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[[前へ>トレーナー その3]] No.010『カメレオン執事には色のセンスが無くて~Pivot~』 人間には人それぞれ、能力の差がある。運動神経、成績、ルックス、感性、頭の回転等。 そして、自分には良く基準がわからないが、平均的な他者の能力より大きく優れた能力を持つ者を『優秀な人間』と呼ぶらしい。 ―――――― 問題が発表されてから20秒、青と赤のエリアの境界線で何やらウロウロしている少年がいた。 彼の名はズル木――自称『優秀な人間』である。 しかし、今の彼は脂汗をダラダラ流し、目も血走っていて、お世辞にも『優秀な人間』とは呼びにくい姿を晒け出している。 「キィィィィッ!分からない……分からないィィィッ!」 ズル木は叫ぶ。何故に優秀な彼が、そんな姿を晒け出しているのか?本当に問題の答が分からないのだろうか、いや、そうではない。 彼はちゃんと、ブースターはフレアドライブを覚えない事を知っていた。 しかし……しかしだ。 彼の周りの人々はズル木の意思に反して赤のエリアへと歩みを進めている。 このことが彼の混乱の原因である。 最初は「プフフッwこんな事も分かんないのバカスwww」と笑っていたが、次々に移動する人々を見て彼の心は揺らぎ始める。そして彼の心の中に一つの疑念が生まれた。 自分が間違っているのではないか、と。 ---- 確かにそうかも知れない。 人が沢山の赤のエリアに比べて自分が正しいと信じる青エリアには人がポツポツとしか居ない。 やはり本当に自分が間違っているのだろうか。 周りから声がする。 「やっぱりさ……ブースターはフレアドライブを覚えるのかなぁ」「多分な」「は?覚えるに決まってんじゃん」「っていうか人が居る方が正しいんだし」「赤ブーン⊂(^ω^)⊃」 色々な声がズル木の精神を揺さぶる。 「愚民共が……勝手に言っとけカス。 しかし……」 ズル木の心は確実に揺らいでいた。 ―――――― 一方、モニタールーム。 モニターに移った恐らくサクラであろう人物の会話を眺めながら、ゴロウが訊く。 「ツツジさん、あれもツツジさんの仕業ですか?」 「ええ、そうよ。 ちょっとサクラの方々に頼んでやって貰ってるのよ」 ツツジは悪びれた様子も無く即答する。 その顔からは笑みが伺えた。 ツツジは続ける。 「でもね、この作戦の最も恐ろしい点はここからよ。 ゴロウさん、ちょっとあそこを見てみて」 ツツジが指を差したモニターは、数人の男達が何やら話をしている光景を映し出している。 ---- 「あの人達がどうかしたんですか?」 ゴロウが聞く。 連中の様子見る限り、なんともまぁサクラ臭い会話を繰り広げている。現に、そいつらの様子を見て他の受験者も動揺しているので、多分そうなのだろうが。 しかし、ゴロウのそんな考えは次の瞬間打ち消される事になる。 ツツジは言った。 「いいえ、あれはサクラじゃないわ。 あれは正真正銘、ただの受験者よ」 「えっ?」 意外な発言に戸惑うゴロウ。 てっきり、あれはサクラと思っていた。いや、現にサクラっぽい行動をしているから確信していた。 そして、ツツジはゴロウの様子を見て含み笑いを浮かべる。 「ふふふ。驚いた? 実はこの試験の大きな肝はここなのよ。 サクラに動揺を誘われた受験者が、更に他の受験者の動揺を誘う。そして、その受験者が更に更に他の受験者を…… そして、受験者はどんどん長い物に巻かれてゆくのよ……」 なんて女だ。 ゴロウはそう思った。 そして彼は言う。 「最早……クイズじゃない気が……」 どちらかと言えば、独り言に近い言葉のトーンだったが、ツツジは聞き漏らさなかった。 ---- 「そうね、これは確かにただのクイズじゃないわ。 どちらかと言えば心理的圧力をかけている分、よく企業がやる圧力面接に近いかもしれないわね。 でもね、可哀想だけどトレーナーに心の弱い人は必要ないのよ。 頭が弱い人もね」 そう言って、彼女は冷酷な笑いを浮かべた。 ゴロウは思った。 『この試験が終わったら俺、この人の元から離れるんだ。』 ゴロウは死亡フラグを立てた。 ---- ――――― そして話は再びズル木小年へ 「おーい、こっちだ」「ブースターはフレアドライブを覚えるよな」「ああ覚える覚える。