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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

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4-803、806、~、813-815 幻想の果てに 風と焔のロンド /続き

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「ぁあああああああああああ!」

 プラーナを供給する。
 己の生命力を、存在力を振り絞る。
 肉体が悲鳴を上げる、心が磨耗していく、されども決してやめない。
 大地に屈服するサイバスターの光の翼が輝いていく。

「まだ抵抗するか?」

 だがしかし。
 最強の幻想は――理不尽である。
 残しておいた小指を、ゆっくりと引き下げた。
 圧力が爆発的に増す。

「がっ!」

 壊れる。
 砕ける。
 大地が空に潰されて、風の翼が風に潰されていく。
 白い装甲はひび割れて、雄雄しき翼は力を失い、大地に墜ちた小鳥の如く無様に
のたうつ。
 希望が、理不尽に潰されていく。
 願いが砕かれていく。
 それもまた現実。圧倒的な現実の残酷。

「そろそろ終いか――ッ?!」

 されど、希望は途絶えず。
 世界を駆ける人々は願いを紡ぎ続ける。
 故に、彼女は間に合った。

「かずまぁあああああああああ!」

 神凪 綾乃。
 火の神器たる炎雷覇が、太陽の如き灼熱を得てKAZUMAに振り下ろされた。

「はっ! 綾乃かよ!!」

「和麻ぁあああああああ」

 燃え上がる焔に、それを受け止める圧倒的な大気の壁。
 もはやダイヤモンドの如き硬度を持つ凝縮され尽くした風の壁を、突き刺さる炎雷覇
の炎が舐めていく。
 このままであれば、いずれ炎雷覇の刃が突破するのも時間の問題だろう。

「あめえよ」

 そう、時間があれば。
 高密度に凝縮された大気の一部を解除し、その隙間を通ってKAZUMAの蹴りが綾乃の胸に直撃する。

「きゃあっ!」

「お前じゃ、俺に勝てないって分かりきってるだろうが?」

 蹴り飛ばされ、無様に落下していく綾乃に対してKAZUMAが嗤う。
 普段浮かべている皮肉げな笑みに、より狂った妄執を乗せて。

「綾乃様!」

「くっ!」

 そして、落下していく綾乃を受け止める影が二人。

「美琴に、燎……か。わざわざ殺されに来たのか?」

 KAZUMAはクックックと嗤う。
 愚かしいと嗤う。

「違います!」

「俺たちは、お前を止めるために来た!」

「――出来んのか?」

 勇気を振り絞り叫ぶ二人に、風の精霊王すらも超えた幻想を纏う男が告げる。
 風の精霊が集う。
 蒼く輝き、同時にどす黒く輝く不浄とも清浄とも呼べる風。
 世界全ての風を集わせたような、理不尽で馬鹿げてありえない密度の風を掲げ、
アバターは告げる。

「力が無い奴なんて吼える言葉なんて、所詮負け犬の遠吠えなんだよ」

 だから、消えちまえ。

 大地で戦う全ての人間もろとも、KAZUMAは消し飛ばそうと手を振り上げて。

「――させねえよ」

 背部より振り下ろされた巨剣が、その体を吹き飛ばした。

 一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。
 体に走ったのは激痛。
 疾風のような感覚。
 一瞬前までの光景とは違う、景色。

「なっ?!」

 高速度で滑空する中で、KAZUMAは風の精霊を制御し、自身の動きを制御する。
 続いて、ボディチェック。
 常時展開していた大気の壁によって大部分の衝撃が軽減されたが、圧倒的なまでに
人間とは違う大質量の打撃は、最強の幻想たるアバターの肉体にもダメージを与えていた。

「腕がやられたか……しかし、何故一体誰が――ッ!!」

 顔を振り上げ、先ほどまで自分が居た方角に目を向ける。
 それで全て理解した。
 何故襲撃を感知出来なかったのかも、そして何故そいつがそこにいるのかも。

「サイ、バスタァアアアアアアアアア!」

 “異世界の風の精霊の化身”
 この世界のあらゆる風の精霊を掌握下に置いたKAZUMAでも、異世界の風の精霊には
――その身に宿る“サイフィス”だけは制御化に置いていない。
 故に、感知出来なかった。
 そして、彼は認められないことがあった。
 サイバスターの周囲に渦巻く風の精霊、それが“彼の手を離れていることに”。

『サイフィスが説得してくれた……テメエの元から離れることを』

「ふざけるな! 俺は、俺は風の精霊王すら超えたんだぞ!? 救えるんだよ、
誰だって救えるような力を持っているんだよ、俺はぁあああ!」

 認められない。
 決して認めるわけにはいかない。
 全ては思い通りにいかなければならない。
 あらゆる抵抗を、理不尽に踏み潰さなければならない。
 それがKAZUMA。
 U-1に編みこまれた幻想。

