ミドルその1
深い森の中。
柊は頭から地面に突き刺さっていた。
両足が地面から生えているようなシュールな光景だ。
地面から生えた両足はしばらくそのままぴくぴく動いていたが、気がついたのかなんとか自力で地面から抜け出した。
柊は頭から地面に突き刺さっていた。
両足が地面から生えているようなシュールな光景だ。
地面から生えた両足はしばらくそのままぴくぴく動いていたが、気がついたのかなんとか自力で地面から抜け出した。
「いってぇ……。ここはどこだ……ってそうだ!」
何かに気づいたように慌てて周囲を探す柊。
そしてすぐ近くに目的のものを発見して安堵する。
そしてすぐ近くに目的のものを発見して安堵する。
「よ、良かった、魔剣はちゃんとあるな」
昔、似たような目に遭って魔剣をなくしたことはちょっぴりトラウマになっていたらしい。
近くに刺さっていた魔剣と、落ちていた箒(テンペスト)を回収し、なくさないように月衣に収納する。
箒もアンゼロットに返却しないと後で何を言われるかわからないからな、と心の中で呟く。
近くに刺さっていた魔剣と、落ちていた箒(テンペスト)を回収し、なくさないように月衣に収納する。
箒もアンゼロットに返却しないと後で何を言われるかわからないからな、と心の中で呟く。
「それにしても、本当にここはどこだ?
海からだいぶ飛ばされたみたいな感じだが……」
海からだいぶ飛ばされたみたいな感じだが……」
時刻はおそらく深夜。
空には満月が浮かんでいるし、飛ばされてから時間もかなり過ぎているようだ。
学校行けなかったなあ、と内心落ち込みながら月衣から0-Phoneを取り出す。
とりあえずアンゼロットあたりに連絡をとれば迎えぐらいは来るだろう。
そう思って0-Phoneを操作するが、ツーツーという電子音が聞こえてくるだけで全然回線が繋がらない。
不審に思って画面を確認すると、圏外と表示されていた。
霊界回路を使用している0-Phoneは滅多なことでは通信がとぎれないはずなのだが。
空には満月が浮かんでいるし、飛ばされてから時間もかなり過ぎているようだ。
学校行けなかったなあ、と内心落ち込みながら月衣から0-Phoneを取り出す。
とりあえずアンゼロットあたりに連絡をとれば迎えぐらいは来るだろう。
そう思って0-Phoneを操作するが、ツーツーという電子音が聞こえてくるだけで全然回線が繋がらない。
不審に思って画面を確認すると、圏外と表示されていた。
霊界回路を使用している0-Phoneは滅多なことでは通信がとぎれないはずなのだが。
「なんだ? もしかしてさっきの衝撃で壊れたか?」
まいったな、と頭をかく。
「仕方ない、とりあえず近くに何かないか探してみるか」
0-Phoneを制服のポケットに押し込む。
とりあえず、箒を使って上空から周囲を確認してみればいいだろう。
そう思って柊が月衣から箒を取り出そうとした時。
とりあえず、箒を使って上空から周囲を確認してみればいいだろう。
そう思って柊が月衣から箒を取り出そうとした時。
「ほお、随分と可愛らしい侵入者だな」
闇に覆われた森の奥から少女の声が聞こえてきた。
「誰かいるのか?」
柊がそちらをむくと、闇に慣れてきた目に二人の少女の姿が映った。
同じデザインの制服を着た二人組の少女。
こんな時間にこのような森の中にいるということは、もしかするとウィザードなのだろうか。
確かに背の高い方の少女は頭から突起物が二本突き出ていて、関節もまるでロボットみたいに見える。
その見た目からすると、人造人間だろうか。
だとすれば、あの二人はウィザードで、見たことのない制服も輝明学園のどこかの分校のものだったりするのかもしれない。
見た目は二人とも外人っぽいが、言葉は日本語だし。
さっきまでいた場所を考えると、かなり遠くまで飛ばされたなあ、と思いながらも柊は現在地を確認しようと二人に話しかけた。
同じデザインの制服を着た二人組の少女。
