概要 セセロ・トピル(Sesero Topil)は、SFアクション『クロノス・リベリオン』の主要登場人物の一人。 中立都市「アルキメデスの円環」の元治安維持部隊「クロノス・ガード」第3部隊隊長。組織離反後は、特定の勢力に属さないフリーランスの「調停人(アジャスター)」として活動している。
「律動同期(リズム・シンク)」と呼ばれる特殊能力の使い手であり、その卓越した能力制御と冷静沈着な指揮ぶりから、在籍時は「調律師(チューナー)」のコードネームで知られた。 物語中盤(第42話)から登場し、主人公ヤマト・カゼシマの前に現れる。当初は謎の多い人物として描かれるが、やがてヤマトの協力者、あるいは導き手として、物語の根幹に関わる「アトラスの天秤」を巡る戦いに深く関わっていく。
生い立ち 大崩落と能力の覚醒 出身は旧北欧セクターに設置された大規模難民キャンプ。大崩落(カタストロフィ)によって両親を喪い、幼少期を過酷な環境で過ごした。 彼が「律動同期」の能力に目覚めたのは7歳の時とされる。当初は能力の制御ができず、彼の周囲では機械が不可解な誤作動を起こしたり、他者が原因不明の体調不良を訴えたりする事態が頻発した。周囲から「呪われた子」として疎まれたトピルは、キャンプを放浪する生活を送っていた。
アインとの出会いとクロノス・ガード入隊 12歳の時、食料を求めて侵入した「アルキメデスの円環」の敷地内で、後にクロノス・ガードの創設者となるアイン・シュタインメッツ博士と出会う。 アインはトピルの異常な状態が「歪(ひずみ)」(大崩落の残滓エネルギー)への過剰同調であることを即座に見抜き、彼を保護。アインの指導のもと、トピルは自身の能力を「周囲の固有振動数や生体リズムを感知し、それに干渉する力」=「律動同期」として確立し、制御下に置くことに成功する。 アインを師と仰ぎ、彼の掲げる「大崩落後の世界の調律」という理想に共鳴したトピルは、16歳でクロノス・ガードに最年少で入隊。治安維持任務や「歪」の処理任務において、その能力を遺憾なく発揮し、若くして第3部隊の隊長に任命される。
スヴァルトヘイム事件と離反 トピルの運命を決定づけたのは、物語開始の3年前に発生した「スヴァルトヘイム事件」である。 旧時代の自律兵器群が暴走したとされるスヴァルトヘイム工業区画の鎮圧任務中、トピルの第3部隊は敵の罠にかかり壊滅。トピルは辛くも生還するが、イリーナ・サヴェリエワを含む部下全員を失う。 この事件は公式には「予測不能な事故」として処理されたが、トピルは当時の上官であったバルドゥール・フォン・クラウゼ(強硬派の筆頭)が、意図的に第3部隊を危険区域に誘導し、見殺しにした可能性に行き着く。 バルドゥールの目的は、トピルの部隊を排除すること、そして暴走兵器群のデータを回収し、自らの戦力とすることであった。 組織上層部に真相究明を求めるトピルだったが、バルドゥールの政治工作によって握り潰され、逆に危険分子として監視下に置かれる。 「力は破壊ではなく調律のためにあるべき」という信念と、組織の現実との乖離に直面したトピルは、「クロノス・ガード」を離反。以降はフリーの「調停人」を名乗り、バルドゥール派の動向を独自に追い始める。
作中での活躍 中盤(ネオ・コウベ編) 第42話「不協和音の街」にて初登場。ネオ・コウベのスラム街で「歪」の影響を受けて暴走するヤマトの前に現れ、圧倒的な能力制御でヤマトの「律動」を強制的に安定させ、戦闘を終結させた。この際、ヤマトに「お前の力は雑音だらけだ。調律を覚えろ」という言葉を残し去る。 その後もネオ・コウベの暗部で発生する抗争の裏で暗躍。ヤクザ組織「龍神会」と新興マフィア「サーペント・ヘッド」の抗争が、クロノス・ガードのバルドゥール派による軍事実験であることを突き止める。 当初はヤマトたちとは距離を置いていたが、サーペント・ヘッドが起動させた古代兵器「オロチ」の暴走を止めるため、ヤマトと一時的に共闘。この戦闘で、彼は自身の能力の戦闘応用(対象の内部振動を共鳴させて破壊する)を限定的に使用するが、それを使った自身の手を忌まわしそうに見つめる描写がある。
