―――281年2月上旬
―――???
―――???
「…いい策、ですか?これが」
「何か随分砕けた言葉づかいになってきたな。
政庁を離れたからか?」
「ふざけないでください。
何でこんなことしたんですか」
「まったくなぁ。
何で止めなかったんだよ、王修」
「何言ってんですか!?
まあいいからついてこいって言ったのは劉備様じゃないですか!」
「何か随分砕けた言葉づかいになってきたな。
政庁を離れたからか?」
「ふざけないでください。
何でこんなことしたんですか」
「まったくなぁ。
何で止めなかったんだよ、王修」
「何言ってんですか!?
まあいいからついてこいって言ったのは劉備様じゃないですか!」
男は二人。
そして、彼らの周りには、十重二十重の異形ども。
そして、彼らの周りには、十重二十重の異形ども。
「そうだっけか?」
「…もういいです。
それで、どうするんです?
僕も劉備様も、広範囲に攻撃できる魔法は使えませんが」
「どっちにしろ、これだけ近寄られたら魔法を唱えている間にやられるだろうさ」
「…もういいです。
それで、どうするんです?
僕も劉備様も、広範囲に攻撃できる魔法は使えませんが」
「どっちにしろ、これだけ近寄られたら魔法を唱えている間にやられるだろうさ」
二人の男は背中合わせで戦いの構えをとる。
二本の刀を腰に携えた男は、無手。
拳を握ることもなく、肩を落とし、やや体重を前に。
守は無き、攻の構え。
拳を握ることもなく、肩を落とし、やや体重を前に。
守は無き、攻の構え。
彼の影にいるのは、少年。
双の手に、奇妙な形の短剣を逆手に握る。
左手は喉。右手は下腹に。
双手による守から転じ、狙うは攻。
双の手に、奇妙な形の短剣を逆手に握る。
左手は喉。右手は下腹に。
双手による守から転じ、狙うは攻。
「ま…予定とは違うが」
張り詰めた空気の中、笑みを漏らすは無手の男。
「予想通りではある」
「え?」
「退路はどうにかなる。
今は北郷の兄ちゃんと、あの子犬みたいな嬢ちゃんと合流することを考えようや」
「え?」
「退路はどうにかなる。
今は北郷の兄ちゃんと、あの子犬みたいな嬢ちゃんと合流することを考えようや」
戸惑いは残るものの、浮き足立った感情が、文官の顔から消える。
気の流れが変わった。
動いたのは、構え通り、無手の男。
同時、異形が一斉に、二人の男に襲い掛かる。
動いたのは、構え通り、無手の男。
同時、異形が一斉に、二人の男に襲い掛かる。
空には紅い月。
周囲の空間は、食いつぶされたが如き荒野。
其れは、この世界の主の象形。
其処は、侵魔が作り出す世界。
すなわち―――
周囲の空間は、食いつぶされたが如き荒野。
其れは、この世界の主の象形。
其処は、侵魔が作り出す世界。
すなわち―――
■■■
第三話『とある武将の登用顛末~月匣にて(前編)』
■■■
―――281年2月上旬
―――月匣内
―――月匣内
「…つまり、そのエミュレイターと戦う存在がウィザードというわけだ。
面白いものだとは思わないかね?
皮肉にも、世界から存在を拒否された者達だけが、世界を侵攻する存在に対する唯一の対抗手段となってしまったのだから」
「…は、はあ…」
「……」
「ま、話半分にでも聞いておけばいい。
知りたい知りたいと思っていても、真実を目の前にしたら興味などなくなる。
人間などそんなものさ」
面白いものだとは思わないかね?
