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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

4-702、706-710 laststage-final まっすぐにしていだいなるバカ

この世界のどこか―――

「―――対象、『選択の言葉(メイキング・ワード)』の選び出しに成功しましたっ!」

報告とともににわかに騒がしくなるオフィス。
一人の少年が可能性を掴み取ったのだ。
その確率は砂漠で一粒の砂を拾うことと同じとすら言われた低確率。けれど彼は「正解」を掴み取ることに成功した。

だから―――たった一度のチャンスが、今こそここにめぐりくる。

オフィスでマイクをもった男が、マイクの向こうに向けてあらん限りの声を張り上げ叫んだ。

「矢野君、今だっ!」
『わかってます!』

モニターの一つに映し出されている若い男が、城に向けて手を伸ばす。
その先にいるのは、剣を手に世界の危機に一歩も引かぬ少年。
マイクを持つ男―――須田は、部下の芝村の立てた計画の成功に快哉を叫んだ。
セプテントリオンの介入によって多数の世界の地続き現象が起き
そこに式神の城を落とすことによって最も強い可能性を神と立ててゲートを開くという陰謀の舞台となった第八世界ファー・ジ・アース。
彼らアルファ・システムの人間達の住まう世界とはまったく世界形態を持ち、ありとあらゆる無茶のせいで不安定になった時空には一人が送れて限界だった。
けれど、崩壊寸前のファー・ジ・アースに必要な力は一人では足りない。

だからこそ、彼らが選んだたった一人の援軍こそがこの男だった。

彼と少年の間には細いながらも魂のつながりがある。原典を同じくするもの同士、最も同調する可能性が高い。
同位存在に近い存在である彼らが同調することにより少年の可能性の力を引き上げ
またアルファ・システム側からのリューンの送りだしの中継ポイントとして選ばれた男は、その一瞬のチャンスを絶対にその手に掴み取る―――!

「接続―――成功です!」

歓声が、オフィス中に響き渡った。




それを見る者がいれば、まるで魔法のようだと言っただろう。
見る者を安心させる、優しく淡い光が世界中から立ち上っていくのだ。
やがてその輝きは、この世界だけのものではなくなり、空からも大量に降り注いだ。

それは、人の希望。
明日を呼ぶ呼び声。
存在の意思の輝き。

それはあるところではプラーナと呼ばれ、あるところではよきゆめとも呼ばれ、リューンを伴ったもの。
そしてその立ち上る光は、いつからか重なるように響く歌声に乗るように様々な軌道を描き、一点に収束していく。

―――今、世界の趨勢を決める戦いを行っている式神の城へと。

唐突に、蜘蛛の動きが止まった。
それもそのはず、蜘蛛を動かしていたのは「世界」より供給される力。
その供給を果たしていたはずの赤い水晶が、供給をストップしたことが原因だ。
ぎちりぎちり、とぎこちない動きになる蜘蛛。力の供給がなければ、それはただの塊にすぎない。

そして―――水晶の中の少女は力の供給をやめたのではない。対象を自らの意思によって変えただけだ。

ざり、と。この場に立つ蜘蛛の敵が、靴の底をこすらせて音を立てた。
そこにいるのは傷だらけの少年―――柊蓮司。
彼は、どう見ても立てるのが不思議なだけの傷を負っていた。
その証拠に、息は整えるのを諦めたかのように荒れきっていて、なおかつ素人が見ても今にも倒れそうだとわかるほどの状態だった。
それでも。

足はしっかりと床をとらえ、剣先はただ一点をさし、視線はただただ前を見る。

彼は、不思議な光を纏っていた。
その光は。結界をすり抜けて現れた、あしきゆめには痛いほどのその輝きは。
まるで空より降りた梯子のごとく、空へ羽ばたく翼のごとく、天を衝く柱のごとくに柊へと伸びる。

そして―――彼は、駆ける。
振り返らず、躊躇わず、ただただ望む一撃を与えるために。そのあり方はまるで―――風のように。

「おおおぉぉぉぉぉっ!」

剣の先より、光が放たれる。
それは明日を望む光輝。それは希望をもたらす一撃。すべての希望を背負った者が放つ、「人間」の一撃。
その輝きに、あしきゆめごときが抗えるはずもない。

闇に包まれた空間を結界ごと消し飛ばす一撃にたまらず蜘蛛は消滅する。
光に包まれた空間の中、柊は駆け出そうとし―――やはり振り返ることなく、それでも一言だけ後ろに立つ者に告げる。

「ついて来てくれ。今の俺が一人行ったところで足手まといだろうし―――なにより、あいつに教えてやらねーとな。
 ―――俺達は一人で戦ってるんじゃないってこと」

彼自身もしかけた勘違い。それは間違いなんだということを、この光と一緒に届けよう。
正義の味方は一人じゃない。正義の味方は孤独じゃない。
後ろに立つ人が、守りたいものがあるからこそ戦っている。人々の幻想(ねがい)を背負い、そして―――その願い(げんそう)によって支えてもらっていることを。

