Nox Occulta

『神秘学概論』要約――本文 (2)

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 宇宙の進化と人間……141
  その1……141
 《人類の進化と宇宙の進化、そしてアカシャ年代記》
 人間の諸本性は、宇宙全体とも関わり合っている。そして人間本性の進化もまた、宇宙の進化と関連している。霊学 *1 は、この関連を霊的な認識によって過去に遡り、探求する。
 自我が体の三分肢と結びつくまで、三つの体からなる本性は自我無しに進化してきた。霊学は、地球という遊星の生成過程を遡ることでこの時代を考察する。物質存在としての地球は、或る霊的な宇宙存在から進化してきた。それ故、素材として濃縮する以前の時点に遡って考察をするには、霊学の方法を用いる他ない。
 素材的なものは、死と共に崩壊する。しかし、それをその形態として生じさせた霊的な力は消失しない。そして、その形態の正確な模造を霊的な次元に残している。宇宙の一切の過去の経過は、このようにして痕跡として残されており、人はそれを「アカシャ年代記」と呼んでいる。


  その2……150
 《遊星の進化と、記述の言葉》
 霊学的に探求すれば、我々の地球が既に三度の遊星状態を通過してきたということを看取できる。そして遊星状態と遊星状態とのあいだには、霊化された中間状態を認めることが出来る。
 地球は、まず第一に地球そのものがそれ以前の遊星状態の再物体化として現れ、次に地球上で自我が肉体・生命体・アストラル体の中に入って人類が進化する、という経過を経た。それまでの人類は自我を有してはいなかったのである。そして、人類と遊星は、このような仕方を繰り返すことで進化してきた。霊学は、最初の遊星物体化の時期を土星紀、第二のものを太陽紀、第三のそれを月紀と呼ぶ。そして第四の遊星物体化の時期が地球紀である。
 注意すべきことは、これら遊星物体化の経過を記述する際に現在の地球の諸事情に由来する表現しか用いることができないということである。とは言え、かつての状態に於ける事象を描写する際に用いる言葉は、それらの事象から発して現在のものとなった事象を描写する際に用いる言葉でもあるのだから、決して間違いというわけではない。


  その3……156
 《人類の諸本性の進化》
 土星紀には、人類は肉体しか有していなかった。土星が霊化し、太陽として再物体化してのち、肉体は土星紀に於いて成熟していた段階まで発展し、エーテル体と結びついた。月紀にも同様にことが生じ、アストラル体と結びついた。そして地球紀に至り自我を受容するようになったのである。それ故、肉体は現在第四の進化段階にあり、エーテル体は第三の、アストラル体は第二の、そして自我は漸く第一の進化段階にあることになる。


  その4 土星紀……160
 《土星紀に於ける人類と、土星の進化に伴う諸霊、土星紀の終わり》
 土星紀には、現在的な意味での鉱物や植物、動物は存在していなかった。そして肉体のみを備えた人間のみが存在していた。しかし、それは物体化した存在としてであって、他に物質形体を持たぬ存在たちも土星紀には現存していた。ここでの肉体とは、物質法則に支配されているものを言い、現在の鉱物・物質的な素材を備えたものを言っているのではない。そして、ここでの物質法則は、専ら熱の作用として表現される。熱は、ここでは「暖かく感じる」とか「冷たく感じる」といったように感覚に現れる限りでの熱である。感覚的には、土星紀中期には専ら熱のみが存在していた。
 土星紀には肉体の他に霊的な本性たちが住まっていたが、それらは土星の大気圏をなしていた。それら本性の内で非常に高次のもの、「叡智霊」(キリスト教霊学では「キュリオテテス」、即ち「主なる存在たち」)と呼ばれる存在たちが自らの部分を土星の物質的なものの中に沈めると、土星はそうした周囲の存在者の生命を映し出すようになった。そして土星が進化をすると、自分自身の存在の中から「意志」を流出できるようになる。この意志を受けて浄福を感じていた存在たちが「意志霊」(「座(トローネ)」)である。意志と生命との共同作用によって土星の進化が進むと、「運動霊」(「デュメナイス」或いは「力」)たちが活動を開始した。この霊たちは肉体と生命体を以ておらず、アストラル体を有していた。土星によって反射された生命はこの運動霊たちのアストラル体の諸特性を身に付けるようになり、その生命があたかも知覚行為や感情その他の魂の諸力を発しているかの如くに現れるようになった。「形態霊」(「エクスシアイ」、或いは「能」)のアストラル体が次いで反応を受け、感情の表現を伝えているかの如くに生命が振る舞うようになった。時を同じくして、現在の人間の自我のような働きを可能にしていた別の存在たち、即ち「人格霊」(「アルヒァイ」、或いは「原初」)たちの影響から、土星が人格・自我を反射するようになる。この人格霊たちは、自我を有しているという意味で、この時期に於ける人間であった。しかし彼らは肉体及びエーテル体を有してはおらず、現在の我々とは異なる人間であった。このあと、土星の進化の過程が進むと、それまで外〔大気圏〕の霊の活動を反射していたのとは対照的に、一種の内面が生じるようになる。こうなると、「火の霊」(「大天使」)や「愛の霊」(「セラフィーム」)が活動するようになる。そしてやがて、「薄明の子ら」(「天使(アンゲロイ)」)、「調和霊」(「ケルビーム」)が土星に影響するようになる。
 こうした諸霊の活動は、土星に存在する人間幻像(ファントム)(これは人間の萌芽である)に影響を与える。そして人間幻像が意志霊を通して特定の形姿を表すようになると霊的存在たちは次第に引退していき、土星紀は進化をやめる。このとき、土星は消滅し、宇宙は一種の休息期に入る。しかし、人間萌芽は解消してしまうのではなく、解散する。これは霊的存在たちが再びこの段階から働きかけるということを意味する。