皮肉にも、世界から存在を拒否された者達だけが、世界を侵攻する存在に対する唯一の対抗手段となってしまったのだから」
「…は、はあ…」
「……」
「ま、話半分にでも聞いておけばいい。
知りたい知りたいと思っていても、真実を目の前にしたら興味などなくなる。
人間などそんなものさ」
一刀の隣。
話も聞かず、船を漕いでいた少女をちらり、と見て辛辣な言葉を男は口にした。
話も聞かず、船を漕いでいた少女をちらり、と見て辛辣な言葉を男は口にした。
「…なんというか。
この子はそういう理由で寝てるんじゃないんで、あまり気にしないでください」
「……………………寝てない」
この子はそういう理由で寝てるんじゃないんで、あまり気にしないでください」
「……………………寝てない」
無表情な少女の顔には、全く反省の色は見られない。
北郷一刀は、あまりにも自由なそんな彼女の反応に頭を抱える。
いつもの、といえば、いつもの恋ではあるのだが。
せめて、こんなときぐらい、と思ってしまうのも仕方のないことではある。
北郷一刀は、あまりにも自由なそんな彼女の反応に頭を抱える。
いつもの、といえば、いつもの恋ではあるのだが。
せめて、こんなときぐらい、と思ってしまうのも仕方のないことではある。
「どちらでもいいさ。
私はただ退屈しのぎにしゃべっているだけだからね。
こんな空間に長くいると、相手がどんな無礼だろうと楽しいものさ」
私はただ退屈しのぎにしゃべっているだけだからね。
こんな空間に長くいると、相手がどんな無礼だろうと楽しいものさ」
北郷一刀と、恋―――あるいは呂布にそう語る男は、辺りを見渡す。
周囲は一面、荒野だった。
空は赤く、その中天には赤空よりもなお紅い月。
ここは、月匣。
エミュレイターが造る結界の内部である。
空は赤く、その中天には赤空よりもなお紅い月。
ここは、月匣。
エミュレイターが造る結界の内部である。
劉備と王修に伴って、下ヒに赴いた一刀と恋ではあったが、気づいたら、月匣に取り込まれていた。
本当に、気がついたら、『月匣』にいたのだ。
最後に劉備から聞いた言葉が。
本当に、気がついたら、『月匣』にいたのだ。
最後に劉備から聞いた言葉が。
『一歩下ヒに入ったらいつエミュレイターに襲われるかわからないから気をつけろ』
というのも、それこそ、目の前の男性の言葉ではないが、皮肉なものである。
月匣の中、出てくる化け物たちから逃げ続けているうちに出会ったのが、目の前の男であった。
なぜか、一刀と恋を見て、いきなり溜息をついたその男は。
今の今まで、『ウィザード』と『エミュレイター』について話をしていたというわけである。
なぜか、一刀と恋を見て、いきなり溜息をついたその男は。
今の今まで、『ウィザード』と『エミュレイター』について話をしていたというわけである。
「いえ、本当にありがたいですよ。
こっちに来てからずっと、何もわからず劉備さんについて回ってただけでしたし。
なんとか状況が掴めてきました」
こっちに来てからずっと、何もわからず劉備さんについて回ってただけでしたし。
なんとか状況が掴めてきました」
一刀の言葉。
その中に出てきた人名に、わずかに男は眉をしかめた。
その中に出てきた人名に、わずかに男は眉をしかめた。
「…やれやれ。
あの男は本当に何も知らない者を利用するのが上手だ。
まあ、知り合ったばかりの、しかもこんな場所で出会った男の話を延々と聞いている君のような人間だから、簡単に利用されるのかもしれんがね。
その人柄が原因で何か問題を起こしたことがないかね?」
「問題…というか、結構厄介なことに巻き込まれたことはありますけど…。
って、そもそも劉備さんと知り合いなんですか?」
「何、彼も悪い男じゃないさ。
ただ、性根が詐欺師みたいなだけでね」
「どう考えても悪く言ってると思うんですが。
というか、会話がかみ合ってませんよ?」
「少なくとも、彼の意図に沿うように動けば、大概状況は悪くはならないさ。
