風景が現実感を取り戻すと同時に、今さっきまで存在していた全ての破壊の痕跡まで
がまるで魔法のように消え去っていた。
がまるで魔法のように消え去っていた。
魔剣によって吹き飛ばされた屋上のフェンスも、校舎の壁面にも、駐輪場にも…どこ
にもさっきの激闘の痕跡がないことを見て、こなたはおもむろに腕を組んで考え込み始
める。
にもさっきの激闘の痕跡がないことを見て、こなたはおもむろに腕を組んで考え込み始
める。
その様子を見ながら、柊はとりあえず手早く事情を説明するかと腹を括る事にした。
「まぁ、手っ取り早く言うぞ。お前がさっき見た化け物は『侵魔(エミュレイター)』
って名前で呼ばれる…まぁわかり易く言うなら人喰いの怪物だ」
って名前で呼ばれる…まぁわかり易く言うなら人喰いの怪物だ」
かなり乱暴な表現ではあるが丸っきり間違いという訳でもないよな。と胸中で言い訳
をしつつ、殊勝な態度で耳を傾けるこなたに向けて目線を合わせつつ話す柊。
をしつつ、殊勝な態度で耳を傾けるこなたに向けて目線を合わせつつ話す柊。
いくら守護の霊力を受けているとはいえ、ウィザードでない一般人にあの手の事件は
刺激が強すぎるかなどと、内心で舌打ちしつつ更に説明を続ける。
刺激が強すぎるかなどと、内心で舌打ちしつつ更に説明を続ける。
とはいえ、世界の真実全てを話すわけにはいかない。かいつまんで説明した内容はと
いえば、この学校の中にさっきのような化け物が潜伏している可能性があること。
いえば、この学校の中にさっきのような化け物が潜伏している可能性があること。
そして、自分がその化け物を狩り…ここを護る為にやって来たこと。
「…とまぁ、言った所でしんじちゃもらえねぇだろうが…。俺の側の説明はざっとこ
んなもんだ…って、おい?泉…?」
んなもんだ…って、おい?泉…?」
話を打ち切る前に、柊はこなたが延々黙考を続けるさまをみて少し不安に駆られた。
ウィザード以外の一般人(イノセント)がこういった超常の現象に触れると良くて精
神に悪影響・最悪存在そのものの抹消もありうるのだ。いくら何者かの庇護を受けてい
るとはいえ、かなり軽率だったかと思った矢先。
神に悪影響・最悪存在そのものの抹消もありうるのだ。いくら何者かの庇護を受けてい
るとはいえ、かなり軽率だったかと思った矢先。
「…くぁぁぁぁあああああ!そ~だったのかぁぁぁっ!」
やおら、こなたは心の底から悔しそうに頭を抱えた。何事かと怪訝な表情になる柊の
前で、まったく欠片も気にする様子もなく言葉を続けるこなた。
前で、まったく欠片も気にする様子もなく言葉を続けるこなた。
「最初見たときはデュエ○セイヴァーかと思ったらシャ○でっ!○ャナかなと思って
最後まで話を聞いてみたら夜○るだったとわぁぁぁ!!…やりますなぁ、お兄さん」
最後まで話を聞いてみたら夜○るだったとわぁぁぁ!!…やりますなぁ、お兄さん」
不意に島本和彦調の口調で口元をぬぐい、ニヤリと笑うこなた。
時間が止まったかのような沈黙が続き…木枯らしの様な一陣の風が吹いたと錯覚させ
る時間が続いた後。
る時間が続いた後。
「ってぇぇえええ!だぁからさっきから何 の 話 をしてやがるんだお前わよぉぉ
ぉぉぉぉぉ!!何の話だシ○ナだの○来るだの訳わっかんねぇ事ポンポンポンポン言い
倒しやがってぇっ!?」
「や、だってこーいう風に言うほうが判り易いし」
ぉぉぉぉぉ!!何の話だシ○ナだの○来るだの訳わっかんねぇ事ポンポンポンポン言い
倒しやがってぇっ!?」
「や、だってこーいう風に言うほうが判り易いし」
手をひらひらさせ、余裕の猫スマイルを浮かべるこなた。その様子には欠片一片の動
揺もありはしない。一瞬でも真剣に心配した自分が特大の大馬鹿に思えて脱力し、その
ままがっくり片膝をつく柊。
揺もありはしない。一瞬でも真剣に心配した自分が特大の大馬鹿に思えて脱力し、その
ままがっくり片膝をつく柊。
そして、ごく自然にその肩に「ぽん」と、労わる様な表情のまま手を添えるこなた。
「…やー、やっぱ弄るのおもちろぃわ、お兄さん。ぐっじょぶ、パーカー」
「だぁからぁああああ!まぁだ言いやがるのかそのネタをよぉぉぉぉぉおおお!?」