 だがしかし、その幻想を。

『しらねえよ』

 風の魔装機神は切って捨てた。

『風の精霊王? 誰だって救える? そんなのは俺は知らないし、そんなことがありえる
わけがねえ』

 幾度となく人々が争う戦争の渦中に居た。
 その身に背負わされた使命に、心が折れかけた。
 何度も、何度も、仲間を失ったこともある。
 目の前で救いたかった奴が、救えなかったこともある。
 絶望しかけたこともある。
 けれども。

『力が必要なんじゃない、諦めねえことが必要なんだ』

 それはあるヒーローと戦い続けた戦闘員が発した言葉。
 壊れた正義の味方を打ち砕いた、誇り有る悪の言葉。
 彼のことを、マサキは知らない。
 けれども、彼は知っている。
 ヒーローが、ヒーローである資格を。

『誰かを傷つけんな、誰かを泣かすな、何かを諦めんな。それが出来ないなら、お前は
誰も救えねえ』

 風の魔装機神の握る剣――ディスカッターが大地に突き刺さる。
 地面を中心に走る六芒星の魔法陣。
 燃え上がる炎の鳥の輝き。

『だから、俺がお前を止めてやる』

「やってみせろぉおおおお!!」

 渦巻く風。
 全てを蹂躙する最強の風。
 集え、集え、集え。
 目の前の綺麗ごとを発す馬鹿を消し飛ばせ。

『アァアアアカシック、バスタァアアアアアアアアアア!!!』

「らぁああああああああああああああ!!!!!」

 飛翔する炎の不死鳥。
 切り刻む暴虐の嵐。

 その二つが衝突し合い――

 風が吼え猛った。

「ァアハハハア! この程度かよぉおおおお!!」

 迫る炎の不死鳥を、繰り出す嵐の壁で受け止めながらKAZUMAが嗤う。
 この程度か。
 綺麗ごとを抜かす奴の力はこの程度か。
 “剣を突き刺したまま動かないサイバスター”を見て、KAZUMAが狂笑の笑みで
目の前の炎を押し潰そうとする。

『馬鹿ね』

「なっ!?」

 KAZUMAが伸ばした手が握られる瞬間、炎の鳥の中に誰かが飛び込んだ。
 消えることの知らない太陽のような娘。
 火の精霊王より授かった神の炎雷覇
 それを携えた神凪 綾乃が炎の中に飛び込んだ。

「ば」

 ばっかやろうと思わず、KAZUMAは口走りかけた。
 いかに精霊王の祝福があろうとも、あの炎はそれだけ耐えられるような生易しいものじゃない。
 アバター化しているKAZUMAでなかったら危ういほどの業火。
 それを、綾乃程度が飛び込めば――

「くぅううううう!!!」

 燃える。
 焦げる。
 熱い、熱い、熱い。
 火に焼かれることがこれほど痛いとは知らなかった。
 燃え上がる皮膚がこれほどまでに苦痛を伴うとは知らなかった。
 けれど、これは――かつて彼が味わった苦痛の一部。

「かぁ」

 超えるのだ。
 追いつくのだ。
 背を並べるのだ。
 あの憎たらしい男の横で、当然のような笑みで笑ってやるのだ。
 それが、綾乃の夢であり、願望であり、目標。
 だから――

「ずまぁあああああああああああ!」

 燃え上がる不死鳥の炎すらも喰らいて、炎雷覇が“朱金“の輝きを帯びる。

「なっ!?」

 それは『神炎』
 選ばれし高潔なる神凪一族の者しか使えぬ黄金の炎を超えた力。
 それは空間すらも焼き尽くす炎。
 KAZUMAの風すらも超える――願いの力。

「ぁああああああああああああ!!」

「おぉおおおおおおおおおお!!!」

 KAZUMAの蒼銀の風と綾乃の朱金の炎が鬩ぎ合う。
 圧倒的な力の差のはずだった。
 どうやってもKAZUMAに勝てるなんかわけなかった。
 一人一人の力は彼の四分の一にも満たなかった。

