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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

外伝02第01話

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だれでも歓迎! 編集
事象の地平。全てが存在するが、すべての時間と空間から切り離されたその白き世界には、聖女と魔王がたった2人で共に暮らしている。

「えっと、後は設定をしてっと…」
その箱を前にしてこの世界に住まう『剣の聖女』アナスタシア・ルン・ヴァレリアが一人呟く。
「…あんた、なにやってんのよ」
『魔王候補』ベアトリーチェが呆れたようにアナスタシアに尋ねる。
いつもならば毎日のようにやってきては彼女をからかってくる彼女がここ10日ばかりまるで姿を見せないので見に来て見れば、彼女は箱を前にして何かに没頭していた。
「…あれって、確か、パソコン…だっけ?」
ベアトリーチェはその箱を見たことがあった。準備としてちょっとだけ潜りこんだファー・ジ・アースで。
「よし!これで…成功~♪」
聞こえていないようでアナスタシアは手を打ち鳴らす。
「ふう、流石に向こうの言葉を覚えるところからってのは大変だわ。これでやっと…あら、ベアちゃん、どうしたの?」
ようやくベアトリーチェに気付き、アナスタシアは振り返ってベアトリーチェに聞く。
「いや、だから一体何をしてるのって聞いてんのよ」
「ああこれ?」
ベアトリーチェの質問に、アナスタシアは箱を指さし、嬉しそうに言う。
「ほら、こっちからでも向こうの世界にちょっとだけなら干渉できるのは知ってるでしょ?」
「知ってるけど、ほとんど何もできないわよ?精々簡単な電気信号を送るくらいしか…ああ」
そこまで言ってベアトリーチェは気づく。アナスタシアが何をやろうとしているのか。
「そういうこと♪」
アナスタシアはベアトリーチェにその箱に映った映像を見せる。
「電子ネットワーク…向こうで言うところのインターネットにアクセスできるようにしたの」
「ふん…そんなものにつないで、何が楽しいんだか…」
「あら、結構楽しそうじゃない。仮想空間上とはいえ、電気信号で他の人とコミュニケーションが取れるなんて、すごい世界よねファー・ジ・アースって」
機械マニアである彼女の血が騒ぐのか、アナスタシアはうっとりと言う。
「…ま、あんたがこっちになくなるんならこっちは万々歳なんだけどね」
アナスタシアにあきれながら、ベアトリーチェは肩をすくめる。
だが、それを見逃さずアナスタシアはいつものように返す。
「あ、それは無いわ。ベアちゃんは私の嫁だから」
「誰が嫁よ!?」
そして繰り広げられるいつもの漫才。だが、それがすべての始まりだった。

 *

「たすけて!京介くん!」
山瀬京介が、要ねがいからそんな電話を受け取ったのは、夏休みも終わり、ひぐらしの声が響くようになった、9月のある土曜日のことだった。
要ねがいからのSOSコール。正義の味方として、男として、そして何より恋人として、それを見過ごすわけにはいかない!
「分かった!すぐいくから待ってろ!」
山瀬京介は要ねがいの元へと急いだ。

ぴんぽーん

インターホンに返事は無い。だが、それはいつものこと。
学校には出てくるようになったとはいえ、基本彼女は休日に出かけるようなことは滅多にない。
そして、いのりが家にいないときは、誰であれ居留守を使う。それが要ねがいと言う少女だった。

―時々でいいからさ、お姉ちゃんの様子確認しに行ってあげてくれない?お姉ちゃん、ほっとくと干からびてそうだし。

「お~い、ねがい、入るぞ!」
そんな風に声をかけて任務に行く前のいのりから渡された要家の合鍵を使って、京介は家の中にはいった。

「…ひどいな」
要家に入った京介は一人つぶやく。その、あまりの惨状に。
洗い物が限界まで溜まった流し。そこかしこに放置されたコンビニ弁当とカップめん、そしてお菓子の食べカス、ちらかりっぱなしの部屋。
それはまさに、駄目なひとり暮らしの様相を呈していた。

要いのりが静・ヴァンスタインと共にとある任務についてはや2週間。家事担当を失い、生活能力0のねがい1人で暮らしてきた結果が、これだった。
「やっぱしちょくちょく来るべきだったのか…?」
好きな女の家で、2人きり。それは高校生になったばかりの少年にはあまりにも刺激的な事実だった。
6月の船での惨劇を見たことの恐怖と思春期の照れもあり家を訪ねるのは躊躇していたのだが、流石にここまでダメダメだとは思っていなかったのだ。
「おっと、んな場合じゃなかった!」
気を取り直し、京介はねがいの部屋へと向かった。

