとお昼寝する怪しげな男子高校生が三人だけ残された。
後にはドングリとお昼寝する怪しげな男子高校生が三人だけ残された。
※
「お、おのれ、おのれ、カップルウォッチャーめ!」
「次はただじゃおかねぇ」
「まずはあのチビ女から血祭りに上げてやる」
「次はただじゃおかねぇ」
「まずはあのチビ女から血祭りに上げてやる」
“幸福殺し”達は憎悪を滾らせていた。口からは聞く者の心胆を寒からしめる怨嗟の声が迸る。
その直後だった。
その直後だった。
「――俺達を騙ってずいぶん好き勝手にやってくれたらしいな」
中心人物の怒り肩に無骨な掌の感触が現れたのは。
噂がある。学園に知らぬものなきといわれる恐怖の噂。
幸せの撲滅を叫び、カップルを解消させようと示威行為に及ぶ、度し難き者達がいる。
噂がある。学園に知らぬものなきといわれる恐怖の噂。
幸せの撲滅を叫び、カップルを解消させようと示威行為に及ぶ、度し難き者達がいる。
「ムカつくんスよ。カップルを見抜く気もない奴にデカイ顔されると」
それは昨今絶滅が危惧される“リーゼント”、“モヒカン”、そして“ハゲ”の正統後継者と目されるズッコ
ケ三人組であるらしい。
ケ三人組であるらしい。
「二度とふざけた真似が出来ないように、その腐った性根を叩き潰してやる」
「「「ひえええー!?」」」
「「「ひえええー!?」」」
かくして、幸せ撲滅計画の模倣犯“幸福殺し(カップルブレイカー)”事件は幕を閉じた。
カップルウォッチャーととろ!! 今日もまた学園のカップルを救った!!
カップルウォッチャーととろ!! 今日もまた学園のカップルを救った!!
おわり