そもそも、そこまで悪い…というか、邪悪な男だったらわざわざ妹を嫁がせたりはしない」
「え?それって…」
あの男は本当に何も知らない者を利用するのが上手だ。
まあ、知り合ったばかりの、しかもこんな場所で出会った男の話を延々と聞いている君のような人間だから、簡単に利用されるのかもしれんがね。
その人柄が原因で何か問題を起こしたことがないかね?」
「問題…というか、結構厄介なことに巻き込まれたことはありますけど…。
って、そもそも劉備さんと知り合いなんですか?」
「何、彼も悪い男じゃないさ。
ただ、性根が詐欺師みたいなだけでね」
「どう考えても悪く言ってると思うんですが。
というか、会話がかみ合ってませんよ?」
「少なくとも、彼の意図に沿うように動けば、大概状況は悪くはならないさ。
そもそも、そこまで悪い…というか、邪悪な男だったらわざわざ妹を嫁がせたりはしない」
「え?それって…」
男は、一刀の問いかけを無視。
不意に、目を遠くにやった。
不意に、目を遠くにやった。
「と、言い忘れていたが。
実は、君たちに会う前にも、一人の女の子に会っててね。
その子の格好は、随分君たちに似ていたようだったんだが」
「…は?」
「この辺りじゃ珍しい褐色の肌に、どんな材質を使っているのかしらないが妙に滑らかな生地の服。
髪は後ろで一まとめにした、きつい感じの目の子だったな」
「ちょ、ちょっと待ってください。
何で今、そんなことを」
「だから言っただろう。今思い出したのさ」
実は、君たちに会う前にも、一人の女の子に会っててね。
その子の格好は、随分君たちに似ていたようだったんだが」
「…は?」
「この辺りじゃ珍しい褐色の肌に、どんな材質を使っているのかしらないが妙に滑らかな生地の服。
髪は後ろで一まとめにした、きつい感じの目の子だったな」
「ちょ、ちょっと待ってください。
何で今、そんなことを」
「だから言っただろう。今思い出したのさ」
どこか眠たげな双眸で、男は続ける。
「だが、こんな場所に一人でいたら危ないんじゃないかと思うんだがね。
彼女は、私の助言も聞かず、一人であちらの方へ行ってしまった。
せめて、君ぐらい素直だったらよかったんだが」
「…」
彼女は、私の助言も聞かず、一人であちらの方へ行ってしまった。
せめて、君ぐらい素直だったらよかったんだが」
「…」
沈黙。
そして、混乱。
北郷一刀の頭の中は、混沌としていた。
そして、混乱。
北郷一刀の頭の中は、混沌としていた。
先ほどの男の説明で、一刀の脳裏には、知り合いの数多の女性の中から、一人の少女の姿が映し出されていた。
しかし、頑固とはいえ、彼女の状況判断能力は、自分よりはるかに優れている。
そんな『彼女』が、男が言ったような無茶な行動をするだろうか。
いや、そもそも。
この『世界』に来てしまったのは、自分と恋だけではないのか。
だとしたら、まさか。
他の少女達も―――と、一瞬で色々なことが頭の中を駆け巡る。
しかし、頑固とはいえ、彼女の状況判断能力は、自分よりはるかに優れている。
そんな『彼女』が、男が言ったような無茶な行動をするだろうか。
いや、そもそも。
この『世界』に来てしまったのは、自分と恋だけではないのか。
だとしたら、まさか。
他の少女達も―――と、一瞬で色々なことが頭の中を駆け巡る。
残念ながら、彼は聡明な軍師でも、有能な武将でもない。
それだけの情報を一度に処理するには、能力が不足していた。
それだけの情報を一度に処理するには、能力が不足していた。
「…くそ」
悪態。
思わずでた言葉に反応したのかどうか。
目の前の男が言葉を口にする。
思わずでた言葉に反応したのかどうか。
目の前の男が言葉を口にする。
「できれば、早く行ってあげた方がいい。
私の話は聞かなくとも、君たちの言葉なら届くかもしれない」
「………あ、いえ、その」
「急がないのかね?
君の知り合いだと思ったんだが」
私の話は聞かなくとも、君たちの言葉なら届くかもしれない」
「………あ、いえ、その」
「急がないのかね?
