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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第04話

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匿名ユーザー

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──正午──

エリスは校舎の最上階、屋上へと出る扉の前に立っていた。
昼時の所為か、階下からは生徒の喧騒が漏れ聞こえる。

彼女がこんなところを訪れたのにはちゃんと理由がある。

エリスは昨夜キマイラと戦った後、二人と共に理事長宅に向かった。
その場で説明してもよかったが、二人以外の"HiME"にも逐一説明するのは非効率だし、何より"相棒"に相談をしないのは失礼だとエリスは考えたからだった。
そこで現在学園にいる"HiME"の関係者一同を集め、事の次第を説明した。

ちなみに、那岐を見た祐一となつきの反応が見事にシンクロしていたことだとか、エリスが持ち込んだマドレーヌでミコトを餌付け…もとい打ち解けたとか、いろいろと一悶着あったがここは割愛しておこう。

ともかく、顔見せも無事…とは言い難いが終わった。
あとは本格的に調査を始めるだけである。
エリスがここにやって来たのは、その調査の打ち合わせをするためだった。

ドアノブに手をかけ、エリスは扉を開けようと押し込んだ。
「…あれ?開かない?」
どうやら、この扉は立て付けが悪いらしい。
何度も扉を押してもギシギシと鈍い金属音を響かせるだけだ。
「うんしょっ!うんしょっ!」
エリスはムキになって押し込むが、やはり扉はウンともスンとも言わない。
力が足りないのか、体重をかけても扉はまったく開く気配を見せなかった。
「……どうしよう。あ、そうだ」
エリスは瞼を伏せ魔力を軽く練ると、一言「"ノック"」と呟いた。

エリスの紡いだ魔法によって扉が独りでに開く。

空は快晴、絵の具を垂らしたような青空が広がっていた。

「火渡くん?」
「おっ、エリスちゃんこんにちはー、今日もカワイイね」
那岐は屋上の手すりに腰掛けて、手をひらひらと振っていた。
相変わらず、片手には本を持っている。
「えっ!?そ、そんなこと…」
「あはは、エリスちゃんは純情だね」
「もう、からかって」
「ゴメンゴメン」
那岐はそう言うと、分厚いハードカバー本をぽんと閉じる。
本の表紙には「トロイ」と記されていた。
「……火渡くん、本が好きなの?」
「うん、まあね。書物は人間が生み出した素晴らしい文化だよ」
「?? そ、そうね…あ、お昼食べた?よかったらどうぞ」
月衣から取り出した弁当箱には、色とりどりのおかずやおむすびが詰まっていた。

「うわ、美味しそ~。ぜひともいただきたいです、はい」


空っぽの弁当箱を前にまったりとしている那岐にエリスが問いかけた。

「火渡くん、ちょっと不思議に思ってることがあるんだけど…」
「何?僕に答えられることなら」
「学園の周辺に現れているエミュレイターって、シェイプドライフばかりみたいでしょう?」
「らしいね」
「それってちょっと不自然なんじゃないかなって思う。いくら世界結界が弱ってても、やっぱりアモルファスの方がプラーナの消費や効率がいいだろうし…」
エリスの考察を聞き那岐は少し目を見張った。
そして、月衣よりノートパソコンらしきものを取り出して操作し始めた。
「それって…ピグマリオン?」
「そうだよ。今、真白ちゃんから貰っといた交戦記録を検証させてる……っと、出た出た」

モニターにはびっしりと詳細なデータが映し出された。

「確かに……これは異常かも知れない」

──交戦回数述べ342回。
そのすべてが、タイプ:シェイプドライフと思われるクリーチャーで埋め尽くされていた。

「地球産のもチラホラいるけど…う~ん……」
那岐はそう小さく唸って何やら考えている。
「今まではおとり…?だとすると…」
「火渡くん?」
そして、不敵な笑みをエリスに返した。
「…エリスちゃん、案外いいところに目を付けたかも知れないよ」




放課後、エリスは那岐と共に校内を探し回っていた。
目的はただ一つ、"タイプ:アモルファスに憑かれた人物がいないか探す"こと。
雲を掴むような話だが、エミュレイターの目的がわからない今、エリスたちにできることと言えばこれくらいだった。

「びっくりしたなぁ。ここの生徒さんてみんな"HiME"のことに驚かないんだね」

そう、全ての生徒は"HiME"のことを知っている。

というか、"HiME"同士の戦いが風物詩になってたりする。
ついさっきも舞衣となつきが、激しい火花を散らしてスケールのデカい痴話喧嘩を繰り広げていたし。

魔法を秘匿し、常識を護る者であるところのエリスには到底信じられない話だが、そういうことになっているのである。

「ああ、それはね、この風華学園…てか、"封架の地"の特殊性が関係してくるんだよ」
「特殊性?」
「そ。もともとここは古代神"媛星"を封じる為にできた土地でね。封じる際に、裁定者がこの場所に『"HiME"と"オーファン"は実在するという常識』を規定したんだよ」
「…えと、つまり世界結界自体に最初から組み込まれてるってこと?」
「そーそー。さっすがエリスちゃん、物わかりが早いね~。ちなみに世界各地にこういう場所があったりするらしいよ」

つまり、この"封架の地"にいる限りイノセントだろうが何だろうが、"HiME"関係の事柄では精神崩壊しない。
逆説的にウィザードとエミュレイターに関してはやはりアウトなのだ。
ちなみにこの法則による補正は範囲外に出ると機能しない。
そのため、ごく一部の例外を除いて記憶が違和感なく修正される。