だから、と彼は続けた。

「手伝ってくれるよな」

背後に立つ者は、いつもの調子で答える。

「当ったり前じゃない。あんたがめったにしないわがままだもん、叶えてやるのがあたしの務めってもんでしょう!」

その声に思わず苦笑し、今度こそ駆け出す。
もう一人の一人で戦っている少年のもとへと、ただまっすぐに。


「もうおしまいかい?コウ」

<世界の秩序>はそう言った。
呼ばれた光太郎は、まなざしだけは敵を見るものの、もはや立ち上がるのすら難しい。
「世界」そのものの力が凄まじいこともあるが、一番の原因は精神的な疲労だ。
言うまでもなく、家族であったものと戦う葛藤が自己矛盾を生み、ダメージ以上の疲労を刻んでいるわけだ。
彼の式神も、心配そうに彼を降り注ぐ光の雨から守りながら見ている。

「僕がしたいのは本気の兄弟喧嘩なんだ、お前が立たないと今度は……っ!?」

その時だ。
凄まじい轟音と共に、すでに座に座る者によってめちゃくちゃに破壊されている玉座の間が「吹き払われた」。
その場に張ってあったテクスチャを剥ぎ取られ、残るのは<世界の秩序>と光太郎、そして―――広大な神殿の丸い天守閣。
あまりのことに、今まで笑みを消さなかった<世界の秩序>に、はじめて驚愕の色が刻まれる。

そして、光太郎は見た。
ここまで一緒に走ってきた相手が、こちらに駆け寄ってくるのを。
自分と変わらないほどぼろぼろの、剣を持った少年が声をかけてくる。

「おい、生きてるか玖珂っ!?」

その必死な様子に、どうしてか力が沸き上がった。
力の入らない手で何とか体を支え、立ち上がる。

「柊。その言葉、そっくりお前に返してやる」

言われ、どうやら大丈夫そうだと判断した柊は、敵に向けて剣を構えた。

「よぅ、<世界の秩序>さんよ。約束、果たしに来てやったぜ」
「柊、蓮司。どうやってここに、「世界(ぼく)」の張った結界を消す力など君にはないはず―――」

その時、さらにこの場への侵入を果たした者が現れる。

「はわっ、まってよひーらぎー。あんた、自分の足の速さ考えなさいよねー?」
「星の巫女―――バカな、なぜここに!?」
「はわ?なぜって、決まってるじゃない。
 バカの願いを叶えるために、ちょっと力を貸しに来てやったのよ」
「バカ呼ばわりすんじゃねぇよっ!?緊張感ねぇな、お前は!」
「うるっさいわねー、バカの分際で。ばーろー」

世界は、混乱していた。
ありえないことが起きている。柊蓮司はあの場で勝つことはできない。
彼は死に、世界は絶望へと堕ちるはずだった。
それを光太郎に見せ、更なる絶望に力を引き出させるつもりだった。

その目論見は、今目の前の本人達に木っ端微塵に破壊されていた。

けれど、彼の望みはただ一つ。混乱しながらも<世界の秩序>は告げる。

「えぇ。約束は確かにしましたが、少し待っていただけませんか。僕は弟との兄弟喧嘩を―――」
「うるせぇよ。なんで俺がお前の言うことを聞いてやらなくちゃなんねーんだ」

その「世界」の願いを、たった一言の下に斬り捨てる。それは彼の持つ刃のように。
そして、その存在を無視してかたわらの光太郎へと話しかけた。

「おい玖珂。お前は忘れたわけじゃねぇだろう、今この瞬間一緒に戦ってくれてる奴らを」

その声は、朗々と響いた。

「この城の下にたくさんの奴らがいて、一生懸命生きてることを」

言葉をさえぎる者はなく、ただただ流れる。

「だからお前は戦ってるってことを、忘れたわけじゃねぇだろう」
「当たり前だ」

その瞳は真摯なまま。
当たり前だ。正義の味方が戦う理由は、誰かが困っているからでしかないのだから。
それに柊はにやりと笑って、一言だけ告げた。

「そいつらの『想い』、連れてきてやったぞ」

同時に現れるのは真っ白な光。
それは「世界」の回路を伝い、この世界の―――いや、これまで彼らに協力し、彼らとひと時でもともにあった全ての世界から届けられし光。
今この世界を襲う絶望を、ともに晴らそうと集う光。
それは願いにして希望にして夢。
これを、とある世界の住人達はこう呼んだ。


