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セカンド その3 - (2007/05/13 (日) 00:43:13) のソース

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「はぁ……しんどいなぁ……」
歩きながら愚痴をこぼす僕。
僕は今、ズイタウンを抜けた所にある道路を進んでいた。
『喉は乾くし、足は痛いし……』
水の出が悪いせいか、ズイタウンでは申し訳程度の水しか飲んでいない。
それに加えて、この暑さ。
「もう……限界」
僕は最後にそう吐き捨てると、その場に大の字の形で寝転んでしまった。

「ん……?」
僕の顔に水滴が落ちる。
見ると、ここはさっき寝転んだ所じゃない。
暗い洞窟だった。
「何でここに……?」
疑問が過ぎる。
すると、突然辺りが明るくなった。
炎を纏った馬……ポニータによるものだ。
「君が僕をここまで運んでくれたのかい?」
ポニータは無垢な表情で僕を見ている。
外ではいつの間にやら雨が降っていた。
「そろそろ行くか……君も来るかい?」
僕が促しても、ポニータは一向に着いてくる気配を見せない。
「あ、そうか……お前、水苦手だもんな」
僕はポニータをボールに収め、洞窟を後にした。

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次の町……トバリシティに着く頃には、服も髪もずぶ濡れだった。
「風引いちゃうよ……クシュン!」
思わずくしゃみが出てしまう。
そして僕がポケモンセンターに入ろうとした矢先……
「ん?何だあれは……」
この町で一番高いビルの前で、ギンガ団の連中と誰かが交戦している。
僕は必死に目を凝らす。
「……あ!」
微かにだが、見えた。
あのトゲトゲリーゼントといったら、アイツしかいない。

「スネ夫ーっ!」
見ると、スネ夫は大量のギンガ団相手に奮闘していた。
だが、既に手持ちは全て瀕死状態で、本人も崩れ落ちている。
『やるしかないか』
意を決して、僕はその中に飛び込んでいった。
「もういいだろ!こいつの周りから去ってくれ!」
必死に頼む僕だったが、そうは問屋がおろさないらしい。
「ギンガ団に歯向かう奴がどれだけ愚かなのか、教えてやるよ!」
そう言うなり、大量のポケモン達を繰り出してくるギンガ団。
相手が人海戦術で来るならば、こっちも戦力を全て出すしかない。
「いけ!ハヤシガメ、ホーホー、ポニータ!」

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「ハヤシガメ、はっぱカッターだ!」
得意の技でギンガ団のポケモンを倒していくハヤシガメ。
だが、やはり相手が多すぎる。
「ホーホーはつつく!ポニータは火の粉!」
ホーホーとポニータも技を繰り出す。
そして、ようやく下っ端の半数が倒れた時だった。
「お前達……何をやっている」
ビルから出て来たのは青髪の男。
その妙な威圧感で僕は悟った。
『ギンガ団幹部か……!』

幹部の強さは圧倒的だった。
「ユンゲラー、サイコキネシス」
一撃で粉砕されていく僕のポケモン達。
幹部は僕とスネ夫を一瞥する。
「今回は見逃してやる……だが、次は容赦しないぞ」
そう言うと、幹部は手負いの下っ端達を置いてビルの中へ戻っていった。
「今の内に……」
スネ夫を背中におぶり、重い足でその場から逃げ出す僕。
既に熱が出ていた影響もあり、体中が悲鳴をあげている。
やっとの事でポケモンセンターに入った時には、既に意識が遠のいていた。

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「三十八度五分、か……」
目を覚まして体温を計ると、やはり熱があった。
走ってポケモンセンターに戻っていた時よりもかなりしんどい。
僕の隣のベッドで寝ていたスネ夫は、外を見つめていた。

「何で……何で助けたんだよ」
再び寝転んだ僕の耳にスネ夫の声が入ってくる。
「何で、って……危険な状況だったし……」
「余計な事をするな!」
仰向けになりながら答える僕に、スネ夫の怒声が飛んで来る。
僕は一瞬言葉が詰まった。