 けれども、KAZUMAは……一人だった。

「綾乃様ぁ!」

 炎の舞い上げるのは風。
 弱々しくとも、気高き祈りの風。

「いけぇええ!」

 風を生み出すのは炎。
 誇り有る血統の黄金。

「貫けええええ!!」

 二つをもって、風炎とする。
 異世界の、されども世界を護る意思の力。

 三人の力に支えられて、綾乃は――最強に迫る。
 幻想を砕く、想いとなる。



「和麻」

 覆いつくす風炎の光景。
 燃え上がる爆炎と渦巻く轟音の中。
 KAZUMAは、綾乃の声を聞いた。

「私はアナタは好きじゃない」

 それは嫌悪。
 真っ正直な本音。

「でも、アンタは嫌いになれない」

 囁くような言葉。
 輝く炎の中で、女神のような燃え上がる少女の言葉。

「理不尽で、あくどくて、汚くて――でも強い奴だって知ってる」

 見惚れるような笑みを浮かべて、綾乃は告げた。

「だから、帰ってきなさいよ。いつもの憎らしいアンタに」

 そして。

「それも、いいかもな」

 ゆっくりとKAZUMAは――否、幻想を纏わぬ和麻は笑った。
 純粋な清々しい年齢相応の笑みを。

 そうして、幻想は壊れ、現実が帰ってくる。
 誰もが望んだ明日へと続く現実が。

 ――風の聖跡組 WIN?


 最後に残りしアバターの一角が終わりを告げた時、もう一体の戦いも終わりを告げよう
としていた。

『オォオオオオオ!』

『あはあぁああ!』

 アロンダイトとグランワームソードが激突し合う。
 運命を背負いし翼と、破壊神は場所を変え、位置を変え、あらゆる空間の破砕を
撒き散らしながら戦っていた。

『くそぉ! なんでだ、なんで倒せない!?』

 SHINが叫ぶ。
 幾度も砲撃を直撃させ、大剣を刻みつけ、その武器を持って破壊神を傷つけた。
 けれども、いかにひび割れようとも、いかに傷つこうとも、破壊神から感じられる威圧感
は止まらない。
 勝ってる気がしない。

『おやおや? どうしたのですか』

 それを裏付けるように、響くシュウの声には余裕があった。

『あなたは最強なのでしょう? 理不尽を踏み砕く最強なのでしょう? ならば、私を
超えて見せてください』

『ァァアアアアアアアアアア!!』

 光の翼が瞬く。
 常人の速度を超え、コーディネーターでも追いきれぬ加速。
 音速を超えて、ソニックブームを撒き散らしながらディスティニーが空を舞った。

『これでぇ!!』

 その馬鹿げた速度は、破壊神の反応すらも超えていた。
 理不尽な加速、理不尽な機動、最強を打ち砕いた翼は真正面から破壊神の胸部に迫り。

『終わりだぁ!!』

 ――パルマ・フィオキーナ。

 ディスティニーの掌底部に備え付けられた特殊兵装。
 本来ならばビーム砲を放つだけ光の掌は、最強の幻想を纏いて全てを消し飛ばす
閃光と化していた。
 至近距離からの接触。
 歪曲フィールドも及ばぬ場所からの、胸部への直撃。
 それに破壊神の装甲が砕けた。

『ハァ、ハァ……やったか?』

 沈黙。
 世界が止まったような静寂。
 そして、不気味な沈黙は。

『なるほど』

『?!』

 蠢く破壊神の腕によって、砕け散らされた。

『な、なんでまだ生きてる?!』

『簡単なことです。あなたの攻撃はコクピットに届かなかった……いや、“一次装甲”を
砕けただけということです』

 蠢く。
 輝く。
 唸り声が漏れ出す。
 蒼き破壊神が、その全身から光を発しながら告げる。

『何故あなたが勝てないのか教えてあげましょう』

 蒼き装甲の全身がパージされ、新たな装甲が生み出され、蠢くように変形していく
破壊神を見ながら、SHINは絶望を教えられた。

『あなたは“理不尽を打ち破る最強なのですよ”』

 神の如き光輪。

『“理不尽を打ち破る英雄ではなく”、“理不尽を踏み潰す最強”』

 圧倒的なまでの最強の力。

『それではあなたは私を破る律にありません。
 私を倒せるとしたら――“最強ではないヒーロー”なのですから』

 生半可な幻想では届かない圧倒的な理不尽。
 全てを叩き潰す、悪夢の象徴。

『力しか誇れぬものはより大きな力に踏み潰される。故に、あなたは私という力に
叩き潰されるのみ』

 そして、圧倒的な力が周囲を掌握した。

『消えなさい、幻想の産物よ。理不尽に、理不尽でしか立ち向かえない哀れな人形よ』

 漆黒が。
 世界を滅ぼす漆黒が。

 最後の幻想を力で叩き潰した。


 ――魔装機神組 WIN?