「だぁからぁああああ!まぁだ言いやがるのかそのネタをよぉぉぉぉぉおおお!?」
漢、柊蓮司大絶叫。
しかしこなたはまったく動じていない。この娘は余程の馬鹿か余程の大物かのどっち
かなんだなと当りをつけ(多分前者だと内心で確信を持ちつつ)とりあえず立ち上がる。
もうすっかり日が暮れかけているのだ。帰らないと叔母さん達に心配をかけてしまいか
ねない。
かなんだなと当りをつけ(多分前者だと内心で確信を持ちつつ)とりあえず立ち上がる。
もうすっかり日が暮れかけているのだ。帰らないと叔母さん達に心配をかけてしまいか
ねない。
「と、その前に…泉、さっき最後の化け物を始末する直前にお前…」
「待ってって声を掛けたこと?」
「待ってって声を掛けたこと?」
最後に確認したいことを切り出す前に、当のこなたが口を開いた。
「あぁ、あの時お前普通に命狙われてただろ?なのに自分を殺そうとしてた、しかも
どう贔屓目に見ても怪物にしか見えないものを仕留める前に制止がかかったのが気にな
ってな…なんか、あったのか?」
どう贔屓目に見ても怪物にしか見えないものを仕留める前に制止がかかったのが気にな
ってな…なんか、あったのか?」
その言葉に続き…少しの間をおいてこなたは話し始めた。
「あの化け物…かがみんの姿、してたんだ。襲われる寸前まで」
一瞬の沈黙。
柊はこなたの言葉を聞くや否や、即座に懐に忍ばせていた0-Phoneを取り出した。
柊はこなたの言葉を聞くや否や、即座に懐に忍ばせていた0-Phoneを取り出した。
前の0-Phoneが壊れた日の夕方には何故か新品の0-Phoneが届いていて…この0-Phoneの
メモリからは何故かアンゼロットへの直アドレスが「削除不能設定で」登録されてたの
だが、まぁ細かい文句は言うまいと納得させ二秒でアンゼロットを呼び出す。
メモリからは何故かアンゼロットへの直アドレスが「削除不能設定で」登録されてたの
だが、まぁ細かい文句は言うまいと納得させ二秒でアンゼロットを呼び出す。
余計な事を伝えに来るときは即座に繋がりやがるアンゼロットとの回線だが、何故か
この肝心なときに限ってえらくつながりが悪い。
この肝心なときに限ってえらくつながりが悪い。
軽く10コール近く呼び出し音が鳴った後、辛うじて音が拾えるかどうかの音波状況の
中、最悪の疫病神の声が聞こえだした。
中、最悪の疫病神の声が聞こえだした。
「はいはいもしもーし♪あら柊さん、どうなさいました?」
「どうもこうもねぇ!!アンゼロットっ!前の『エンドレス・サマー事件』に関与し
た侵魔の情報を送れ!あんま時間がねぇんだ!二秒でやれ二秒でっ!!」
た侵魔の情報を送れ!あんま時間がねぇんだ!二秒でやれ二秒でっ!!」
「落ち着いてください柊さん、あぁ唾が飛びます静かに話してください」
「電話越しでどぉやって唾ぁ飛ばすんだこらぁっ!?冗談こいてる場合じゃないんだ
っ!俺の従姉妹が事件に深くかかわってる可能性が出やがったんだよっ!!」
っ!俺の従姉妹が事件に深くかかわってる可能性が出やがったんだよっ!!」
激しく電話越しにまくし立てる柊の必死な口調に、事情を察したアンゼロットの声色
が変わる。
が変わる。
「わかりました、少々データ量が大きくなるので0-Phoneに圧縮データを送信します
けど、件の時間ループ現象の影響で回線に大きな負荷が掛かってます。
あまり余裕がない状況になりつつありそうですので、口頭でも簡単に概要を説明しま
す。落ち着いてお聞きなさい」
けど、件の時間ループ現象の影響で回線に大きな負荷が掛かってます。
あまり余裕がない状況になりつつありそうですので、口頭でも簡単に概要を説明しま
す。落ち着いてお聞きなさい」
「回線に負荷って…そんなヤバイ状況なのか!?」
通常、霊界を経由して通話可能な0-Phoneは異世界とでも異次元とでも会話可能であり
その回線が負荷を受ける、および不通になるのはかなり特異な状況以外ありえない。
その回線が負荷を受ける、および不通になるのはかなり特異な状況以外ありえない。
「ありていに言えば、その問題の侵魔『夢を喰らうもの』の時間巻き戻り現象を察知