君の知り合いだと思ったんだが」
ふと。
頭の中に、場違いな考えが浮かぶ。
この男の皮肉げな言葉は、もしかして上辺だけで。
本当は、相当お人よしなのではないか、と。
だが、そんな思いつきは頭の端へと逃げていく。
少年の頭に残ったのは、一つだけ。
もしかしたら、知り合い「かもしれない」少女を助ける、というその一事だった。
頭の中に、場違いな考えが浮かぶ。
この男の皮肉げな言葉は、もしかして上辺だけで。
本当は、相当お人よしなのではないか、と。
だが、そんな思いつきは頭の端へと逃げていく。
少年の頭に残ったのは、一つだけ。
もしかしたら、知り合い「かもしれない」少女を助ける、というその一事だった。
「…わ、わかりました。急ぎますんで、それじゃ、これで!」
慌てて、ついに横になって寝ていた少女を起こし。少年は立ち上がる。
「あ、ありがとうございました!えっと…」
礼を言おうとして、名前を知らないことを思い出す。
目の前の男は、一体、誰なのか。
ウィザードとエミュレイターについて知っている、謎の男。
なぜか、劉備とも関係があるという。
そんな、男は。
目の前の男は、一体、誰なのか。
ウィザードとエミュレイターについて知っている、謎の男。
なぜか、劉備とも関係があるという。
そんな、男は。
「なに、私はただの商人だ。
名前は麋竺子仲というがね。まあ、忘れても構わんさ」
「ありがとう、麋竺さん!
それじゃ!
ほら、行くぞ恋!」
「………寝てない」
「それはもういいから!?」
名前は麋竺子仲というがね。まあ、忘れても構わんさ」
「ありがとう、麋竺さん!
それじゃ!
ほら、行くぞ恋!」
「………寝てない」
「それはもういいから!?」
慌てる少年に、男―――麋竺は最後に一声かける。
「…ふむ。そういえば、君は『魔物使い』だったな。
それならば、そこの彼女に『乗せていって』もらうといい。
おそらく、その方が…先に行った女の子に、より早く追いつけるだろう」
「え!?乗せて…って?」
「『ライディング』と言うんだがね。
ま、試しに背負ってみるといい、ほら。
呂布、とかいったかね?君が、彼を背負って走ればいいのさ」
「……」
それならば、そこの彼女に『乗せていって』もらうといい。
おそらく、その方が…先に行った女の子に、より早く追いつけるだろう」
「え!?乗せて…って?」
「『ライディング』と言うんだがね。
ま、試しに背負ってみるといい、ほら。
呂布、とかいったかね?君が、彼を背負って走ればいいのさ」
「……」
そこまで何も聞いてなかったようにも見えた恋が、頷きひとつ。
一刀を背負い、そして。
一刀を背負い、そして。
「……ご主人様。走る」
「うわっ……!?」
「うわっ……!?」
風になった。
―――281年2月上旬
―――月匣内
―――月匣内
最後の一匹を、淡い光を纏った脚が打ち砕く。
脚を振り切った勢いで体を回転させ、体勢を整えた時には。
男の顔には、すでに笑みが戻っていた。
脚を振り切った勢いで体を回転させ、体勢を整えた時には。
男の顔には、すでに笑みが戻っていた。
「…ま、こんなもんか」
「……流石は劉備様」
「経験を積めば、叔治ももうちっとは戦えるようになるさ」
「……流石は劉備様」
「経験を積めば、叔治ももうちっとは戦えるようになるさ」
これは、間接的に自分の経験が足りないと言っているのだろうか。
あるいは、経験を積んでも、少ししかましにはならないということだろうか。
少し、気分は落ち込んだが、王修は口には出さなかった。
あるいは、経験を積んでも、少ししかましにはならないということだろうか。
少し、気分は落ち込んだが、王修は口には出さなかった。
というか、一人で数千のクリーチャーを相手にできるようなウィザードと自分を一緒にしてはいけないだろうとは思う。
そうは思うのだが、こうもまざまざと実力を見せ付けられると少しは虚しくもなるのであった。
そうは思うのだが、こうもまざまざと実力を見せ付けられると少しは虚しくもなるのであった。
「さて、探索に戻るかね」
「…はい」
「…はい」
罠を破ること、数十。
すでに倒したクリーチャーは二桁を超えているような気もする。
だが、未だ北郷一刀と呂布奉先は見つからず、この月匣のコア―――中心となる存在もわからないままだった。
すでに倒したクリーチャーは二桁を超えているような気もする。
だが、未だ北郷一刀と呂布奉先は見つからず、この月匣のコア―――中心となる存在もわからないままだった。
「しかし凄まじいな。
麋には聞いていたが…こいつは、少し厄介だ」
「って、知ってたんですか!?
