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トレーナー その8 - (2007/08/19 (日) 15:17:55) の1つ前との変更点
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No.021『Hey! You! What do you see?』
のび太が孵化作業という名のマラソンを始めた丁度その頃、島の北の浜辺には、世にも奇妙な生物が出現していた。
青い体に二頭身、それにあのヒゲに鈴。
そう、みんなも大好きドラえもんだ。
「よし、支給品の確認も済んだし、のび太君を探しに行くか」
ドラえもんはそう言うと砂浜から立ち上がり、おもむろに自らの腹のポケットを探りだした。
「どこかな……あ、あった。
『尋ね人ステッキ』~」
すると中から出てきたのは何やら怪しい一本の棒。
しかしただの棒ではない。
「これを立てて、知りたい人の名前を言いながら手を離す。
するとその人が居る方角にステッキが倒れるんだ!
(たまに外れる時が有るけどね)」
誰か居る訳でも無いのに説明を始めるドラえもん。
日頃の癖という奴であろうか。
ドラえもんはその不思議で便利なステッキを立てる。そしてドラえもんは言う。
「のび太君はどこかな~?」
そしてステッキを支えていた手を離す。
倒れたステッキは森の方角を指していた。
「よし、森か!待っててね、のび太君。
今から行くから!」
ドラえもんはのび太を探すべく魔の住む森の中に突入した。
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そしてそのドラえもんの様子を影で見ていた人物が一人。
「あんこ、いい支給品貰っただなぁ。
あぎゃんもんをぶんどればマンソンも簡単に見つかるかもしんねっぞ
とんかく後を追うべ」
ドラえもんにも一人、影の追跡者がついた。
* * * *
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
静かな森を走るのび太。
木々はそよ風に吹かれて涼しげだが、リュックを担いで孵化のために走る彼は、見るからに暑苦しい。
「ヒィ、ヒィ、ヒィ。これは…作業じゃない……重労働だよォ……」
背中のリュックに汗が染み込む。リュックのバンドが肩に食い込む。
しかもこの湿度の高い森の中。体感温度は実際の数字より、確実に高い。
そしてそれらは着実にのび太の体力を削り、水の消費スピードも格段に上げる。
そしてまた10分が立ち、500mlの水は無くなってしまった。
「とりあえず地図を見て水場を探そう…
これじゃあ、脱水症状で死ぬ…」
幸い、地図によると水場は近かった。
ここからおおよそ200メートル。
「辿りつけるかなぁ…ハァ」
のび太は再び走りだした。
その時、
ビシッ。
のび太のリュックの中から何かがヒビ割れる音がした。
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* * *
所は変わってサントアンヌ号船内の一室。
そこは通常の航海では船長室として使われているが、今日は大量のモニターが並び、まるで船長室としての面影を残していない。
そしてその大量のモニターを眺める少女が一人。
整った顔つきに露になった腰の部分が悩ましい。
「キャハハハハハハハ!
あの子ポケモン孵化させてないじゃん!
マジでウケる!
キャハハハハハハハ!」
彼女の名はナタネ。
ハクタイジムのジムリーダーであり、第三次試験官である。
ちなみに彼女の嘲笑の対象は……いや、読者諸君のご想像にお任せしよう。
彼女が爆笑していると、不意に背後のドアがノックされる。
「ハハハハ………どうぞ…」
ナタネの許可とともにドアが開く。
すると、二人の幼い女の子が中に入ってきた。
二人とも三編みにお揃いの服を来ている。
だが、お揃いなのは服装や髪型だけではない。
顔立ち、目の色や髪の色が、まるでコピーしたかのように一緒だったのだ。
その二人にナタネが言う。
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「はーい、あなたたちのお名前はなんですかー?」
まるで教育テレビのお姉さんような口調で語りかけるナタネ。
そして二人はテレビのチビッ子よろしく、元気良く答えた。
「マリちゃんでーす!」
「リンちゃんでーす!」
「「二人合わせてー、リンマリでーす!」」
「かぁわぁいいぃぃぃ!!!」
皆さんはもう気づきかも知れないが、この二人実は一卵性双生児、いわゆる双子ちゃんなのだ。
その年齢は実に6歳。一次試験のゴロウより、更に年下である。
通常、試験は10歳からしか受けられないので、10歳以下でトレーナーをやってるのは有り得ないのだが、『特例』だそうだ。
ちなみに、トクサネジムのフウとランも、その『特例』の恩恵を預かっている。
「見て見て~、あれが試験受験者だよ~」
ナタネはモニターを指さす。
「じゅけんちゃ…たん?
じゅけんちゃたんってタヌキたんやキツネたんや過齢臭のしそうなオッサンもいるんでちゅか。すごいでちゅ~」
「そうよマリちゃん、あれが受験者たんですよ~。
ちなみにあのオジサンは今年で受験が15回目のベテランさんですよ~」
「へぇー、あれがいつまでも叶わない変な夢見て人生無駄に浪費してる人間カスでちゅか。クソキモいでちゅ~」
「はーい、リンちゃん、よくできましたー。
皆はちゃんと自分の限界見計らってそれを超えたでしゃばった事をしないようにね~」
「「はーい」」
………これはひどい。
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「あれ?