4-826


コツン、コツン ――

深夜の路地裏。
普段からそれほど人通りの多い場所・時間ではないとはいえ、異常なまでの静けさが辺りを包みこんでいる。
物音一つしない世界に、ただ、ブーツの音だけが鳴り響く。

時間は少しだけ遡る。
東京を中心として観測された次元の歪みに対して、多くの“魔法使い”たちがそれを隠匿せんと奔走した。
その試みの1つが、この辺りに展開された広域魔法結界である。
イノセントと呼ばれる力を持たぬ人々が、非日常の世界に触れてしまうのを防ぐ予防線と言ってもいい。

前線から少し離れたこの場所に、1人の少女がじっと身構えていた。
ここはあくまでも予防線。
しかし裏を返せば、世界結界の損傷へダイレクトに繋がるデッドラインということだ。

 グレーテル「(お兄さまの予想が正しければ、必ず誰かがやってくるはず……っ!)」

彼女の名はグレーテル。
中学生くらいだろうか。年端も行かぬ幼い顔とは裏腹に、その瞳には決意の炎が宿っていた。
ツーテールにまとめた青い髪がふわりと風に揺れるたび、きらきらと月の光を反射する。


都心では戦況が少しずつ変化していた頃。
ただひたすら境界線を監視していたグレーテルの前に、1人の来客があった。

   パール「見つけたわ! これで煩わしい世界結界もお仕舞いよねっ☆」

すっと降り立ったのは、巫女服を来た金髪少女・パール=クール。
十代前半という見た目に決して騙されてはいけない。これでも裏界最強を自称する魔王なのである。

   パール「このパールちゃんの秘策により、戦況は大きくこちら側に傾くことになるわ!
       誰が最強で、いっちばん可愛いの魔王なのか、分からせてあげなきゃ♪」

へへん、とパールは得意げに胸を張る。
どこぞの世界の守護者や蝿の女王よりは幾分マシとはいえ、平らで薄っぺらい身体で主張されても余り迫力は無い。


ここは少しだけ世界から位相をズラされた空間 ―― 月匣。
普段なら彼女たちが自ら力を振るうための結界である。
しかし今は、突如出現した「式神の城」を世界から隔離するために、ウィザードたちが展開しているのだ。

なら ―― いつもとは逆のことをやればいい。それだけだ。
多くの月匣と同様、この広域魔法結界にも存在を維持するための「コア」があるはずである。

暴走を始めた式神の城は、もはや世界結界だけでは止められない。
月匣の中で十分に加速した「非日常」の因子は、たやすく世界の常識を貫く飛礫(つぶて)となるのである。

   パール「月匣のコアを叩けば、式神の城が世界に露出することになる。天才よねっ!」
 グレーテル「けれどそれも全てお兄さまの計画の通り。アンタはそこにのこのことやってきた。
       ここをアタシが守りきれば、お兄さまの素晴らしさが証明される……っ!」

そんなことはさせない、とパールの行く手を塞ぐグレーテル。
月匣自体を解除しようする者が現れるだろうと予想し、待ち構えていたのだ。

 グレーテル「アンタはアタシが相手よ! ……《ミッシンググレイヴ》っ!」

両手にはめたミトンの手袋に、彼女の身長ほどもある巨大な剣 ―― 魔剣ミッシング・グレイヴが現れる。
明らかに不釣合いな得物だが、少女は軽々とそれを振りかざす。

   パール「なっ……何よっ! ちょっと予想が当たったからってイイ気にならないことねっ!
       たかがウィザード1人くらい、この超強くて超かっこいいパールちゃんが、一捻りでやっつけてあげる♪」


最初に動いたのは魔王パール=クール。
右手を天に掲げ、その掌の上に漆黒の球体を生み出すと、相手の足元へと投げつけた。

   パール「さっさと消えなさいよっ! 《ディストーションブラスト》っ!」

しかしグレーテルには命中しない。
軽いステップで、魔法攻撃を回避したつもりだったが……

キィーーーーーーーン!
着弾点を中心につんざくような金属音が響き渡り、周囲の空間がぐにゃりと歪む。
その歪みは、路地にひしめく無人の雑居ビルにまで至った。

   パール「そのまま、つぶれちゃいなさいっ!」

柱砕かれて支えを失ったビルが次々と倒壊し、歪みの中心近くにいたグレーテルを襲う。
データ的には、ビルというオブジェクトにリンクしていたトリガー型のダメージトラップと言ったところか。
単に魔法攻撃を放つだけでなく、周囲の状況までをも利用する。
見た目や言動と違い、なかなかクレバーな戦い方をするパールちゃんであった。