こんな時間にこのような森の中にいるということは、もしかするとウィザードなのだろうか。
確かに背の高い方の少女は頭から突起物が二本突き出ていて、関節もまるでロボットみたいに見える。
その見た目からすると、人造人間だろうか。
だとすれば、あの二人はウィザードで、見たことのない制服も輝明学園のどこかの分校のものだったりするのかもしれない。
見た目は二人とも外人っぽいが、言葉は日本語だし。
さっきまでいた場所を考えると、かなり遠くまで飛ばされたなあ、と思いながらも柊は現在地を確認しようと二人に話しかけた。
*****
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは真祖の吸血鬼である。
不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)とも呼ばれ恐れられる、最強の悪の魔法使い。
不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)とも呼ばれ恐れられる、最強の悪の魔法使い。
しかし、それも過去のこと。
大戦の英雄サウザンド・マスターの呪い≪登校地獄≫によって魔力を封印され、学生として日々暮らすことを強要されている。
それでも、今日の様な満月の夜であればいくらかはマシだ。
従者の茶々丸を連れ、夜の森を散策していた。
それでも、今日の様な満月の夜であればいくらかはマシだ。
従者の茶々丸を連れ、夜の森を散策していた。
学校帰りのままの制服姿で森を歩く。
上機嫌というほどではないが、木々の間から漏れる月光は心地よい。
そうして歩いていたエヴァンジェリンの感覚に何かがひっかかった。
森の中、学園結界内に突然発生した魔力の力場。
ほんの僅かな間で霧散したが、明らかな異常。
上機嫌というほどではないが、木々の間から漏れる月光は心地よい。
そうして歩いていたエヴァンジェリンの感覚に何かがひっかかった。
森の中、学園結界内に突然発生した魔力の力場。
ほんの僅かな間で霧散したが、明らかな異常。
「ふん、侵入者か……茶々丸、いくぞ」
「はい、マスター」
ここ麻帆良の警備員をさせられているからということもあるが、突然結界内部に侵入してくる相手には興味を覚えた。
エヴァンジェリンは己の従者を連れ、異常を感知した場所へと向かう。
エヴァンジェリンは己の従者を連れ、異常を感知した場所へと向かう。
そして彼女はその少年に出会った。
学園都市である麻帆良でも見たおぼえのない制服姿。
茶色い髪の、八歳ほどに見える少年に。
その少年は周囲をきょろきょろ見回して何か独り言を呟いているようだ。
茶色い髪の、八歳ほどに見える少年に。
その少年は周囲をきょろきょろ見回して何か独り言を呟いているようだ。
「ほお、随分と可愛らしい侵入者だな」
そう声をかけると、ぱっと弾かれたように振り向く。
「誰かいるのか?」
その返答にエヴァンジェリンは少し面白そうな表情を浮かべる。
こんな夜の森の中で急に人が現れたというのに、多少は驚いたようではあるが、怯えても恐れてもいない。
もしも彼が単に道に迷っただけの少年だったとしても、これだけ冷静な反応を返すことはないだろう。
間違いなく『こちら側』の人間だ。
こんな夜の森の中で急に人が現れたというのに、多少は驚いたようではあるが、怯えても恐れてもいない。
もしも彼が単に道に迷っただけの少年だったとしても、これだけ冷静な反応を返すことはないだろう。
間違いなく『こちら側』の人間だ。
少年はエヴァンジェリンと茶々丸の方を見て少し何かを考えているようだ。
「なあ……悪いけど、ここがどこか教えてくれねえか?」
考えていたあげく、このようなことを訊いてきた。
エヴァンジェリンからすれば、とぼけているとしか思えない。
エヴァンジェリンからすれば、とぼけているとしか思えない。
「ふん、しらばっくれるつもりか?