『明日』、と。


「世界」は、今こそ驚愕をあらわにする。

「そうかっ、世界の力を引き出す回路の逆利用―――これをやっているのはお前か、星の巫女っ!」
「そーだよ。あんまり、人をなめないでくれる?これでもわたし、次期当主なんだよ?」

ぎり、と歯噛みして世界は言う。

「なぜだっ!わかるだろう、いまのままがいいのだ!人間中心で、人間のためにある世界が!
 すべては人間に支配され、神々も精霊も付き従う!それでいいはずなんだ!
 なのに、なぜだ!なぜ部品であるべき人間が、全体である世界に反逆するっ!?」

それに答えるのは、変わらぬ眼光を放ち前を見据える二人の少年。

「わけのわかんねぇこと言ってんじゃねぇっ!
 時代は先に進んでんだ、立ち止まってる奴が前を向く奴に勝てるわけがねぇだろう!」
「人間中心の世界云々は俺にはよくわかんねぇが、お前に反逆する理由なら簡単だろ。
 お前は自分のわがままで人間を殺そうとしてんだ。そんな世界を人間が必要としないのは当然っつーもんだろう?」

稲妻のような叫びとともに、怒りをあらわに叫ぶ少年は、希望の声を聞き自分とともにあるものを再認して拳を握る。
涼風のように慟哭を受け流し、世界に当然を突きつける少年は、各地より集った仲間の声とともに威風堂々剣を握る。

もはや、秩序という名の理性を失った<世界>は、その光を纏い、<世界の意思>と共にある者たちを見て
―――奥の手を引き出した。
<世界>は城の奥に眠る<星降る夜の眼>とのリンクを活性化、<世界の外側>の力すら動員する。
声は、静かだった。

「―――いいだろう。人間が、人が僕を否定するというのなら、否定する人間を全て殺して僕の世界を取り戻す」
「そんなことはさせねぇっ!」

声に対する返事は、光が迸るように。

「いいか悪党よく聞きやがれ!
 俺の名前は玖珂光太郎!悪をぶっ飛ばす少年探偵!
 お前なんかにこれだけの夢を、壊させたりなんか絶対させねぇ!ぶっ飛ばされて反省しろっ!」
「俺の名前は柊蓮司!斬るしかできないただの人間!
 毎回毎回世界救ってきてるんだ!この程度のことで諦められるほど、俺は聞きわけよくねぇぞっ!」

風が踊り、光が舞い、ただただ明日を望む光輝達は、この二人にそれを託した。
世界に選ばれる者としてでなく。ただその場にいて、諦めることのない二人のバカに、明日への希望は託された。

<世界>が、叫ぶ。

「消えろ―――<人間>っ!」


最後の突貫が始まった。
同時に、<星降る夜の眼>から引き出された光の奔流と、<世界>の持つ力の弾幕が同時に展開される。
彼らは、拳に輝きを溜め、魔剣を振りかぶり、<人間>の希望の光を解き放つ。

超越者と人間。その間にあるのはけして超えられぬはずの壁。
普通に考えるのなら、いくつ数が集おうとその壁は越えられるはずがない絶壁だ。

しかし―――この世界の人間は。世界を滅ぼそうとした神に打ち勝てるほどの力をつけるため、古きより力を積み重ねた続けた人間達は。
―――けして届かぬとかつて言われた超越者との壁を。今。集い束ねることで、越えられるほどになっていた。

二筋の光の柱が、光の奔流をなぎ払う。
<世界>は驚愕するが―――いまだ、弾幕は突破されていない。
さらに壁を厚くするために注がれた光の弾の分厚い壁は、今力を放出した二人に次弾の装填を許さないタイミングで襲いかかっていく。
壁の先端が彼らに触れる、その瞬間。

天井をぶち抜いて現れた空飛ぶ者達が、光をもってその壁を撃ち抜く。
入り口から入ってきた地を駆ける者達が、炎をもってその壁をつらぬく。
突如出現した『扉』から現れた者達が、弾丸をもってその壁を撃ち砕く。

世界中より、いや、世界の外からすら現れて、この世界を救うためにともに戦っていた者達が、彼らの前にある壁を取り払った。


<世界>が、声にならない悲鳴をあげる。
すでに少年達はあと3歩で彼を間合いに取り込めるだけの位置に来ている。

3、

彼らへの希望の声を届けるため、後ろに立つ巫女がその身に降りた全ての人々の願いを全力で送り届ける。

2、

それを感じて、二人の少年が叫びを上げながらさらに力強く踏み出す。

1、

「ぶっ飛べ―――」
「<魔器―――」

声が唱和し、最後の一歩を同時に踏み切り、希望を背負い、そこに彼ら自身の想いを込めて、全力で拳を、剣を突き出し―――

0。

「悪党ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!」
「開放>ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!」