 グレーテル「《ドール・オブ・グラビティ》!」

しかしグレーテルも負けていない。
倒壊するビルの下敷きになる直前、魔剣ミッシンググレイヴをそのビルに向かって突き刺した。
その瞬間、倒壊するはずだった雑居ビルは巨大なドラゴンへと変形し、少女を《カバーリング》する。

グレーテルが作り上げたドラゴン型のゴーレムが咆哮をあげ、そのまま魔王を噛み殺さんとする。
しかしパール=クールは余裕の笑みを浮かべたままだ。
そんなオモチャであたしを倒せるなんて思わないようにね、と言わんばかりに。

パールがそっと両手を前に出すと、その先の空中に赤い光を放つ魔法陣が描かれた。
ドラゴンの牙は、その魔法の盾に阻まれ有効なヒットを与えることが出来ない。
運動エネルギーは、受け止められたことでそっくりそのままドラゴン自身へと返される。

グシャアアアアアアアアアッッ!!!
壁に投げつけたトマトを見るかのように、その身体を支えきることが出来ず崩壊していく。
そこに、一瞬だけパールに隙が生まれた。

 グレーテル「《ハウス・オブ・グラビティ》―― やぁぁぁっ!!」

轟音と煙に紛れ、魔法により加速したグレーテルが一気に叩き込む。
彼女の唱えた《ハウス・オブ・グラビティ》は、正確には重力を操作する魔法である。
自身のそれを巧みにコントロールすることで、ロケットのような加速を実現させたのだ。
詳細については2ndルールブックP.144右上を参照のこと。

 グレーテル「お兄さまのためにも、倒れなさいっ!」
   パール「くぅ ―― っ!」

インパクトの瞬間に再び重力を操作し、加速を保ったまま強力な一撃を与える。
タイミングを合わせるのは困難だが、上手く当たればその効果は大きい。それがバロール・シンドロームのエフェクト《巨人の斧》だ。

   パール「……って何よっ!? ゲームが違うわよっ!」

考えてみれば、グレーテルの魔法はバロールやモルフェウスの能力で表現可能なものが多い。
それはともかく、パールにはかなりのダメージを与えているはずだが、流石は魔王。まだまだ倒れない。

   パール「もう怒ったんだからっ! 死んじゃえ死んじゃえっ!
       あんたなんか、チョコレート持って命乞いしても、ぜぇったい許してあげないんだからっ!」


あれからしばし ―― まだ魔王とエプロン少女(グレ子)の戦いは続いていた。
戦況は明らかにパール=クールの優勢。
幾らグレーテルがかつて世界を救った英雄であるとはいえ、今は1人。
支援が期待できないこの状況では墜ちるのも時間の問題と言えよう。

せめてあと1人、あと1人一緒に戦ってくれる仲間がいれば……!

   パール「もう終わり? 最初の威勢はどうしたのかしら?
       早く命乞いをしなさいよ! この超公パールちゃん様のげぼくになるって誓いなさいっ!
       もちろん許してなんてあげない。ふふん、いっしょーこきつかってあげる♪」

ボロボロになりながらも、グレーテルは決して首を縦に振らない。

 グレーテル「お兄さまと誓ったから……! それと一応三銃士のみんなも……だから……アタシは……っ!」
   パール「……!? さっきからお兄さまお兄さまって! もういいわよっ!」

パールは静かに右手を向けた。
真っ赤な〈火〉のプラーナがその先に集中するのがグレーテルにも分かる。

   パール「地獄の業火で灰になってわびるといいわ!
       《ブラストフレア》―― 相当の《ファイアー・ボール》っっ!」

見た目にはただの変哲の無い火球。
しかしその温度はおよそ1兆度(誇大広告)! 全てが一瞬で蒸発する最凶の炎である。

   パール「これがあたしのメラ……じゃなくて《ファイアー・ボール》よ!」

ゴォォォォオオオォォォッッ!
神すら想像できぬ熱の塊が辺りを焼き尽くす。
その瞬間、パールは勝利を確信した。

  謎の少女「――《プテリュクス》!!」

ただ1つ、最後にそんな声(C/V山本麻里安)が聞こえたような気がしたが、勝敗には関係ないだろう。
この炎に耐えられる者などこの世に存在しないのだから。


パール=クールの放った業火は、辺り一面を焼け野原へと変貌させた。
原形を残すものなど何も無い。道路も、かろうじて残っていた雑居ビルも、そして瓦礫の山も。
膨大な魔力より生み出された圧倒的な熱量がもたらした、無残な姿。
魔王を怒らせたのだ。当然の結果と言える。

