エリアス・ソーン - 架空アニメキャラ用語辞典

エリアス・ソーンは、PlayStation3用ゲームソフト『アーシャのアトリエ ～黄昏の大地の錬金術士～』に登場する、旅の地図製作者（カートグラファー）にして、歴史研究家。
滅びゆく「黄昏の大地」を旅し、失われゆく世界の姿を記録し続ける青年。主人公アーシャ・アルゥールとは、古代の遺跡で運命的な出会いを果たす。

概要
各地の遺跡を巡り、その構造や歴史的背景を調査しながら、精密な地図を作成して生計を立てている青年。年齢は28歳。
常に大きな革の鞄を肩にかけており、中には手製の地図や、測量道具、そして無数の記録帳が詰め込まれている。錬金術に対しては、過去の文明を滅ぼした危険な技術であるという強い警戒心を抱いており、当初はアーシャのことも懐疑的な目で見ていた。
PlayStation Vita版の『アーシャのアトリエPlus』では、特定のイベントを経ることで、戦闘に参加するパーティメンバーの一人となる。

生い立ちと背景
知識の番人の末裔
エリアスは、かつて大陸の辺境に存在したとされる、巨大な書庫を持つ都市で生まれた。彼の家は、代々その大書庫の司書（キュレーター）を務める家系であり、彼は幼い頃から、失われた時代の膨大な知識と記録に囲まれて育った。
しかし、彼が少年だった頃、世界を蝕む「黄昏」の現象は彼の故郷にも及び、原因不明の病によって書庫の街は衰退。彼の両親もまた、多くの蔵書と共に、静かにその命を終えたという。

過去の文明への懐疑
たった一人残されたエリアスは、書庫に残された膨大な記録を読み解くうちに、一つの結論に達する。それは、かつて世界が繁栄を極めた時代、その中心にあった強大な錬金術こそが、大地を枯渇させ、「黄昏」を招いた元凶である、というものだった。
彼は、失われた知識の復活が、必ずしも世界の救済に繋がるわけではないと考えている。むしろ、過去の文明がなぜ、どのようにして滅びたのか、その「失敗の歴史」を正しく記録し、未来への教訓とすることこそが、今を生きる者に残された唯一の責務だと信じている。

終わりゆく世界を記録する旅
故郷を失った後、彼は一つの目的のために旅に出る。それは、滅びゆくこの「黄昏の大地」の、ありのままの姿を、後世のために記録し続けること。忘れ去られた遺跡、変わり果てた地形、そして、そこで暮らす人々の営み。その全てを自らの足で巡り、地図と記録に残す。それが、知識の番人の末裔として生を受けた、自分自身の存在意義だと考えている。彼の旅は、希望を探す旅ではなく、世界の終わりを看取るための、静かで壮大な旅なのである。

作中での活躍
アーシャとの出会い
物語の序盤、アーシャが薬の材料を求めて訪れた古代の遺跡「弐番目の書庫」で、彼は初めて彼女の前に姿を現す。遺跡の構造を熱心に調査する彼は、アーシャが錬金術の心得があることを知ると、「その技術は、いずれ災いを招く」と、静かだが厳しい口調で警告する。
これが、二人の最初の出会いとなる。以降、アーシャが各地の遺跡を訪れるたびに、彼はまるで先回りしているかのように現れ、その遺跡の歴史や、そこに秘められた物語を語って聞かせる。

ニオの謎への接近
当初、アーシャの妹ニオの失踪事件に対しては、「黄昏の時代にはよくある怪奇現象の一つ」として、深く関わることを避けていた。
しかし、アーシャが旅を続ける中で見つけ出す、数々の古代文明の遺物や、ニオの目撃情報が、彼が調査してきた歴史の記録と奇妙な形で結びついていく。彼は、ニオの失踪が、単なる行方不明事件ではなく、この世界の根幹を揺るがす「黄昏」の謎そのものと深く関わっていることに気づき、歴史研究家として本格的にアーシャに協力するようになる。