二人のバカは、突き抜けた。

4-711 えぴろーぐ・そのいち

大騒ぎの式神の城の最奥。
一撃の下に消し飛んだ<世界>を見て、はじめは静まり返っていた。
しかし、やがて悪夢の終わりを実感するにつれて、騒ぎは広まっていく。
そこに、無粋な電子音が響いた。
それは光太郎の携帯電話からだった。彼はそれをとると、電話の相手に話しかける。

「おう、ふみこたん。終わったぜ」
『よくやったわ光太郎。それでこそ私の見込んだ男。
 ―――けどいいの?』
「なにがだ?」

不思議そうに聞く彼に、空色の魔女は爆弾の一言を投下した。

『城の主が消えたんだから、その城はもうすぐ消滅するわよ?』

空気が、凍りついた。
今まで騒いでいた人々が出口をもとめて逃げようとしたのと同時。


―――今までの激戦でぼろぼろになっていた城の床が、まず消滅した。

4-747

時に、アンゼロット様宮殿内特設ステージは、
正面向かって右にマーダーズ・ステージ、
左にダークネス・ステージがある。
二つのバンドが対立した場合、中央のバトル・ステージで決着を付けるのだ!

「というわけで、この特設会場では参加者募集中ですわ。歌に覚えのある方は、是非参加して下さいませ。

 以上現場から、エリーゼ・サツキ・ソーンダイクがお送りしました」


……<世界>と<人々>の、或いは<運命>と<希望>の戦いは、ひとまずの決着を見た。
 歪められた因果律もやがて修復され、世界は元の姿に戻るだろう。

 だが、それは完全な復元に在らず。

 また、そうであってはこの戦いの意味は無い。

 今、サツキがここにいるのは、少しでも多くの希望の種(よきゆめ)を、少しでも多くの世界に届ける為の手伝い。

 それは、淡雪の如き、一炊の夢の、そのまた欠片。

 願わくば、遠く離れた世界にいる、同じ名を持つ掛け替えのない少女と、同じ血を持つ離れ難き少女にもその種を……

「……って、何故ここに船長がっ!?」

 サツキの驚愕する顔を皆さんにお見せ出来ないのが残念です。

4-752-754、~、775 継ぐもの、継がれるもの

突き抜けたバカたちの戦いから時は遡り──"天使の言葉"の少し前。


「ん~…?」
楯祐一が微睡みから目覚めると、そこには見慣れない…いや、"忘れていた"というべきか…つまり、あり得ない光景が広がっていた。
「楯ー、授業終わるまで居眠りかよ?」
「え…俺、たしか東京市で…なんだっけ」
「なーに寝ぼけてんだよ、ちゃんと部活に出れんのか?」
「あ、ああ」
「じゃあ、またな」
ここは学校──しかし、風華学園に来る前に通っていたところだった。
「夢…なんか大事もんを忘れてる気がする…痛ッ!」
不意に襲う頭痛に纏まり欠けていた記憶は四散した。


「もっと楽しめると思ったんだけど…」
黒き炎が燃え盛る広間。無数の魑魅魍魎を吐き出す魔道炉の一つ、その前に鎮座していたのは二人の魔王だった。
「"高次元物質化能力"…だったっけ。意外に大したことないのね」
「く…デュランさえ、"チャイルド"さえ呼べれば……」
「祐一!祐一っ!?」
鴇羽舞衣と久我なつきは今までに相対したことのない、超常の敵を前に苦戦を強いられていた。
無理もない、相手はあの"蠅の女王"ベール=ゼファーなのだから。
身に纏うは漆黒の戦闘服──本気も本気、最大出力に近い大魔王そのものである。
「まあ、リオンのおかげで無様な姿を見れたのはよかったかしら。愛だのなんだのって…ほんと、下らないわ」
ベルは魔道炉の上に妖艶に座っている。その様子はまさに下界の愚民を見下す神。
「なにっ!!」
ふたりの鍵、楯祐一は魔王の罠にかかり、鏡を模した異空間に閉じこめられている。
近くにいるが近くではない。これでは"チャイルド"を喚ぶこともかなわない。
「下らないから下らないって言ったのよ。そんなもの…何の役にも立たないわ。見なさい、あなたたちの"大切な人"とやらはあなたたちの事を忘れても楽しそうじゃない」
「貴様ッ!」
なつきの放った弾丸はベルの纏った黒い炎に難なく防がれる。
「あははっ、無様ね。…あー、いいこと思いついたわ。リオン」
"蠅の女王"の側に控えていた"秘密侯爵"リオン=グンタは表情を変えない。
「このふたりを戦わせるのよ。勝った方にそこの男をやるの…どう、おもしろいでしょう?」
「ええ…」
ベルの言葉にもリオンは表情を変えない、しかし、ベルは自分の名案の出来に愉悦に浸っているようだ。
「さあ、聞いてたでしょう?殺し合いなさい」