「お~い、ねがい、ここにいるのか!?いたら返事をしてくれ!」
ドアをノックして声をかける。ほどなく部屋の鍵を開ける音がして。
「…京介くん!どうしよ!?」
要ねがいが京介の胸に飛び込んできた。夏の間も全く外に出ていないため日に焼けていない肌は純白で、女の子特有の柔らかくていいにおいがする。
本当はもう少し堪能したい気持ちを無理やりねじふせ、京介はねがいを引き離す。
「落ち着いてくれ、ねがい。それで一体何があったんだ?」
「行かなきゃいけないの!でも、知らないひとと会うの、怖い!」
ねがいの説明はさっぱり要領を得ないものだった。

 *

「…オフ会?」
「うん、ラギュ様討伐記念オフ会」
混乱するねがいを落ち着かせ、ねがいから話を聞く。

発端は、社交的になろうと言うことで4月から始めた、ネットゲームらしい。
つい最近β版から正式に課金が始まったそれを、ねがいはずっとプレイしていた。
そう言えば夏休み中は40日間で総プレイ時間600時間を超えていたと、いのりがぼやいていたような気がする。
そんな、業界用語で言うところの廃人であるねがいはとあるギルドに所属している。
ねがいに勝るとも劣らない廃人だけで構成されたギルド『あが~とらむ』
彼らは、ついに偉業を成し遂げた。
今までいくつものパーティーが挑んで、敗れ去り、ありとあらゆる手段を尽くしてもなお勝てず、そのあまりの強さに
様づけまでされるようになった最強最悪のノートリアスをわずか4人で打ち破ったのだ。
だが、それが問題の始まりだった。
「ねえ、せっかくラギュ様を倒したんだし、記念にみんなで1回会わない?オフ会しましょうよ♪」
そう、ギルドマスターが提案し、それに他のメンバーも賛同したのが1週間前。あれよあれよと言う間に詳細がまとまり、メールでお知らせされたのが3日前。
日時は、明日。場所はねがいの住んでいる場所にほど近い、東京、秋葉原。参加費は大人のメンバーが全額負担するからただでいいらしい。

「あが~とらむの人たち、3次元ではどんな人か分からないし、でも1人だけ参加しなかったら気まずいし…」
「それで、俺に電話したってわけか」
ねがいの話を聞いて、京介は考える。
京介はネットゲームのことはほとんど知らない。もちろんその、ギルドの人間というのがどんな人かも知らない。
だが、ねがい並みかそれ以上の時間をゲームに費やしているなんて、普通の人のはずがない。
そんな奴とねがいが京介の知らないところで会う。出来れば、やめておいてほしいところだ。
「う~ん。俺としてはだな…」
そのことをねがいに伝えようとする。
「それでね、京介くんに一緒についてきて欲しいの…」
「なんでそうなるッ!?」
だが、その前に言ったねがいの言葉に京介は驚く。
「うん…実はね、わたしが怖いって言ったら、ギルマスのジニーさんが誰か、信用できる人を連れてくれば良いって…」
「それで、俺か…」
「うん。京介くんが一緒なら、怖くないと思うの」
「でも俺、ネットゲームのことは全然分からないぞ?」
「それはみんなも分かってるし、当日はみんなでたまには外でも見ようって言ってたから、大丈夫…」
そこまで言ったあと、ねがいは捨てられた子熊のような瞳でこちらをじっと見る。
涙でうるんだその瞳に、京介の心拍数が跳ね上がり、顔が赤くなる。
「…まあ、他ならぬねがいの頼みだし、行ってやるよ」
それを誤魔化すように、あえてぶっきらぼうに京介はねがいにそう、伝える。
「本当!?ありがとう!京介くん!」
その言葉にねがいは喜んで京介に抱きつく。
「う、うわ!?」
京介の心拍数が、さらに上がった。

