チチャ・モイト - 架空アニメキャラ用語辞典

概要
チチャ・モイト（Chicha Moito）は、『チキップダンサーズ』の第3シーズン（架空）から登場する、ミントの葉のキャラクターである。ほねチキンやスキップガエル先生たちが暮らす家に、ある日突然、古めかしい革のトランク一つでやってきた。

彼は、チキップダンスの「原初形態」を研究する舞踊歴史学者、あるいは舞踊考古学者と自称している。ほねチキンたちが「からだがうごく、こころもおどる」ままに即興で踊るのに対し、モイトはダンスに「歴史的意義」と「正しい型（かた）」を求める、対照的な存在として描かれる。

丸い眼鏡をかけており、常に小さな手帳と鉛筆を持ち歩き、ほねチキンたちの動きを「採譜」ならぬ「採舞」しようと試みている。彼の登場により、チキップダンスの背景にある（とされる）深い歴史や設定が、断片的に語られるようになった。

生い立ち

チチャ・モイトは、一般のチキップダンサーズとは異なる出自を持つ。彼は、遥か昔に失われたとされる「舞踊典礼（ダンス・リテュアル）」を管理・記録していた「書記官（スクライブ）」の一族の末裔である。

彼の一族に伝わる伝承によれば、チキップダンスは元々、特定の季節の変わり目や「新しいアイスが冷凍庫に追加された時」などに捧げられる、厳格な形式を持った儀式であったという。しかし、いつしかその形式は失われ、ダンスは「意味」から切り離され、単なる「衝動」による表現（ほねチキンたちの現在のスタイル）へと「退化」した、とモイトは考えている。

モイトの故郷は、ほねチキンたちの家からは遠く離れた場所にある「古文書の冷蔵室」と呼ばれる場所だとされる。彼は、一族に課せられた「失われた真のチキップダンスの復元」という使命を帯び、各地を放浪していた。その中で、「非常に原始的、かつ高エネルギーなダンス反応」を感知し、その発信源であるほねチキンたちの家に行き着いた。

彼は、ほねチキンたちのダンスを「失われた原型のカケラ」が奇跡的に残ったもの、あるいは「原初への回帰」現象であると仮定し、その生態と踊りを研究するために滞在を決意する。

作中での活躍

彼の初登場は第3シーズン第5話「おどりのせんせい？」である。いつものようにほねチキンとスキップガエル先生が踊っていると、窓の外から真剣な眼差しでメモを取るモイトの姿が映る。

「違います。そのステップは、古代文献に見られる『冷気の舞い』の第3動作と酷似しているが、決定的に角度が甘い」

彼は即座にほねチキンたちのダンスを制止し、持論を展開し始める。彼はほねチキンたちを「貴重な研究対象」として扱い、彼らの即興的なダンスを「矯正」しようと試みる。

例えば、モイトは「串カツが揚げられた時の歓喜の舞」や「牛乳アイスが溶ける前の焦燥のステップ」など、文献に基づいた「正しい踊り方」を指導しようとする。しかし、あまりに難解で厳格な彼の指導は、ほねチキンたちにとっては退屈極まりないものであり、誰も彼の言うことを聞かない。

しかし、彼は諦めない。第3シーズン第10話「モイトのフィールドワーク」では、だんごやくしかつが遊んでいる様子を物陰から観察し、「現在のチキップダンサーズは、なぜ『型』を失ったのか」について、真剣な考察をノートに書き綴る様子が描かれた。

一方で、ほねチキンたちの予測不可能なダンスに巻き込まれ、思わず彼も踊り出してしまうことがある。その際、我に返った彼は「いかん、これは研究対象の行動に引きずられる『対象同一化』だ…！」と慌ててノートに何かを書きなぐり、自分を落ち着かせようとするのが定番のパターンとなっている。

対戦や因縁関係

彼の対立軸は、特定のキャラクターとの「対戦」ではなく、ほねチキンたちが持つ「衝動性」そのものである。

ほねチキン
モイトにとって、ほねチキンは最大の研究対象であり、同時に最大の「困惑」の対象である。モイトが「意味」や「形式」を重んじるのに対し、ほねチキンは「楽しいから踊る」という一点のみで動いている。
モイトはほねチキンのダンスに「失われた古代の動き」の片鱗を見出し興奮するが、ほねチキン自身にはその自覚が全くないため、会話が成立しない。モイトは彼を「理論なき天才」あるいは「無自覚な伝統の継承者」と見なしているが、ほねチキンからは「むずかしいことをいうひと」程度にしか思われていない。

スキップガエル先生
「先生」という肩書きを持つスキップガエルに対し、モイトは当初、ダンス理論について議論ができる同業者として敬意を持って接した。しかし、スキップガエル先生もまた「スキップ♪スキップ♪」と感覚的に踊るだけであり、理論的な裏付けを何も持っていないことを知り、深く絶望する。
「なぜ彼らが『先生』と呼ばれるのか…？ このコロニー（集団）の文化レベルは計り知れない…」と頭を抱えるシーンがある。

なんこつ、くしかつ、だんご等
他のメンバーに対しても「正しい踊り」を指導しようとするが、彼らはモイトの厳格さを怖がったり、単純に飽きてしまったりする。モイトの理論は、彼らの「楽しい」という感覚とは相容れない。

性格や思想

チチャ・モイトは、非常に真面目で理知的、探究心の強い性格である。物事を常に分析的に捉えようとし、感情や衝動を「非合理的」なものとして一度は否定しようとする。

彼の根底にある思想は、「ダンスには意味がなければならない」という強い信念である。彼にとってダンスは、先人たちが築き上げた歴史と文化の結晶であり、それを正しく継承することにこそ価値がある、と考えている。

そのため、ほねチキンたちの「理由なきダンス」は、彼にとって「伝統の冒涜」とまではいかなくとも、「非常にもったいないエネルギーの使い方」と映っている。彼は自身の知識と理論を体系化することに情熱を注いでおり、彼らのダンスを分析・分類し、自らの理論を完成させることを目的としている。

しかし、その真面目さゆえに融通が効かない。また、自らの理論に当てはまらない「楽しさ」という要素に直面すると、途端に混乱し、フリーズしてしまう脆さも持つ。彼は頭でっかちだが、根は純粋であり、ダンスそのものを愛している点では、ほねチキンたちと共通している。

物語への影響

モイトの登場は、『チキップダンサーズ』の世界観に「歴史」や「背景」という奥行きをもたらした。それまでは「なぜ彼らが踊るのか」という問いは存在せず、「ただ踊る」ことがすべてであった。

モイトは、「なぜ踊るのか？」「どう踊るべきか？」という哲学的な問いを、作中に持ち込んだ初めてのキャラクターである。彼の存在は、ほねチキンたちの「無邪気な衝動性」をより際立たせる役割（フォイル）を果たしている。

物語が進むにつれ、モイト自身にも変化が現れ始める。第3シーズン（架空）のクライマックスでは、彼の厳格な「儀式のダンス」が誰にも受け入れられず、孤独に陥る。しかし、そんな彼を見て、ほねチキンが（理論とは無関係に）彼の手を取り、一緒に踊り出す。

最初は「型が違う！」と抵抗していたモイトだが、ほねチキンたちの楽しそうなエネルギーに触れるうち、彼自身も「理由なく踊る」ことの心地よさに気づき始める。

彼は研究者としての立場を崩しはしないものの、「衝動によるダンスも、また一つの正しい形態なのかもしれない」と、自らのノートに書き加える。チチャ・モイトは、この物語において「理論と本能の融合」を象徴する、重要な役割を担うキャラクターへと成長していく。