「アアアアア赤キタ――――(・∀・)―――」「あれ、あの人まだ境界線にいるよw」 うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。 ズル木の耳に容赦無く響くサクラ達(多少釣られた受験者も混じっていたが)の声。 地味だが、着々とズル木の自信を削ってゆく。 いや、削られているのは自信だけではない。 彼の、自分は『優秀な人間』であるという自尊心も削っているのである。 『くぃィィィッ! ボクが……このボクが間違っているというのか……認めない……認めない………ミトメナーイ!』 治まらぬズル木の葛藤。彼の中で何かと何かが戦っている。 『ボク……はマ違っテイナイ…… ゼッタイニ……』 半狂乱状態のズル木は青いエリアに踏み込もうとする。 しかし、 「うわー、何あの人。青行ってるよ」「可哀想にここで落ちるんだな」「うはwwwwアイツテラバカスwww」 様々な声がズル木の心を揺るがしてくる。 彼の思考回路はまさにショート寸前。 ---- 「赤なのにねー」 うるさいうるさいうるさいうるさい。 ズル木の思考はショートして、 「彼はここで終わるのか、気の毒に」 うるさいうるさいうるさいうるさい。 ズル木の思考はループして、 「馬鹿だなぁ、長い物に巻かれろって言葉知らないのかなw」 うるさいうるさいうるさいうるさい。 彼の心は打ち砕かれ、 「あれ何ー?」「指差しちゃだめよ!」 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁーいッ! そしてズル木は一歩を踏み出した。 脱落という現実の待つ、赤のエリアに。 そして、彼の顔からは、先程の自信は嘘の様に消えていた。 ----
[[前へ>トレーナー その3]] No.010『カメレオン執事には色のセンスが無くて~Pivot~』 人間には人それぞれ、能力の差がある。運動神経、成績、ルックス、感性、頭の回転等。 そして、自分には良く基準がわからないが、平均的な他者の能力より大きく優れた能力を持つ者を『優秀な人間』と呼ぶらしい。 ―――――― 問題が発表されてから20秒、青と赤のエリアの境界線で何やらウロウロしている少年がいた。 彼の名はズル木――自称『優秀な人間』である。 しかし、今の彼は脂汗をダラダラ流し、目も血走っていて、お世辞にも『優秀な人間』とは呼びにくい姿を晒け出している。 「キィィィィッ!分からない……分からないィィィッ!」 ズル木は叫ぶ。何故に優秀な彼が、そんな姿を晒け出しているのか?本当に問題の答が分からないのだろうか、いや、そうではない。 彼はちゃんと、ブースターはフレアドライブを覚えない事を知っていた。 しかし……しかしだ。 彼の周りの人々はズル木の意思に反して赤のエリアへと歩みを進めている。 このことが彼の混乱の原因である。 最初は「プフフッwこんな事も分かんないのバカスwww」と笑っていたが、次々に移動する人々を見て彼の心は揺らぎ始める。そして彼の心の中に一つの疑念が生まれた。 自分が間違っているのではないか、と。 ---- 確かにそうかも知れない。 人が沢山の赤のエリアに比べて自分が正しいと信じる青エリアには人がポツポツとしか居ない。 やはり本当に自分が間違っているのだろうか。 周りから声がする。 「やっぱりさ……ブースターはフレアドライブを覚えるのかなぁ」「多分な」「は?覚えるに決まってんじゃん」「っていうか人が居る方が正しいんだし」「赤ブーン⊂(^ω^)⊃」 色々な声がズル木の精神を揺さぶる。 「愚民共が……勝手に言っとけカス。 しかし……」 ズル木の心は確実に揺らいでいた。 ―――――― 一方、モニタールーム。 モニターに移った恐らくサクラであろう人物の会話を眺めながら、ゴロウが訊く。 「ツツジさん、あれもツツジさんの仕業ですか?」 「ええ、そうよ。 ちょっとサクラの方々に頼んでやって貰ってるのよ」 ツツジは悪びれた様子も無く即答する。 その顔からは笑みが伺えた。 ツツジは続ける。 「でもね、この作戦の最も恐ろしい点はここからよ。 ゴロウさん、ちょっとあそこを見てみて」 ツツジが指を差したモニターは、数人の男達が何やら話をしている光景を映し出している。 ---- 「あの人達がどうかしたんですか?」 ゴロウが聞く。 連中の様子見る限り、なんともまぁサクラ臭い会話を繰り広げている。現に、そいつらの様子を見て他の受験者も動揺しているので、多分そうなのだろうが。 