まあいい、教えてやる。ここは麻帆良……麻帆良学園都市さ、侵入者」
まあいい、教えてやる。ここは麻帆良……麻帆良学園都市さ、侵入者」
「……じゃない? ……侵入者って……」
エヴァンジェリンの言葉に何か疑問でもあったのか、少年は首をかしげて何か呟いている。その様子に苛立ちを感じ、吸血鬼の少女は脅すように言った。
「子供だからな、殺しはしない……。
まあ、せっかくの満月だ。血ぐらいはもらうがな」
まあ、せっかくの満月だ。血ぐらいはもらうがな」
鋭い牙を隠しもせず、見せつけるようにニヤリと笑う。
普通の少年であったなら、驚くなり怯えるなりしたであろう。
普通の少年であったなら、驚くなり怯えるなりしたであろう。
「血? ってことはお前、吸血鬼か」
だが、少年は平然とそう返してきた。
「ふん、吸血鬼を見ても驚かないのだな」
やはり『こちら側』――魔法と関係する人種だったか。
しかも、年齢の割に吸血鬼を見ても驚かない程度には経験を積んでいる。
だとしても、エヴァンジェリンは従者も連れているし、なにより今日は満月。
この程度のガキならば軽くあしらえるだろう。
適当に拘束して学園長のジジイのところにでも突き出せば終わりだ、とエヴァンジェリンが考えていると。
少年はエヴァンジェリンの言葉をどう受け取ったのか、ぶっ飛んだ返答をしてきた。
しかも、年齢の割に吸血鬼を見ても驚かない程度には経験を積んでいる。
だとしても、エヴァンジェリンは従者も連れているし、なにより今日は満月。
この程度のガキならば軽くあしらえるだろう。
適当に拘束して学園長のジジイのところにでも突き出せば終わりだ、とエヴァンジェリンが考えていると。
少年はエヴァンジェリンの言葉をどう受け取ったのか、ぶっ飛んだ返答をしてきた。
「あ? 学生やってる吸血鬼なんか珍しくもないだろ」
その瞬間、周囲の空気がまるで凍り付いたように変わった。
*****
「なあ……悪いけど、ここがどこか教えてくれねえか?」
とりあえず、現在位置の確認。
こんな夜に森を徘徊してる女子二名もなかなか謎ではあるが、一番切実な問題を先に解決してしまおう。
こんな夜に森を徘徊してる女子二名もなかなか謎ではあるが、一番切実な問題を先に解決してしまおう。
「ふん、しらばっくれるつもりか?
まあいい、教えてやる。ここは麻帆良……麻帆良学園都市さ、侵入者」
まあいい、教えてやる。ここは麻帆良……麻帆良学園都市さ、侵入者」
その小柄な少女の返答に思わず首をかしげる。
「輝明学園じゃない?
まあ、他の学園にウィザードがいてもおかしくないが……けど侵入者ってどういうことだ?」
まあ、他の学園にウィザードがいてもおかしくないが……けど侵入者ってどういうことだ?」
日本のウィザード養成施設としては輝明学園が一番有名であるのだから、彼女達もその生徒なのだと思っていたがどうも外れたらしい。
輝明学園なら分校が多いから、どこの分校か聞ければ場所がわかったんだけどなあ。
少女が言う麻帆良学園とやらが何県あたりにあるのか確認しなければ。
名前からして日本にあるということは確実のようだが。
柊がそう考えていると、小柄な少女は魔力を吹き出しながらニヤリと笑った。
輝明学園なら分校が多いから、どこの分校か聞ければ場所がわかったんだけどなあ。
少女が言う麻帆良学園とやらが何県あたりにあるのか確認しなければ。
名前からして日本にあるということは確実のようだが。
柊がそう考えていると、小柄な少女は魔力を吹き出しながらニヤリと笑った。
「子供だからな、殺しはしない……。
まあ、せっかくの満月だ。血ぐらいはもらうがな」
まあ、せっかくの満月だ。血ぐらいはもらうがな」
「血? ってことはお前、吸血鬼か」
やっぱり二人ともウィザードなのか、と納得する柊。
それならばこんな時間に出歩いているのも理由があるのだろう。
夜闇の魔法使い(ナイトウィザード)と呼ばれるくらいだ、ウィザード達の活動時間は夜が多い。
……その割には柊は、昼間からアンゼロットに拉致られることが多い気がするが。
むしろ学校のない夜にしてくれと頼みたいぐらいだ。
それならばこんな時間に出歩いているのも理由があるのだろう。
夜闇の魔法使い(ナイトウィザード)と呼ばれるくらいだ、ウィザード達の活動時間は夜が多い。