   パール「これがあたし、パールちゃんの力よ。
       これでも手加減してあげたんだから、感謝しなさ……」

パールの目が大きく見開く。
視線の先に佇んでいたのは、黒コゲになった巨大な鋼鉄の盾。

  謎の少女「ほっ……なんとか、間に合いました」

人をすっぽりと覆い隠すほどの大きな盾の陰から出てきたのは、茶色の髪をお下げにしたメイド服姿の少女。
普通のメイドさんと少し違うのは、鋼鉄製らしきグローブとブーツ、それと背負った大きな剣くらい。
歳はグレーテルと同じくらいだろうか。よく見ればヨーロッパ系の顔立ちをしているのが分かる。

   パール「あんた、邪魔する気!?」

メイド服の少女の後ろには、グレーテルの無事な姿も確認できた。
あの炎を、鋼鉄の盾が護り通したとでもいうのか。簡単には信じられない。

 グレーテル「助かった……ありが、とう……。アンタの名前は……?」
  フィオナ「私の姿が見えるんですね、嬉しいです! あっ、えっと、私はフィオナ・メイフィールドっていいますっ」
 グレーテル「フィオナ……あの、メイフィールド事件の……?」

こくり、とフィオナを名乗る少女はうなずいた。

数年前、今回と同じようにイギリスで次元の歪みが発生し、2人の少女がそれ巻き込まれたという事件。
1人は後日保護されたが、もう一方は未だ行方不明だと聞いたことがあった。
その時に消えた少女の名が ―― 確か、フィオナ・メイフィールド。

パール=クールは苛立ちを隠せない。
けれどここで気を荒げるのも、魔王としてのプライドが許せるものでもなかった。

   パール「ふぅん、まあいいわよっ!」
  フィオナ「はう……ごめんなさい」

何故か魔王に謝るフィオナ。

  フィオナ「でも、この世界を見捨てるなんてできません……私は、戦いますっ!」

そう誓うと、フィオナはグレーテルのミッシンググレイヴにも負けないほどの巨大な剣を構える。
異世界の腕利きの刀鍛冶に鍛えてもらったというフィオナの愛剣。
まだ完全に使いこなせてはいないけれども、彼女は剣にキャメロットという名前を付け、可愛がっていた。

   パール「こうなったら2人まとめて消してあげるんだからっ!」

第2ラウンドの開始である。


さすがに実力ある剣士2人となると、さすがのパールにも焦りの色が見えてくる。
連戦な上に、やはり手数が違うのが致命的だ。

  フィオナ「えーいっ! やーっ! それーっ! 《エクスカリバー》っっ! 《クリオドゥース》っ!」
   パール「《リアクティブ・ガード》っ!!」
 グレーテル「《ミッシングブレイド》っ!」
   パール「くぅっ!!」

フィオナが牽制し、グレーテルが一撃を加える。
かと思えば、その逆も。
巨大な剣を抱えた2人の少女は、まるで長年のパートナーかのように完璧な連携で攻め込んでいる。

   パール「《ファイアー・ボール》!」
  フィオナ「《プテリュクス》! 私たちを護って!
       私の剣も盾も、そして心も! すっごく頑丈なんです! そう簡単には折れませんっ!」

生半可な攻撃では、パールの攻撃もマトモに通らない。

   パール「ああもうっ! いい加減にしなさいよっ!!」

このままでは埒があかないと判断したパール=クールは、強力な技で一気に相手を崩そうと試みる。

   パール「まとめて消してあげるっ! ありがたいと思いなさいよっ!」

その瞬間、グレーテルとフィオナは互いに目で合図を送る。
待っていたのだ。魔王が痺れを切らし、隙ができる大技を撃ってくるのを。

  フィオナ「約束の地より来たれ、オレイカルコスっ!」

フィオナの言葉に従い、彼女を守護する〈鋼〉のアルカナ、エルダードラゴンが姿を現す。

 グレーテル「やあぁぁぁっ!! 《ギガンティック ―― グレイヴ》ッッ!!」
   パール「《ヴァニティワールド》―― 超☆アンリミテッドっっ!」

パールの呪に呼応して、周囲の空間そのものが悲鳴をあげる。
何もかもを消滅させる〈虚〉属性最強の攻撃魔法だ。

   パール「これで終わりよっ!」

空間の歪みが、グレーテルを侵食する。しかしそれでもなお彼女は戦いを諦めない。
グレーテルの持つ魔剣ミッシンググレイヴが、先ほどまであった小さな雑居ビルくらいにまで巨大化する。
巨大な一薙ぎは、パールの身体を大きく切り裂き、さらにその衝撃は空中へと吹き飛ばす。