一瞬の空白──

そして、舞衣となつきは同時に口を開いた。

「嫌よ!」
「断る!」

ベルの表情が強ばる。
まるで自分のオモチャを奪われた子供のように。

「あなたたち、そこの男を"愛してる"んじゃないの?」

魔王の言葉になつきがシニカルな笑みをこぼした。
「ああ、愛してる!大好きだ!」
なつきに後れを取るまいと舞衣も声高に叫ぶ。
「あ、あたしだって!祐一のこと大好きよ!」
「ならば、なおのこと…」
「それとこれとは!」
「話は別よ!誰があんたなんかの言うことを聞くもんですか!」
「そう言うわけだ、さっさと巣穴に帰るんだな、年増!!」
天輪と拳銃、己の武器──"エレメント"を構え、二人は言いはなった。
「とし…っ!?」
未だ余裕綽々だったベルの表情が見る見るうちに消えていく。
「…もーいいわ、さっさと消えなさい…!!」
降りあげたベルの両手に魔力が集う。天属の純粋な魔力──それが膨大な熱量を持ってさらに集束される。
「ディヴァイン…ッ!コロナッ!!!」
天属最大魔法が殆ど無防備のふたりを襲った。


「痛ッ!!」
夕方、道場の一角。
楯祐一は不快な違和感を感じていた。
「何なんだ、クソッ!」
ひどい頭痛と目眩。
何かが足りないという喪失感──

ふわり──天使の羽が舞う。

ふと、人の気配に気づき振り返ると銀髪の少年が防具を付けて待っていた──何故だろう、彼は少年と言うには華奢すぎで、顔立ちなんて少女そのものだ。
なのに、自分は"男"だとすぐさまわかった。
少年は防具を被ると近づいてくる。
どうしても、試合をしなければいけない気がして、竹刀を手に取る。


結果は完勝。
祐一とてそれなりの使い手だ、素人同然の彼が敵うはずもない。
だが、彼は何度でも立ち上がり、何度でも挑んでくる。
まるで──何かを伝えたいようかのに。

「はぁ、はぁ…君は、どうしてそんなに俺に向かってくるんだ?」
少年は答えず、ただ悲しそうな瞳を祐一に向けるだけ。
いや、祐一には彼が言わんとすることがわかる。
──あなたが教えてくれたんです。

──僕が誰なのかを。自分が何者なのかを。

──思い出して。あなたは誰ですか。

「お、俺は…」
狼狽の隙を突き、少年の竹刀が──いや、"刃"が祐一の左側から竹刀を弾き飛ばした。
「あっ…」
腕の怪我──今までもあったはずのそれを見て、祐一は唐突に理解した。これは偽りなのだと、真実は別にあるのだと。
少年はやっぱり少女に見える愛らしい微笑みを浮かべた。
そう、初めて何かで父親に勝った息子、のような顔を。

──あなたは誰ですか?
「俺は…俺は楯祐一!……鴇羽舞衣と久我なつきの────!!」

ピシリ。
世界にひびが入る。偽りの日常。偽りの平穏が音を立てて崩れさる。

「君は…」

少年は笑みを浮かべるだけ。

「そうか、ありがとう。腑抜けの俺を叱りに来てくれたんだな──」



「!!!バカなっ、そんなはずっ。あたしの月匣をただの人間風情が破ったですって!」
ディヴァイン・コロナの爆光を遮る紅と銀の光。
「カグツチ!?」
「デュラン…お前どうして」
理由は一つしかない。
ふたりが同時に振り返る、その顔にはふたりとも安堵と喜びに満ちていた。
「「祐一!」」
「ちょ、お前らっ、くっ苦しいって」
ふたりに抱きつかれ若干狼狽する祐一。
が、すぐに立ち直りふたりに言う。
「…とりあえず、あいつらを何とかしないとな」
「ああ、お前の言うとおりだ」
「今までの分、百倍にして返してあげるわ」

前にもまして鬼気とした…そう、言うなれば怒髪天をつくと形容すべき様相のベル。
当然だ。たかが人間に。たかが人間ごときに、自分の遊びを邪魔されて、自分のテリトリーまで壊された。
この混沌とした戦場で、たまりにたまったストレスの果て、彼女は我を忘れていた。
「リオン、手を出すんじゃないわよ」
「ええ」
「あんたたち虫螻に、こんな大技見せることになるなんてね…あたしの最強魔法で消し飛ぶことを光栄に思いなさい!」
集中し始める虚無の魔力──それは渦となって巨大な塊を形作る。
「ヴァニティー・ワールド・ジ・アンリミテッド…さあ、もうまぐれなんてものありはしないわッ!!」