……その割には柊は、昼間からアンゼロットに拉致られることが多い気がするが。
むしろ学校のない夜にしてくれと頼みたいぐらいだ。
「ふん、吸血鬼を見ても驚かないのだな」
なんでもないような柊の反応に不満そうな、それでいて面白そうなものを見つけたような表情をする少女。
何故彼女がそんな反応をするのか柊にはいまいちわからなかった。
ウィザードなら吸血鬼は割といるのだし、学生やってる吸血鬼だって輝明学園をさがせばそれなりに存在する。
そう、別に珍しくもないだろう。そう思ったことをそのまま口にした。
何故彼女がそんな反応をするのか柊にはいまいちわからなかった。
ウィザードなら吸血鬼は割といるのだし、学生やってる吸血鬼だって輝明学園をさがせばそれなりに存在する。
そう、別に珍しくもないだろう。そう思ったことをそのまま口にした。
「あ? 学生やってる吸血鬼なんか珍しくもないだろ」
その言葉と同時に、明らかに周囲の温度が下がった。
柊は、間違いなく地雷を踏み抜いていた。
本人はまったく気づいていないが。
本人はまったく気づいていないが。
「ふ……ふふふふっ……ははははッ」
地を這うような低い声で笑う少女。不気味である。
「珍しくもないだと……ふ、ふふ、私を馬鹿にしているのかッ……!」
怒りで体を震わせる少女。
しかし、柊は自分の発言の影響にまったく気づいていない。
様子の変わった少女を見て首をかしげている。
しかし、柊は自分の発言の影響にまったく気づいていない。
様子の変わった少女を見て首をかしげている。
「どうかしたか?」
その全然わかっていない態度が引き金になった。
「氷爆(ニウィス・カースス)ッ……!」
少女が呪文と共に投げた魔法薬によって発生した氷が、柊に向かって吹雪の様に吹き付ける。
冷気で生まれた白い霧が視界を覆った。
冷気で生まれた白い霧が視界を覆った。
*****
「チッ、ガキ相手にやりすぎたか」
自分の魔法が生み出した霧を見てエヴァンジェリンは呟いた。
相手を殺すほどの魔力は込めていないが、怒りのあまり子供相手には派手にやりすぎた。
だが、これで侵入者を無力化できたのだから問題ないだろう、とエヴァンジェリンは従者に声をかける。
相手を殺すほどの魔力は込めていないが、怒りのあまり子供相手には派手にやりすぎた。
だが、これで侵入者を無力化できたのだから問題ないだろう、とエヴァンジェリンは従者に声をかける。
「茶々丸。アレは適当に回収しておけ」
「はい――ッ、マスター、魔力反応が!」
これで終わりだ、と思っていた矢先、茶々丸が声を上げる。
「ほう……」
霧が晴れていく。
目を細めてそれを見たエヴァンジェリンは楽しげに笑った。
少年は倒れもせず、しっかりと立っていた。
その両手には、身の丈に合わない巨大な剣が握られている。
魔術文字が刀身に刻まれた、炎を纏うその剣は明らかにマジックアイテムだ。
目を細めてそれを見たエヴァンジェリンは楽しげに笑った。
少年は倒れもせず、しっかりと立っていた。
その両手には、身の丈に合わない巨大な剣が握られている。
魔術文字が刀身に刻まれた、炎を纏うその剣は明らかにマジックアイテムだ。
「普通いきなり攻撃魔法撃つかっ!? 危ねーじゃねえか!」
「その剣……なるほど、従者か」
文句を言う少年を無視し、納得がいったように呟く。
先ほどまで徒手空拳だった少年が突然あのような剣を持っていたのだ。
間違いなくあの剣はアーティファクトだろう。
つまり、少年は魔法使いの従者(ミニステル・マギ)だということだ。
ならば、近くにマスターである魔法使いがいるはず。
そう結論づけたエヴァンジェリンは茶々丸に目で合図し、注意を促す。
しかし、少年はそんなエヴァンジェリン達の反応がまったく理解できていないようで、従者と呼ばれたことに対して文句を言っている。
先ほどまで徒手空拳だった少年が突然あのような剣を持っていたのだ。
間違いなくあの剣はアーティファクトだろう。
つまり、少年は魔法使いの従者(ミニステル・マギ)だということだ。
ならば、近くにマスターである魔法使いがいるはず。
そう結論づけたエヴァンジェリンは茶々丸に目で合図し、注意を促す。
しかし、少年はそんなエヴァンジェリン達の反応がまったく理解できていないようで、従者と呼ばれたことに対して文句を言っている。
「誰が従者だ、誰がっ!