ナタ姉たん、なんであの人はあそこでおネンネしてるでちゅか?」
不意にリン(そっくりだからマリかもしれない)がモニターを指さす。
それには倒れてる一人の男が映し出されていた。
ナタネはそれを見ても慌てる様子はなく、双子ちゃんに言う。
「あれは脱水症状で倒れている男の人ですよー。
分かる?脱水症状って」
「はいッ!」
「はい、どうぞ。マリちゃん」
「激しい発汗などによる大量の体内の水分の喪失によって引き起こされる夏の風物詩でちゅね、ナタ姉たん」
「はい、よくできました、マリちゃん」
「でも、でもナタ姉たん、なんであのヘタレは配られた水を飲まないんでちゅか?」
リンが訊く。
ナタネは笑顔でそれに応える。
「それはねー、水や食糧を少なめに支給してるからよ。
それとあの人がバカだから試験が始まった瞬間、水源とかも確認せずに、貴重な水をがぶ飲みしたんでしょうねー。
倒れてるけどほっときますよ。
トレーナーにアホは要りませんからねー」
「そうでちゅねー。
でも、ナタ姉たん。
なんで食糧と水をわざと少なめに支給したんでちゅか?」
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「マリちゃん、良いところに目をつけました!
さぁ、二人は分かるかなぁ?」
「「うーん……分かんないでちゅうぅ…」」
「うーん、まだ二人には早かったかもねぇ。
あのね、もしも貴方たちがもし食べ物が無くて、他の人が食べ物を持ってたらどうする?」
「「ブチ殺ちてでも奪いとりまーす」」
「はい、それが正解。
食糧を少なめに支給した理由はですねー、受験者同士で食糧や水を奪い合わせて、互いに潰し合いをさせるためですよー」
「すごい頭いいでちゅ!ナタ姉たん!」
「頭いいでちゅ!ナタ姉たん!」
「ありがとうー。アタシ嬉しいよ、マリちゃん、リンちゃん。
じゃあこれから皆で楽しく受験者の潰し合いを観察しましょうねー」
「観察するでちゅ」
「観察するでちゅ。あのメガネ、ダメ男オーラが漂ってるでちゅ」
三人はみんな仲良く哀れな受験者どもの観察を始めた。
ここにゴロウが居たら、きっとこう言うだろう。
「嫌な女共だ……」
と。
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* * *
そして、視点はダメ男………いや、のび太に戻る。
ビシ、ビシビシッ。
背後から響く音。これはまさしく……。
「孵化だぁぁぁぁぁぁ!」
のび太は叫び、いそいそとリュックを下ろしてその様子を確認しようとする。
しかし、タマゴは孵化どころが、ヒビ一つ入っていない。
「あれ……?
なんで?確かに音がしたハズなのに……」
のび太は首を傾げる。
すると、
バキッ。
「え、バキッ?」
のび太がそう言うが早いか、
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
ドスン。
突如、空から人と、木の枝が落ちてきた。
のび太は人物が何処から落ちたかは正確には見ていないが、あのバキッと、ドスンの時間差から考えると、結構な高さから落ちたということは予想出来た。
「うわぁ……痛そう…。大丈夫ですかぁ……?」
のび太はその落ちた人物に駆け寄る。
人間は高所から落ちた時は必ず、体の中で最も重い頭が下にくる。
その人物も例に漏れず頭から落ちてきたようだ。
頭が地面にめり込んでいる。地面が柔らかな腐葉土でなかったら、死んでいたかも知れない。
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「ムムムムムーン!ムムムムムーン!」
地面に顔を埋めながら体をバタつかせる『誰か』。
「大丈夫ですか?今、助けますからね!」
のび太はそいつを救出すべく、畑の株を引き抜くように『誰か』の体を引っ張る。
「よいしょ、よいしょ」
「ムムムムムー!モモモモモー!」
「え、引っ張る力が弱い?
じゃあ、もっと強く……うんしょっと!」
のび太は引っ張る力を更に強める。
少しずつだが、抜ける兆しが見えてきた。そして……。
「ムムムムムムムムムムーン!
ムモモ……ぶぱあ!
何すんだよ!
首が外れるかと思ったじゃないか!
このダメのび太!」
やっと地面から首を引き抜けた人物は、そうのび太にイチャモンをつける。
腐葉土の湿り気で、特徴的な髪のドンガリ感を少し失ってはいるものの、その嘴のようなとんがった口、性格の曲がってそうな目で、のび太はそれが誰か、すぐに分かった。
「スネ夫じゃないか!」
顔面真っ黒な友人を見て、のび太は素っ屯狂な声を上げた。
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