飯波高校3年2組の教室には、緊張の空気が流れていた。
本当なら昨日から来るはずだった、東京の高校からの短期の留学生がやってきたと言うのだ。
ちなみに3年2組の生徒がその事を聞かされたのは昨日である。
手を2回たたき、カモンと叫ぶ、柏持先生の声を受けて転入生が入ってくる。
「失礼します」
彼を見た瞬間、男子は全員が舌打ちをした。
1人を除いて、女子は全員目をキラキラとさせた。
そりゃあそうだ。なにしろ、こんな田舎の飯波高校では滅多にお目にかかれないほどの美少年だったのだ。
整った顔立ちに、翠がかったサラサラの髪、眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。
着ているのは飯波高校の制服だが、一部の隙も無い完璧な着こなしが、大人のような雰囲気を与えている。
黒板に流暢な筆記体で名前を書き、その転校生は喋りだした。
「はじめまして。東京の輝明学園からやってきました、静=ヴァンスタインと言います」
その声はまるで声優でもやってんのかと言うほど透き通っていた。
「高校に来る前は、イギリスに住んでいました。短い間ですが、よろしくお願いします。ああそれと…」
にっこりとほほ笑み、静は喋り続ける。
「僕のことは、まほうせんせいと呼んでください」
言いきった。そりゃあもうさわやかに。歯だってキラッと光ったくらいだ。
本当なら昨日から来るはずだった、東京の高校からの短期の留学生がやってきたと言うのだ。
ちなみに3年2組の生徒がその事を聞かされたのは昨日である。
手を2回たたき、カモンと叫ぶ、柏持先生の声を受けて転入生が入ってくる。
「失礼します」
彼を見た瞬間、男子は全員が舌打ちをした。
1人を除いて、女子は全員目をキラキラとさせた。
そりゃあそうだ。なにしろ、こんな田舎の飯波高校では滅多にお目にかかれないほどの美少年だったのだ。
整った顔立ちに、翠がかったサラサラの髪、眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。
着ているのは飯波高校の制服だが、一部の隙も無い完璧な着こなしが、大人のような雰囲気を与えている。
黒板に流暢な筆記体で名前を書き、その転校生は喋りだした。
「はじめまして。東京の輝明学園からやってきました、静=ヴァンスタインと言います」
その声はまるで声優でもやってんのかと言うほど透き通っていた。
「高校に来る前は、イギリスに住んでいました。短い間ですが、よろしくお願いします。ああそれと…」
にっこりとほほ笑み、静は喋り続ける。
「僕のことは、まほうせんせいと呼んでください」
言いきった。そりゃあもうさわやかに。歯だってキラッと光ったくらいだ。
幸い、イギリス仕込みのジョークだと受け取ってもらえたらしく、浮くようなことは無かった。
…大真面目で言った本人は少し不満だったのだが。
…大真面目で言った本人は少し不満だったのだが。
その時、静は気づかなかった。ただ1人、静に興味がなさげだった女子が目をキラキラさせ始めたことに。
その少女の名は三石小夏と言った。
その少女の名は三石小夏と言った。
*
「ここです!ここの部長なら私よりも上です!ついでに絶賛部員募集中だそうです!」
腕をぐいぐい引っ張られながら、要いのりはなんでこんなことになったんだろうと思いをはせる。
