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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第03話

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だれでも歓迎! 編集
風華学園高等部2-A教室。
朝の教室はどこの学校でも騒がしいものと相場が決まっている。もちろん、ここ風華学園でもそれは変わらずだ。

級友たちのざわめきを聞き流しながら、俺こと、楯祐一はぼーっと窓の外を眺めていた。
"媛星"の一件から約半年…無事に進級も果たし、俺は平和な青春を謳歌していた。
……いや「平和」ってのはいろいろと誇張がすぎるな、うん。
つい最近現れ始めた"エミュレイター"とやらを退治するため、再結成された対オーファン部隊改め、対エミュレイター部隊に駆り出されたり。

というか、それ以外にもいろいろ波乱を含んでいるわけで…。

「祐一っ。なーにぼーっとしてんの?」
隣の席に座っていた朱色の髪の少女が俺に声をかけた。
「ん、鴇羽か。ちょっと考えごとをな」
この娘がその波乱の半分を担う、鴇羽舞衣である。
「ふぅん…あっ、そうだ、今日うちのクラスに転校生が来るらしいわよ」
「転校生?」
「そ。ちらっと見かけた子の話じゃ、可愛い女の子だって」
なるほど、どおりでいつもの朝より教室が騒かったわけだ。
「女の子、ねぇ…」
「あー、今鼻の下伸ばした」
「なっ、そんなわけないだろ。冤罪だ、冤罪!…あ、おはよう玖我」
話題を変えようと、ちょうど席に着いた玖我なつきに挨拶した。
「む…話逸らした…」
「ああ……おはよう、奴隷クン」
最近「祐一」がデフォルトになった玖我が「奴隷クン」と呼ぶ時は、大抵の場合機嫌が悪い。すこぶる悪い。
触らぬ神に何とやら、ここはひとつ触れないでおこう。
「なつき、何かあったの?」
ちょ、鴇羽さん、そこで触れますか!?
「…ちょっとな」
(あれ、怒らない…)
素直に答えた玖我に俺は少し驚いた。この二人、油と水のような性格だけど、芯ではわかり合っているのかもしれない。
「…紗江子さんとケンカでもした?」
「いや、母さんとは上手くやっている」
「じゃあどうして…」
鴇羽がさらに追求しようとしたとき、ホームルーム開始を告げるチャイムが鳴った。


案の定、担任の斉藤朋子先生が見慣れない少女を引き連れて教室にやって来た。
白い帽子を抱え、薄紫の髪を飾るのは空色のリボン──ついでに可愛らしい微笑みも完備で、第一印象は「清純そうなお嬢さん」と言ったところか。
級友たち…特に男子の面々が騒がしい。先生がそれを咳払いで征して転校生を促す。
「志宝エリスです、どうぞよろしくお願いします」
黒板の前で一礼をする転校生、志宝エリス。
(ん?あの子どっかで……)
俺は彼女の声をどこかで聞いたことがあるような気がしていた。
「志宝さんは一年休学していたそうで皆さんよりも年上ですが、仲良くしてあげて下さいね」
(休学、ねぇ)
ふと、玖我の方に視線を向けると一瞬目を見開いた後、気まずそうに目を逸らすのが見えた。
「窓側が空いてるから志宝さんの席はそこね」
「はい」
てくてくと、俺から見て鴇羽を挟んだ向こう側の席に着く。鴇羽が小声で挨拶をする。
「鴇羽舞衣です、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
年下相手に敬語とは、ずいぶんと礼儀正しい人のようだ。


 -+--+--+--+-


昼休み。
学生にとって、昼休みとはまさにサハラ砂漠にぽつんと存在するオアシスである。
とまあ、それは冗談としても昼飯時は戦争だ。
食堂で人気メニューを手に入れるため我先にと群がる者たちがいれば、テラスのいい席を確保しようと血眼になる者たちもいる。

で、俺はと言うと…、
「たまには一人になりたい時もあるよなー」
予め調達しといた菓子パンなどを手に校庭をぶらぶらと歩いていた。

鴇羽は今ではすっかり元気になった弟の巧海、こっちは高校生になっても相変わらずの美袋ミコト、未だに女子の服装になれないらしい尾久崎晶と昼飯を食べているだろう。
玖我の方もおそらく妹たちと一緒だ。

適当な芝生を見つけ、腰を下ろす。
ビニール袋にはあんパン、カレーパン、メロンパンにチョココロネ。
一番人気の焼きそばパンもゲットした。
「さて、食うか」
昼休みの時間は無限じゃないから、あんまりゆっくりとしてられない。
黙々とパンを口に運ぶ。