しかし、ゴロウのそんな考えは次の瞬間打ち消される事になる。 ツツジは言った。 「いいえ、あれはサクラじゃないわ。 あれは正真正銘、ただの受験者よ」 「えっ?」 意外な発言に戸惑うゴロウ。 てっきり、あれはサクラと思っていた。いや、現にサクラっぽい行動をしているから確信していた。 そして、ツツジはゴロウの様子を見て含み笑いを浮かべる。 「ふふふ。驚いた? 実はこの試験の大きな肝はここなのよ。 サクラに動揺を誘われた受験者が、更に他の受験者の動揺を誘う。そして、その受験者が更に更に他の受験者を…… そして、受験者はどんどん長い物に巻かれてゆくのよ……」 なんて女だ。 ゴロウはそう思った。 そして彼は言う。 「最早……クイズじゃない気が……」 どちらかと言えば、独り言に近い言葉のトーンだったが、ツツジは聞き漏らさなかった。 ---- 「そうね、これは確かにただのクイズじゃないわ。 どちらかと言えば心理的圧力をかけている分、よく企業がやる圧力面接に近いかもしれないわね。 でもね、可哀想だけどトレーナーに心の弱い人は必要ないのよ。 頭が弱い人もね」 そう言って、彼女は冷酷な笑いを浮かべた。 ゴロウは思った。 『この試験が終わったら俺、この人の元から離れるんだ。』 ゴロウは死亡フラグを立てた。 ---- ――――― そして話は再びズル木小年へ 「おーい、こっちだ」「ブースターはフレアドライブを覚えるよな」「ああ覚える覚える。「アアアアア赤キタ――――(・∀・)―――」「あれ、あの人まだ境界線にいるよw」 うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。 ズル木の耳に容赦無く響くサクラ達(多少釣られた受験者も混じっていたが)の声。 地味だが、着々とズル木の自信を削ってゆく。 いや、削られているのは自信だけではない。 彼の、自分は『優秀な人間』であるという自尊心も削っているのである。 『くぃィィィッ! ボクが……このボクが間違っているというのか……認めない……認めない………ミトメナーイ!』 治まらぬズル木の葛藤。彼の中で何かと何かが戦っている。 『ボク……はマ違っテイナイ…… ゼッタイニ……』 半狂乱状態のズル木は青いエリアに踏み込もうとする。 しかし、 「うわー、何あの人。青行ってるよ」「可哀想にここで落ちるんだな」「うはwwwwアイツテラバカスwww」 様々な声がズル木の心を揺るがしてくる。 彼の思考回路はまさにショート寸前。 ---- 「赤なのにねー」 うるさいうるさいうるさいうるさい。 ズル木の思考はショートして、 「彼はここで終わるのか、気の毒に」 うるさいうるさいうるさいうるさい。 ズル木の思考はループして、 「馬鹿だなぁ、長い物に巻かれろって言葉知らないのかなw」 うるさいうるさいうるさいうるさい。 彼の心は打ち砕かれ、 「あれ何ー?」「指差しちゃだめよ!」 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁーいッ! そしてズル木は一歩を踏み出した。 脱落という現実の待つ、赤のエリアに。 そして、彼の顔からは、先程の自信は嘘の様に消えていた。 ---- No.011『イルカ』 そして、はたまた、のび太とジャイアンはというと。 「ジャイアーン!そっちは違うよぉーッ!」 「うるせえなぁー! 俺様がこっちと言ったらこっちなんだよぉーッ!」 同じく不正解へと向かっていた。 『ヤバイ……このままじゃ、このブタゴリラと一緒に不合格になるじゃないか!なんとかしないと……』 すると、焦るのび太の前に一人の見知った少年が見えた。 ズル木だ。どうやら、境界線上で迷っているようだ。 「おっ、ズル木だ」 ジャイアンも、それに気づく。 ここでのび太は考えた。 この前のネッシー議論(コミックス参照)のおかげでズル木の頭の良さ、知識の深さはのび太もジャイアンも十二分に知っている。 と、いうことはズル木が正解を知っている可能性は低くない。 ズル木が青に行けば、ジャイアンも考え直してくれるかもしれない。 のび太はそんな期待を持ちながらズル木の動向を見守る。 すると、ズル木は期待に答えるかの様に青のゾーンに一歩を踏み出そうとした。 「あれ、ズル木の奴、青に行こうとしてるぞ」 それに気づいたジャイアンは言う。 ---- 『やった!思い通り!ラッキー!』 のび太は心の中で踊る。 