(確か…こ~ゆ~の得意そうだな~と思って春美ちゃんに何となく聞いてみて…)
流されるままにドナドナ状態ないのりには落ち度は無い。ただ、相手が悪かったのだ。
強引に引っ張ってる少女こと、三石春美が他人のことを知るのも好きだがオカルトも大好きだったと言うだけなのだ。
うんちくを聞かされた。そりゃあもう驚くほど。放課後1時間にもおよんだ。
不幸なことに小難しい話はいのりは大の苦手だった。一気に話を聞かされて頭がプスプスいってるところでここに案内された。
「そうだ!不思議なことが大好きなら、是非お勧めな部活があるんです!」
ってな言葉と共に。
腕をぐいぐい引っ張られながら、要いのりはなんでこんなことになったんだろうと思いをはせる。
(確か…こ~ゆ~の得意そうだな~と思って春美ちゃんに何となく聞いてみて…)
流されるままにドナドナ状態ないのりには落ち度は無い。ただ、相手が悪かったのだ。
強引に引っ張ってる少女こと、三石春美が他人のことを知るのも好きだがオカルトも大好きだったと言うだけなのだ。
うんちくを聞かされた。そりゃあもう驚くほど。放課後1時間にもおよんだ。
不幸なことに小難しい話はいのりは大の苦手だった。一気に話を聞かされて頭がプスプスいってるところでここに案内された。
「そうだ!不思議なことが大好きなら、是非お勧めな部活があるんです!」
ってな言葉と共に。
…普通の飯波高生が決して近寄らないその場所に。
『不思議研究部部室』
そうプレートが付けられた。触ったら呪われるとか、夜中に1年生の間で噂される扉を目の当たりにしたいのりは。
(うっわ。うちの学校みたい)
それだけだった。驚きとか気味悪いとか言う気持ちは無い。って言うかむしろ慣れてる。
普通の学校だったら怪しさ爆発な扉を見たら敬遠するか罠探知の一つもするところだが、あいにくといのりは輝明学園に通っていた。
巫女クラブなんてもんが普通にあるだけあって輝明学園にはこの手のあやしい部室は普通にごろごろ転がっている。
ここだってウィザードでもある部長の趣味でさながら武器庫と化している天文部とかと比べればマシってくらいなのだ。
「お姉ちゃ~ん。春美です。いますか~?」
ドアをノックしながら春美が中にいる、不思議研部長に声をかける。
「春美ちゃんですか。何か御用ですか?」
中から丁寧な受け答えが帰ってくる。
「ええ、実は不思議な話が大好きって人を連れて来たんです。例の東京からの留学生で、要いのりさんって言うんですけど」
「あら。やっぱり東京の人は一味違うんですかねえ。ちょうど今、私も静さんと話していたところなんですよ」
そんな言葉と共に不思議研の扉が開かれる。
黒いおかっぱ頭に黄色いリボンがチャーミングだが、ぐるぐるメガネで色々台無しになってる感じ。一言で言えば、
(2Pカラー?いやむしろこの場合は春美ちゃんが2Pカラーなの?)
それが、三石小夏と言う少女だった。
「…春美ちゃん、双子だったの?」
自分に顔はそっくりな双子の姉を持つ身として、一番ありえそうな答えを春美に尋ねる。
「いいえ?お姉ちゃんは2つ上ですよ?3年生です」
「ええー?だって…」
いのりは交互に小夏と春美を見る。
そっくりだった。そりゃあ驚くほどに。春美の髪を黒くしてリボンの色も同じにしたら多分見分けられない。
「うちの家系、見た目があんまし変わらないんです。ちなみに7歳上の一番上の姉さんもそっくりですよ?
