モモナ・ゲーミ - 架空アニメキャラ用語辞典

概要
モモナ・ゲーミは、『盾の勇者の成り上がり』に登場する女性キャラクター。 世界最大級の商業国家ゼルトブルを拠点とする、高名な宝石魔術師（ジュエル・メイジ）であり、魔力工房「ゲーミズ・プリズム」の若きオーナーである。

彼女は四聖勇者や七星勇者には属さない一般の住民であるが、その卓越したアイテム開発技術と、ゼルトブルの商人らしい現実的な思考に基づいた情報網は、各国の情勢、特に「波」に対抗するための戦力整備に大きな影響を与えている。 物語において、主人公・岩谷尚文のパーティに対し、伝説の武器の強化とは異なるアプローチでの戦力増強手段を提供する、技術支援者としての中核的な役割を担う。

外見は、腰まで届く水色の髪をポニーテールにしており、作業中もプライベートでも常に宝石鑑定用のルーペ（単眼鏡）を首から下げているのが特徴。年齢にそぐわない冷静沈着さと、優れた鑑定眼から「ゼルトブルの宝石眼（ジュエル・アイ）」の異名を持つ。

生い立ち
ゲーミ家は、ゼルトブルにおいて数世代にわたり「魔力宝石（マナ・ジュエル）」の加工と流通を専門に扱ってきた、歴史ある商家である。 彼らの一族は、特定の国家や権力に肩入れすることを徹底して避け、「中立の商人」としての立場を厳格に守り通すことを家訓としてきた。

過去の「波」の厄災においても、ゲーミ家は直接的な戦闘参加や、特定の勇者への無償援助を拒否している。その代わり、波によって発生する魔物に対抗するための「消耗品」としての高純度魔力石や、防御用の簡易アクセサリーを、敵味方の区別なく「正規の顧客」として取引することで、莫大な利益と独自の地位を確立してきた。

モモナは、このゲーミ家の直系として生まれ、幼少期から宝石に内包される魔力の流れを見極める才能に長けていた。 彼女は、一族の伝統であった「魔力濃縮（マナ・コンデンス）」による消耗品の製造技術だけでは、ゼルトブルの工房が早晩立ち行かなくなると予見。若くして家督を継ぐと、異世界の勇者が過去にもたらしたとされる「ステータス補正」や「スキル付与」といった概念を、宝石魔術に応用する研究に没頭した。 これは、消耗品ではなく「永続的な能力向上（パッシブ・ブースト）」をもたらす武具を作成する試みであり、特定の個人を恒常的に強化するこの技術は、「中立」を旨とする一族の伝統からは逸脱する危険な賭けでもあった。

しかし、彼女が開発したカスタムアイテムは、ゼルトブルのコロシアム（闘技場）に出場する猛者たちの間で絶大な評価を獲得。その実用性と革新性により、モモナは若くして工房の長として、またゼルトブルで最も影響力のある職人の一人として、その名を轟かせることとなった。

作中での活躍
モモナが物語の本編に登場するのは、尚文がメルロマルクでの不当な扱いを脱し、自らのパーティ（ラフタリア、フィーロ）の戦力強化を模索する中でゼルトブルを訪れた際である。 尚文は、伝説の盾以外の防具や、仲間たちのための高品質なアクセサリーを求めており、その噂を聞きつけて「ゲーミズ・プリズム」を訪れる。

当初、モモモナは尚文を「盾の勇者」としてではなく、「未知の素材をもたらす可能性のある大口顧客」としてのみ見ていた。彼女は「ビジネスですから」を口癖に、冷静かつ事務的に取引を進めようとする。 しかし、尚文が持ち込んだ異世界のドロップアイテムや、盾の力によって解呪・複製された特殊な素材（霊亀の甲羅の破片など）を目にしたことで、彼女の「技術者（クラフター）」としての探求心に火がつく。

彼女は尚文の素材の価値を即座に見抜き、その対価として、ラフタリアやフィーロのための専用カスタムアイテムの製作を請け負う。 特に、ラフタリアの刀の「鞘」に、魔力を貯蔵・放出する機構を備えた宝石を組み込み、幻術魔法の効率を高める「魔霧の鞘（ミスト・シース）」や、フィーロの脚力と魔力消費のバランスを最適化する「疾風の蹄鉄（ゲイル・アンクレット）」などは、彼女の技術の結晶である。

中盤、ゼルトブル近郊に「波」が発生した際、彼女の工房も直接的な被害を受ける。この事件で、彼女は「顧客（＝世界）が滅びてしまえば、いかに優れた技術や中立の立場も無意味になる」という現実を痛感する。 この出来事を境に、彼女は単なる取引相手としてではなく、波を越えるための「技術スポンサー」として、尚文たちに積極的に協力するようになる。