昼飯を一通り食べ終わり、緑茶を飲んでいると視線の端の光景になにやら違和感を感じた。
「ん…」
志宝エリスが赤毛の中等部生と楽しそうに昼食をとっていた。
赤毛の子は前に見かけたことがある。確か巧海と同じクラスの子だ。
「あのコたちが気になるの?」
「いや、そういうんじゃなくて…って」
振り向くと、中等部の制服を着た男子生徒が木の上でひらひらと手のひらを振っていた。
「こんにちは♪センパイ」
──俺はコイツに見え覚えがある。
「お前…炎凪?」
コイツの名前は炎凪、"媛星"のしもべ…のはずなんだけど何だか違和感がある。
「いや、色違いだな。誰だ?」
そう、色違いなんだ。
髪は白じゃないし、瞳だって血のような赤じゃない。
そして、それ以上に俺は何故か理由もなく炎凪とは違うと感じていた。
「色違いって…まあいいや。そうだなぁ…通りすがりの魔法使いB、とでも名乗っとこうかな」
…前言撤回、コイツめっちゃ怪しい。というかAはどうしたAは。
「…で、その通りすがりのまほーつかいさんが俺に何の用ですか」
「いや、センパイにこれと言った用はないよ」
「ないのかよっ!」
「あははは、ツッコミのキレがいいね」
この自称"魔法使い"、ある意味凪よりタチが悪いかも知れない。
「ところで…」
自称"魔法使い"が急に神妙な面持ちになった。俺は思わず身構える。
「授業もうすぐ始まりそうだよ?」
「え?」
確かに、周りを見渡せば未だ校庭に残っているのは俺独りだけ。つか、もうすぐチャイムが鳴る時間だし!
「そういうお前はどうなんだ…、アレ?」
俺が再度振り向いた時には既に、自称"魔法使い"の姿はそこからかき消えていた。
現れる時も唐突なら、去る時も唐突と来たか。
あながち魔法使いというのも間違いじゃないのかも知れない。
何だかいろいろ釈然としないが、今は授業に間に合うのが先決だ。

──ちなみに、やっぱり遅刻して先生に叱られたのは言うまでもない。


 -+--+--+--+-


7月とは言え、時刻が六時を回ればもう日も暮れ始める時間帯だ。
剣道部の練習を終え男子寮に帰る道すがら、ばったり鴇羽と出会した。
「祐一、お疲れさま。部活の帰り…だよね」
「ああ、そう言う鴇羽はバイトの帰りか?」
「うん」
こう見えて、鴇羽舞衣はかなりの苦労人だったりする。心臓の弱い弟を抱え、姉弟ふたり、俺なんかには計り知れない苦難を味わっている事だろう。
「それで、巧海は?」
「先に寮に帰ったよ。行き違いだったな」
「そっか…じゃあ、これ渡しとく。よかったら二人で食べて」
と、言って鴇羽はお重の入ったトートバッグを取り出した。これには夕飯のおかずやらがびっしり詰まっている。
「いつも悪いな」
「い、いいのよ、ついでみたいなもんだし…」
「ありがとう」
「ちょっ…もう」
と、この様に他愛のない雑談を交わしながら寮へと向かう。
ふたりっきりで歩くシチュエーションもなかなか無いので、内心穏やかではなかったりする。
「あれ?あそこに居るの志宝さんじゃない?」
「お、ほんとだ」
庭園の前で佇んでいる志宝エリスを見つけた。
「志宝さん、こんばんは」
「あっ、舞衣さんに楯さん、こんばんは」
近付いてみると、どうやら庭園に咲いている白いバラを眺めていた事がわかる。
「花を眺めてたみたいだけど、バラが好きなの?」
「はい…白いバラは特別なんです」
「特別?」

鴇羽がそう問いかけた時だった。

──突如、世界が紅く染まる。
空には血の色をした不気味な満月──

「紅い月…」
地面に青白い魔法陣が現れ、炎の鬣を持つ奇怪な獣が這い出す。
その獣は獅子と山羊と蛇の頭を持ってる、如何にも神話なんかに出てきそうな怪物だった──
「エミュレイター!」
理事長から"エミュレイター"またの名を"侵魔"と呼ばれる存在が、如何なるモノかという話は聞いていたし、何より今までにも何度か退治してきたが、これ程の威圧感を感じる相手じゃなかった。
正直、オーファンだってこれほどのはそうそう居なかったような気がする。
さらに魔法陣が二つ、這いだしてくるのは同じ怪物。
三体のエミュレイターは鼻息荒く、獲物を値踏みするような目つきで俺たちを睨みつける。
「鴇羽、カグツチは?」
無言で頭を振る鴇羽。
理由あって、鴇羽の"チャイルド"カグツチは喚べない…というか、喚んだとしても戦力にならないだろうが。
「……祐一、志宝さんを連れて逃げて。あたしが囮になる」
鴇羽が自分の"エレメント"である天輪を生成して、俺たちと怪物の間に立ちはだかる。
「待て、それは…」
「……いいえ、逃げません」
「えっ?」
「志宝さん、今なんて?」
「私、逃げません」
志宝エリスは微笑んでそう言うと、右手を前にかざす。
「"ウィザーズワンド"──」
彼女の言葉と共に虚空から"ソレ"が現れた。
いや、目の前の光景は作り出されたという方がしっくりとする。
まるで"HiME"の高次物質化能力のような現象だ。
志宝エリスは杖のような形状の"ソレ"を掴むと、バトンの要領で器用に操る。
「だって、エミュレイターと戦う事が私たちウィザードの役目なんですから」
「君が、ウィザード…?」
呟いた俺に志宝エリスは頷き返すと、エミュレイターに向き直る。
「鴇羽さん、少しの間エミュレイターの攻撃を凌いでもらえませんか?」
「え、ええ。わかった、やってみる」
鴇羽が四肢の天輪を回転させ突撃する。
エミュレイターは迎撃とばかりに一斉に炎を吐き出した。紅蓮の奔流が一瞬にして鴇羽を包む。
「…っ!このぉっ!!」
が、しかし、天輪の発する炎が盾となってエミュレイターたちの吐き出した炎を塞き止めた。
赤黒い炎と、朱鷺色の炎、二種類の火炎が混じりあい、せめぎあう。
その熱波は、離れた場所にいる俺が肌が焼けるくらいに感じられるほどだ。