  その5 太陽紀……180
 《太陽紀の肉体と太陽紀の進化(進化速度による区別)》
 太陽紀の進化の経過によって、人間存在にエーテル体が組み込まれ、人間の意識の状態は無意識、或いは夢のない眠りの状態にほぼ等しくなる。
 宇宙が休息期を終え、かつての土星が新しい宇宙体である太陽となって現れる。太陽紀は、まず土星紀の各状態を繰り返す。叡智霊が肉体にエーテル体を浸透させると肉体は第二の完全性の段階へと引き揚げられる。こののち、太陽紀は休息期間に入り、そのあいだに生命を得た人間の肉体は分離を始め、二つに分かれる。休息期間が終わると運動霊たちが活動を始める。すると、土星に於いては熱であったものが凝縮を始め、現在のガスに比せられる状態になる。次いで、形態霊、人格霊、愛の霊などが作用する。
 ここで注意しなければならないのは、全てのものが一様に進化するのではないということである。土星紀に形成された人間の肉体の全てが太陽紀に叡智霊によって固有の生命体を得たわけではない。それ故、太陽紀になって叡智霊が流入すると、肉体は二つのタイプに別れる。一つは叡智霊の流入を受け容れることができたものであり(これらは空気にまで凝縮する)、もう一つはそのまま進化をせずにいるものである。そして、人格霊にも進化したものと進化せずに留まっていたものという区別が生じ、進化した人格霊は進化した肉体と関連する一方で、進化しなかった人格霊は進化せずに留まっている肉体と関連する。進化しなかった人格霊は、太陽体から離れて別の天体をなし、新しい土星となる。そして太陽の第二領界〔即ち進化せずに留まっている肉体〕に向かって人格を付与しようとするのである。これが太陽紀中期の進化である。このあと、様々な霊たちが作用を行っては休息期間に入るということを繰り返す。そして太陽進化は大休息期に入る。