霊獣・鳳凰戦や麒麟戦においては、尚文が持ち帰った霊獣の素材（霊亀の核など）を分析・加工。尚文の盾ではカバーしきれない、パーティメンバーのための「対霊獣用レジスト・アクセサリー」を開発・量産した。これらの装備は、尚文のパーティだけでなく、後に尚文が率いる連合軍の生存率を大幅に引き上げることに貢献した。 物語の後半では、各国への安定した物資供給ラインを確立するため、中立組織「対波兵站ギルド（アンチウェイブ・ロジスティクス）」を設立。経済と流通の面から、波との戦いを支援する後方支援の要となる。

対戦や因縁関係
岩谷尚文（イワタニ・ナオフミ） 当初は、金銭に厳しく値引きを要求する尚文と、高品質ゆえに高額な対価を要求するモモナとの間で、緊張感のある商談が繰り返された。 しかし、互いの能力（尚文の素材収集・解析能力と、モモナの加工・開発技術）が、互いにとって不可欠なものであると理解して以降、最高のビジネスパートナーとして強固な信頼関係を築く。 モモナは、尚文の現実的な思考と、仲間の命を守るための装備に一切妥協しない姿勢を、商人としても技術者としても高く評価している。

ラフタリア / フィーロ ラフタリアに対しては、当初は「尚文に付属する剣」程度の認識だったが、彼女自身の強い意志と、尚文を支える献身性を認め、一人の戦士として尊重するようになる。彼女専用の装備開発には特に力を入れている。 フィーロに対しては、フィロリアル・クイーンという特異な生態と、その膨大な魔力・運動能力に強い技術的興味を抱いている。彼女を「最高の実験素材（ハイパフォーマンス・モデル）」と呼び、新作のプロトタイプ（時には危険な試作品）を試そうとしては、フィーロに警戒されるのが常である。

アルト・クラフツマン（架空のライバル） ゼルトブルの伝統的な鍛冶ギルドの長であり、モモナのライバル。 宝石魔術や異世界の素材（＝尚文がもたらすもの）に頼るモモナの技法を「小手先のまがい物」と批判し、純粋な金属精錬と鍛冶技術こそが至上であると考える保守的な人物。 モモナが尚文と組んで影響力を増していくことに対し、強い警戒心と対抗心を抱いている。

性格や思想
「すべての価値は、等価交換によって証明される」という、ゼルトブルの商人気質を徹底的に叩き込まれた現実主義者。 感情論や精神論を好みまず、「それがどれだけの利益（あるいは損失）をもたらすか」を第一に行動原理とする。

しかし、その根底にあるのは「利益追求」以上に、「技術者（クラフター）」としての純粋な探求心である。 未知の素材、未知の魔法理論、そして異世界の勇者がもたらす常識外れの現象に対し、寝食を忘れて没頭するほどの情熱を秘めている。彼女にとって、最高の技術で作り上げた作品が、正当な対価で評価されることこそが最大の喜びである。

当初は「波」さえも「新たなビジネスチャンス」と捉える冷徹さを持っていたが、尚文たちとの交流と、自らの日常（＝市場）が破壊されていく現実を経て、その思想は変化していく。 最終的には、「世界が存続し、市場が機能してこそ、最高のビジネスが成り立つ」という、より大局的な視点を持つに至る。

彼女の口癖である「ビジネスですから」という言葉は、高額な請求をする時だけでなく、採算度外視で尚文の無茶な開発要求（＝技術的好奇心を満たす挑戦）を引き受ける際の、彼女なりの照れ隠しとしても使われる。

物語への影響
モモナ・ゲーミの存在は、物語において「戦闘以外の専門技術が、世界を救う上でいかに重要か」を象徴するキャラクターとして機能している。 勇者や王族といった「世界の表舞台」に立つ者たちとは異なる、「技術者」であり「商人」である彼女の視点は、『盾の勇者の成り上がり』の世界観に経済的なリアリティと深みを与えている。

彼女の最大の功績は、尚文のパーティに対し、「伝説の武器」の強化ツリーとは独立した、強力なカスタマイズ装備を提供し続けたことである。 もし彼女の技術がなければ、尚文のパーティは、霊獣戦や他の勇者との対立において、より多くの犠牲を払うことになった可能性が高い。

また、彼女は尚文が持つ異世界人としての「常識」や、盾の「コピー能力」「エンチャント能力」を、現地の魔術体系と融合させた最初の人物でもある。彼女は、尚文の規格外の力を、この世界の誰もが使える「技術」へと翻訳・普及させる役割を担った。 彼女が設立した「対波兵站ギルド」は、波との戦いが軍事力だけでなく、経済力と技術力、そしてそれらを支える「物流（ロジスティクス）」を含めた総力戦であることを、読者と登場人物たちに示す重要な要素となっている。