した『世界結界』が、最悪さいたま一帯を『切り離し』隔離する方向に稼動しているよ
うなのです。
現に増援のウィザードを送ってはみたのですが…ただの一回も『繰り返し現象を受け
つつある』さいたま一帯にたどり着けないままに終わっています」
した『世界結界』が、最悪さいたま一帯を『切り離し』隔離する方向に稼動しているよ
うなのです。
現に増援のウィザードを送ってはみたのですが…ただの一回も『繰り返し現象を受け
つつある』さいたま一帯にたどり着けないままに終わっています」
「前の事件のときは全世界が巻き込まれたらしいからな。『世界結界』も学習したっ
てか。性質(たち)悪ぃ冗談だぜ、まったく」
てか。性質(たち)悪ぃ冗談だぜ、まったく」
「愚痴るのはあとで。『夢喰らうもの』は『契約を結んだ人間の心に巣食い、精神と
魂を同化させる』性質があります。
同化が完全に終わってる場合、物理的に駆除しただけでは契約者が昏睡に陥り、なお
かつ相手に逃げられるという最悪の結果を招きかねません」
魂を同化させる』性質があります。
同化が完全に終わってる場合、物理的に駆除しただけでは契約者が昏睡に陥り、なお
かつ相手に逃げられるという最悪の結果を招きかねません」
アンゼロットが淡々と、恐ろしい事実を電話越しに話す。スピーカー受信に切り替え
ている為それを聞くことができたこなたが青い顔をするのがはっきりわかる。
ている為それを聞くことができたこなたが青い顔をするのがはっきりわかる。
「概ねは解った。んで、対策はっ!どうやりゃその侵魔をかがみから叩き出せる!?」
必死の表情で捲し立てる柊。何があっても日の当たる世界に生きている従姉妹を巻き
込みたくない一心で叫ぶその声に、アンゼロットは数瞬の沈黙の後に言葉を続けた。
込みたくない一心で叫ぶその声に、アンゼロットは数瞬の沈黙の後に言葉を続けた。
「あれの完全な駆除・撃滅には『夢使い』の秘術・『夢語り』が必須になります。
『夢語り』を利用して被害者の夢、すなわち精神世界にダイブし、その内部にいるだろ
う『夢喰らうもの』と、被害者のリンクを断ち切る必要があるのです」
『夢語り』を利用して被害者の夢、すなわち精神世界にダイブし、その内部にいるだろ
う『夢喰らうもの』と、被害者のリンクを断ち切る必要があるのです」
「ってぇ!俺ぁそんなのつかえねぇぞっ!?増援のウィザードはどうしたっ!?」
「だから先ほども申し上げたではありませんか。増援は『事件のおこりつつある』
さいたま一帯にたどり着けもしないのです。
しかし…座してただ見るだけというわけにも参りませんね」
さいたま一帯にたどり着けもしないのです。
しかし…座してただ見るだけというわけにも参りませんね」
一瞬の沈黙の後、アンゼロットはいきなりこんな事を言い出した。
「柊さん。今いる場所からわたくしが10を数え終わるまで動かないでくださいね?」
思い切り嫌な予感がする。
だが現状を鑑みる魔剣使いの柊では状況を打開できず、こなたは守護霊の庇護があれ
どもウィザードではない為これまた事件解決には役に立てない。
どもウィザードではない為これまた事件解決には役に立てない。
胸中で膨れ上がる嫌な予感をあえて黙殺し…アンゼロットがゆっくり数える10カウン
トを耳にしつつそのまま待つ。
トを耳にしつつそのまま待つ。
「…あ、流れ星」
などと、不意にこなたがそんな事を言い…柊の頭上当りを指差した。急激に膨れ上が
る嫌な予感。
る嫌な予感。
アンゼロットのカウントは続く…あと5…あと4…あと3
「あ~~~…な、なんかこっちにおちそーな気がするなぁ…あの流れ星」
などと言いながら、ちゃっかりグラウンドの水のみ場の影に隠れるこなた。嫌な予感
が柊の脳内でどんどん大きくなる…カウント3…2…1…。
が柊の脳内でどんどん大きくなる…カウント3…2…1…。
「やぁあああああっぱりぃいいいい!こぉなるのかよぉぉぉおおおおお!?」
カウントゼロ。その瞬間、柊蓮司の後頭部に
遥か彼方から矢のように舞い落ちてきた、通学カバンよりやや大きいサイズの金属質
の光沢を放つ『何か』が
の光沢を放つ『何か』が
まさに狙い済ましたかのような精度で 見事に激突した!