パーティメンバーとして（Plus版）
『アーシャのアトリエPlus』では、物語の中盤以降、彼をパーティメンバーとして旅に同行させることが可能になる。
アーシャの使う錬金術が、かつて世界を滅ぼしたとされる強大なものではなく、自然の声に耳を傾け、素材の記憶を紡ぎ出す、全く異なる系譜のものであることを知った彼は、その真実を自らの目で見届けるため、そしてニオの失踪の謎の核心に迫るため、アーシャの旅の終わりまで付き合うことを決意する。
戦闘においては、直接的な攻撃力は高くないが、長年の遺跡調査で培った知識を活かし、敵の弱点を分析して味方をサポートしたり、古代の遺物を使って敵を妨害したりといった、支援役として活躍する。

他の登場人物との関係
アーシャ・アルゥール
エリアスにとってアーシャは、当初、自らが警戒する「錬金術」という危険な力を持つ少女であった。しかし、彼女のひたむきな姿と、素材一つ一つに真摯に向き合うその姿勢に触れるうちに、彼の錬金術に対する考え方は大きく変わっていく。
アーシャの存在は、世界の終わりをただ記録するだけだった彼の旅に、「未来を救う」という、これまで考えもしなかった目的と、かすかな希望を与えることになる。

キースグリフ・ヘーゼルダイン
古代の錬金術の真理を探究するキースグリフとは、思想的に真っ向から対立する。キースグリフが失われた強力な知識の復活を求めるのに対し、エリアスはその知識こそが世界を滅ぼした元凶であると主張する。
二人が遺跡で出会う場面では、過去の文明の功罪や、錬金術のあり方を巡って、激しい論戦が繰り広げられる。彼らは、本作の根幹テーマである「過去との向き合い方」において、対極の思想を象徴する存在である。

ユーリス・グルンデン
辺境の地を知り尽くした狩人であるユーリスとは、互いの専門知識を尊重し合う、良好な協力関係にある。エリアスは、ユーリスから未踏の遺跡の場所や、安全なルートについての情報を得ており、その見返りとして、ユーリスが狩りをしている土地の歴史的な背景や、古代の伝承などを教えることがある。

性格・思想
「記録こそが、唯一の抵抗である」
彼の行動原理は、滅びゆく世界に対する、記録という形でのささやかな抵抗にある。彼は、未来を救うことはできないかもしれないが、少なくとも、なぜ世界がこうなってしまったのか、その真実を後世に伝えることはできると考えている。彼の持つ膨大な記録帳は、彼の諦観と、それでもなお消えない知識への誠実さの象（かたど）りである。

皮肉屋なりの優しさ
常に一歩引いた視点から物事を分析し、皮肉めいた口調で話すことが多い。しかし、それは彼の本質ではなく、過去の悲劇から心を閉ざしがちになっていることの裏返しである。根は非常に心優しく、困っている人を見ると、文句を言いながらも結局は手を貸してしまう。アーシャの無鉄砲な行動に呆れつつも、常に彼女の身を案じている。

物語への影響
世界の案内人（ワールドガイド）としての役割
エリアスは、プレイヤーに対して、『アーシャのアトリエ』の舞台である「黄昏の大地」が、どのような歴史を辿り、なぜ滅びに向かっているのかを解説する、最も重要な役割を担っている。彼との会話を通じて、プレイヤーは断片的に存在していた遺跡や地名の知識を、一つの壮大な歴史の流れとして理解することができる。
キースグリフが「錬金術の歴史」を語る人物だとすれば、エリアスは「世界の歴史」そのものを語る、物語の語り部なのである。

「黄昏」というテーマの深化
彼の存在と、その「終わりを記録する」という旅の目的は、本作のテーマである「黄昏」の持つ、物悲しくも美しい雰囲気をより一層深化させている。ただ滅びを待つだけの世界で、それでもなお、そこに生きた人々の記憶を拾い集めようとする彼の姿は、本作が描こうとした「失うことの痛み」と「記憶の尊さ」を、雄弁に物語っている。

アーシャの錬金術へのカウンターバランス
物語が、錬金術の力で奇跡を起こしていくという、単純なヒロイック・ファンタジーに陥らないのは、エリアスという存在が大きい。彼は常に、錬金術が持つ危険性と、その力を使う者の責任を、アーシャとプレイヤーに問い続ける。彼の懐疑的な視点があるからこそ、アーシャの錬金術が持つ「優しさ」や「自然との調和」といった特異性が、より際立って見えてくるのである。