さすがに高校生には見えないと思いますけど」
「…マジで?」
「マジです」
色々と三石家の神秘を垣間見たいのりであった。
「やあ。いのり君。君も来たのかい?」
そんなとき、部屋の奥から声をかけられる。
「せんせい!?」
その声の持ち主に思わずいのりは声を上げる。
そこには、椅子に腰かけて、紅茶をすする静の姿があったのだ。
静はいのりにいつものにこやかな笑顔にほんの少しだけ、興奮を混ぜて、言う。
「いやあ。ここの部長の小夏さんはすごいよ。僕の魔術談義に付き合えるなんて、マユリさん以来だよ」
「ま、魔術談義い…?」
いのりはウィザードではあるものの魔法を使いこなす能力には乏しい。
考える前に即行動がモットーの彼女には、複雑な魔術理論など理解の範囲外なのだ。
「そう。放課後になってからずっと話してたんだよ」
「そうなんですよ!」
大量のつばを飛ばしながら、小夏は詰め寄って、言う。
「伝承やおまじない、妖怪談義まで、ここまでこゆい話題についていけるのは、姉さんと春美以来です!」
そりゃあそうだ。本職の魔術師なんだから。
「で、そちらのいのりさんも、不思議大好きっ子なんですよね?」
ずずいっと小夏が迫る。ぐるぐるメガネで催眠術でもかけられるんじゃね~かってぐらいに。
「あ、あはは。そ、そうなんですけど、私ちょっとそう言うのには詳しくないし、やっぱやめといた方がいいかな~なんて…」
いのりは乾いた笑い声を上げながら、ずりずりと後ろへ下がる。
「大丈夫です。大事なのは不思議を愛する心です。知識なんてなくても…」
さらに迫る。もう少しでメガネがいのりの顔にぶち当たりそうな勢いだ。
「大丈夫。私がしっかりとちょうきょ…こほんレクチャーしてあげますから」
「ちょ、調教って言おうとした、今!ついさっき!」
「気のせいです。さあ、一緒に不思議を探しましょう」
その迫りっぷりは昨日の新聞部に勧誘してきた春美以上だった。
どん、と背中が廊下の壁に当たる。これ以上は下がれない。
「楽しいですよ~」
「あのいや、でもほら他の部活とか…」
「1ヶ月だけですよね?他の部活は難しいんじゃないですか?でも、うちはそれでもいいんです。是非とも人手が欲しいので。退屈させませんよ?」
逃がさない、むしろ回り込むと言わんばかりの気迫。そして…
「わ、分かりました。じゃあこっちにいる1ヶ月だけなら、入ります」
驚異の粘り腰に押し切られる形で、いのりはとうとう言った。言ってしまった。
「やった!これで新入部員含めて4人!学園祭もまともな出し物が出せますよ!」
一転してバックステップで小躍りする小夏。
「新入部員…?」
ちらり、と澄ました顔をしたメガネ3号(ちなみに1号2号は三石ちゃん姉妹)を見る。
「ああ、僕も不思議研に入ることにしたんだ。面白そうだし、部長もいい人っぽいからね」
「となると、最後の1人は今日は来てないんですか?」
いのりの言葉に春美が手を上げる。
「ああ、私です。新聞部とかけもちですけど。それで、不思議なことが大好きな子がいたら連れてくるよ~に言われてたんです。
…普通は名前を聞くか、部室を見た時点で逃げ出しちゃうからなかなか捕まえられないんですよね~」
実ににこやかに答えるメガネ2号を見ていのりは今さらながら気づく。
(もしかして…あたし、はめられた?)
かくして部員1名で長らく運営されてきた不思議研究部に新たな部員が加わったのであった。
(うっわ。うちの学校みたい)
それだけだった。驚きとか気味悪いとか言う気持ちは無い。って言うかむしろ慣れてる。
普通の学校だったら怪しさ爆発な扉を見たら敬遠するか罠探知の一つもするところだが、あいにくといのりは輝明学園に通っていた。
巫女クラブなんてもんが普通にあるだけあって輝明学園にはこの手のあやしい部室は普通にごろごろ転がっている。
ここだってウィザードでもある部長の趣味でさながら武器庫と化している天文部とかと比べればマシってくらいなのだ。
「お姉ちゃ~ん。春美です。いますか~?」
ドアをノックしながら春美が中にいる、不思議研部長に声をかける。
「春美ちゃんですか。何か御用ですか?」
中から丁寧な受け答えが帰ってくる。
「ええ、実は不思議な話が大好きって人を連れて来たんです。例の東京からの留学生で、要いのりさんって言うんですけど」
「あら。やっぱり東京の人は一味違うんですかねえ。ちょうど今、私も静さんと話していたところなんですよ」
そんな言葉と共に不思議研の扉が開かれる。
黒いおかっぱ頭に黄色いリボンがチャーミングだが、ぐるぐるメガネで色々台無しになってる感じ。一言で言えば、
(2Pカラー?いやむしろこの場合は春美ちゃんが2Pカラーなの?)
