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ドラーモン作大長編 その24 - (2007/07/29 (日) 12:34:27) の1つ前との変更点
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その場にいた全てのものが、その声のする方向に注目する。
そこから現れたのは、紛れもなくあの少年だった。
「で、出木杉……」
ドラえもん達の脳裏に最悪の想像が巡る。
だが、その想像を一番最初に口にしたのはドラえもんではなかった。
「ま、まさか……のび太さんが負けたというの……」
そう、この場で最もショックを受けていたのは野比しずか。
この計画はのび太の心身の成長を促し、彼が出木杉を越えるために仕立てた舞台なのだ。
だが現れたのは倒されるべき少年、出木杉。
「こ、答えなさい! のび太さんはどうなったのっ!」
出木杉はゆっくりと歩を進めると、しずかの前で立ち止まった。
「君が未来のしずかちゃんか……のび太と結婚するという未来の」
「答えろと言っているのよ!!」
出木杉は悲しげな瞳でしずかを見つめる。
だが、今は悲観している時ではない。
「以前のび太君がドラえもんから聞いた事を僕に聞かせてくれた。未来は確定されたものではなく、変わるものだと……」
「な、何を……」
「まだ僕にもチャンスがあるということさ!」
出木杉がそう叫ぶと、手に持ったモンスターボールを眼前に構えた。
「さあ、戦ってもらおう……この僕と!」
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出木杉の思わぬ挑戦に、しずかは憤怒の視線で対抗する。
「……アンタの顔を見てるとヘドが出るわ」
そう、しずかの中では悪い想い出しか残っていないのだ。
そんな視線を受けながらも、怯むことなく出木杉は言い返す。
「しかし、それはあくまで君の記憶だ。現在のしずかちゃんの記憶じゃない!」
その言葉に、しずかが嘲るような笑みを返した。
彼の考えている事がわかったのだ。
「そう、そうなの……ふふふ、はははははははっ!」
しずかは人差し指を立て、ビシッと出木杉を指差した。
「現在のしずかに取り入って、歴史の流れを変えようってつもりね、なんて浅はかなの!」
しずかは刺すような視線を出木杉に浴びせかける。
「貴方のその性癖は治らないわよ、未来のカウンセラーがそう言っていたもの」
静観していたドラミが顔色を変える。
「しずかさん、そこから先は言ってはだめっ……」
だが、しずかの言葉は止まらない。
「貴方は未来で性犯罪を犯し、懲役をくらうのよ!」
全員がその発言に耳を疑った。
「ま、まさか……あの優等生の出木杉の野郎が……」
ジャイアンがフラフラと崩れ落ちる。
なんだかんだいって、彼も出木杉には一目おいていたのだ。
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「……くっ!」
ドラえもんが顔を背ける。
実はドラえもん自身も知っていたのだ。
のび太の未来は定期的にチェックしている。それが本来の役目だからだ。
ひょいとした偶然でジャイ子と結婚する未来もあれば、なんとアイドルの星野スミレと結ばれるという未来もあった。
だがそんな未来もしばらくすると、結局はしずかとの結婚に落ち着くのだ。
人の未来とはそう簡単に変わるものではない。
それは出木杉の未来にも言えることだった。
彼の未来は差異はあれど、いつも行く末は性犯罪者になる。
それは簡単には変えられない、根本的な精神の問題だったのだ。
それは法廷での精神鑑定でも立証されている。
彼の性犯罪者としての基礎はすでに完成してしまっているのだ。
だから今回のように枷が外れると容易く道を踏み外す。
「だから貴方がいくら頑張ろうと、それは決して報われることはないのよっ!」
しずかは全てをぶちまけると、勝利を確信したかのように高らかに笑った。
だが衝撃の事実を聞かされたはずの出木杉は、笑顔だった。
「そうか、それは参考になったよ」
「な……」
「今までの僕はその事実を知らなかった。だが今はそれを知り、対処する準備もできる」
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この事実を知った出木杉は、もう過ちを犯さないように意識して行動することができる。
「後は僕の努力次第……努力すれば、未来は変わるというわけさ」
ギリギリと歯ぎしりをするしずか。
そんなしずかを前に、出木杉はボールを構える。
「捨てたボールを拾うんだ。いくらダークルギアといえども、僕相手に1体で勝てると思わないことだね」
しずかはボールを1つ拾うと、それを構えた。
「他のポケモンは普通のポケモンだけど、ルギアとこれだけは別物なのよ」
ボールを拾うことはしずかのプライドを幾分か傷付けたが、出木杉の所有するポケモンは強力だ。
保険はかけておいたほうがいい。
「後悔することね……」
「ふん、後悔だって?」
そう言い返す出木杉の顔には、何かの覚悟が込められているかのようだった。
そんな出木杉の顔を見て、ドラえもんは不思議な感触を受けていた。
『あの顔、どこかで……』
人間があんな顔つきになる瞬間に、何度か立ち会っているようなそんな気がしたのだ。
出木杉君、君は……
次の瞬間、相対する二人はモンスターボールを同時に投げた。
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