「お前が来なくても、僕は勝ってたんだ!」
意地を張り続けるスネ夫。
これには流石にカチンときた。
僕は反論するべく起き上がる。
「何言ってんだよ!僕が来た時、君は既に戦えない状態だった!もし僕がいなかったら……」
「うるさい!余計なお世話なんだよ!」
そう言って部屋を出るスネ夫。
「まだ回復してないんだろ!」
僕が怒鳴るも、スネ夫は無視して扉を開ける。
返事代わりに乱暴な扉の閉まる音が響いた。
「なんだってんだよ……」

皆の手持ち
のび太(ハヤシガメLv28、ヨルノズクLv26、ポニータLv25)
スネ夫(モウカザルLv31、ゴルバットLv29)

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翌日に熱が回復した僕は、真っ先にジムへと向かっていた。
風邪が完治したせいか、妙に気分が良い。
負ける気はしなかった。
「よし、行くか……」
僕はジムの中へと足を踏み入れた。

案の定、ジム戦は至って楽勝だった。
鼻歌を歌いながら町を後にする僕。
ジムリーダーに余裕勝ちした事もあり、そこからの道中も大して苦にならない。
やがて着いたのはリッシ湖のほとりだった。
「今、ここは誰も入れません。ある人に言い付けられているのです」
と、言い張る二人の男。
どうやらリッシ湖には入れそうにも無い。

『ちぇっ、仕方ないか……』
僕がそう思った時だった。
「あれは……レストラン?」
僕の目に映ったのは、確かにレストランだ。
しかも、何処と無く高級な雰囲気を醸し出している。
腹が減っていた僕には願っても無い幸運だった。

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「ふうー、満腹満腹!」
高級レストランで次々と料理をたいらげる僕。
『そろそろ出るか……』
僕がレジで会計を済ませようと思った時の事だった。
「五十万円になりまーす」
「……え?」
何を言っているのかわからなかった。
五十万円なんて僕に払える筈が無い。

「あ、あの……今、何て言いましたか?」
「あなたが全て食べた分で五十万円ですよ。払えないんですか?」
僕が払えない事を告げた途端、レジの男の形相が変わる。
「払えなかったら、ここで暫く働く事ですね。代金分は払ってもらいますから」
訳がわからない。
僕が食べた分じゃ、いくら何でも五十万円は有り得ない。
多めに見たとしても、ざっと二万円ぐらいのものだ。
「とりあえずここを出て右の建物に入ってて下さい。仕事の時間に呼び出します」
「いや、僕は……」
無理矢理レストランの右にある建物に連れていかれる僕。
『なんなんだよ……』
正直、かなり混乱していた。
「オラ、ダラダラしてないでさっさと行け!」
抵抗しても無駄だとわかった僕は、されるままに建物の中に連れ込まれた。

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「え?これって……」
建物の中は酷い有り様だった。
そこら中に木屑が散乱していて、所々にカビが生えている。
だが、僕が驚いたのはそれだけじゃない。
「静香ちゃん……だよね?」
そう、建物の中には僕達と共に旅立った仲間――静香ちゃんが居たのだ。
「のび太さん……」
だが、その顔は昔の静香ちゃんのものじゃない。
完全に笑顔を失っていた。
「まさか、静香ちゃんも……?」
僕が恐る恐る聞くと、静香ちゃんはコクリと頷いた。

それから静香ちゃんは今までの経緯を話してくれた。
僕と同じような感じで無理矢理連れ込まれ、働かされるようになった事……
睡眠時間無しで一日中働いていた事……
本当に酷いとしか言い様が無かった。

「二階にも沢山の人が居るわ……皆私達と同じような境遇なのよ」
静香ちゃんが言い終えると、そこにいた一人のスキンヘッドが口を開いた。
「そのお嬢ちゃんの言う通りさ。しかも抵抗した奴は容赦無く殺されるんだ……」
「殺される……?」
僕が聞くと、スキンヘッドは悲しそうに俯いた。
「俺と一緒に働いてた友達が居てな、そいつはちょっと抵抗しただけで殺されちまったんだ……」
スキンヘッドは遠い目で天井を見上げた。