そんな中、志宝エリスはの指を優雅に泳がすと、虚空に光の線が描かれていく。
俺には計り知れないがそれは一種の文字列のようにも見えた。

一方、単体の出力で鴇羽の方が勝っているとしても所詮は三対一、徐々に鴇羽は圧され始め…遂に均衡は破られた。
「しまっ…」
「グオォォォッ!!」
先頭の怪物が巨大な腕を振りあげ、鴇羽に目掛けて叩きつけた。
辛うじて天輪で受けた鴇羽だったが衝撃を殺し切れず弾き飛ばされる。
「鴇羽ッ!!」
俺は咄嗟に、というかほとんど無意識に飛び出した。鴇羽と地面の間に身体をねじ込み、何とか庇う事に成功。
「っ…たた…」
背中を盛大に打ってしまったが、どうやら鴇羽の方は無事なようだ。
「あ、ありがと…大丈夫?」
「ああ、何とか」
その時、志宝エリスの紡いだ"力"が完成した。

「──"リブレイド"っっ!!」

瞬間、眩い閃光が紅の世界に炸裂した──

激しい光の奔流がエミュレイターの群れを飲み込む。
膨れ上がる純白の閃光は臨界点に達するや否や、耳を劈く大音響と共に大爆発を引き起こした。

視界を覆う爆光と爆風──
それに襲われたエミュレイターは塵芥も残さずに消滅した。

その余波で大地は抉れ、校舎のガラスは次々と粉々に砕け散った。
「すごっ…」
鴇羽が驚愕の声を漏らす。
と、同時に世界は元の色を取り戻していた。
「ふう…」
この現象を引き起こした張本人が俺たちの方へ向いた。
「二人とも、お怪我はありませんか?」
彼女は初めて教室で出会った時と同じく、可愛らしい微笑みを湛えていた。


 -+--+--+--+-


パチン──
仄暗い部屋に"遠見のコンパクト"が小気味いい音を響かせる。
この部屋の主、ベール=ゼファーが呟いた。

「…志宝エリス、予想以上にやるじゃない」

ベルは上機嫌だった。
わざわざエリスと戦わせるため、いつかと同じキマイラを用意させ、思惑通りに力を示してくれたのだから機嫌がよくもなる。

「楽しそうですね、ベル」
「あら、リオン。あんたも来たの?」

音もなく現れたのは"秘密侯爵"リオン=グンタ。
あらゆる秘密を記した書物を所持し、この世のすべての秘密を把握しているという魔王である。

「ええ…私も"HiME"には因縁がありますから」
「あぁ…あの後、緋室灯たちに邪魔されて逃げ帰ったんだっけ?"秘密侯爵"の名折れよね」

ベルの言いようにリオンは不満げだ。

「…あの場の因果は狂いに狂っていました。そんな状態では、例えアカーシャの書ですら意味をなさないでしょう」

リオンが普段より強めの語調で言い返す。ベルはそんな彼女の様子が面白いらしい。

「それ、ただの負け惜しみじゃない」
「む…ですから、あれは…」

何時になく、大人気ないリオン。よっぽど自分の書の内容が外れた事を気にしているのだろう。

「まあいいわ。で、あんたも今回のゲームに参加するってわけ?」
「……ええ、少し気になる事があるのです」

ベルは「ふーん、気になる事ねぇ」と言いながらも銀色の髪をいじる。
どうやらあまり興味が無いようだ。

「ま、あたしの邪魔さえしなきゃ別にいいわ。どうせまだ下準備の段階だし」
「わかっています。私も貴女の邪魔をするつもりはありませんよ」

リオンはそう言い残して姿を消す。
独り残されたベルは、新しい玩具について語るようにひとり言ちた。

「リオンがどんな策を巡らすのか知らないけど…、そろそろあの仕掛けを動かしてみようかな」

開いた"遠見のコンパクト"には女性の後ろ姿が写っている。

「…ふふっ、エリスちゃんはいったいどんなダンスを見せてくれるのかしら──」

──ベール=ゼファーの声が、紅い世界に妖しく響いた。


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