  フィオナ「いきますっっ! ……《セイクリッドパニッシュ》っ! お願い、当たってーっ!!」

フィオナの背中に出現する光の翼。
その翼で吹き飛ばされたパールを追いかけ、そのまま最後の一撃を加える。

  フィオナ「《セイクリッドパニッシュ》っ! ……お願い、当たってーっ!!」

通称・超メイ道とも呼ばれるフィオナの必殺技。
その一撃は、決まりさえすれば誰よりも重い一撃となる。


グレーテルとフィオナの連携攻撃により、魔王パール=クールの写し身は消滅する。
だが、その代償も決して小さくは無い。
グレーテルが本来護るべきだったもの、パールが破壊しようとしていたもの。
式神の城を人々の目から隠すための月匣は破壊されてしまった。
これほどの戦いがあって、その程度で済んだのが奇跡とも言える状況ではあるのだが。

 グレーテル「……ごめんなさい、お兄さま……」
  フィオナ「グレーテルちゃん……」

見上げれば、遠くに「式神の城」が見える。
前線では今ごろ誰かが戦ってくれているのだろう。

大丈夫。きっと大丈夫。
信じよう、仲間を。


月匣が解除されたことにより、大衆の目に「式神の城」が触れることになる。
人々の常識は破壊され、人間側の敗色が濃厚となった。

しかし、それは奇跡の前触れ。
そしてこの愛と奇跡の物語の、クライマックスが語られることになる。

人々は空を見上げ、耳を澄ます。かすかに聞こえる少女の声。


 ―― 聞いてください。
    今、みんなの住んでいる世界を守るために戦っているやつらがいます。
    けど、世界を守るためにはみんなの助けが必要なんです。
    みんなには、信じる気持ちを持って欲しいだけなんです。
    誰かと一緒にいたり、笑ったりするための
    明日っていう、希望を。

4-847-469 ここまでオープニング

「名前は……緋室灯」

少女は静かな声でそう告げた。
確か箒といっただろうか? 巨大な大砲を担いだ制服姿の少女は、静謐な雰囲気とあいまって神聖さすら感じられた。

「あかりん、ってよんでね」
(なんだ、そりゃあ……!?)

だからこそ続けて言われた言葉は、常識人を自認する日向の腰を砕けさせた。
ハードボイルド成分を振り絞って何とか耐える。ダンディな探偵は無様に膝をついてはいけないのだ。

「おー、よろしくな、あかりん」

……あまりにも平然とした弟子兼共同経営者の姿は、もしやおかしいのは自分ではないかという疑問を抱かせるに十分だった。

「おお、灯のボケをあんなに簡単にスルーするとは、アイツやるな!」
「はわー、あかりんもしかして動揺してない?」
「ふ、これが若さというものかでどり~む」

(ふう、やはり俺がおかしいわけじゃないか)
軽く頭を振ったところで周囲の声が耳に入り、安心する。が、
(いやいや、そうじゃないだろう)
落ち着いて周りを見渡したところ、喋っているのは冬なのにブレザーの袖を捲り上げた青年、当然のように巫女服を着た少女。
そこまではまだいい。いや、よくはないが、もう一人と比べるとはるかにましだろう。
(流石にあんな格好をした男の言葉に常識を感じるわけにはいかん。それ以前に台詞の意味もわけがわからん……
やれやれ、いくら空飛ぶ城の上だからってこれ以上の非常識は止めてもらいたいもんだがね)

ふと眼下の東京の町並みを見下ろす。
今いるのははるか上空に浮かぶ城の上。
一文の得にもならない正義の味方稼業でやってきた自分達と違い、相手さん方はどうやら何者かに命令されて来たらしい。

「ウィザード、か」
「どうしたのだ日向。ため息などついてでどり~む」
「その口調を聞いてるとさらにため息の数が増えそうだ。
……なあに、世界の守護者まで出てきたとなるといよいよ探偵の出番じゃなくなってきたのかと思ってね」
「何を言うのかでどり~む。依然組んだときに見せた腕前。俺に勝るとも劣らぬものであったというに」
「最近転職したんでね。今の俺はペット探しの毎日を送るしがない探偵さ」