終盤(「円環」崩壊編) バルドゥールが「円環」内部でクーデターを起こし、師であるアインを幽閉したことを知ると、「円環」に帰還。 レジスタンスとなっていた旧知の隊員たちと合流し、幽閉されていたアイン博士を救出する。 この際、バルドゥールの切り札として、死んだはずの元部下イリーナが強化体「シグナス」として改造された姿で現れ、対峙することになる。かつての部下との戦いは、冷静なトピルの精神を激しく揺さぶった。 最終決戦では、バルドゥールが大崩落の遺産「アトラスの天秤」(世界の物理法則を書き換える広域兵器)を起動させようとするのを阻止するため、ヤマトたちと共に中央タワーへ突入。 バルドゥールとの直接対決では、「秩序のための破壊」を肯定するバルドゥールに対し、「破壊の先にあるのは不協和音だけだ」と自らの信念をぶつけ、激闘を繰り広げた。
対戦や因縁関係 ヤマト・カゼシマ 主人公。トピルにとっては当初「制御できていない危険な力」の象徴だった。しかし、ヤマトが持つ他者の能力や「歪」とさえ共鳴する特異な資質(後に「共振(レゾナンス)」と呼ばれる)を見抜き、自らとは異なる形の「調律」の可能性を感じ取る。 ヤマトに対しては常に先輩として、あるいは教師役のように振る舞い、戦闘技術と思想の両面で彼を導いた。
バルドゥール・フォン・クラウゼ クロノス・ガード時代の元上官であり、本作における最大の敵対者の一人。 「力による絶対的な秩序」を信奉する軍人であり、「スヴァルトヘイム事件」を引き起こした張本人。 トピルの「律動同期」を「調和などという曖昧なものに使う、兵器として不完全な力」と断じ、トピルの思想そのものを否定する。二人の対立は、作品のテーマである「力の使い道」を象徴する軸となっている。
アイン・シュタインメッツ トピルの育ての親であり、能力の師。トピルが唯一、心からの敬意と信頼を寄せる人物。アインの理想である「世界の調律」は、トピルの行動原理の根幹となっている。バルドゥールのクーデターから彼を救出することが、トピルが再び「円環」の戦いに身を投じる直接的な動機となった。
イリーナ・サヴェリエワ 元クロノス・ガード第3部隊所属で、トピルの直属の部下。「スヴァルトヘイム事件」で死亡したと思われていた。 実際にはバルドゥールに回収され、記憶と感情を抑制された強化体「シグナス」として改造されていた。 トピルにとって彼女の存在は、守れなかった過去の象徴であり、最大のトラウマであった。彼女を「調律」し、その束縛から解放することは、トピル自身の過去との決着を意味していた。
性格や思想 性格 常に冷静沈着で、感情を表に出すことは滅多にない。皮肉屋な一面もあり、特に未熟だった頃のヤマトに対しては辛辣な言葉を投げかけることも多かった。 しかし根底には、大崩落で家族を失い、スヴァルトヘイムで部下を失ったことへの深い喪失感と、「不協和音(=争い)」に対する強い嫌悪がある。 私生活では、旧時代のアナログレコードの収集と修復を趣味としており、破損したレコードの溝を「律動同期」で精密に修復する作業を「本来の力の使い方」と語っている。彼の冷静さの裏にある、繊細な調和を愛する側面がうかがえる。
思想 彼の思想の根幹は「万物には固有の律動(リズム)があり、その調和こそが世界の本来あるべき姿」というものである。 大崩落によって世界が「不協和音」に満ちた状態にあると考え、自らの「律動同期」は、その調和を取り戻すためにあるべきだと定義している。 そのため、能力を戦闘(=律動を破壊する行為)に用いることを極端に嫌う。彼が「調停人」として行うのは、武力による鎮圧ではなく、対立する組織や人間の間にある「律動のズレ」を修正し、対話による解決(調律)を促すことである。 「スヴァルトヘイム事件」で組織の非情さを痛感してからは、大局的な秩序よりも、目の前にある「不協和音」を正すという個人の信念を優先するようになった。
物語への影響 主人公への影響 トピルの登場は、ヤマトが自身の暴走しがちな能力を制御する大きなきっかけとなった。トピルが示した「力を制御し、調律する」という概念は、ヤマトが自身の力「共振」を確立する上で不可欠な要素であった。 また、トピルの「調和を目指す」という思想は、後にヤマトが提唱する「歪とさえ共生する」という物語の核心的なテーマの基盤の一つとなっている。
物語全体への影響 彼が中盤から登場したことにより、物語はヤマト個人の戦いから、クロノス・ガードの内部対立、ひいては「大崩落」の遺産「アトラスの天秤」を巡る世界的な陰謀へと大きくスケールアップした。 トピルは、バルドゥールの「破壊と支配の力」と対になる「調律と修復の力」の象徴として、作品のテーマ性を深める役割を担っている。彼が「調停人」として各地域のレジスタンス組織と接触していたことが、最終決戦でヤマトたちの下に多様な勢力が結集する伏線となっていた。
                                