あれは、マズい。
祐一は直感した──そして、今の自分ならあれを打倒できるという事を。
そりゃそうだ、何せ今は世界中──いや、遠い異世界の果ての果てから"希望"って名前の力強い援軍が来てるんだから。
「舞衣!なつき!力を貸してくれ!!」
「──わかったわ。カグツチッ!!」
「任せろ!デュラン、ロード・ダイヤモンドカートリッジッ!!」
ふたりの"舞ーHiME"に"小さな奇跡"が舞い降りた。
カグツチが剣と化し、デュランが金色の光を帯びる。

が、まだ足りない。
自分のも合わせれば全部で六つ──チートもチート、最悪だ。
だが、まあ、あんな化け物にただの人間が勝つんなら、同じ"ありえないもの"をぶつけるしかない。

デュランが吼える。
カグツチの刀身が焼ける。

「無駄よ、これで…終わりなさい!!」
"無限の虚無の世界"が辺り一帯を襲った。


それで、終わりのはずだった。少なくともベルはそう思った。
しかし、事実は彼女の思惑を大きくそれ、彼女の最大魔法は一刀の元に叩ききられた。二度目のまぐれ──だが普段のベルなら冷静に対処しただろう。
が、今日の彼女は有り体に言えばキレていた。
だから…、
「おおぉぉぉッ!!」
祐一の動きに反応できなかった。
彼が携えるのは、金剛石を柄に抱いた"貴石"の剣──"カグツチ"と"デュラン"を触媒にして呼び寄せた、ここにあるはずのない"真白なる金剛石"──六つの"奇跡"をつぎ込んで、この一瞬のためだけに呼び出された"希望"の剣。
「ぐ…ッ…は……!」
腹を横薙ぎに一閃。胴体と脚が見事にまっぷたつ。
「…はっ、あたしがそれぐらいで死ぬと思う?」
「だろうな」
祐一がすっと射線を開けた。
ベルの表情が凍る。
そこには"エレメント"の最大出力で待機していたふたりの"舞ーHiME"。アイコンタクトなんて要らない──次に誰がどう動くのかなんて手に取るようにわかるんだから──

紅蓮の爆炎が、無数の弾丸が上半身だけのベルをなぶる。
「ガ……ッ!?」
「終わりだ!」
そして、逆袈裟斬り、鏡の中で少年から喰らった手痛い一撃。
「…さすがの魔王もこれだけ喰らえばただじゃすまないだろ?」
「あたしたちを、人間をなめるんじゃないわよ。ま、百倍返しは出来たから許したげるわ」
「祐一の剣で受けたこと、光栄に思うんだな。年増」
ボロボロと崩れゆくベルにリオンは本を読みこう告げる。
「あなたはここで彼らに倒される。この本にあるとおり」
「…リオ、ン…?」
「だって……聞かれなかったしぃ…」
ベルは自嘲めいた笑みを浮かべる。
「ふふ…ま、いいわ…楯、祐一…あんたの名前……覚えたから……」
「覚えなくていいよ」
そうして、ベルの体はかき消えた。
「で、あんたはどうする?」
祐一の問いにリオンは静かに答えた。
「ここは落とさせない…それに…あなた達はここで終わりって、この本に書いてあるもの」
「は?…えっ?」
その瞬間、剣の重さがすっと消えた。
足元を見る祐一。そこにはちんまりとした白い猫と青い犬が二匹じゃれ合っていた。
「は、はいぃぃぃ!?」
「デュラン!?ちっちゃい…か、かわいい」
"真白なる金剛石"を喚んだリバウンドというべきか──"小さな奇跡"の六枚重ねはさすがにやりすぎだったらしい。
要するに、無茶はやるなと言うことである。
「ね、この本にあるとおり」
リオンの後ろから無数の魑魅魍魎が現れた。
「あなた達はここでゲームオーバー、コンテニューはないわ。さようなら」

4-781-785、787 幻想の果てに 風と焔のロンド(前半)

支援感謝! これで俺の仕事は終わりだぁあああ!

 狂う。
 燃え上がる。
 それは恋焦がれるような気持ち。
 渦巻く、魂を灼く激情にも似た力。

「アーハハハッハハハ!!!」

 風よ纏え。
 力を呼応せよ。
 あらゆる幻想が、あらゆる願望が、あらゆる希望が、あらゆり理不尽が。
 集う。
 集う。
 集うのだ。

 ――蒼く輝く瞳。

 本来ならば魂を焼き焦がし、脳神経のシナプスを粉々に砕き、肉体を崩壊させるほど
の馬鹿げた“力”。
 だがしかし、それを八神和麻は――否、【KAZUMA】は制御する。
 何故ならば、彼は最強の幻想。
 力を欲し、理不尽に狂い、最強を求める人々の幻想に編み上げられたアバター。
 ……それは形が違えども人々の夢の一つ。
 願望であり、希望であり、熱望であり、欲望の結晶。
 力なき者達が追い求めた【悲劇を変えるための歪んだ幻想】