 *

日曜、秋葉原。
「みんな、どんな人なのかな…」
あが~とらむの名前で予約された喫茶店のパーティースペースで、要ねがいは期待と不安が入り混じった表情で呟く。
京介とねがいは遅れては失礼だからと早めに来たせいか、他のメンバーはまだ来ていない。
「…さあな」
ねがいの言葉に京介は緊張した面持ちでぶっきらぼうに返す。
ゲーム上の付き合いとは言え面識のあるねがいに対して、京介にはそのギルメンには全く面識が無い。
(変なおっさんとか来たらどうすんだよ…)
京介には夏休みのねがい並みかそれ以上にゲームに時間を費やしていたと言う連中が普通のやつだとは思えなかった。
(…なんかあったら、ねがいを守らないと。…こ、恋人として)
そんな決意を胸に京介は静かにその時を待つ。そして、その時が訪れる。

からんから~ん

店の入り口の方からドアの開く音と声が聞こえる。その声の感じからすると、女の子らしい。
『すみません。あが~とらむの名前で予約をしたものなのですが』
『ああ、いらっしゃいませ。お連れさんは、すでにご到着ですよ。あちらです』
『まあ。誰でしょう?』
そんな会話の後、こちらに歩いてくる足音が聞こえる。そして、彼女はやってきた。
「…どうしたの?京介くん?」
ねがいが不思議そうに聞き返す。世事に疎い彼女は気づいていなかった。
漆黒のゴスロリ服と、対照的な流れるような銀色の髪。ねがいたちよりわずかに幼く見えるその姿。
「アンゼロットさん!?」
オフ会の現場に現れたファー・ジ・アースの世界の守護者に、京介は思わず突っ込みの声を上げる。
「…人違いでは?私は謎の女指令官にして、あが~とらむのメンバーの1人、『銀毛のアン』ですよ?」
「それ知ってる時点で確定でしょーが!?」
小首をかしげてにこやかに言うアンゼロットに、京介のさらなる突っ込みが飛んだ。

 *

(しかし…まさか4人目がねがいさんで、連れてきたのが京介くんだったとは。幸運ってあるものですね)
(幸運?どういうことですか?)
ねがいに聞こえないように、2人は小声で会話する。
(ええ。それで実は少し厄介なことになっていまして、ちょうど手頃な護衛を探していたところだったのです)
(護衛って…アンゼロットさんにはロンギヌスの人がたくさんいるじゃないっすか)
(わたくしではありません。ギルドマスターの護衛です)
(…ギルドマスター?もしかして今日の集まりを提案した人っすか?)
(ええ。実はわたくしもつい先日知ったのですが、彼女はどうやら異世界の世界の守護者らしいのです)
(異世界の世界の守護者!?超大物じゃないっすか!?)
(ええ。事前の連絡ではこちらで用意したかりそめの肉体を使い、お付きの使徒と共にいらっしゃるらしいのですが、
その肉体では一般人並みの力しか出せないとのこと。来られるのは彼女の影みたいなものですから万が一のことが
あっても大丈夫とおっしゃっておられましたが、それではわたくしのメンツが立ちません。そこで…)
(護衛ってわけですか)
京介の言葉にアンゼロットが深く頷いた。
「あの…アンさん、京介くんとはお知り合いなんですか?」
おずおずと、ねがいが密かに会話を続ける2人に尋ねる。
「いんや…人違いだった。まあ、こんなところに世界の守護者がいるわけねえよ」
それを誤魔化すように京介が言う。
「そうですよ。世界の守護者がまさかネトゲでオフ会なんてねえ…」
それが2人もいると言うのは、絶対に秘密だった。

からんから~ん

『すみません。あが~とらむの名前で予約があると思うんですけど…』
『はい。承っております』
『あ、やっぱりここでいいみたい。見つからなかったらどうしようって、お姉さんあせっちゃったわ』
『だから最初に地図をプリントしとけって言ったのよ。何が地図なんて一回見れば覚えられる、よ。
結局ネカフェで2回調べる羽目になったじゃない』
『いやあ、失敗失敗。見知らぬ街って思った以上にわかりづらいわ。ベアちゃんがいなかったらたどり着けなかったかも』
『だからベアちゃんいうなっていつも言ってるでしょ』
そんな会話と共にこちらに近づいてくる足音。声からすると2人とも女性らしい。
そして、入ってきたのは…
「いやあ遅れちゃってすいません。私があが~とらむのギルマスやらせてもらってる、『ジニー=マックス』です。
ジニーって呼んでください」
青く長い髪となきぼくろが印象的な、白いサマースーツを着た大人の女性と
「私が『くまっこ』よ」
対照的に黒のワンピースを着た、黒髪の小学生くらいの女の子だった。



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