  その6 月紀……192
 《月紀に於ける肉体、月の分裂、影響する霊的存在たち、月と太陽の合体、月紀の諸周期》
 それまで太陽であった存在が「宇宙の眠り」から覚めると、月紀が始まる。月紀に於いては、太陽と新しい土星の二つが融合して、新しい遊星が作られる。即ち、月である。人間のエーテル体は休息期に進化を遂げており、肉体はその進化に追いついていない。そのため、人間の肉体はエーテル体無しに現れる。
 人間の肉体が進化したエーテル体に適応できるようになるため、まず土星紀に於ける諸事象が繰り返される。ただし、このときの肉体は熱形体に加えてガス体としても振る舞う。そして土星再現期の最終段階に、人間存在は太陽紀に於いてのように生命をになうようになる。ここに至って運動霊が自身のアストラル体を人間存在の中に流入させることが出来るようになる。このアストラル成分によって人間の肉体は濃縮度を高め、「水」・「水体」と呼ぶことの出来る存在形態になる。
 ここでまたしても、全ての存在が一様に進化をしているわけではないので、人間界の他に二つの領界が生じる。土星紀の段階に留まっている領界と、太陽紀に留まっている領界である。やがて、月は二つに分裂し、(i) 人間界及びその二つの領界と、幾許かの高次の本性たちを含む宇宙体と、(ii) それ以外の高次の存在たちだけを含む宇宙体とに分かれる。この前者が、我々人類の居住地となる「太古の月」であり、後者は精妙化を続けて再生した太陽のようになる。太古の月〔或いは月体、または単に、月〕に結びついた形態霊は、人間の肉体に働きかけ、水のような状態であったものをねばねばとした状態にする。
 この太古の月に於いて、やがて太陽の影響から脱しようとする動きが起こる。これは月の存在に与えられた意志の要素(トローネの遺産)によるものである。その結果、月体は霊的にも素材的にも (i) 太陽の生命と密接な結びつきを持つ生命活動と、(ii) 太陽の生命とは無関係に独自の道を進む生命活動という二種類の活動を営むようになった。太陽が影響しているとき、月に住まう存在たちの意識状態は太陽に完全に左右され、独立性を保てない「より暗い意識状態」となり、それ以外のときには自律的な「より明るい意識状態」を保てるようになった。月の生命はこの二つの意識状態を交互に体験した。この段階に於ける彼らの意識に於ける形象は、我々にとっての夢に於ける形象に似ている。暗い意識状態は夢のない眠りに似ており、明るい意識状態は夢を見ている眠りの状態に似ていた。それ故、彼らの意識に於ける形象は(外的事象の模造ではなく)一種の象徴像であった。やがて、月は太陽の周りを公転し始める。これは、霊的存在たちの力による。そして月の存在たちは、太陽に面している箇所では太陽の影響を受け・その壮麗な姿を感じ取り、その裏側では独自の生活をして・自分のアストラル体が働くままに任せ、醜悪な外的形姿をとるようになった。
 月紀の人間に働きかけた諸霊について触れておけば、おおよそ次のようになろう。人格霊は人間のアストラル体を独立させ、人格の特徴を植え付けた。火の霊がエーテル体に働きかけ、一種の記憶力がエーテル体に組み込まれた。生命の子らは肉体に働きかけ、アストラル体の相貌の模造になるよう促す。等々。
 人間がさらなる進化を遂げると、「堕ちた月の本性たち」は太陽に晒される時期にも意識を保てるようになる。次第に太陽の時期が長くなり、やがて太陽に従属するようになっていく。そして、再び太陽と月が一つの宇宙体となり、人間の肉体はエーテル化する。肉体はエーテル形式を取ることによってエーテル体により親和的になり、太陽と合体した今、太陽霊たちの直接の領域に入り、彼らの影響を強く受けるようになる。その太陽霊たちとは、叡智霊や運動霊たちのことである。叡智霊はエーテル体に叡智を与え、運動霊はアストラル体を活発にする。このとき、叡智霊は人間の肉体(がエーテル化したもの)以外の肉体(がエーテル化したもの)にも影響を与えるので、人間ではない鉱物的植物や植物的動物も、叡智を受け取る。この時期のこの宇宙体を、それ故「叡智の宇宙」と呼ぶ。
 総じて、月紀の進化は、七つの周期に分けられる。まず始めに土星紀と太陽紀の進化を繰り返す周期(準備周期)が一つづつあり、次に月と太陽とに分かれる中間の周期がある。この中間の周期が次の三つに分けられる。一つ目が、生命の子らが働きかける前の時期であり、二つ目は彼らが働きかける時期。そして三つ目が、そうして生じた存在たちが世界に適応するのに要する時期である。そして最後に衰退周期と呼ばれる時期がある。これが二つに分けられる *2。月紀の進化全体を一大周期、または遊星紀と呼び、それを七つに区分したときの各時期を小周期と呼ぶことが出来る。この小周期を更に七区分したものを「さらに小さな」周期と呼ぶことも出来る。