「U-1の力を理解し始めたか?」

 傍を併走するSHINが薄く微笑みながら、KAZUMAにそう語りかける。

「ああ。これはまさしく――“最強だ”」

 歪に歪んだ笑み。
 狂った笑顔。
 ありとあらゆることが許せそうだった。
 寛大に、傲慢に、理不尽に、何もかも手に入れられそうだった。
 “彼女を救える力がそこにあった”

「んで、これからどうするんだ? 空を舞う羽虫どもを切り刻むか? それとも、城の中の
下らない希望を振りまく連中を叩き潰すか?」

「慌てるなよ、まずは――“門”を潰す」

 SHINの言葉に、彼は0.1セカンドの時間すら必要なく理解した。

「ああ、なるほどな」

 目を向ける必要も無く、知覚する。
 そう、それはどこまでも彼の中に燻っていた違和感。異物。あってはならないもの。
 己の思い通りにならない“異世界の風”。
 自らの従える風の精霊とも異なる烈風なる風。
 不愉快だ。
 許せるわけがない。
 己に従わない愚物を許すわけが無い。

「潰そうか、ガラクタの人形を」

 門を形成する。
 それを行えるものは数少ない。
 地底世界ラ・ギアスから地上への転移を行えるのも、魔装機神が他の魔装機とは
比べ物にならないポテンシャルと精密な魔術理論で構築されているためである。
 魔力――すなわちプラーナ。
 魔術師ではないマサキが、魔力を伴い、異界へのゲートを構築する転移魔術を形成
しているのは、サイバスターに組み込まれた魔術回路のお陰である。
 そして、魔力はプラーナコンバーターで変質させたマサキのプラーナが原動力と
なっている。
 生み出すための媒体をサイバスターに、生み出すための燃料はマサキのプラーナそのものだった。

「っ!」

 光の翼を発し、未だに門を開き続けているが、そろそろ限界だった。
 プラーナも枯渇しかけ、それに伴い肉体も悲鳴を上げている。
 そろそろ限界が近い。

『おや?』

 その時だった。
 傍で空間を安定させていたグランゾンから、声が届いたのは。

「なんだよ?」

『気付かないのですか? マサキ――風が変わりました』

「なっ?!」

 その声に、マサキは悲鳴を上げる肉体を無視して、意識をサイフィスに接続する。

 ―― !

 そして、気付いた。
 何故己が気付かなかったと悔いるほどの風の異常を。
 周囲を埋め尽くし、圧倒する“壊れた風の精霊たちの気配”。
 戦場の全てを埋め尽くす膨大な力を。
 泣き叫ぶサイフィスの悲鳴が感じられた。

「こ、れは!?」

 サイバスターが光の翼を羽ばたかせ、風の不和に空を見上げた時。

「ようっ、ガラクタ」

 “ソレ”はそこに浮かんでいた。
 蒼き瞳を両眼に称え、おぞましいほどに風を従えた一人の男が。
 マサキは知らない、彼がKAZUMAと呼ばれる最強の幻想たるアバターなのだと。
 KAZUMAは知っている、サイバスターが己に従わない唯一の風なのだと。

「壊れろよ、異世界の風よ」

 指がゆっくりと振り下ろされ。

 ――空が墜ちた。

 ダウンバースト。
 空から降り注ぐ高密度の大気の土石流。
 だがしかし、世界の風すらも掌握するアバターのそれはあらゆる比ではなかった。
 まさしく空が墜ちる。
 万物を踏み砕き、粉砕し、滅殺する巨人の大槌にも等しい馬鹿げた風。
 それが風の魔装機神たるサイバスターを襲った。

「ウォオオオッ!?」

 オリハルコン製の装甲が悲鳴を上げる。
 風に舞う白き翼が悲鳴を上げる。
 ミシミシと翼を広げ、雄雄しく立っていた機械仕掛けの神が膝を屈し、周囲が陥没してく。

「まだ壊れないのか? 頑丈だな」

 さらに指を振り下ろす。
 加速度的に増す圧力に、大地が、魔装機神の装甲が悲鳴を上げる。

「テ、メエエエエエエエエエエ!」

 圧力の増す大気の中でマサキの咆哮が轟き、風を支配する精霊使いの狂笑が轟いた。

 マサキの元にKAZUMAが襲い掛かってきた時、蒼の破壊神の前にも敵が現れた。

「アンタが、シュウ・シラカワだな?」

『おやおや。私に一体なんの用ですか?』

 本来ならばそんな能力はないはずなのに空に佇むSHINの言葉に、シュウは薄く笑って答える。

「とぼけるなよ。かなり消耗しているとはいえ――機械仕掛けの神にして、異界の扉を開くことを可能とした武装機甲士。これ以上なにかされるまえに――」

 そう告げるSHINの声が少しずつ変わっていく。
 そうなのだ。
 彼は本来空など飛べるはずもないのだ。
 あるのは時空跳躍、スーパーコーディネーターを超えたイレギュラーのポテンシャル。
 空など飛べるはずもない。そんな幻想はない。
 けれども――たった一つの力があった。

