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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第05話

最終更新:

nwxss

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だれでも歓迎! 編集
何かが腐ったような臭いが立ちこめる。
くぐもった化け物のうなりと咆哮、剣戟と銃撃の音が響く。
清浄であるべき境内に忌まわしい光景が広がる。

「くふっ……」

かみしめた口元から息が漏れる。

不浄なるものが神域に跋扈する。
こんなことは許されるべきではない。
かがみは怒りに満ちた目で化け物たちを見つめていた。

だが、からだじゅうが熱くなり、とても息苦しい。
視界が歪み、からだがふらつく。

このままでは立っていられそうもない。
つかさを残して倒れたくはない。
でも、もうもたない!

そのときであった。

「かがみ! つかさ!」

その声に、張り詰めていた心がゆるむ。
走ってくる声の主に心当たりがあったから。
安心して頼ることができる、かけがえのない存在。
生まれてからいままで、ずっと自分を支え続けてくれた人。

声の主はかがみとつかさの母、柊みき。
ときおり自分の年齢を17歳だと自称して周囲をわかす、若々しい容貌の女性である。

「あ……」

その姿を見たかがみの目に涙がにじみだす。
足の力が抜けそうになりかけたが、なんとか立ち直る。
なにがあろうと、今は倒れてられないのだから。

「大丈夫? かがみ、つかさ」

問いかける母はなぜか巫女服を着ている。
が、理由を問う気にはならなかった。
もっと異常な事態が、まわりで展開していたから。

神楽殿の屋根の上に立つ女性が、かかえた棒から光の弾丸を撃ち出す。
巨大な刃物を手にした蓮司が斬りかかる。
変質者のような男が奇妙な動きをする。

まるでファンタジー映画の中にでも入りこんだかのようであった。

「ねえかがみ、本当に大丈夫なの?」

その言葉に、少しだけぼうっとしていた気分を立て直す。
だが、作り笑顔で自分は大丈夫だと答えを返したとき、ふと気づく。

抱きついていたつかさの感触がないことに。

「つかさ!」

あわててつかさの姿を探す。
大事な妹が無事であるように祈りながら。

18年間、ずっといっしょに生きてきた半身。
家族の中で最も近い場所にいる存在。
それほどまでに大事な妹を失う恐怖。

どこ? どこにいるの?
つかさ! お願い、無事でいて!

心の中に悲鳴が飛びかう。
必死で探すものの、どうしても見つからない。
もしや戦いに巻き込まれてしまったのではないか。
そんな想いが染み出して、ついには叫び声をあげそうになる。

そのとき、探し続けていたつかさの声が聞こえてきた。

「お母さん…… ふええん、怖いよう……」

見ると母の存在に気づいたつかさがみきに抱きついていた。

かがみはホッとする。
と共に、自分のあわてていた様を思い返し顔を赤らめる。
そんなかがみと目があったみきは、無言でほほえむ。
かがみは苦笑いを返すのが精一杯であった。

一方で強く抱きついて泣きじゃくるつかさに、みきは優しく話しかける。

「もう大丈夫。みんな蓮司くんたちがやっつけてくれるわよ」

ふと、みきの腕に見慣れないものがついていることに気づく。

それは腕につけるタイプの弓であった。
普通の弓と違って矢は装備されていない。
代わりに扇のように広げられている札が弓の部分に貼り付けられていた。

だがその弓に疑問を抱く余裕はなかった。
キマイラが蓮司に向けて再び炎を吐いたのだ!

