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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第03話

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紅き月と滅びの花

SCENE 03


学園世界の夜は、今日も紅い。
世界を包む常識の結界に揺らぎが生じるとき、裏界の月が姿を現すという。

「なかなかイイ感じじゃない? 流石、と言っておくわ」

紅き月光を背に、2つの影が空から地上を見下ろしている。
眼下に広がる“赤い花”の絨毯に、ポンチョ姿の少女は満足げな笑みを浮かべた。

「……ありがとう。あなたがお礼を言ってくれるなんて、頑張った甲斐があった」
「っ!?」

もう1つの影 ―― 身体に黒い帯を何重にも巻いた、儚げな少女だ ―― が、それに答える。

「あたしは冷静に評価しただけよ! お礼なんて言うわけ……なによ?」
「(……くすっ)」

背丈の低い方がムスッとする。
でもこれはきっと照れ隠しだと、それなりに付き合いの長い友人は完全に見切っていた。

「あとはどれだけ繁殖してくれるか、ね。この分だとそんなに時間は要らないでしょうけど」

脱線した話題を慌てて元に戻す。
土管体型の少女は、自らがこの世界に持ち込んだ“赤い花”に再び視線を落とした。

これらは元々、とある異世界に咲いていた滅びの花。
一度大地に根付けば、そこにある生態系を容易く乱し、かつその花粉が魔を呼び寄せる。
花咲く場所に災厄が訪れるという、まさに生物兵器としか言いようがない。

人間にとってはかなり危険なこの花を、ほんの少しだけ改良し、彼女たちは花畑に1株だけ紛れ込ませてみたのである。
“荒廃”の力を与えられた“赤い花”は、人間たちの生命力を吸収し、異常なまでのスピードで繁殖する。
プラーナの豊富な学園世界は、「プランター」としても最適な場所だった。

とはいえ、この花だけを持ち込むというのは、少々面倒くさい。
地球が科学という常識の結界で縛られているように、一見カオスな学園世界にも世界律(ルール)がある。
学園世界が学園世界たる所以、つまり「学園」以外の存在は基本的に許されないということだ。

そこで、ちんちくりんな少女が考えたのが、元の世界にある「学園」ごと転送してしまえばいいという実に単純な発想である。
ルールにさえ則っていれば、世界は素直なほど受け入れてくれるのだ。
かつて金色の魔王が、第八世界ファー・ジ・アースから魔法を消し去ろうとしたときのように。

欠点があるとすれば、「学園」とともに“赤い花”の情報も一緒に持ち込まれてしまうということ。
なんだかんだ言っても、ウィザードたちを始めとした優秀な人材が揃っているようだし、すぐに花への対策がなされてしまうに違いない。

「……でも、いいの?」
「なにを?」

素朴な疑問を口にする。

「……わざわざ“赤い花”の研究を進めてる『学園』を選ぶなんて。それに――」

それに彼女の強大な魔力を持ってすれば、特に「学園」を経由せずとも、この世界に花を送り込むことなど造作もないはずだ。
全てを言い終えるよりも早く。

「そんなことはどうだっていいの」

銀髪の少女が、右手の人差し指を友人の唇にそっと当てる。

「だって、それくらいのヒントが無いとつまらないもの。……そうでしょ、アゼル?」

ベルがくすりと微笑んだ。

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