  その7 地球紀……225
 《地球紀の始まりと濃縮、濃縮中の人間、各遊星の出現》
 地球紀は、土星紀・太陽紀・月紀の三つの繰り返しをその前段階とする。これらの直後の地球は全て魂と霊からなっており、そのごの物質的な地球に於ける被造物となる全ての存在を萌芽として含んでいる。
 この宇宙体に於いて「濃縮」が起こる。この濃縮によって地球に火の形態が現れる。これは熱を生み、地球の大気圏に存在していた人間に影響を与えた。人間の中に生命が点火され、アストラル体の中にのちに感覚魂となるものの萌芽が生じたのである。従って、この時点での人間は、感覚魂とアストラル体、生命体、そして火によって構成される肉体からなっていた。
 この濃縮の過程は進み、気体または空気を生じるようになる。人間がその空気の成分を自身に組み込むと、アストラル体の一部が独立し、のちに現れる悟性魂の萌芽となる。その一方で、火と空気からなる地球の一部が独立し、現在の太陽のもととなる宇宙体を形成する。
 そしてさらに濃縮は続き、水の成分が地球体に組み込まれるようになる。人間がこの水の要素を自身に組み込むと、意識魂の萌芽を持つようになる。地球から分離した太陽には高次の霊的存在たちが住まい、地球の人間存在に影響を与える。それは即ち、昼と夜の分化である。昼の時間には、地球は自身の成分で人間の魂を覆い、人間を肉体に定着させるが、夜の時間には人間の魂は地球から離れ、肉体と地球は睡眠状態に入る。
 次の濃縮過程によって、地球に地と呼ばれる固体の部分が付け加わる。そして人間も地上生活に必要な体に、地の要素を組み込む。このことによって、月が地球を去ることになる。そして両性の分離も始まった。
 以上の地球形成期のあいだに、人間はそれまでの土星紀・太陽紀・月紀を通じて獲得してきた諸能力によって進化していた。
 太陽が地球から分離した頃、もはや地上には生存場所を見いだせなくなってしまった魂があった。彼らは宇宙霊に導かれて木星へと移った。同様に、そののちの凝縮化に耐えられなくなった魂たちは火星に移り、また地球に空気成分が組み込まれた頃、土星が用意された。