『俺の【運命】でお前を破壊する』

 幻想が編み上げられる。
 虚空に浮かぶSHINを中心に、歯車が、鉄の腕が、コクピットが、トリコロールの装甲が生み出される。
 そして、そこに浮かんでいたのは【運命】と名づけられた自由と正義を打ち破った
SHINの翼。
 下らない妄言に引きずられ、本来ならば負けるはずなどなかった真なる翼。
 それが光の翼を広げ、光り輝く巨剣――アロンダイトを構えた。

『しょうがないですね』

 翼を広げ、襲い来る最強の幻想に、蒼き破壊神は虚空を歪めて応えた。
 理不尽を打ち破る幻想と理不尽と称えられた破壊神が激突する。

 走る。
 疾る。
 跳ぶ。

「もっと速くっ!!」

 神凪綾乃は焔を撒き散らしながら、アスファルトの大地を駆けていた。
 それも爆音を上げて、大地を蹴り飛ばしていた。
 火の精霊に呼びかけて、瞬間的に足裏に炎熱を凝縮し、大地との接触に解放。
 爆音と衝撃を引き換えに、ロケットのような加速を齎す技巧。
 本来ならばここまでの制御能力は綾乃にはない。
 されども、様々な世界が混入し、奇しくも“バーストジャンプ”と呼ばれる夜闇の魔法
使いたちが使う魔法を再現していた。

「綾乃様、あれを!」

 風を制御し、少しでも速度を上げようと風を操りながら走っていた風巻 美琴が声を
上げた。

「あの白いロボット――それに八神 和麻?!」

 美琴の操る風に乗って、なんとか綾乃の走る速度に併走していた神凪 燎が目を
見開いた。
 精霊使いならば歯をかち鳴らし、恐怖に身を竦めるほどの膨大な風の精霊を制御した
KAZUMA。
 そして、それに押し潰されかけている白いロボット――サイバスターの姿。

「あのままじゃ、潰される!?」

 風の精霊使いである美琴には見えていた。
 力ずくで従えられた風の精霊たちの悲哀とそれに抗う“異なる風の精霊”の嘆き。
 そして、それが圧倒的なまでの力の差で押し潰されていくのが解る。解ってしまう。

「させないっ!」

 綾乃が空中から大地に着地する。
 心の底から力を欲し、希望を欲し、全身全霊の願いを篭めて火の精霊たちに願う。

「お願い! 私に和麻のところへ行かせて!!」

 火の精霊王の祝福を受けし、神凪一族。
 その宗家の姫である綾乃の声に――精霊は応えた。
 地面すら燃え上がり、その身を焦がすほどの膨大な火炎。
 それが渦巻き、吼え猛り、そして――

「かずまぁああああああああああ!」

 あらゆるものの速度を凌駕するほどの爆音を上げて、綾乃は跳んだ。
 彼女が認める、たった一人の憎たらしい男の下へと。


 ミシミシと悲鳴が上がる。
 心が砕けそうな絶望に満ちた音が轟く。

「ま、まずいニャ!」

「やばいニャ~!!!?」

「……堪えてくれ、サイバスター!」

 クロとシロの慌てふためく声を聞きながら、マサキは歯を食いしばって、操縦桿を握っていた。

「アイツは……」

 奴に負けるわけにはいかない。

「アイツには――」

 絶対に負けるわけにはいかない。
 何故?
 ――門を切り開いたから? その結末を見届けたいからか。
 ――世界を救いたいからか? 魔装機神操者としての使命か。
 違う。
 それだけじゃない。
 奴を認めるわけにはいかない。
 目の前の狂笑を上げる人間を認めるわけにはいかない。

「この悲鳴を上げさせる奴は、ぶっ飛ばさないと気がすまねえ!!!」

 泣いているのだ。
 サイフィスが泣いているのだ。
 異世界とはいえ、同じ風の精霊たちが嘆き、蹂躙し、力ずくで行使されているのを
見ていられないのだ。
 風の魔装機神・サイバスター。
 彼の魔装機神たる由縁は風の高位精霊【サイフィス】と契約したからである。
 そして、その操者たるマサキもまた直感的だが、風の精霊の気持ちが理解出来る、
心で繋がるサイフィスの悲鳴が聞き取れる。
 そう、泣いている。
 涙を流している。
 それを止めなければならない。
 世界を救う奴が、目の前の泣いている奴を救えない道理はない。

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