概要
ジーク・セットは、ゲーム『Rewrite』およびその派生作品に登場するキャラクターである。初出はファンディスク『Rewrite Harvest festa!』収録の短編シナリオ「鉄の約束、あるいは血の記憶」。クロスオーバーアニメ『かぎなど』にも出演しており、他作品のキャラクターとの交流が描かれている。
風祭市に拠点を置く守護者(ガーディアン)とは異なる、欧州支部に所属するエージェント。その出自や能力の特異性から、物語中盤において重要な役割を担う存在として登場する。
自身の血液を媒介とし、触れた無機物を自在に変形・操作する特異な能力を持つ。この能力を駆使した戦闘スタイルは変幻自在であり、多くの魔物や敵対勢力を圧倒してきた。
当初は天王寺瑚太朗らと対立する立場であったが、風祭市で起こる一連の事件の真相に迫る中で、次第に共闘関係を築いていくことになる。
生い立ち
ジークの出自に関する公式な記録はほとんど残されていない。戦災孤児であった彼は、幼少期に東欧で発生した大規模な魔物災害に巻き込まれ、家族や故郷の全てを失った。その際、偶然居合わせた守護者の当時の欧州師団長によって救出され、組織に保護される。
この出来事は彼の原体験となり、後の彼の思想や行動原理に大きな影響を与えている。二度とあのような悲劇を繰り返させないという強い意志が、彼を守護者としての道に進ませた。
保護された後、彼は守護者の英才教育機関に所属。そこで自身の特異な能力を開花させる。彼の能力は、従来のオーロラをエネルギー源とする超人とは異なり、自身の血液に宿る微細なエネルギーを触媒として無機物を支配するという、極めて稀なものであった。このため、彼の能力の詳細は組織内でもトップシークレットとして扱われ、その研究と訓練は極秘裏に進められた。
十代前半には既に熟練のエージェントとして頭角を現し、数々の困難な任務を遂行。その功績から「ブラッドエッジ」の異名で呼ばれることもあった。彼の名は欧州の魔物や非合法組織の間で畏怖の対象となり、若くして守護者欧州支部における屈指の実力者と目されるようになる。
物語開始の少し前、ガイアの過激派による不穏な動きと、日本支部から報告された「鍵」に関する特異な兆候を調査するため、特命を受けて風祭市へと派遣された。
作中での活躍
『Rewrite』本編
物語中盤、風祭の森で魔物の大規模発生を調査していた瑚太朗たちの前に、突如として姿を現す。当初は日本支部の管轄を無視した越権行為として、江坂宗介らからも警戒される存在であった。
彼はガイアの過激派組織、特に「聖女」を盲信する一部の原理主義者たちの動向を追っており、その過程で瑚太朗や神戸小鳥、鳳ちはやといった「鍵」に関わる人物たちと接触する。
当初は彼らを監視対象、あるいは任務遂行の障害と見なしており、特に瑚太朗とは幾度となく衝突した。互いの思想や正義の違いから、時には刃を交えることもあったが、共に強力な魔物との戦闘を経験する中で、次第にお互いの実力を認め合うようになる。
物語が終盤に差し掛かり、救済の是非を巡る守護者とガイアの対立が激化すると、彼は欧州支部からの命令と、風祭で出会った仲間たちとの間で葛藤する。最終的には自らの意志で瑚太朗たちと共に戦う道を選び、世界の命運を賭けた最終決戦において重要な戦力の一端を担った。
『かぎなど』
『かぎなど』の世界では、彼のクールで真面目な性格が、他のKey作品の個性的なキャラクターたちとの間で化学反応を起こし、多くのコミカルなシーンを生み出している。
真剣な表情でボケをかますキャラクターに冷静なツッコミを入れたり、学園の奇妙なイベントに真面目に参加しては困惑したりと、本編では見られなかった一面が描かれている。特に、岡崎朋也からはその堅物な性格を面白がられて頻繁に絡まれ、その度に呆れた表情を見せている。
一方で、戦闘能力は健在であり、学園に危機が迫った際には、他作品の能力者たちと連携して戦う姿も見られた。異なる世界の住人との交流を通じて、彼自身も人間的な深みを増していく様子が描かれている。
対戦や因縁関係
天王寺瑚太朗
能力の質、思想、戦闘スタイルなど、あらゆる面で対照的な存在。当初は互いを認めず激しく対立したが、数々の共闘を経て、言葉を交わさずとも互いの意図を理解し合える戦友となった。ジークにとって瑚太朗は、自身の凝り固まった正義に疑問を投げかけ、新たな可能性を示した重要な人物である。
鳳ちはや・鳳咲夜
同じ守護者に所属する者として、一定の信頼関係を築いている。しかし、ちはやの師である咲夜に対しては、その規格外の能力と、組織の命令系統から逸脱した行動に、当初は強い警戒心と不信感を抱いていた。過去に欧州で咲夜が関わったとされる任務の件で、ジークは独自の調査を行っていた経緯がある。
神戸小鳥
「鍵」そのものである彼女に対しては、当初、世界の存続を脅かす危険因子として監視の目を向けていた。しかし、彼女の純粋さや自然を愛する心に触れる中で、その認識は徐々に変化していく。彼女を守るべき対象として認識するようになってからは、自身の危険を顧みずに行動することもあった。
性格と思想
基本的に冷静沈着で、感情を表に出すことは少ない。任務を遂行するためには私情を挟まず、時に非情な判断を下すこともあるため、冷徹な人物であるという第一印象を与えやすい。
しかし、その根底には、かつての自分のような弱者を二度と生み出したくないという強い正義感と、仲間を見捨てない情の厚さがある。ただ、その優しさを素直に表現することが苦手なだけであり、彼の行動をよく見ていれば、その不器用な優しさに気づくことができる。
彼の思想の根幹をなすのは「秩序の維持による悲劇の回避」である。彼は、無秩序な力の行使や、コントロールされない感情が、かつて故郷を襲ったような悲劇を生むと考えている。そのため、守護者の掲げる理念に忠実であり、世界のバランスを崩しかねない「鍵」や「聖女」といった存在に対しては、厳格な管理が必要であるという立場を取っていた。
しかし、風祭での経験を通じて、瑚太朗のような個人の意志の力や、仲間との絆がもたらす予測不可能な力が、必ずしも世界を破滅に導くものではないことを学ぶ。彼の思想は、厳格な秩序主義から、人間の可能性を信じる柔軟なものへと変化していくことになる。
物語への影響
ジーク・セットというキャラクターの存在は、『Rewrite』の物語に複数の側面から深みを与えている。
一つは、物語の世界観の拡大である。彼の登場により、物語の舞台が風祭市という閉じたコミュニティだけでなく、欧州を含む世界規模の組織の対立構造の中に位置づけられていることが明確になった。守護者という組織も一枚岩ではなく、内部に様々な派閥や思惑が存在することを読者に示唆した。
また、彼は瑚太朗にとっての「もう一人の主人公」とも言える役割を果たした。瑚太朗が人間的な感情や周囲との関係性の中で成長していくのに対し、ジークは組織の論理と個人の感情との間で葛藤し、自らの正義を見つけ出していく。この対照的な二人の姿は、物語のテーマである「やり直し」や「選択」をより多角的に描く上で重要な要素となった。
彼の選択と成長は、単に一人のキャラクターの変化に留まらず、硬直化した守護者の組織や、絶望的な未来に、新たな可能性をもたらす一筋の光として描かれている。
                                