「ダークバリア!」

轟音を切り裂くような声が聞こえた。
同時に、黒い球状の塊が蓮司に向かっていく。

塊は蓮司と炎の間に割り込み、炎を勢いよく吸い込みだす。
わずかながら吸い込みきれずに残った炎はあった。
だがそれを、蓮司はウィッチブレードで蹴散らす。

「くらいやがれ!」

蓮司はそのままキマイラに魔剣をふるう。
重さなど感じていないかのように。
美しい、とかがみは思わずその姿に見とれてしまっていた。



ふと我に返って、頭をふるかがみ。

気を取り直して声の主を探す。
すると、みきの後ろ、少し離れた場所に人影が。
赤羽くれは、かがみたちが幼いころから慕っている人であった。

その腕には、みきと同じような奇妙な弓が。

「くれ…… 」

声をかけようとしたそのとき、かがみは気づく。
その目がキマイラに向けられていることに。
そしてその目が怖いほどに真剣であることに。

いま、くれはの気をそらしてはいけない。
そう思ったかがみは、みきに聞いてみた。
ここで、なにが起きているのかを。
くれはたちが、なにをしているのかを。

幼いころ、怖い夢を見た時のように優しい微笑を返すみき。
だが、抱きついているつかさをかがみの元に返すと、くるりと背を向ける。
そしてふりむきもせずに、あとで話すと言うだけだった。

「ああっ、もう。 いったい、何がどうなってるのよ……」

いらだちを抑えきれずにかがみはつぶやく。
噴き出す汗を拭き取ろうともせずに。

目の前では理由もわからない現象が続けざまに起きている。
ただ黙って見ていることしかできないことが悔しい。

ゆえに、みきに問いかけた時、既にかがみには覚悟ができていた。

いま目の前で起こっている事態はかなり異常である。
だから、どんな答えがこようと動揺するつもりはなかった。
たとえこれが、自分たちを引っかけるためのドッキリだったとしても。

だが、これは違う。
ドッキリなどというものでは決してありえない。

そのことにだけは、もう気づいていた。

化け物の吐く炎で周囲は暑くなっている。
爆発が起きるたびに強い風が巻き起こっている。
それらを全て自分の肌で感じている。

これらが作り物ではないことははっきりしていた。

だが、この現象を説明してくれるものはいなかった。
今までは。



この現象を説明してくれるものがいるなら、悪魔だってかまわない。
そうかがみが思いはじめたときである。

「これが私たちの世界の本当の姿よ、かがみ、つかさ」

背後から声がかけられる。
聞き覚えのある声につい、後ろをふりむく。
するとそこには4人姉妹の最も上の姉、柊いのりの姿が。

いのりもまた、みきと同じような奇妙な弓を腕に着けていた。
それは、みきの腕についているものと寸分違わずに同じもの。

かがみもつかさも、その奇妙な弓にひきつけられていた。

「なに? ああこれね。
これは私やお母さんたちの武器。
あの化け物たちと戦うための手段の一つよ」

と笑顔で言う。
だが、視界の端に何か見つけたのか、目つきがきつくなった。

「キュア・ウォーター!」

いのりはふいに、弓のついた腕を伸ばして叫んだ。

弓に貼りついた札がひとつ消える。
と同時に、光の弾丸が飛んでいく。
向かう先にはキマイラと戦う、剣を構えた蓮司の姿が。

いきなりなにをするのかと、ふたりは息を飲む。

「きゃあっ!」

直後、輝く閃光にふたりは悲鳴を上げる。

まさか姉が蓮司に攻撃したのか。
そんなことをして、いったい何になるのだろう。

もしかして、いのり姉さんは本当は蓮司のことが嫌いだったのか。
だから、この混乱にまぎれて鬱憤でも晴らそうというのか。
いままであんなに愛想よくしていたはずなのに。

「いのり姉さん! 何をやったのよ、いま!」

かがみは叫ぶ。
無言で強く抱きしめてくるつかさを抱きとめながら。

あせりと共に、目をかばっていた、通学カバンを持つ手を下げる。

「えっ?」

そこにいたのは、ついさっきまで傷だらけだった蓮司ではなかった。
もちろん服は焼けコゲや巨大な引っかきキズ、土まみれではあった。
だが、顔や手などからは一切のキズが消えていたのだ。

いったい、なにが起きたのか。
かがみもつかさも、わけがわからなかった。



「サンキュ! いのりさん!」

短かい時間だけ顔を向け、感謝の言葉を告げる蓮司。
その言葉で、かがみだけはようやく理解に至る。
さっきのは治癒魔法だったと。

「お……お姉ちゃん。
さっきのって、なんだったの?」

いまだ理解し切れていないつかさに自分の解釈を話すかがみ。
いのりの姿を横目で見ながら。

「ゲームで言えば《ヒール》の呪文を唱えたってとこかしらね。
ね、いのり姉さん」

その視線と言葉に、いのりが再び口を開く。

「詳しいことは全部片付いてからにしましょ、かがみ、つかさ。
いま言えるのは、あの化け物たちと戦う力を私たちは持っている。
そんな力を持った私たちはウィザードと呼ばれる存在だってこと。
そしてかがみもつかさも、私たちと同じ力を持っているってこと。
それだけね」