凄まじい轟音とともに黄昏空に跳ね上がる『それ』は一瞬の間をおいて校庭に落下し
て、甲高い音を立てて二・三度バウンド。その後にやっと静止した。
て、甲高い音を立てて二・三度バウンド。その後にやっと静止した。
「柊さんのところに先ほど届いた運搬用ケースはプラーナを吸収しやすい希少金属で
ある、メテオライトで作った特注品です。これならば世界結界を貫通するかもと思った
のですが、無事に荷物が着いたようで安心しました♪…あの、柊さん?」
ある、メテオライトで作った特注品です。これならば世界結界を貫通するかもと思った
のですが、無事に荷物が着いたようで安心しました♪…あの、柊さん?」
あっけらかんとトンデモナイ事を言うアンゼロット。スピーカーからの声を聞いた後
に、校庭に転がっていたその0-Phoneを代わりに受け取ったこなたは、何食わぬ顔でこ
うアンゼロットにいってのけた。
に、校庭に転がっていたその0-Phoneを代わりに受け取ったこなたは、何食わぬ顔でこ
うアンゼロットにいってのけた。
「柊 蓮司さんのクラスメイトの者ですが…おもしろい男を 亡くしました」
何故か遠い目をするこなた。その直後、むくりと復活してのけた柊がひったくるよう
に0-Phoneを奪う。
に0-Phoneを奪う。
「ってえ!勝手に殺すなっ!あと『も』と『ろ』が余計だっ!で、何なんだこの荷物
はっ!?」
はっ!?」
などと言いながら、校庭に転がっていたケースを無造作に開封する。その中にはまる
で深海の蒼を濃縮したような光沢をはなつ、拳大の大きさの宝玉が収められていた。
で深海の蒼を濃縮したような光沢をはなつ、拳大の大きさの宝玉が収められていた。
「秘宝・夢見の宝玉です。これにプラーナを注ぎ込みつつ、対象の枕元にて握り砕け
ば、一度だけ『夢語り』と同じような魔法的効果を発揮します」
ば、一度だけ『夢語り』と同じような魔法的効果を発揮します」
アンゼロットの説明を耳にしつつ宝玉をしっかり握る柊。徐々に、夜が迫りつつある
中、真摯な表情のこなた。
中、真摯な表情のこなた。
「宝玉の使い所その他はあなたの判断に一任します、がんばって下さいね、柊さん」
その一言を残し、アンゼロットからの通信は途絶えた…。そして、夜がやってくる。
決意の表情のまま、黙って宝玉を握り締める柊の傍らで、こなたはごく自然な動作で
自分の携帯電話を取り出し、二・三言葉を交わす。
自分の携帯電話を取り出し、二・三言葉を交わす。
「あ、おと~さん?…うん、今日かがみん所に泊まるから…ん、平気へいき」
思わずギョッとした。さっきあれだけ危険な目に逢っておきながら、こなたは全く懲
りていない様子で自宅に電話で連絡を入れている…しかもかがみの所に泊まる、という
ことは即ち…。
りていない様子で自宅に電話で連絡を入れている…しかもかがみの所に泊まる、という
ことは即ち…。
「おまえまさか…ついて来るつもりなのかっ!泉っ!?」
「ん?当然そのつもりだけどっ♪」
「ん?当然そのつもりだけどっ♪」
さも当然のように言ってのけるこなた。携帯を折りたたみ、何食わぬ顔で鞄を拾い上
げて歩き始める。
一瞬の沈黙の後、柊は慌ててこなたの後を追って駆け出しつつ言葉を紡ぐ。
いくら霊的な庇護を受けている状況であれども、ただの一般人が侵魔の支配する精神
世界に足を踏み入れれば、恐らく間違いなくただ事ではすまないからだ。
げて歩き始める。
一瞬の沈黙の後、柊は慌ててこなたの後を追って駆け出しつつ言葉を紡ぐ。
いくら霊的な庇護を受けている状況であれども、ただの一般人が侵魔の支配する精神
