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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第01話

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紅き月と滅びの花

SCENE 00

学園世界の夜は紅い。
禍々しく輝く紅き月光は、大地に刻まれた凹凸をよりくっきりと映し出した。

―― ここは危険だ!

ヒトの持つ獣としての本能が警笛を鳴らす。
世界が真っ赤に染められたとき、闇の住人が餌を求めて狩りを開始するのだ。



侵魔のパワーは強大で、生半可な人間では相手に傷一つ負わせることも出来ない。
だからと言って、この未知なる敵を前にしてただ逃げ回っている我々ではなかった。

学園の中にも少なからず魔力を持つ者がいる。
元いた世界で戦争に明け暮れていた傭兵もいる。
そして太古の昔から、侵魔たちと戦い続けてきた魔法使いたちも。

出身は違えど目的は同じ。
この学園を、一緒に過ごした仲間たちを守りたい。

学園を取り巻くあらゆるトラブルに立ち向かう。
それが執行委員たちに課された使命なのだ。



ナイトウィザード 学園世界クロスオーバー
「 紅 き 月 と 滅 び の 花 」



SCENE 01

執行委員たちの影の苦労を知ってか知らずか、一般生徒たちの危機意識は大して高くない。
転移した最初の頃こそ不安がる者も多かったが、いやはや慣れとは恐ろしいものだ。
土曜の午後ともなれば、バイトにデートにショッピング……ここが異世界であることも忘れ、思い思いの時間を過ごしている。

ツインテールにまとめた蒼い髪が印象的な、グレーテルという少女もその1人。
13歳という幼なさながら、その優しげな碧眼の奥に強い意志を秘めている。
兄から命ぜられた任務のため、都内のとある中学校に潜入していたところ、今回の学園転移現象に巻き込まれてしまったというわけだ。
その任務自体はすでに意味を失っており、特に潜入先で留まっている必要は無かったのだけれど。

「(お兄さまには、どんな花が似合うかしら?)」

学園が立ち並ぶこの世界にも、空いたエリアというものがある。
その多くは居住地域などとしての活用が進められているが、それでも立地が悪すぎたり、住むには狭すぎたりといった理由から、ほとんど手の付けられていない場所が幾つか残っていたりする。
例えば、ここのような。

そんな事情からか、彼女の他に人の姿は無い。代わりに、その存在をアピールするのは色鮮やかな花々だ。
ちょっとした花壇のようなこの場所が、グレーテルのお気に入りだった。

「こんなことになっちゃって、お前たちも大変ね」

スイセン、パンジー、マリーゴールド……大半は地球(エルデ)でよく見られる植物だ。
季節感がバラバラなのは、この閉ざされた特殊な環境のせいだろうか。
その他にも、自身に含まれる微細なマナにより淡く光るという、地球には無い珍しい花も咲いている。
今はまだ明るいのでよく判別は出来ないが、日が落ちれば幻想的な景色を見せることだろう。

そういえば幼い頃、よく兄と一緒に花畑で遊んだものだ。
裸足で駆け回ったり、大の字になって眠ったり、花飾りを作ったり。

「お兄さまは今ごろ何をしてるんだろう……?」

ふと、兄のことを口に出して心配してしまう。
怪我はないだろうか? 変な病気にかかっていないだろうか?
そして何より、自分を心配してくれているだろうか?

学園世界に転移してきて以来、兄とは会っていない。
これだけの期間2人が離れ離れになったのは初めてだったが、何故かずっと一緒に過ごしているように思える。
だから決して寂しいとは感じなかった。




少女は一日中ここに居られる自信はあったが、学生という身分がそれを許してはくれない。
十分に気分転換もしたことだし、今日はこれでおしまいにしよう。
グレーテルは花を傷つけないようにそっと立ち上がり、名残惜しそうにきびすを返した。

身体の回転と逆向きに流れる風景は、様々な花の色が混ざり合い、まるで万華鏡のよう。

「あれ?」

ふいに、視界の隅に引かれる一筋の赤い線。
ハーモニーの中に紛れ込む一瞬のノイズに、グレーテルは軽い違和感を覚えた。

花壇の端に置かれた白い大きな石のそばに、真っ赤な花が一輪だけ顔を覗かせている。
ただそれだけのはずなのに、少女の意識の奥に強く根付かせてしまっていた。

「不思議な花ね、今まで見たことない。お兄さまなら知ってるかな……?」

鮮血のように染まった花弁に、自己主張の強い刺激的な香り。
見れば見るほど、この花だけが周囲から孤立しているのだ。
まるで彼女を誘っているかような出で立ちに、そろそろ帰らねばならないということも忘れ、再び花壇の隣にしゃがんでじっくりと観察することにした。
グレーテルはしっかりと記憶に刻みつけようと、顔を近づけ、花の香りを楽しんでみる。
鼻腔から頭の後ろの方に抜ける感覚。刺激的ではあるが、不快というわけではない。

ドクン、ちょっとだけ少女の鼓動が速くなる。
なんだか顔も少し火照ってきたようだ。
自分の足元の方から、未知の感覚がの脳天まで昇っていく。

「……ふあ……っ……」

頭の中が真っ白になった。
一瞬で全身の力が抜け、普段のグレーテルなら絶対に上げないような、気の抜けた声を思わず漏らしてしまう。

風景がぐにゃりと歪み、天地さえも分からなくなる。
今の彼女には、身体を支えるという簡単なことすら困難だ。
手足は痺れて言うことを聞かず、三半規管の発する文句を止めることも出来ない。

ドサリ。

薄れゆく意識の中でグレーテルが見たものは、視界一面に広がる真っ赤な絨毯だった。


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