ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

外伝02第02話

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「はじめまして。わたくしが『銀毛のアン』です。これでメンバーが全員そろったことになりますわね」
2人の紹介を聞いて、アンゼロットが微笑んで言う。そして、ねがいと京介の方を意味ありげに見る。
その視線の意味に最初に気づいたのは京介の方だった。
「あ、はじめまして!お…僕は、今日はこいつの付き添いで来た、山瀬京介って言います!」
「あらあら。はじめまして。今日は一日、よろしくね」
頭を下げる京介にジニーがにこやかに握手を求める。
「ってことはこっちのが最後の一人のきょ…」
「きゃ、要ねがいでしゅ!きょ、今日はよろしくお願いしましゅ!」
くまっこの発言を遮るようにねがいがかみかみになりながら叫ぶ。
ハンドルではなく、本名での自己紹介に、2人は顔を見合わせる。だが、すぐに何かに気づいたのか
「…そうね。今日は一日、よろしく」
「うんうん。きょ…ねがいちゃん、照れちゃって可愛いぞー。初々しくてよろしい♪」
2人はそれ以上は追及してこなかった。

「それでは、『ラギュ様討伐記念オフ会』を開始しま~す。今日は一日、みんなよろしくね♪」
ジニーの宣言と共に、オフ会が開始される。まずはお互いの親睦を深めると言うことでこの店でお茶を飲みながら雑談タイムと言う事らしい。
そして、30分後…

「…でも、驚きました。まさかプラ兆とマイ兆と黒ノヴァの3択にあんな秘密が隠されてたなんて」
初対面とは言え、お互いネット上ではほぼ1日中付き合っていた仲である。気心の知れた友人のようにねがいは馴染んでいた。
「ねー。まさか3秒前の5フレーム分の動作で見分け可能なんて、普通気付かないわ。これはベアちゃ…くまっこちゃんのお手柄ね」
「ふん。ちょっと観察すれば分かることじゃない。あいつを倒して名をあげようって馬鹿は多いんだから、見学してれば分析する材料にも困らないし」
「いえいえ。腕の振りの違いの差など、そうそう見極められませんよ。それに気づいたくまっこさんの観察の鋭さには驚かされました」
「…ま、そう言ってくれるなら一応、ありがとうって言っとくけどね」
「それもそうですけど、本当に運が良かったですよね。あそこで運よくファイネストが発動してくれて助かりました」
「ジニ―が素直にイント持ちの剣士育てとけばもっと楽にいけたはずなんだけどね。こいつが銃じゃなきゃ嫌なんて言い出すから…」
「え~、だって剣士だと不幸になりそうだったんだもの。フラグびんびん、みたいな?それに、ガトレイ育ててダメージソースは確保してたじゃない」
「…だったらせめてFアビはロックオン系にしときなさいよ。こっちには支援特化パラのアンがいるんだから、ミスティいらないでしょうが」
「いえいえ。そんなことはありませんよ。ジニ―さんがミスティで回復役やってくれたおかげで防御魔法に余裕があったわけですし」
「だいたい、ダメージ特化ならライフル一択だっての。よりによって二丁拳銃使いなんて…私に対する嫌がらせのつもり?」
「いやねえ。ただの偶然よ、ぐ~ぜん。それに…趣味に走ってるのはベアちゃ…くまっこちゃんも一緒じゃない」
「は?」
「あんな可愛い子が女の子のはずが無い。いい言葉だわ。ね、くまっこちゃん?」
「なんであんたが知ってんのよ!?」

(…さっぱり分からん)
いずれ劣らぬ美女、美少女そろいの、男なら誰しも憧れるその席で、京介は一人暇そうにコーラをすすっていた。
矢継ぎ早に繰り広げられる、ディープなネトゲ会話。まったくの素人である京介には理解できない領域だ。
一応最初はねがいが色々とフォローしてくれていたのだが、話が白熱するにつれて完全においてきぼりになった。
(…まあ、ねがいが楽しそうならそれでいいんだけどな)
要ねがいには高校生になってから学校にも行くようになったし、クラスにも少しずつ馴染んではきている。
だが、元ひきこもりのねがいの趣味は、普通の女の子のそれとはかけ離れているのも確かで。
今日のねがいは実に生き生きとしている。その事に京介は感動すら覚えていた。