世界に足を踏み入れれば、恐らく間違いなくただ事ではすまないからだ。
「お前さっきの話を聞いてなかったのかよっ!?相手は普通じゃないんだぞ!ただ
殺されるだけなら御の字、最悪『存在しなかった』事にされるかも知れないほどにヤ
バイ相手とドンパチするんだぞ!俺ぁ!」
殺されるだけなら御の字、最悪『存在しなかった』事にされるかも知れないほどにヤ
バイ相手とドンパチするんだぞ!俺ぁ!」
「知ってるよ?わかってるわかってる」
手をひらひらさせつつ言葉を続けるこなた。そこには一片の気負いも何もない。
いかにも自然体そのものにしか見えない態度のまま、顔を合わせないようにしながら
足元を見据え、言葉を続ける。
いかにも自然体そのものにしか見えない態度のまま、顔を合わせないようにしながら
足元を見据え、言葉を続ける。
手をひらひらさせつつ言葉を続けるこなた。そこには一片の気負いも何もない。
いかにも自然体そのものにしか見えない態度のまま、顔を合わせないようにしながら
足元を見据え、言葉を続ける。
いかにも自然体そのものにしか見えない態度のまま、顔を合わせないようにしながら
足元を見据え、言葉を続ける。
「だって、その『普通じゃない』化け物に、かがみんが、酷い目に合わされるかも
知れないってことじゃん?それ」
知れないってことじゃん?それ」
思わず息を呑む柊。パッと見に偏見が混ざっていた。
こなたは真剣に、友達のことを考え、恐怖を遭えて踏み越えてでも修羅場に踏み込も
うとしているのだ。
こなたは真剣に、友達のことを考え、恐怖を遭えて踏み越えてでも修羅場に踏み込も
うとしているのだ。
小刻みに震える身体を意志の力で押さえ込み、内心に吹き荒れているだろう恐怖を
も乗り越えようとしているのだ…その顔からははっきりと、強い意志の輝きが見て取
れる。
も乗り越えようとしているのだ…その顔からははっきりと、強い意志の輝きが見て取
れる。
「だったら、なおさらほっとけないっしょ。
かがみんはあたしの大事な友達。その友達が事件に巻き込まれてて、それを解決する
手段がそこにあって。
あたしはその事件がどんなものかを知ってる。ならほっとける…わけ、ないじゃん」
かがみんはあたしの大事な友達。その友達が事件に巻き込まれてて、それを解決する
手段がそこにあって。
あたしはその事件がどんなものかを知ってる。ならほっとける…わけ、ないじゃん」
顔を合わせないのは恐怖と戦う様子を悟られないようにするため。それがわかった
時に、柊はこなたを止める事を止めた。
この覚悟は説得なんかで折れるものではない。
時に、柊はこなたを止める事を止めた。
この覚悟は説得なんかで折れるものではない。
「…極力、こっちでもフォローはする。だが真剣(マジ)でやべぇ橋だぞ?泉」
「ん、わかってる。…あんがと、パーカー」
「…それは止めろって…ったく、ナリはちっちゃいのに大したやつだよ、お前は」
「ん、わかってる。…あんがと、パーカー」
「…それは止めろって…ったく、ナリはちっちゃいのに大したやつだよ、お前は」
もう苦笑するしかできる事はない。
苦笑交じりのまま、柊はこなたの頭にぽんと手をのせ、そのままワシワシと髪を撫
でていた。
子ども扱いにムクレ、手足を振り回し「はなせー」などというこなたの姿を見なが
ら柊は、この事件が無事に解決できることを心から願った。
でていた。
子ども扱いにムクレ、手足を振り回し「はなせー」などというこなたの姿を見なが
ら柊は、この事件が無事に解決できることを心から願った。
そして、夜がやってくる。誰も知らない夢の中の世界での、決戦の時が。