ふと目を向けてみると、ペット探しの相方はまだ少女との会話を続けていた。

「その髪と目って染めてたりするの?」
「これは、改造手術のせい」
「改造手術って、すげーなあかりん」
「……格好いい?」
「すげーかっこいいな!」

(そういえば、ニーギが光太郎は年下好みだと言ってたな)
最近拾った少女の言ったどうでもいいことを思い出した。

「誰にでも物怖じしないところは、あいつの美点ではあるんだがね」

苦笑しながら横を見ると、

「うお!?」

そこには、闇があった。

「……初めてあった人の事をあかりんって言うくせに、私のことはアンタ呼ばわり……
あかりんって言うくせに……
あかりんって……」

壬生谷の巫女は嫉妬深い。これは世界の選択である。

「ん? アンタ、どうしたんだ?」

そして主人公は鈍い。これも恐らく世界の選択である。

「何でもありません!」
「な、何怒ってんだよ?」
「怒ってなどいません!」
「怒ってるじゃねえか!」

すぐにヒートアップしてきた二人の口喧嘩。
いつものことではあるのだが、少しは場をわきまえて欲しいものだ。

「あの巫女さんどうしたんだ?」
「はわー。鈍いわねえ柊……」

巫女服の少女(赤羽家のお嬢様だそうだ。こんな所ではなく、事務所で会いたかった)が剣を持った青年を半眼で見ている。
幼馴染らしいが、その関係はどうやら複雑なようだ。

「……まさにラブコメ。萌え」

……流石に、二度目となるとそのギャップにも耐えることができる。

「若いというのはいいな。そうは思わんか、日向?」
「同意を求めるな。俺はまだ若いつもりなんでな」
「何を言うか、お前も俺と同じで……」
「俺はまだ29だ。……16ヶ月ばかし過ぎちまったがな」
「……どり~む。全く無駄な足掻きを」
「あの、皆さんどうかシマシタカ?」

そこへ電話を終えた金がやってきた。

「ふむ、話はまとまったのかな? どり~む」
「ええ、アンゼロットさんは協力して事件の解決にあたってくれ、とのことデス。
ふみこさんが城への突破口を開けてくださるそうデスガ……」

その言葉を聞き、動きを止めたのが三人。
皆、ふみこという人物をよく知っている人間である。

「あー、それってやっぱり……」
「でしょうネ」

何かを受け入れたかの様な静かな笑みを浮かべる友人を見て、日向も静かに嘆息した。

「ああ、どうしたんだ?」
「あー、いや、そのな……」
「はわ?」
「何といいましょうか……」
「何が起こるというのだ?」
「……魔女が無茶をするんだよ」

そういって日向が帽子に手をやったのと同時に、その場に光が降り注いだ。

852

大哲「…という話はどうでしょう!?」
炎尾「面白いかもしれん…だがあまりに引用が多すぎるように感じるぞ、大哲。あとちゃんと風呂敷はたため!」

はダイナシだから禁止な。

4-853、867

タイムリミットまで後僅か……でも、諦めない!

「流石は、蠅の女王から“魔王”の二つ名を授けられただけの事はあるね。
 でも、それももう終わり。

 この、“U-1”が一柱、“U-NO”が君を倒し、不相応な“最強”の呪縛から解き放ってあげるよ……なのは」
「ユーノ君……それは思い上がりなの。
 私が“最強”とか“冥王”とか“ペンペン草も残らない”とか言われるようになったのは、ただ守りたいから。
 強さの為に強くなるような人達に負けるわけには……

 後、魔王に魔王呼ばわりされたのはスレ違いなの」

 例の、なのはクロスね。

「……君には、今でもすまなかったと思っている。無印の時点で今のような力が有れば、君はただの女の娘でいらr」
「話を、聞けーッ!!」

 自分こそ話をさせてやれと思うが、フェイトの投げつけたアルフがU-NOを直撃。
「そんな事になったら……私となのははラブラブになれない!!」
 それ地下スレだろ、と言うのは捨て置き、二人は杖を重ね、周囲に漂う魔力の残滓を収束する。

「ら、ラブラブの件はさておいて(置かないで!?)、私は、みんなを守りたいから……ブラストカラミティ!」

「く、中距離線滅コンビネーションか!
 だが、その複合詠唱程度で僕の防御は破れず、逆に僕のSLBが先に決まる!」
 U-NOが右手に構えた『レイジングハート』の先端に魔力が集積し……

「その前に、作者がハンドルとトリップを出した意味を考えなあかんで」

 横合いから『塊魂』の王子が転がす塊が現れてU-NOの集めた魔力を持っていった。

「いくら主役級がカッコ付けてもな、それを虚仮にするのが我々狂言回しだ、覚えておけ。
 因みに私はマジカル金剛機。以前この作者がこのトリップで、天羅スレでネタにしたキャラだ」
 そう自己紹介した、単眼六腕の魔法機械一機。
 パワーシールドを構えてもU-NOの砲撃は凌ぎきれなかったが、先の二人にはやても加えた三重唱の時間を稼ぐという役目はしっかりと果たし……

『完全滅殺!!! トリプルブレイカー!!!』


アバター・U-NO、撃破。

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