それが、三石小夏と言う少女だった。
「…春美ちゃん、双子だったの?」
自分に顔はそっくりな双子の姉を持つ身として、一番ありえそうな答えを春美に尋ねる。
「いいえ?お姉ちゃんは2つ上ですよ?3年生です」
「ええー?だって…」
いのりは交互に小夏と春美を見る。
そっくりだった。そりゃあ驚くほどに。春美の髪を黒くしてリボンの色も同じにしたら多分見分けられない。
「うちの家系、見た目があんまし変わらないんです。ちなみに7歳上の一番上の姉さんもそっくりですよ?
さすがに高校生には見えないと思いますけど」
「…マジで?」
「マジです」
色々と三石家の神秘を垣間見たいのりであった。
「やあ。いのり君。君も来たのかい?」
そんなとき、部屋の奥から声をかけられる。
「せんせい!?」
その声の持ち主に思わずいのりは声を上げる。
そこには、椅子に腰かけて、紅茶をすする静の姿があったのだ。
静はいのりにいつものにこやかな笑顔にほんの少しだけ、興奮を混ぜて、言う。
「いやあ。ここの部長の小夏さんはすごいよ。僕の魔術談義に付き合えるなんて、マユリさん以来だよ」
「ま、魔術談義い…?」
いのりはウィザードではあるものの魔法を使いこなす能力には乏しい。
考える前に即行動がモットーの彼女には、複雑な魔術理論など理解の範囲外なのだ。
「そう。放課後になってからずっと話してたんだよ」
「そうなんですよ!」
大量のつばを飛ばしながら、小夏は詰め寄って、言う。
「伝承やおまじない、妖怪談義まで、ここまでこゆい話題についていけるのは、姉さんと春美以来です!」
そりゃあそうだ。本職の魔術師なんだから。
「で、そちらのいのりさんも、不思議大好きっ子なんですよね?」
ずずいっと小夏が迫る。ぐるぐるメガネで催眠術でもかけられるんじゃね~かってぐらいに。
「あ、あはは。そ、そうなんですけど、私ちょっとそう言うのには詳しくないし、やっぱやめといた方がいいかな~なんて…」
いのりは乾いた笑い声を上げながら、ずりずりと後ろへ下がる。
「大丈夫です。大事なのは不思議を愛する心です。知識なんてなくても…」
さらに迫る。もう少しでメガネがいのりの顔にぶち当たりそうな勢いだ。
「大丈夫。私がしっかりとちょうきょ…こほんレクチャーしてあげますから」
「ちょ、調教って言おうとした、今!ついさっき!」
「気のせいです。さあ、一緒に不思議を探しましょう」
その迫りっぷりは昨日の新聞部に勧誘してきた春美以上だった。
どん、と背中が廊下の壁に当たる。これ以上は下がれない。
「楽しいですよ~」
「あのいや、でもほら他の部活とか…」
「1ヶ月だけですよね?他の部活は難しいんじゃないですか?でも、うちはそれでもいいんです。是非とも人手が欲しいので。退屈させませんよ?」
逃がさない、むしろ回り込むと言わんばかりの気迫。そして…
「わ、分かりました。じゃあこっちにいる1ヶ月だけなら、入ります」
驚異の粘り腰に押し切られる形で、いのりはとうとう言った。言ってしまった。
「やった!これで新入部員含めて4人!学園祭もまともな出し物が出せますよ!」
一転してバックステップで小躍りする小夏。
「新入部員…?」
ちらり、と澄ました顔をしたメガネ3号(ちなみに1号2号は三石ちゃん姉妹)を見る。
「ああ、僕も不思議研に入ることにしたんだ。面白そうだし、部長もいい人っぽいからね」
「となると、最後の1人は今日は来てないんですか?」
いのりの言葉に春美が手を上げる。
「ああ、私です。新聞部とかけもちですけど。それで、不思議なことが大好きな子がいたら連れてくるよ~に言われてたんです。
…普通は名前を聞くか、部室を見た時点で逃げ出しちゃうからなかなか捕まえられないんですよね~」
実ににこやかに答えるメガネ2号を見ていのりは今さらながら気づく。
(もしかして…あたし、はめられた?)
かくして部員1名で長らく運営されてきた不思議研究部に新たな部員が加わったのであった。