「ちょ、それってどういうことよ!
わたしたちにあんな化け物と戦う力があるですって?
いきなりそんなこと言われて、『はい、そうですか』って言えるわけないでしょ。
第一、私たちのどこに、そんな力があるって言うのよ。
それに…… そんな力が私たちにあるって言うんなら、いったい何をすればいいってのよ!」

暑さでぼうっとなっている頭をふりながら、かがみは叫ぶ。

「かがみ、つかさ、いまのあなたたちにできることは、私たちの戦いを見ることだけ。
さっきも言ったとおり、あなたたちは戦う力は持っている。
けど、まだその力の出し方がわかっていないんだから、ないのと同じこと。
だから、しっかり見なさい、この戦いを。
そして決めなさい。
この戦いに身を投じるか、それともここで見たことを忘れて平凡に暮らしていくのかを」

目を見据えて話しかけてくるいのりを、ふたりは無言で見つめていた。

そんなかがみの視線の先では、1体、また1体とキマイラが消えてゆく。
だが、よく見ると攻撃に参加しているのは蓮司と灯のふたりだけ。
くれは、みき、そしてマント男の3人は、なにやら魔法を使っているようであった。

「ここにこなたがいたら、涙を流して喜びそうね」

ひとりつぶやく。

戦いは蓮司たちが有利に見えた。
だが、1体のキマイラが姿を消すとまた新たに1体が出現。
いつまでたっても敵は減りそうになかった。

このままではマズイ。
怪物たちの狙いはみんなの疲れを待つこと。
そうなったら勝ち目はない。
そして自分たちの命もそこでおしまいになる。

かがみの目から見ても、それは明らかであった。



かがみは自分の無力を痛感していた。
何もできない自分が情けなかった。
つかさを守るどころか、みんなの足手まといになっている。
そんな状況が嫌だった。

その一方でふと気づく。
直接戦っている蓮司たち以外で、汗を大量にかいているのは自分だけだということに。

また足元がふらつく。

だが、かがみは必死の思いで足を踏みしめる。
つかさを抱きしめたまま倒れないように。

とはいっても足がふるえることだけは押さえ切れなかった。
死と隣りあわせゆえの恐怖が、かがみの心に忍び寄っていたのだ。
かがみ自身が気づかないうちに。

許されるものなら叫びだしたかった。
幼子が命がけでダダをこねるように。
叫んで逃げ出したかった。
目の前の現実をなかったことにするために。

だけど、見てしまった以上、なかったことにはできない。
それに自分が生まれ育った場所を汚されたまま、黙っていたくない。

見ていることしかできないのが、悔しかった。

力が欲しい。
いのり姉さんの言う、化け物たちと戦う力が本当にあるのなら。
そんな思いが、かがみの胸が熱くする。

 - 力が欲しいの? -

「えっ?」

どこからともなく聞こえてくる声に、驚くかがみ。
思わず周囲に見回す。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「つかさ、いま誰かに話しかけられなかった?」

「え? 話しかけてきた人なんていないよ?」

目を丸くして答えるつかさの言葉に、かがみは確信した。
さっきの言葉は自分にしか聞こえなかったのだと。

(まったく、できそこないのラノベみたいな展開ね。まるで。)

かがみは声に出さずに自嘲した。

 - 力が欲しいの? -

ふたたび声が聞こえる。

 - ねえ、本当に力が欲しいの? -

つづけざまに声が聞こえる。

ふいに、その声に聞き覚えがあることに気づく。
それが自分自身の声であることに。
家族の記録に残されている声が、そのまま聞こえてくることに。

ならば声の主は自分の中にいる。
そう確信したかがみは心の中で断言する。

(もちろんよ。私は力が欲しい。あいつらと戦うための力が!)

次の瞬間、かがみの胸が燃えるように熱くなる!
まるで炎に包まれたかのように!
からだじゅうが弾け飛びそうな勢いで!