「あら、私ったら。ごめんなさいね京介くん。分からない話ばっかりで、困ったでしょ?」
ジニーが京介をおいてきぼりだったことに気づき、謝罪する。
「あら、わたくしとしたことが。ネット上ならともかくリアルでこのような話をする機会に、我を忘れてしまいました」
「あ…ごめん。京介くん…」
そのことでアンとねがいも気づいたらしく、バツが悪そうにしている。
「いいえ。大丈夫っす。見てるだけでも、楽しいっすから」
ジニーの謝罪に対し、京介は照れて頭を掻きながら、答える。
それは京介の本心からの言葉だった。気のおける友人と、楽しそうに会話するねがい。見ていて飽きない。
「くすくす…そうね。恋人のいつもと違う一面は、新鮮にうつるものだわ」
「へ!?あ、いやそれは…そうだけど…」
一見小学生にしか見えないくまっこにずばり指摘され、京介の顔が真っ赤になる。見ればねがいの顔も真っ赤だ。
「…ほほう。いつの間にねがいさんと京介さんはそういう関係に…」
「あらあら。恋話なら、お姉さんにお任せよ?」
そんな2人を見て、アンとジニーの2人が笑みが浮かべる。どこか恐怖を感じさせるその笑顔が示す意味はただ一つ。

面 白 い お も ち ゃ を み つ け た

2人の世界の守護者の、いじり倒しは1時間にも及んだ。

 *

「つ、次はどこへいくんすか?」
息も絶え絶えになりながら、京介はジニーに尋ねる。
あの後、一行は秋葉原を散策していた。

ねがいのPCパーツあさりの際にくまっこの異常なまでの知識がいかんなく発揮されたり、
コスプレショップで京介とねがい、そしてくまっこのいじられ属性の3人のプチファッションショーが繰り広げられたり、
メイド喫茶で店のメイドよりはるかにレベルの高い一行にドン引きされたりしたのだ。

京介は荷物持ちをやらされたのと一行の異常なまでのバイタリティーに振り回されて、すでに限界に達していた。
「う~ん。そうねえ…じゃあ、もう遅くなるし、次で最後にしましょうか」
時計を確認し、ジニーが言う。その言葉に、他のメンバーも頷く。
「それでね。私、行きたいところがあるの。もし良かったら、そこに行ってもいいかしら?」
そして、彼女はその場所の名前を口にする。反対するものは、いなかった。

赤羽神社。東京秋葉原にあるこの神社は、ウィザードの間ではある意味非常に有名な場所である。
神社特有の神聖な空気ただようその場所が、オフ会最後の目的地だった。
5人が賽銭箱の前に立ち、一斉に5円玉を投げいれ、柏手を打つ。
(…どうか、ねがいといつまでも一緒にいられますように)
静かに目を閉じて祈るねがいを横目で見た後、京介も真剣な顔で祈る。
他の3人もそれぞれに何かを祈っているようだ。顔は真剣そのもの。

がらんがら~ん

神社の鈴のひもを5人で持ってならし、オフ会の日程は終了した。
「最後に絵馬を書いてみませんか?今日の想い出として」
これからいよいよ解散と言う事になったところで、アンが提案する。
「あ、いいですね」
「そうね。面白そう」
アンの言葉にねがいとくまっこが同意する。
「では、さっそく絵馬を買ってくるとしましょう」
そう言ってアンは神社の販売所の方へと歩いて行く。
「…私、トイレ行きたい」
ねがいがぽつりと呟く。流石に京介についてきてもらうわけにもいかず、他の2人の方を見る。
「…しょうがないわね。私が一緒に行ってあげるわ」
それを見て、最初に折れたのはくまっこの方だった。ため息をついて、2人でトイレの方に歩いて行く。
(絵馬か…なに書こう?)
京介がそんなこと考えていると
「京介くん、ちょっと、いいかな?」
その場に1人残ったジニーが声をかける。
「え?なんすか?」
京介はジニーの方を見て聞く。
「うん。実は、ありがとうって言いたくて」
「ありがとう?今日のことっすか?」
「ううん。まあ、それもあるんだけど、もっと大事なこと」
ジニーが一転して真面目な顔になる。

