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挑戦者 その5 - (2007/01/20 (土) 16:56:36) のソース
[[前へ>挑戦者 その4]] ドラえもんはのび太の家の屋根に立っていた。 (みんなが旅立って丸十日……) ドラえもんは口を真一文字に結んだまま空を見上げた。 ――自分のしたことは本当によかったのだろうか? 僕は取り返しのつかない行為をしているのではないだろうか?―― 「……のび太、それにみんな」 ドラえもんは目を瞑り、室内へ戻っていった。 町内はスパイセットとロボッターで見回っている。 その映像は常に小型テレビに送られてきていた。 ドラえもんはそれを一瞥しながら、部屋をでた。 (どうせたいした変化が起こるはずもない) ふと、電話が鳴る。 静かな空間を振動させる震えは、ドラえもんを必要以上に緊張させた。 (何だろう) ドラえもんは心の一部で呟き、また別の一部で不思議な感じをわかせていた。 ――ロボットにも直感というのがあるのだろうか―― ドラえもんは馬鹿げたことだと思いつつも電話を取った。 ---- ……それはロボットの一機能なのだろうか。 それとも心を持つもの全てが偶発的に起こすものなのだろうか。 未来の科学者の力がここまでのことをできたのか、わからない。だが ド ラ え も ん の 予 感 は 当 た っ た 「……言いたいことはわかった」 ドラえもんは相手にそう言った。 相手はきっと電話の向こうでにやりと笑っているのだろう。 相手はドラえもんの不安を打破する、あることを言った。 それはドラえもん自身も大きな賭け。 それでもこれで…… おそらく相手の計画通りだろうが、ドラえもんは肯定した。 電話は一方的に切られた。 あとに残るコール音はドラえもんの耳から、心をつついた。 (のび太くん、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫くん……せめて何事もないように) ドラえもんは気づいていない。 ドラえもんの決断は、このゲームを大きく揺るがすことになるのだ。 少年少女たちに、過酷な試練を与えると共に…… ---- 「終わったわね……」 しずかははっきりと宣告した。 その射るような口調の前で、テッセンは顔を青くして立っていた。 (わ……わしのポケモンたちが一瞬で……しかもたった一体に) テッセンは体を震わせながら、地面に横たわるライボルトをボールに収めた。 「わしの負けじゃ」 テッセンはそう小さく言うと、しずかに歩み寄った。 「テッセンさん。気にしなくていいわ」 しずかはバッジを受け取りながら言う。 「でんきタイプのジムですもの。 たとえじめんタイプを出されてもでんきだけで戦ったのは偉いわ」 その言葉は優しかった。 テッセンはそのとき初めて、しずかが年相応の子供に見えた。 テッセンは胸を撫で下ろす。 (ああ、そうじゃ。タイプの相性が悪かっただけ。 それ以外の何でもないわい。 一体この少女に何があると思っていたんじゃ? わしは。 優しそうな少女じゃないか……) テッセンは自然と笑顔になり、しずかを見送った。 しずかはジムを一瞥し、溜め息をついた。 「所詮まだ序盤ってことね」 しずかは帰路につく。 ---- ポケモンセンターはトレーナー用の宿場でもある。 だがしずかが生きていく上で最低限必要なものはかけていた。 しずかは昼間のうちに、その渇望を満たしてくれる建物を見つけていた。 鼻歌混じりにくぐった暖簾。 そこには象徴が書かれている。 血のように赤い中三本の歪められた線が楕円の中から突き出ているマーク―― ……要するに銭湯である。 しずかは湯につかり、欲望の満たされる感覚に酔いしれていた。 周りには人がいない。しずかは浴場を占領していた。 温かい乳白色の湯はしずかの疲労した体を清める。 ここ数日、しずかは精神的に疲労していた。 ポケモンは野生と戦わせておけば自分から技のレパートリーを増やす。 しずかはその技を確認しては戦闘方法を編み出し、ポケモンに教えていた。 (でも、まだ足りないのよ……何かが) しずかは眉に皺を寄せた。ここ数日、ずっとやってきたことだ。 やがてしずかは、その「満たされない欲望」をまた心にしまいこみ、湯をでた。 だ が、 そ の 時 は 異 常 に 早 く 来 た。 「……?」 しずかは服を入れた籠の中に、メールが置いてあることに気づいた。 しずかはそのメールを手に取り、広げる。 ――しずかは単調なゲームの世界に飽きていたのだ しずかの欲望、それはゲームのように操られている状態から脱すること―― ----