――そりゃあ、アンゼロットにこきつかわれたり、
くれはに脅されていいように使われたりはしてるけどっ……!」
――そりゃあ、アンゼロットにこきつかわれたり、
くれはに脅されていいように使われたりはしてるけどっ……!」
ちなみに後半は小声で、二人の少女には届かなかったようだ。
「とぼけるのもいい加減にするのだな……茶々丸」
「イエス、マスター」
エヴァンジェリンの合図と同時に茶々丸が少年へと向かって突っ込んでいった。
体勢を低くし、右の拳を打ち込む。
ガイノイドである茶々丸の、人間よりも速いスピードでの突撃。
しかし少年は、それに反応し、横へ跳ぶことでその攻撃を回避する。
体勢を低くし、右の拳を打ち込む。
ガイノイドである茶々丸の、人間よりも速いスピードでの突撃。
しかし少年は、それに反応し、横へ跳ぶことでその攻撃を回避する。
「……ッ! だからっ、いきなり攻撃してくるなよ!
危ないって言ってるだろうがっ!」
危ないって言ってるだろうがっ!」
ギリギリで回避したように見えた割には、余裕なのか文句を言う少年。
そこへ、方向転換した茶々丸の蹴りが襲いかかる。
それを後ろへ跳んで回避する少年。
回避されても攻撃を続ける茶々丸。
人よりも高い身体能力を駆使した攻撃が繰り出される。
そこへ、方向転換した茶々丸の蹴りが襲いかかる。
それを後ろへ跳んで回避する少年。
回避されても攻撃を続ける茶々丸。
人よりも高い身体能力を駆使した攻撃が繰り出される。
だが繰り返し放たれる攻撃は、どれも回避されてしまい当たらない。
人外の速度で放たれた左の拳も、
それを回避したところを狙った右肘も、
足下を狙った足払いも回避される。
それを回避したところを狙った右肘も、
足下を狙った足払いも回避される。
経験に裏打ちされたその動き。
年齢に見合わない、体格的にも異常なその動きは茶々丸の計算を狂わせる。
見たところ、気を使っているわけでもない。
それでいて戦士系の魔法使いの様に自分に魔力供給を行っているのともまた違う。
彼の動きは確実に茶々丸の予測を上回っていた。
しかし、攻撃が当たらなくとも彼女からすればなんの問題もない。
年齢に見合わない、体格的にも異常なその動きは茶々丸の計算を狂わせる。
見たところ、気を使っているわけでもない。
それでいて戦士系の魔法使いの様に自分に魔力供給を行っているのともまた違う。
彼の動きは確実に茶々丸の予測を上回っていた。
しかし、攻撃が当たらなくとも彼女からすればなんの問題もない。
なぜなら。
「リク・ラク ラ・ラック ライラック!
氷の精霊17柱 集い来たりて 敵を切り裂け!
魔法の射手! 連弾・氷の17矢!」
氷の精霊17柱 集い来たりて 敵を切り裂け!