しかし…… 「あれ……」 ズル木は何を思ったか、再び境界線に引き返してきた。 しかも、頭に手を当て、なんだか普通じゃない様子が伺える。 『何やってんだよ!ズル木の奴! 迷わず青に行けばいいのに!』 のび太がそう心の中で悪態をついた瞬間………ズル木は赤のエリアに踏み出した。 「え?何あれ、マジで?」 のび太は思いがけないその行動に、呆然とする。 そして、それを見てジャイアンは言った。 「のび太よ、ズル木も赤に行ってんじゃねぇか。 やっぱ赤でいいんだよ。早く行くぜ」 『ノォーーーーン!』 哀れ、引きずられてゆくのび太。 彼の目には、うっすら涙が浮かんでいた。 しかし、今は泣いてる場合ではない。 ズル木でなんとかならなかった以上、どうにかしてこの暴君ブタゴリラの手から逃れなければならない。 だが、かと言ってジャイアンを見捨てる事は出来ない。一応友達なのだから。 ジャイアンを救い、自分も助かる。 何かいい策は無いものか。 そのとき、 『あと10秒です』 アナウンスが鳴り響いた。よし、残り時間は少ない。 ---- ここはなんとかして、後10秒この青ゾーンに止まらせなければならない。 しかし、 「急ぐぞ、のび太」 ジャイアンが更にのび太の手を引く。 『こうなったら……。』 のび太は覚悟を決める。 多少、殴られても、後で分かってくれるならいいだろう。 赤いゾーンまで、あと10メートル程。 一回転べば、到着は難しくなるだろう。 ごめんね、ジャイアン、仕方ないんだよ。 『死ねぇぇぇッ!』 バキッ! 日頃の恨みも含んだのび太の水面蹴りが、ジャイアンの足にヒットする。 不意を突かれたジャイアンは…… 「ぷべし!」 転んだ。 ---- そして、その瞬間、 『終了ですー』 問題の回答時間が終わった。 「良かったぁ……」 のび太はホッと胸を撫で下ろす。 のび太は地面に伏したジャイアンに言う。 「ごめんね、ジャイアン。 でも正解出来たから良かったじゃん。 ブースターは本当にフレアドライブを覚えないんだよ。 だから某大型掲示板ではネタポケとして…………え?」 のび太はそこで絶句した。 次の瞬間彼の視界に映るものは、一変していた。彼の目の前は東京ドームなどではなく、広い道路が広がっている。 呆然としたのび太は言う。 「まさか……ワープしたの? ということは………もしかして、僕不正解?」 ということは……。 「のぉびぃ太ぁ~~………」 ジャイアンは怒り心頭の様子で指を鳴らしている。 「ヒィィィィィィッ!」そして…… 「ギッタギタにしてやるぅーッ!」 「あーん」 のび太は、また泣きそうになった。 ---- ―――― のび太がジャイアンに叩きのめされている丁度その頃、モニタールームでは……。 「うーん、疲れたわ……」 椅子に座りツツジは体を伸ばす。 そこへ、 「ツツジさん、今回の一次試験の資料です。どうぞ」 アシスタントのゴロウがツツジに何やら書類を手渡す。 ツツジはそれを受け取ると、ざっと目を通した。 「一次試験突破者は、この会場で約250人か…… まぁ上出来なんじゃない?」 ツツジは呟く。 「一次試験突破者は、皆次なる試験会場にワープさせました。 すぐに二次試験は開始される模様です」 「そう、ご苦労様。」 ツツジは再び伸びをする。 そして、呟く。 「まぁ、今年は二次試験に進まなかった方が良かったのかもね。 試験管はあの人だし。」 「知ってるんですか?っていうか、そんなに酷い試験なんですか?」 「ええ、死人が出るかも。」 「まさか……そんな……」 「有り得るわよ、あの人頭悪いし。 昔あの人の特訓に付き合って再起不能になった人もいるくらいだしね」 「……………」 ゴロウは押し黙った。何て恐ろしい人がいるもんだ。 そんな奴に試験管をやらせるなよ。 ゴロウはため息をつく。 ---- 「まぁ、死亡事故があっても、それはそれで面白そうなんだけどね♪私関係無いし♪ そうだ、ツワブキさんにたっぷりお礼しなくちゃ」 「………………」 ツツジは気づいていない。ゴロウが彼女に冷たい視線を送っている事に。 そうだった、自分の師匠も同じ様な人間だった。 ああ、どっかにまともな神経持った人いないかなぁ。 ゴロウは切実にそう思った。 【一次試験突破:ジャイアン、のび太】 木鳥高夫(ズル木):リタイア ----

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