「大事なこと?」
そのことに少し驚きながら、京介は聞き返した。
「そうよ。大事なこと…ねがいちゃんを支えてくれて、ありがとう」
「へ?ど、どういう意味っすか?」
ジニーから飛び出した、唐突な言葉に京介は困惑する。
「うん…京介くんは知ってると思うけど、ねがいちゃんって他の人が少し苦手、みたいなの」
「ええ。そうですね」
「ネット上とは言え、そういう子が他の人と話すのって大変だと思うわ。
それでね、前に1回聞いたことがあるの。なんでネットゲームをやろうと思ったのかって」
「ああ、そう言えば…」
ねがいの中学生のころの趣味はネットオークションだった。
オークションは、出品者と何回かメールをかわすくらいの付き合いしか無い。
だが、ネットゲームは違う。チャット並みのスピードで会話を交わし合い、メンバー同士の付き合いがずっと続いて行く。
人間関係と言うものが苦手なねがいには、大変な差だったのかも知れない。
「それで、なんで返って来たと思う?」
ジニーがにこやかに聞く。
「なんて…返ってきたんすか?」
つられるように京介が聞き返す。
「うん…大切な人みたいに、なりたかったからって」
「…ねがい、そんなことを…」
幼馴染の変化に京介は感動する。
「その大切な人が京介くんだって、すぐに分かったわ。オフ会に一緒に来たのもそうだけど、なにより…」
「なにより?」
「…知ってる?ネットゲームではね、キャラクタを好きなように作れるの」
「は?それが何か?」
「年齢、性別、職業…いろんなものを決めてね。それでねがいちゃんが作ったのはね、剣士なの。
いつもはちょっと頼りないんだけど、ここ一番では一発逆転できる、不思議な力を持った男の子」
「あの、それって…」
ジニーの言葉で、京介は彼女の言わんとしていることに気づく。
剣を使いこなし、ここ一番で大逆転を決める、男の子。それは…
「それで、名前は…『京介くん』」
京介自身のことだ。
「君はね、ねがいちゃんに取っては、ただの恋人じゃない。彼女自身がいつかなりたいと思うような、かっこいい人でもあるのよ」
ジニーの言葉が京介に確かにしみこんでいく。
「だから、京介くんは今のままでいてあげて。ねがいちゃんのかっこいい人のままで、ね」
そう言って彼女は、世界の守護者の顔でほほ笑んだ。

 *

「じゃあ、順番にかけていきましょうか」
絵馬を書き終えて、5人はそれぞれに絵馬をかけていく。
「ねがい、なんて書いたんだ?」
「…えっと、秘密。京介くんは?」
「…俺も、秘密」
2人して赤面してそっぽを向く。
「さあ、お二人とも、どうぞ」
アンに促されて、2人は絵馬台の前に立つ。

―――世界が平和でありますように 銀毛のアン
―――世界征服          くまっこ

最初に目に飛び込んできたのはまるで正反対の言葉が書かれた絵馬。

―――どうか、2人がいつまでも幸せでありますように ジニー=マックス

京介は思わずジニーの方を見る。そこでは彼女がいい笑顔でブイサインをしていた。
「きょ、京介くん、これって…」
「あ、ああ…」
真っ赤な顔のまま、2人は見つめ合う。
「じゃあ、よ。ねがい、俺といっせーのでかけようぜ」
「う、うん。じゃあ…」

「「いっせーの!」」

そして2人は絵馬をかける。そして、お互いの書いた言葉に赤面しながら、笑う。
それには、こう、記されていた。

―――ねがいと、いつまでも一緒でいられますように 山瀬京介
―――京介くんとずっと一緒でいられますように   要ねがい

と。


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