魔法の射手! 連弾・氷の17矢!」
エヴァンジェリンが詠唱と同時に両手に持っていた複数の魔法薬を投げる。
薬の容器が砕け散り、空中へと四散する液体が媒介となって氷の矢が放たれる。
それと同時に茶々丸が少年から離れる。
薬の容器が砕け散り、空中へと四散する液体が媒介となって氷の矢が放たれる。
それと同時に茶々丸が少年から離れる。
そう、これが狙い。
従者である茶々丸は敵を倒す必要はなく、主人であるエヴァンジェリンの詠唱時間を稼げばいいのだから。
彼女の攻撃を回避し、次の攻撃に備えていたところへの突然の魔法攻撃。
17本の氷の矢はそのまま直撃するかに見えた。
17本の氷の矢はそのまま直撃するかに見えた。
「っだあああああ!」
少年は手に持ったまま、使っていなかった魔剣を勢いよく薙ぐ。
空をはしる軌跡と共に生まれた衝撃波で、エヴァンジェリンの放った氷の矢が相殺された。
その光景にエヴァンジェリンの心が躍る。
空をはしる軌跡と共に生まれた衝撃波で、エヴァンジェリンの放った氷の矢が相殺された。
その光景にエヴァンジェリンの心が躍る。
「ははっ、それを防ぐか! 面白い!」
そして次の魔法を詠唱するために魔法薬を取り出す。
一度少年から離れた茶々丸も、再び少年へと突撃し、右の拳を突き出す。
一度少年から離れた茶々丸も、再び少年へと突撃し、右の拳を突き出す。
「――さすがに俺も、問答無用でこれだけやられりゃ、黙ってるわけにはいかねえな」
そう呟いて少年は魔剣を両手で握る。
そして茶々丸の攻撃を、体勢を低くして彼女の懐へと飛び込むことで回避する。
そしてそのまま下段から上へと剣を振り上げた。
これまで消極的だった少年の突然の行動。
茶々丸はその攻撃をなんとか左腕で防ぐ。
しかし、防ぎきれずに左腕の表面に細かなひびが入る。
そして茶々丸の攻撃を、体勢を低くして彼女の懐へと飛び込むことで回避する。
そしてそのまま下段から上へと剣を振り上げた。
これまで消極的だった少年の突然の行動。
茶々丸はその攻撃をなんとか左腕で防ぐ。
しかし、防ぎきれずに左腕の表面に細かなひびが入る。
「――ッ、左腕損傷。戦闘への使用不可――」
茶々丸が人間であったなら、痛みで動きが鈍ったかもしれない。
しかし、彼女は人ではなく、人の姿をしているだけ。
痛覚を持たない機械、ガイノイドなのだ。
片腕が使用不能になろうともカウンターで蹴りを繰り出す。
しかし、彼女は人ではなく、人の姿をしているだけ。
痛覚を持たない機械、ガイノイドなのだ。
片腕が使用不能になろうともカウンターで蹴りを繰り出す。
「――っと」
至近距離からの一撃。
それを体を反らすことできわどくも回避する少年。
だが、ギリギリで回避したため、体勢を崩し、隙が生まれた。
そこへ右手で追い打ちをかける。
それを剣で受けることで防ぐ少年。
その勢いのまま、背中から倒れ込み、茶々丸が少年に馬乗りになったような状態になる。
茶々丸はその状態から少年を押さえ込もうとする。
それを体を反らすことできわどくも回避する少年。
だが、ギリギリで回避したため、体勢を崩し、隙が生まれた。
そこへ右手で追い打ちをかける。
それを剣で受けることで防ぐ少年。
その勢いのまま、背中から倒れ込み、茶々丸が少年に馬乗りになったような状態になる。
茶々丸はその状態から少年を押さえ込もうとする。
「こ、んのおぉっ!」
だが、剣を振り上げられ、巴投げの要領で投げ飛ばされる。
宙を舞い、森の木へと叩きつけられる、その寸前で体勢を整える。
木の幹を蹴り、反動で起きあがったばかりの少年へと渾身の一撃を繰り出す。
それを横へと跳んで回避した少年。
宙を舞い、森の木へと叩きつけられる、その寸前で体勢を整える。
木の幹を蹴り、反動で起きあがったばかりの少年へと渾身の一撃を繰り出す。
それを横へと跳んで回避した少年。
「氷結 武装解除(フリーゲランス エクサルマティオー)!」
そこにエヴァンジェリンの魔法が襲いかかる。
少年はそれを魔剣で受ける。