こうなることを!?」
「まあな」
麋には聞いていたが…こいつは、少し厄介だ」
「って、知ってたんですか!?
こうなることを!?」
「まあな」
平然と答える劉備に、王修は二の句を失う。
「下ヒそのものを覆ってる…のかはわからんが。
おそらく、下ヒに入ったウィザードは、全てこの月匣に取り込まれたんだろうが…な。
麋は、他のウィザードと一緒にここに取り込まれて、一人だけ脱出できたらしい」
「…だから、下ヒのウィザードと連絡が取れなくなった、と?」
「ああ。そいつも実際に確かめたかったしな」
おそらく、下ヒに入ったウィザードは、全てこの月匣に取り込まれたんだろうが…な。
麋は、他のウィザードと一緒にここに取り込まれて、一人だけ脱出できたらしい」
「…だから、下ヒのウィザードと連絡が取れなくなった、と?」
「ああ。そいつも実際に確かめたかったしな」
ふと、王修はあることに気づく。
劉備の言葉の通りなら。
月匣に取り込まれたウィザードとは、連絡が途絶えた、ということならば。
劉備の言葉の通りなら。
月匣に取り込まれたウィザードとは、連絡が途絶えた、ということならば。
「ここから出れない…?」
「そうなるな」
「ちょ、ちょっと!?」
「そうなるな」
「ちょ、ちょっと!?」
慌てる王修に、しかし、劉備はやはりニィ、と笑みで答えた。
「さっきも言っただろ?
一応、退路は用意してある」
「よ、よかった…」
「…と、言いたいところだが。
予想以上に月匣の範囲が大きい。
もしかすると、もしかするかもしれん。
相手は魔王級…と予想はしてたんだがな」
「あら、流石ね、劉備玄徳。
じゃあ、これも予想してた?」
一応、退路は用意してある」
「よ、よかった…」
「…と、言いたいところだが。
予想以上に月匣の範囲が大きい。
もしかすると、もしかするかもしれん。
相手は魔王級…と予想はしてたんだがな」
「あら、流石ね、劉備玄徳。
じゃあ、これも予想してた?」
声より先に、光が空間を薙いだ。
王修の体が反応できたのは、劉備の立っている位置を、光が通り過ぎた後。
王修の体が反応できたのは、劉備の立っている位置を、光が通り過ぎた後。
爆発が起こったところで、逃げ出すのが精一杯だった。
彼の能力の不足を責めることはできない。
相手は絶対的な存在だった。
相手は絶対的な存在だった。
声を聞いたのは、これで三度目のはず。
が、敵として出会ったのは、二度目。
が、敵として出会ったのは、二度目。
強引に体を動かし、声のした方向へ振り向く。
感じ取れるプラーナから、相手の姿が王修にはわかる。
感じ取れるプラーナから、相手の姿が王修にはわかる。
強大にして、圧倒的。
かつて相対したときは、『二度と出会いたくない』と思った存在。
見覚えのあるポンチョが爆風で翻り。美しい銀髪が、妖しく踊る。
かつて相対したときは、『二度と出会いたくない』と思った存在。
見覚えのあるポンチョが爆風で翻り。美しい銀髪が、妖しく踊る。
「ま、予想できたとしても、対処できなければ意味ないわよね?」
紅い月を背負うのは。
「魔王…ベール=ゼファー…!!」
「あら、久しぶり。
北海のウィザードってあんたのことだったのね…名前、なんだったかしら」
「あら、久しぶり。
北海のウィザードってあんたのことだったのね…名前、なんだったかしら」
蠅の女王は、腕を組んで。
文字通り、この世界の支配者として、君臨していた。
文字通り、この世界の支配者として、君臨していた。