「でも、どうしてそんなことを?」
「たぶん、いつか目覚める"媛星"との戦いを進めやすくするためじゃないかなぁ」
「そっか…。それにしても火渡くんって、ずいぶん事情に詳しいね」
「ええっ?ま、まあね。あははは…」
「??」

そんなこんなでエミュレイターの痕跡を探し、二人はドーム型の建築物とやってきた。

水晶宮と呼ばれている場所だ。

天井は吹き抜け。
そして、三方は中央等、高等部、中等部のそれぞれの建物と繋がっており、残された一方が外へと繋がっている。
そんな立地ゆえ、下校時間ともなれば待ち合わせや雑談などで大勢の生徒たちで賑わい、情報収集にはもってこいの場所だった。

とそのとき、エリスの視界の端に、黒い長髪の少女が建物の外へと出ていくのが見えた。
青みがかった豪奢なロングドレスは学園の校舎で着るには違和感がありすぎる。
だが、周囲の生徒たちはその異物を気にも留めていなかった。
まるで、"そんなもの最初からいなかった"かのように。

(今のって……)

エリスの思考は、目の前を特徴的な髪型の少女がものすごい勢いで横切ったことでかき消えた。
少女は通り過ぎた…かと思うと踵を返して戻ってくる。
「あれっ?エリスさんと那岐くんだー」
エリスのルームメイト、夢宮ありかだ。
そのありかに那岐が気さくに話しかけた。
「やあ、ありかちゃん。相変わらず元気いっぱいだね~」
「二人とも知り合いなの?」
「はい!那岐くんとは同じクラスなんです」
「あと、舞衣ちゃんの弟くんも一緒かな」
「偶然だね~」
「ですよね~。あっ、偶然と言えば…」

エリスとありかは那岐そっちのけで雑談に花を咲かせていた。

「あれ?ちょっ、ふたりとも……ま、いいか」
女の子はみんなこんなものなのです。

「なんだか楽しそうな話をしているね」
「!!」
そんな三人の後ろから、黒い制服を着た男子生徒が声をかけた。
「あっ、黎人さんこんにちは~」
「こんにちは、ありかさん」
「えっと…」
エリスが居心地悪そうにしていると、男子生徒は整った顔に人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた。
「ああ、ごめん、挨拶してなかったね。僕は三年の神崎黎人です、よろしくね」
「二年に転入した志宝エリスです」
「黎人さんは生徒会長さんなんですよ」
「生徒会長?」
「まあ、そういうことになってるよ。実際は何でも屋みたいなものだけれどね」

そういえば、なにやら周りから黄色い声援が聞こえていた。
なるほど、この見目麗しい生徒会長はやはり女生徒の覚えがいいらしい。

それから小一時間ほど神崎を交えて会話が、好青年風の見た目に違わぬ紳士的な態度だった。

「ん?ああ、そろそろ行かないと。じゃあまたね、ありかさん、エリスさん」

神崎黎人が去った後、いつの間にか姿を消していた那岐が現れ呟いた。

「僕…あの人嫌いだな」
「えっ?」
「何でもない。さ、他のところも回ってみよう」
「う、うん」

それ以上、那岐が神崎黎人について言及することはなかった。




窓から射し込む陰り始めた茜色の光が、人気のない廊下を一層もの悲しいものとしている。
半日、エミュレイターの痕跡を探して歩き回ったが、成果は芳しいものではなかった。

「やっぱり、私の考え間違ってたのかな…」
空振り続きで落ち込み気味のエリスがポツリと呟いた。
前を歩く那岐が事も無げに、
「そんなことないと思うけどなぁ」
と言って、校内図に調査済みのばつ印を付けた。
「ここからは手分けして探そう。エリスちゃんは保健の陽子センセーに、おかしな症状を訴えた生徒がいないか聴いてきて。僕はもう少し校内を回ってみるから」
エリスはうつむいて何も答えない。
「どしたの?」
「……こんなことしててほんとにいいのかなぁって思って」
那岐がにやりと笑う。
まるでいたずらを思いついた子供のように。

「そうだねぇ、柊蓮司や緋室灯っていう花形ウィザードの活躍に比べれば、こーいうのは地味な仕事かもね」
「あっ、そ、そういう意味じゃなくて…」
「僕たちはできることをやるだけ、違う?」
「……うん」
「じゃ、保健室の方は任せたから」
那岐はてくてくと遠ざかっていった。




「そういう症状の子は来てないわ」

保健室。
自らも"HiME"である鷺沢陽子が名簿らしき物を見ながら答えた。

「そうですか…」
「ごめんなさいね、力になれなくて」
「いえ…ありがとうございました」
エリスはそう礼を言った後、引き戸に手をかけて保健室を辞した。

エリスが廊下に出たところで、ばったり担任の斉藤朋子に出会った。
気さくで年が近いからか男女ともになかなか人気のある教師だ。
エリスもまだ二日しかたっていないが、クラス担任だけあってそれなりにお世話になっている。
「あっ、志宝さん、ちょうどよかったわ」
「先生?どうしたんですか?」
「ちょっとあなたに話があって探していたの。一緒に来てくれる?」
「あ、はい」



エリスは誘われるまま、屋上へと足を踏み入れた。
すっかり太陽も沈みきり、辺りは夜の闇に包まれている。



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