先ほどまでの攻撃魔法を魔剣で防げていたことからの判断であったが、それは今回はその選択は失策だった。
少年はそれを魔剣で受ける。
先ほどまでの攻撃魔法を魔剣で防げていたことからの判断であったが、それは今回はその選択は失策だった。
「――なっ!?」
魔法を受けた魔剣が少年の手を離れ、宙を舞う。
エヴァンジェリンの使った魔法は相手に傷を負わせるものではなく、その武装を解除するための魔法。
丸腰になった少年へと茶々丸が襲いかかる。
それを見た少年が表情を歪ませる。
エヴァンジェリンの使った魔法は相手に傷を負わせるものではなく、その武装を解除するための魔法。
丸腰になった少年へと茶々丸が襲いかかる。
それを見た少年が表情を歪ませる。
「悪いっ!」
その言葉と共に、少年は茶々丸の肩を踏み台にして跳ぶ。
回転しながら宙を舞う魔剣へと手を伸ばし、見事につかみ取る。
そして茶々丸の背後へと着地し、エヴァンジェリンの方へと駆けた。
回転しながら宙を舞う魔剣へと手を伸ばし、見事につかみ取る。
そして茶々丸の背後へと着地し、エヴァンジェリンの方へと駆けた。
「くっ……! 魔法の射手(サギタ・マギカ)!」
少年へと闇の矢を打ち出すエヴァンジェリン。
だが、少年は剣でそれを防ぎ、足を止めずにエヴァンジェリンへと迫る。
茶々丸が追おうにも、風の加護を受けたかのようなその速度には追いつけない。
そして、エヴァンジェリンまであと一歩の距離まで迫ったところで。
だが、少年は剣でそれを防ぎ、足を止めずにエヴァンジェリンへと迫る。
茶々丸が追おうにも、風の加護を受けたかのようなその速度には追いつけない。
そして、エヴァンジェリンまであと一歩の距離まで迫ったところで。
先ほどのエヴァンジェリンの魔法で凍り付いた地面に足をとられ、盛大に転んだ。
べしゃっ、という間の抜けた効果音が聞こえた気がする。
べしゃっ、という間の抜けた効果音が聞こえた気がする。
「…………」
「…………」
沈黙が空間を支配する。
茶々丸は無言で少年を押さえ込み、エヴァンジェリンは顔を引きつらせている。
「――ふ、ふふ……こいつは本当に私を馬鹿にしているのか?
ここまであれだけの身体能力を見せておきながらこのタイミングで転ぶなどと……!」
ここまであれだけの身体能力を見せておきながらこのタイミングで転ぶなどと……!」
そして怒りのまま、少年の頭を踏みつける。
「とにかく、そこのガキ!
その剣から手を離せ。さもなくばこの距離で魔法を撃ち込む」
その剣から手を離せ。さもなくばこの距離で魔法を撃ち込む」
「ぐ……」
その言葉を聞いた少年の手から、剣が消える。
そこへ残るはずの仮契約カードを奪おうと、剣が消えたあとへと視線を移すエヴァンジェリン。
しかし、そこには何も残っていない。
そこへ残るはずの仮契約カードを奪おうと、剣が消えたあとへと視線を移すエヴァンジェリン。
しかし、そこには何も残っていない。
「む? ガキ、カードはどこへやった」
少年からの答えを聞くために頭から足を離すエヴァンジェリン。
「……カード? んなもん持ってねえよ」
「しらばっくれるのも大概にするんだな、ガキ。
どう見てもあれはアーティファクトだろう。仮契約カードを出せ」
どう見てもあれはアーティファクトだろう。仮契約カードを出せ」
「はあ? なんだそりゃ。
だいたい、人のことをガキだって言ってるが、お前の方がガキだろ」
だいたい、人のことをガキだって言ってるが、お前の方がガキだろ」
そう、少年――柊の実年齢からすれば、エヴァンジェリンの見た目の年齢は間違いなく年下に見える。
自分の年齢が下がっていること、現在の自分の外見年齢がエヴァンジェリンの見た目よりも年下であることを完全に忘れた台詞。
自分の年齢が下がっていること、現在の自分の外見年齢がエヴァンジェリンの見た目よりも年下であることを完全に忘れた台詞。
「誰がガキだッ!!」
その迂闊な発言によって、柊の側頭部にエヴァンジェリンの怒りのこもった蹴りが見事に決まり――柊の意識は飛んだ。