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ギンガ その8 - (2007/07/08 (日) 00:49:52) のソース
[[前へ>ギンガ その7]] 「嘘……でしょ?」 ナタネが俺に視線を合わせる、思わず逸らしてしまった。 「ねぇ…ナナシ君嘘だよね……嘘だって言ってよ!」 のび太の声が、森の中を空しく木霊する。 俺が手から溢したボールから、ラグラージが赤い光を伴って出てくる。 あいつ…… 俺に交換させる隙を作って、カクレオンで仮面を剥ぎ取る作戦だったのか。 スネオの奴…そこまで考えて…… 「フン……やっぱりお前はそういう奴だったんだよ 狡賢くて、卑怯で、出会った時からお前のことは気に入らなかったんだよ!」 『黙れぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええ』 この瞬間――俺はなにをやったのか分からない。 ただ目の前に見えたのは、血塗れの右手に氷を纏い、棒立ちしているラグラージ。 呆然と立ち尽くしている、のび太、ナタネ、シロナ―― そして、暗い森の地面で血塗れで横たわっているスネオ。 この光景を見る寸前、こう聞こえた。 『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』 ---- 誰だ、誰がやった? のび太?ナタネ?シロナ? 全員有り得ない、なぜならラグラージは俺のポケモンだからだ。 俺のポケモンがスネオをやった…… つまり……ヤッタノハオレ? 『うわぁあああああああああああああああああああああああああああ』 この時、俺は自分のやった事を理解した。 俺は……ラグラージに命令してスネオを攻撃したんだ。 この場から……この場から逃げないと…… 「戻れラグラージ、出て来いクロバット!」 「ま、待ちなさい!」 「黒い霧だ!」 クロバットが黒い霧を発生させたおかげで たちまち周囲は黒い霧に覆われる。 「クロバット! トバリビルまで俺を連れて行け!」 クロバットは強く羽ばたいた後、森の空へと上昇していった。 ---- 「追いかけるわよ、出てきて――」 「今はスネオを病院に運ぶのが先です、シロナさん!」 「……そうだったわね、のび太君。ナタネ、ハクタイシティの病院に搬送するから連絡をお願い」 シロナの指示で、ナタネはポケッチを使用し近くの病院に連絡する。 「すぐに駆けつけてきてくれるそうです」 ナタネの声を聞き、シロナは「分かった」と相槌を撃つ。 「私も応急処置を取ったし…とりあえず安心と言ったところかしら」 シロナは額の汗を、裾で拭く。 「大丈夫だよね?」 「……大丈夫よ、きっと」 シロナの顔には動揺の色が見えた…… 「ナナシ君……」 ナタネは目を瞑り、そう呟いた。 ---- ―――トバリビル 「ごくろうだったな、ナナシ……」 俺はハクタイの森からクロバットに乗り逃亡し、トバリビルに帰還した。 最上階の父さんの部屋に行くと、既に他の幹部達も待機していた。 「どうやらハクタイの森でなにかあったみたいだな、血の匂いがするぞ」 やはり全てお見通しか……父さんには隠し事はできない。 「次の作戦を説明する、まずこの地図を見てくれ」 後方のモニターに地図が映し出される、ここは……ミオシティの近くだ。 「そこを少し行くと、小さな島が二つあるだろ?」 ああ確かに……隣同士に合わさった小さな島がある。 「そこの島の名前は、満月島、そして新月島だ」 この名前を聞いたとき、俺の頭にはリュックに閉まった新月の石が頭に浮かぶ。 「そろそろ次の指示を出そう」 ---- 「満月の島にはクレセリア、新月の島にはダークライというポケモンが居る 今回の目的は、この二体のポケモンの捕獲だ そして、その二体はそれぞれの石の所持者にだけ姿を現す つまり現状だと、ダークライしか入手することができない」 なるほど…だいたい次の指示が読めたぞ。 「満月の島には三人の幹部と数十人の下っ端を送り、満月の石を奪取するのと 新月の島での出来事を、なるべく目立たせないようにする。 そしてナナシ……お前は一人新月の島へ乗り込み、ダークライを捕獲して来い」 一人で乗り込むのか……なにかと心細いな。 「準備ができたら出発してくれ。ナナシは皆が出発したその十分後に出発しろ」 三人の幹部は「了解」と言い、それぞれ立ち去っていった。 俺もさっさと立ち去るとするか。 「ナナシ、ちょっとこっちに来い――」 ---- 「ナナシ、お前にこれを渡しておく」 渡されたのは三つのボール。市販の物とは違い、赤い箇所が紫色になっている。 「それはマスターボール、100%の捕獲率を誇るボールだ。 空のボールはダークライ捕獲用のもの、 そして残りの二つには『あるポケモン』が入ってる。いざとなったら使え」 『あるポケモン』どんなポケモンが入っているかは分からないが、 俺には想像もできないほどの、強力なポケモンが入っているのだろう。 俺は三つのマスターボールをリュックに収納し、部屋を出た。 ――三十分後 三人の幹部は数十人の部下を連れ、満月島へと向かってから十分。 そろそろ俺も向かうとするか……新月島へ。 ……もう…後戻りはできないんだ。 冷たい風が全ての物を襲う中、太陽はゆっくりと黒い雲に隠されていった。 ナナシ ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv43、 ラグラージLv46、?????Lv??、?????Lv?? ---- ――新月島 既に空は漆黒に染まり、肌寒い時間帯となってきた。 隣の島は騒がしいようだが、それがこちらの作戦。 俺の任務は誰にも気づかれず、ダークライを捕獲することだ。 ゆっくり、ゆっくりと新月島の奥へと入っていく。 もうすぐだ……もうすぐでダークライが―― 『待て!!』 大きな濁声に反応し、思わず振り返る。 そこには、オレンジ色の服を着た少年と、ピンク色の服を着た少女が居た。 その二人は――ジャイアンと静香…… 「よくもスネオに大怪我を負わせてくれたな! 絶対に許さねーぞ! いま俺たちがボコボコにしてやるぜ」 ジャイアンと静香はボールを構える。 二対一か……面倒な勝負になりそうだな。 ---- 「行け、ドタイトス!」「お願い、サーナイト! 敵のポケモンは、草、地面タイプと、エスパータイプ。 ここは地震でダメージを受けないポケモンで行くか。 「行け……クロバット、ロトム」 「ドタイトス、種爆だ……」 「遅い、クロバットはクロスポイズン、ロトムは怪しい光だ。ドタイトスを集中して狙え!」 二体のポケモンは、相手のポケモンよりも素早く動き、それぞれ攻撃を仕掛ける。 クロバットの攻撃が命中した後、ロトムの怪しい光を見てしまい ドタイトスは混乱してしまった。 「怯まないで! サイコキネシスよ」 サーナイトは右手を突き出し、念力波をクロバットに向けて射出する。 「受け止めろ、ロトム」 クロバットの前に体を出し、サイコキネシスを受け止めるロトム。 「そのまま怪しい風!」 生暖かい風がサーナイトを通り過ぎる。 「ドタイトス、種爆弾だぁ!」 ジャイアンは大声で指示をするが、ドタイトスには届かず、攻撃は失敗してしまった。 「瞑想よ、サーナイト」 サーナイトは体を宙に浮かせ、集中力をあげる。 この状況だからこそ、あえて能力の上昇を命じたのかもしれないが これは完全にミスだったな。 「ブレイブバードで終わらせてやれ!」 クロバットは物凄いスピードでサーナイトに接近する。 しかし、その瞬間突然サーナイトは姿を消したのであった。 ---- 攻撃目標が消滅したことで、動揺を隠せないクロバット。 ブレイブバードは失敗し、地面に叩きつけられてしまった。 「今よ、サーナイト。サイコキネシス!」 何処からとも無く現れたサーナイトは、クロバットにサイコキネシスを放った。 その攻撃に耐えることはできず、クロバットは戦闘不能となった。 「まずは一体よ、早く次のポケモンを出しなさい!」 「なぜだ? なぜ瞑想中に突然姿が消えたんだ?」 「そんなの教えられるわけないじゃない、自分で考えてみなさい」 くそっ……分からない…… 俺はクロバットを戻し、新しくルカリオを繰り出した。 「ルカリオは悪の波動、ロトムは怪しい風だ!」 悪の波動が怪しい風と合わさり、サーナイトに襲い掛かる。 「テレポートよ!」 サーナイトはまたしても姿を消し、攻撃を回避した。 そうか…瞑想はフェイク。おそらく元から覚えていないんだ。 瞑想と命じることで、テレポートを繰り出すように最初から指示されていた。そういうわけか。 最初に会った時もテレポートに苦しめられたっけな。 「種が分かれば怖くない、電撃波と波動弾だ!」 この二つは必中技。どちらも目標が見えてさえいれば回避は不可能だ。 俺の読み通り、二つの技はサーナイトのHPしっかりと削り取った。 ---- サーナイトのHPは既に風前の灯、次の攻撃で100%ダウンするだろう。 しかし、ここではあえてとどめは刺さないことにしようか。 「ドタイトス、いい加減に攻撃しろ!」 ジャイアンはドタイトスを怒鳴り散らす。 だがドタイトスにその声は届かない。混乱中にはトレーナーの指示が通り難いのだ。 自分の思い通りにならないせいで、怒りが頂点に達しようとしているジャイアン。 今が最大のチャンスか。 「ドタイトスにとどめを刺してやれ、波動弾だ」 『えぇーい、地震だ! 地震で何もかもぶっ飛ばしてやれ!』 怒りが頂点に達したジャイアン。その気迫は凄まじく。 混乱していたドタイトスは一瞬にして治ったのだ。 そして、指示通り地震を繰り出す 揺れが凄まじく、直立することすら困難であった。 やがて、地震は収まり、フィールドに沈黙が訪れる。 その時立っていたのは二体のポケモン。 ルカリオとロトムだけだった。 ナナシ ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv43、 ラグラージLv46、?????Lv??、?????Lv?? ジャイアン ドタイトスLv46 残りの手持ち不明 静香 サーナイトLv43、エンペルトLv48 残りの手持ち不明 ----