 《ルツィフェルと、諸周期》
 月が分離する頃の、特殊な霊たちに注目しよう。その霊たちは、自分の中に月紀の性質を余りに保ち続けていたので、太陽が地球から分離するに際してもそれに参加することが出来ず、また地球紀の月から地球に向けての働きかけにも参加できなかった。彼らの中には、月紀に於いて太陽に背いたときの衝動が生きていたのである。これらの霊をルツィフェル的な霊と呼ぶことが出来る。彼らは地球紀に於いていびつな仕方で進化をし、やがて人間存在たちを「誘惑」するようになった。彼らの作用によって、第一に人間たちはアストラル体で意識像を制御し、支配する能力を与えられ、自分の認識行為の主体となった。しかしそれは、同時に宇宙の姿だけを映し出すという意識の特徴が失われるということにもなった。そして第二に、その主体的な認識の起点がアストラル体であったため、自我はそのアストラル体に依存するようになり、人間存在の低次の要素の影響を受けるようになってしまった。彼らルツィフェル的な霊たちは人間に自由な活動を可能にさせたが、同時に誤謬と悪の可能性をも与えたのである。そして、それ以上に重要な結果として、人間に「死」を生じさせたということが挙げられる。以後の人間はアストラル要素によって体験でき、また肉体を破壊する作用としての地球の働きを、強く印象として受け取ることになってしまったのである。
 ルツィフェルたちは、地球に於いて、低次の段階に留まっていた人間たちにも作用した。その人間たちの生命体は余りにも保護されずにいたので、ルツィフェルの作用を受けて、自分の内部に存する自我の火花を勝手に拡大してしまい、周囲に強力な、そして有害な火の作用を生み出した。これは地球にとって一種の破局であった。
 ルツィフェルの影響から部分的に免れていたごく少数の人々は、その破滅から逃れて、現在は大西洋の海水に覆われている地域へと移住した。霊学はこの地域を「アトランティス」と呼び、またその時期を「アトランティス期」と呼ぶ。さらに、霊学の文献はそれ以前の時期を、地球紀の物質上の進化の最初期から始めて、ヒュペルボレイオス期、レムリア期と呼んでいる。
 アトランティス期(初期)当時、秘儀参入者たちはルツィフェルに影響されることが少なかったため生命体を通して形態霊の領域と完全に結ばれることが出来た。そして、自分たちがある偉大な存在によって導かれていることを知る。その存在は太陽と地球の分離を指導したものであり、太陽に属するものである。そしてこの存在によってキリストが将来現れるであろうことを予見した。このキリストに関する啓示をキリスト神託、或いは太陽神託と言う。当時、太陽の他にも天体として土星・火星・木星があり、それらの分離を指導した土星人・火星人・木星人たちがいたから、同様にして別の秘儀参入者たちが彼らから神託を受けた。また、太陽からは、地球と分離したのちにも太陽の進化に追いつけなくなった者たちが金星や水星を生じさせていたから、金星神託と水星神託もまた生じた。ルツィフェルの影響を大きく受けた人たちには、ヴルカン星神託が与えられた。これを生み出した存在たちは最も早い段階で太陽の進化に追いつけなくなったものたちである。
 アトランティス中期、低次の霊的存在たちは秘儀参入者たちを誘惑した。低次の霊的存在たちは人間たちに働きかけて人類の真の幸福に敵対させるようにし向けていたのである。この結果、不幸が増大し、成長力と生殖力が母胎から切り離されて単独で利用されたので、特別な仕方で空中・水中の力が引き出されてアトランティス地域は破壊されていった。空気と水の破局が訪れたのである。アトランティス人たちはその地域を離れ、移住を開始した。現在のヨーロッパ、アジア、アフリカなどへである。
 この頃になると、人間を専ら感覚的・物質的な次元に限定しようとする存在が現れた。のちに、これはアーリマンと呼ばれるようになった(原ペルシァ期。メフィストフェレスもこのアーリマンに数えられる)。人間たちはルツィフェルだけに影響されるのではなくなったのである。この結果として人間たちが堕落すると、太陽神託(キリスト神託)に関する秘密が重要性を帯びるようになる *3
 やがて、キリスト秘儀参入者の中から最も優れた七人がアジアの南方、太古のインドに居住した人々の教師となった。この七人の偉大な師の影響力は絶大なものであった。彼らによって伝授された事柄はインド人の魂の奥底に刻まれ、超感覚的叡智に貫かれた文化が生じるに至る。――但し、例えば転生について正しい考えを持つことが出来たのは彼ら偉大な師に直接会うことの出来た者に限られたし、今日に伝えられる「叡智の書」(ヴェーダ)はこれら偉大な師たちの教えをそのまま伝えてはおらず、その痕跡を残すのみとなっている。これが、アトランティス期の直後に訪れたインド期(第一後アトランティス期)の状況である。
 これ以後、順に原ペルシァ期(第二後アトランティス期)、エジプト・カルディア期(第三後アトランティス期)、ギリシァ=ラテン期(第四後アトランティス期)、第五後アトランティス期、と時代は推移してきた。次にこれらの時代を概観しよう。
 原ペルシァ期の霊的文化の指導者は、ツァラトゥストラ、もしくはゾロアスターと呼ばれた *4。彼は(太陽霊としての)キリストの到来を予見したし、またアーリマンに「アーリマン」の名を与えたもした。
 エジプト・カルディア期には、歴史上ヘルメスの名で呼ばれる人物が現れた。彼は、ツァラトゥストラ自身の弟子の一人の生まれ変わりである。
 ギリシァ=ラテン期では、人々は感覚世界の中に於いて、完全な形式で霊的なものを表現しようとした。ギリシア芸術がその結果である。また、この頃になると、偉大なインドの師・ツァラトゥストラの弟子たち・ヘルメスの信奉者たちがそれぞれの弟子を育成しており、それぞれに秘儀の地を設定して「古代の秘儀」の保存と復興を計った。
 第五後アトランティス期とは、西暦四、五、六世紀に準備がなされ、十五世紀に開始され、今日も続いている文化期である。そして第六後アトランティス期がまもなく到来しようとしている。これは物質文化と霊界での営みを結びつける性格を持つものである。そのためには霊的な直観を体験することが必要となるだろう。


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注釈

*1 前後の文脈からも明らかなように、ここでは霊学が「神秘学」という超感覚的な認識と同じ意味で用いられている。――原注。

*2 シュタイナーの記述は、この二つの衰退期について曖昧なものになっていると要約者には思われる。ここではこの衰退期を、叡智霊が働きかける時期と運動霊が働きかける時期の二つに分けられるものとして、理解しておくことにする。――要約者注。

*3 それはアーリマンによる堕落に対抗して、なおも超感覚的な対象を認識することを可能にしたからであろう。――要約者注。

*4 但し、我々が歴史上この名で呼んでいるのはこの人物よりも遙かに後代の人物である、とシュタイナーは注意を喚起している。――要約者注。