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「畜生……許せねぇ……!」
拳を握り締めるスキンヘッド。
「ポケモンは?ポケモンは使わなかったんですか?」
堪らず聞いてみる僕。
「それは無理だ。奴等はああ見えてかなり強い……特にアイツは別格だ」
「アイツ?」
「確かサターンと言っていたか……奴の実力は半端じゃない」
サターン……聞いた事も無い。
「でも、怪しいよな。こんな小規模なレストランが何故こんな事を……」
スキンヘッドがそこまで言った時、僕は直感した。
「静香ちゃん、来て!」
静香ちゃんの手を引いて、建物を出る僕。
「何なの?のび太さん……」
「いいから、来て!僕の予想が正しければ……」
僕が目をつけたのはレストランの奥にある小部屋。
幸い、外から中の様子を監視出来るようになっている。
中からはこんな会話が聞こえてきた。

「作戦は順調です、サターン様」
「そうか……だが、ずっとここで働いてもらうのも辛いだろうな」
「と、言いますと?」
「時期を経て、我々ギンガ団の手駒になってもらうとするか……ふふふ」

ギンガ団という言葉に反応する僕と静香ちゃん。
「ということは……」
「これはギンガ団の仕業だったんだわ!」
僕と静香ちゃんが真相に気付いた、丁度その時。
「どうやら蟻が紛れ込んだみたいだな……」
小部屋の窓が割れ、サターンと名乗るギンガ団幹部が現れた。

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「まさか聞いていたとは……ならば、お前達を始末する他無いようだな」
見ると、トバリシティで交戦状態になっていた幹部だった。
それに続き、下っ端達もぞろぞろと出てくる。
「静香ちゃん、準備はいい……?」
「ええ、いつでもいいわよ」
モンスターボールを握り締める僕達。
腹は決まっていた。
「ポケモンバトルか……なら、お前達は下がっていろ」
下っ端を首で促すサターン。
その命令に従い、下っ端達は引き下がっていった。
「私に歯向かった事を後悔しろ……いけ、ドクロッグ!」
サターンのボールからはドクロッグが繰り出される。
「出番だ、ポニータ!」
「ロゼリア!」
相手のドクロッグを二匹のポケモンが挟む。
三匹が動いたのは次の瞬間だった。

「もう終わりですか……?」
冷酷な表情で僕達を見下すサターン。
二対一にも関わらず、奴のドクロッグは完全に僕達を圧倒していた。
既に僕達の戦力も底をついている。
「そろそろ終わりだ……ドクロッグ、どくづきだ!」
その右腕に毒を宿し、それを今にも突き刺さんとするドクロッグ。
ターゲットは……静香ちゃんだった。
「静香ちゃああぁぁぁぁん!」
必死に叫ぶ僕だったが、もう遅い。
次の瞬間には僕の耳に響いてきたのだ。
僕の叫びよりも遥かに大きい、静香ちゃんの悲鳴が――

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「何……!」
どくづきを受けたのは静香ちゃんでは無かった。
ドクロッグの拳と静香ちゃんの間に割って入ったのは……
「よくやったぞ、ゴローン!」
先程のスキンヘッドのゴローンだった。
「へっ、お前達だけに任せる訳にはいかねぇからな……」
見ると、スキンヘッドの後ろには数十人のトレーナーが控えている。
トレーナー達は一斉にポケモンを繰り出した。
「この数を見てもまだやるか?ギンガ団幹部のサターン!」
サターンを威嚇するスキンヘッド。
この状況では、流石の幹部も手が出せない。
「くっ……状況が状況だ……ここは撤退するか」
そう言うなり、ヤミカラスを繰り出してそれに飛び乗るサターン。
それに続き、他の下っ端達もその場を去っていった。

「ありがとうな、お嬢ちゃん達!」
僕達に礼を言うスキンヘッド達。
英雄みたいな気分でちょっと気持ち良かった。

「それじゃ、僕はこれで……」
やがてスキンヘッドと別れた僕達は、レストランを後にする。
今日の夕焼けは、何故だかいつもより一層綺麗に見えた。

皆の手持ち
のび太 ハヤシガメLv31、ヨルノズクLv30、ポニータLv29
静香 ポッタイシLv33、ミミロップLv32、ロゼリアLv28

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