「あああっ!」

かがみは今まで出したことのないほどの大きな叫び声をあげた。
自分にこれほど出せるとは思わなかったほどの大声を。
大きく目を見開き、背をそらしたまま、からだが硬直する。
生きたまま彫像になったかのように。

「お姉ちゃん!」

かがみを抱きしめて、つかさが叫ぶ。
姉を襲った異常事態に対する恐怖心からであろう。
かがみに負けないほど大きく目を開けながら。

「かがみ!」

キマイラを警戒することも忘れて、いのりが駆け寄る。
まるで今にも死にそうなほどに蒼白な顔で。

みきもくれはも蓮司も、かがみを襲った異常事態には気づいていた。
だが、いま持ち場を離れるわけにはいかない。
その想いが必死で戦線を維持していた。

世界を、ひいてはかがみたちを守るために!



かがみはひとり、襲ってくる、逃げようのない熱さと戦っていた。

熱い、このまま溶けてしまいそうなほどに。
熱い、何も考えられなくなりそうなほどに。
熱い、からだじゅうに針を刺されたような痛みを伴って。

熱い、熱い、熱い、熱い、熱い……

(ごめんね、つかさ。もう一緒にいてあげられなくなるかもしれない。)

家族の顔が浮かんでくる。
いままで仲のよかった友達の顔が浮かんでくる。
ひとり、またひとりと……

そして、ふいに浮かんできたこなたの顔を意識した時、かがみの心に変化が訪れた。

(そうよ…… こんなところで…… こんなことで…… 死ぬわけには…… いかない!)

戦うことを選んだのは自分だからと心に決めた時、それまでの苦痛が嘘のように消えていた。
だが、その反動で意識が消えかける。



「あああ……」

叫び声が止まる。
直後、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちるかがみ。

「お姉ちゃん!」

「かがみ!」

つかさといのりが叫ぶ。
その声が、かがみの失いかけていた意識を取りもどす。
そして次の瞬間、かがみのからだは光に包まれた!
うっすらと輝く、紫色の光に。

「もう大丈夫よ。つかさ」

「お姉…… ちゃん?」

ふらつきながら立ち上がり、閉じた目をふたたび開ける。
最初に飛び込んできたのは驚きの目で自分を見つめるつかさ。
つづいて目にしたのは満面の笑みを浮かべるいのりの姿であった。

「どうかした? つかさ、いのり姉さん」

「どうかしたって…… お姉ちゃん、気づいてないの?」

「気づいてないのって…… なにこれ?」

つかさの瞳に移った自分の姿に、目を丸くする。
自分が、うっすらと紫色に輝いていることに。
立ちくらみをしそうなほどの驚きに襲われながら。

これはいったいなんなのだろうかと思う間もなく、いのりが話しかけてきた。

「どうやら完全に覚醒したようね、かがみ。
うちの中でいちばんの常識の塊だったから心配だったんだけど、なんとかなったみたいね」

笑顔のいのりをかがみは見つめていた。
思いつめた顔で。

一方、いのりはそんなかがみを見て思い出していた。
かがみが歩けるようになった赤ん坊のころを。
ウィザードとして歩みはじめた、いまのかがみと重ね合わせながら。

「いのり姉さん…… ってことは、これで私もあいつらと戦えるようになったってこと?」

いのりは笑顔を絶やすことなくうなずく。
そう、柊かがみはいま、ウィザードになったのだ!



カタカタカタカタカタ……

何かがふるえる音が聞こえてくる。
ふと見ると、その音はいのりの腕、そこについている弓から発せられていた。
いのりはほんの一瞬だけそのことに驚くと、自分の腕からその弓をはずす。
そしてそのままその弓をかがみの腕に取り付けたのだった。

「いのり姉さん?」

「これ、かがみにあげるわ」

かがみの腕に弓を取り付けながら、いのりは話す。
それが、破魔弓であるということ。
呪符で魔法を使うとき呪文を唱えなくてすむようになっていること。
そしてそれゆえに、化け物たちにすばやく対応できるということを。

自分が使い方を教えるといういのりの言葉を信じ、かがみは戦場を見つめる。
これから踏み出す一歩が自分の一生を左右するものだということを思いながら!


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