ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第17話

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「くすくす…今は、その平和を楽しむといいわ…」
全ての時間、空間から隔離されたその白い世界であいつらの姿を見ながら、私は笑う。
「ねぇねぇ、ベアちゃんベアちゃん」
グラブ・ル・ガブルでの戦いで、私は負けて、この世界に隔離された。だが、それはほんのひとときに過ぎない。
1人きりで残った夢魔はしぶといのだ。それに私は、これくらいで諦めるほどひとが出来てない。
「ベ~ア~ちゃん」
消滅さえしなければ、何度でもやり直せる。どのみち、この手の挫折は慣れている。
そうでなければ生き残れなかった。
「こっち向いてよ。お姉さん、泣いちゃうよ?」
だから、私は舞い戻る。いつか、きっと。ファルガイアを手にす
「こうなったら…実力行使、えい♪」
ふう~
「ひゃ!?」

突然、耳元に息を吹きかけられて、ベアトリーチェがその姿にぴったりの可愛い声をあげる。
「もう、無視するなんて、酷いじゃない。私たち、たった2人のこの世界の住人なんだから」
「うっさい。それはやめろって、何回言わせるつもり?それにベアちゃん言う…な!?」
ベアトリーチェは抗議するためにその女性を見て、驚きの声を上げる。その女性の格好を見て。
「ああ、見てみて。これ、ファー・ジ・アースでは若い女の子が着る服なんだって」
「なんつう格好してんのよあんたはー!?」
太ももまで露出した短いスカート。元軍服だと言う特徴的な上着。黒の靴下に、茶色の革靴。
そう、それはまさに古式ゆかしい…セーラー服。
「ほら、私って髪は青くて長いし、泣きぼくろもあるから、ピッタリだと思って♪」
「年と背と体型も考慮しなさいよ!?」
20代半ばの、成熟した女性らしいプロポーション。女性としてはやや高い身長。
セーラー服を着るには、どう見ても遅すぎた。
どう見ても、学校と言うよりはむしろちょっとHなビデオにでも出てきそうな格好であった。
「え~、駄目?」
「駄目に決まってるでしょ!?あんた、それでも伝説の英雄なの!?」
「あら、英雄なんて、後の世の中の人の勝手な想像よ?私の知ったこっちゃないわ」
ベアトリーチェの抗議に、平然と言い返すその女性の名は、アナスタシア・ルン・ヴァレリア。
500年前に命を賭けて世界を救った、通称、剣の聖女(享年2X歳)である。
「それに、こんな姿を見れるのはベアちゃんだけよ?アシュレー君の時だって夢を壊さないように気をつけてたんだから」
「…だったら私の前でも格好つけてなさいよ」
ベアトリーチェにとって最大の誤算。ファルガイアの想い出からも失われていたが故に気づかなかったこと。
それは…事象の地平、ただ1人の同居人のキャラが軽かったと言うこと。
得た情報から、ファー・ジ・アースの守護者も大概だと思っていたが、まさかファルガイアで更に上をいかれるとは思っていなかった。
「ロードブレイザーとは仲良くする気も起きなかったけど、いなくなったらなったで寂しくてねえ…」
「だからって私にじゃれつかないで。大体、私もファルガイアを奪おうとしてるんだから、あなたの敵なのよ?」
ハンカチで目頭を抑えながら訴える、アナスタシアにベアトリーチェは言う。
「う~ん。それはそうなんだけどねえ…」
「分かったら向こうに行って頂戴。これでも忙しいの」
シッシッとベアトリーチェはアナスタシアを追い出そうとする。
だが、アナスタシアは少し考えた後で、ぽんと手を打ち鳴らす。
「じゃあ、こっちにいる間は友達ってことで。過ぎたことは、ベアちゃんが可愛いから水に流す♪」
「勝手に友達扱いすんな」
「えー、歌にもあるじゃない。一度会ったら友達で、毎日会ったら兄弟だって…ベアちゃんがお姉ちゃん!?」
「誰がお姉ちゃんよ!?」
流れるように掛け合う2人。無駄に絶妙である。
それを受けて…アナスタシアは感動のあまり眼がしらをおさえ、言う。
「…やっぱりベアちゃん、才能あるわ。アシュレー君も光るものを感じたけど、ベアちゃんにはかなわないわね」
「なんの才能よ!?」
「もちろん、突っ込みの。もっと修行を積めばきっといい相方になれるわ」
「誰が相方よッ!?」
「…でも、ベアちゃんが来てくれて、本当に感謝してるのよ」
「…な、なによ突然」
急に真面目な顔になるアナスタシアに、何故か動揺しながらベアトリーチェは答える。
「ベアちゃんが来たお陰でファー・ジ・アースともう一つのファルガイアの様子も見れるようになったんだもの♪」
「人をテレビのアンテナかなんかみたいに言わないでよ!?」
にこやかにひどいことを言うアナスタシアに、ベアトリーチェが抗議の声を上げる。
「あら、大事なことよ?これまでN○Kしか映らなかったTVが教育とTV○京も映るようになったようなものなのよ?」
「どういう例えよ!?」
「…それにほら、私、ここで1人でいたじゃない?退屈だけが支配する、この世界に」
「…そんなの、どうってことないでしょ。当たり前だもの」
データの海の中で、何千年も1人でいたベアトリーチェにとって、それは当たり前のことだった。
「ルシエドや、ロードブレイザーは、何か違ったの。何て言うか、人間味が無いって言うか…まあ、人間じゃないんだけどね」
「一応、私も魔族なんだけど?」
「ガーディアンだからかな?1人って言うか、個体って感覚が無いみたい。だから、寂しいって理解できなかったんじゃないかな?
でも、ベアちゃんは違うでしょ?ベアちゃんは1人ってことが理解できて…その寂しさも分かる」
「それは…」
「1人じゃつまらない事でも、2人なら結構楽しめるものよ?ね、ベアちゃん」
「わ、分かったわよ…こっちにいる間、少しだけなら相手をしてあげるわ」
ぷいっと横を向きながら、ベアトリーチェは言う。
「うん。ありがと。やっぱりベアちゃんは優しいのね」
「だ、だからベアちゃんってのはやめなさいよ…」
こういうのは駄目だ。慣れてない。ベアトリーチェはそう、感じていた。
俯いてしまったベアトリーチェを見て、アナスタシアにむくむくといたずら心が芽生える。
その衝動のままにアナスタシアはベアトリーチェに気付かれないように寄って行き、
ふぅ~
再び耳元に息を吹きかけた。
「ひゃう!?」
「うんうん。やっぱりベアちゃんの反応は最高ね」
「だから、それはやめろって…!」
「もう、照れちゃって♪この…ツンデレさん♪」
混ぜっ返しつつ、ベアトリーチェのおでこをつん、と指でつつく。

ぷちぃ

それがきっかけになったのか、度重なるアナスタシアの行動に、ベアトリーチェの中で何かが切れる。
「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす…」
怒りが裏返ったのか、笑いながら、自らの周りに無数の漆黒の弾丸を精製しはじめる。
それを見たアナスタシアは愛用の魔剣を想い出から精製。そして…
「や~ん♪ベアちゃんがいじめる~♪」
女の子走りで、逃げ出した。セーラー服のままで。
「待ちなさい!今日こそ、そのふざけた存在を、抹消してあげるわ!」
そして、この世界で何度目かになる、存在を賭けた命がけの鬼ごっこが開始された。

…ファルガイアを掌中に納めんとする夢魔、ベアトリーチェ。
彼女が剣の聖女の妨害にもめげず、ファルガイアへの帰還を果たすのは…当分先になりそうである。


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