愛と復讐と海の記憶 ◆SXmcM2fBg6
「――――井坂、深紅郎……っ!」
支給された名簿に記載された名前を見て、
照井竜は憎悪の感情を露にした。
その手は強く握り締められ、その手に持っていた名簿に皺がよる。
彼はそれを気にすることなく、乱暴にデイバックへと名簿を突っ込んで歩き出す。
井坂深紅郎は、照井竜の家族の命を奪った怨敵だ。
彼は家族の仇を討つためだけにアクセルの力を手に入れ、ドーパントと戦ってきた。
故に、殺し合いという今の状況の異常さも、救うべき市民のことも関係ない。
今の彼にとっては、復讐こそが何よりの最優先事項だった。
……だが、アクセルでは井坂深紅郎の持つウェザーメモリには敵わなかった。
この殺し合いに呼ばれる前、竜はついに見つけた井坂深紅郎に挑むも、力及ばず敗れた。
今のまま挑んだところで、前回の二の舞になる事は目に見えている。
ならば、さらに強力な何かを手に入れる必要がある。
首輪の事を鑑みても、この殺し合いにはガイアメモリとは違う未知の技術がある。
もしかしたら支給された道具の中に、ウェザーを超え得る力かがあるかもしれない。
であれば、ほかの参加者たちと接触し、そういった支給品を手に入れるべきだろうか。
そう考え、名簿に記載された参加者を思い返し、
“なあ……君にとって仮面ライダーとは何なんだ!?”
不意に、この殺し合いに呼ばれる直前に聞いた言葉を思い出す。
それは、竜を助けるために無茶をした男の相棒からの問いかけだ。
「俺に……質問をするな………」
それを、歩みを速めることで振り払う。
待ち望んだ復讐を前に、余計な雑念はいらない。
必要なのは、いかにしてウェザーを超える力を得るかという事だけだ。
そんな風に自分の成すべき事を考えていると、唐突にバイクのエンジン音が聞こえ、遠ざかっていった。
「む、誰かいたのか?」
すでにエンジンの音は遠い。
今から行っても間に合わないだろうとは思っていたが、念のためにと音の聞こえたほうへと向かう。
するとそこには、一人の少女が自分と同様にエンジン音の聞こえた方角を眺めていた。
○ ○ ○
太陽が輝く空の下で、
メズールは改めて自分に配られた支給品を確認していた。
先ほどのセシリアとの小競り合いで、自分にかけられた制限は大体把握した。
その上で選んだ今後の方針が、支給品による自身の戦力の増強だった。
メズールの戦闘能力は、ほかのグリードと比べると明らかに低い。普通の人間程度なら問題にはならないが、このゲームでは弱い部類に入るだろう。
固有能力である液状化は、物理的な攻撃に対しては無敵ともいえる能力だが、その分メダルの消費が激しい。
それに、極端な高熱や冷気を伴う攻撃も、水の特性として苦手な部類に入る。
現在のメダルの残量も踏まえて考えれば、頼ることは出来ない。
であれば、一先ずは弱者のフリをして誰かに取り入り、隙を見て敵対陣営を減らすのが安全な策だろう。
幸いにして、ドクターの
ルール説明で自分は、
ウヴァとは違い一言も喋っていない。
不用意なことを口にしたり、怪人態になったりしなければ、いきなり正体が発覚するということはないはずだ。
……だがその作戦が通用するのは最初のうちだけで、加えて運も絡んでくる。
ゲームが後半になれば必然参加者は減り、同時にグリードの特定は容易になってくる。
ウヴァや
カザリも自分が勝ち残るために、ほかのグリードを蹴落とそうと策をめぐらせてくるだろう
それにどれだけ味方を集めたところで、それを一瞬で壊滅させるような参加者や支給品がこのゲームには存在する。
ゆえに重要なのは生き残る術。
どのような状況でも、逆転のきっかけを残せる手札。
そのために、今は少しでもセルメダルを節約し、コアメダルや戦力となる支給品を集める必要がある。
それらをどう集めるかが、自分に渡された支給品によって決定されるのだ。
そうして取り出した支給品は三つ。
一つ目はグロックと呼ばれる拳銃。
装弾数は15発で、女性にも扱いやすいコンパクトな銃だ。
二つ目は待機形態となっている紅椿。
ルール説明の際に反抗して殺された篠ノ之箒が使用した物が、そのまま支給されたのだろう。
そして三つ目が―――
「オーシャンメモリ―――海の記憶を宿すガイアメモリ」
使用者をドーパントに変身させるこのメモリはメズールと同一の能力を持つ。
加えてT2メモリであることも考えれば、強力な支給品であることは確かだろう。
しかし、
「……実質、ハズレね」
同じ能力であるのなら、当然自分自身の能力のほうが信頼できる。
あるいは、その能力を取り込めば、より強力な力を得られるかもしれない。
……だがそれを試すのであれば、やはり完全態になってからの方がいいだろう。
「ならまずはコアメダルの回収が優先ね」
第4世代型のISである紅椿を以ってすれば、大概の相手を倒すことが可能だろう。
だが本来専用機であることも加わって、紅椿の使用には大量のセルメダルが必要となる。
使用するのであれば、それこそ紫のコアを使うオーズのような強敵相手に限定したほうがいい。
「となると、やっぱり誰かに取り入るのが安全かしら」
主武器となるのはグロック一丁。
怪人態への変身を踏まえても、今の状態で殺し合いに積極的になるのはどう考えても愚策だ。
一人ぼっちの参加者を殺すのであればともかく、そうでなければすぐに追い詰められるだろう。
「そうと決まれば、まずは誰に取り入るかだけど………」
セシリアを追いかけるのもいい。だが彼女の向かった方角には、少々厄介な参加者たちがいる。
ならば多少の危険を冒してでも、コアメダルが砕かれる前にオーズを殺しに向かうべきだろうか。
そう考え、デイバックから詳細名簿を取り出そうとした時だった。
エンジン音を響かせて、一台のバイクが少し遠くの道路を走り去っていった。
「―――あれは……海東大樹」
あの様子から恐らく、セシリアを追いかけているのだろう。
そのためか、彼がこっちに気づくことはなかったが、それで行動方針が決まった。
仮面ライダーディエンドである
海東大樹は、カザリと同じく狡猾な人物だ。
詳細名簿に記載されていた参戦時期からしても、高確率でこちらの支給品まで奪おうとしてくるだろう。
もし遭遇するのであれば万全の状態で。少なくとも、セルに余裕のない今の状況で相手にはしたくない。
「とりあえず、北東側に向かうことにしましょうか」
北東はオーズの開始位置だ。彼の周囲には炎を操る参加者が二名ほどいるが、彼らよりも南側にも参加者はいる。
桜井智樹、
鹿目まどか、
巴マミの三名は、支給品さえ考慮しなければ強敵ではない。
であれば、状況によっては彼らを殺してセルメダルを補充するのが得策だろう。
そうしてメズールは、海東大樹から逃れるように踵を返した。
だがその先には、赤いジャンパーを着た一人の男が立っていた。
恐らく、自分と同様にバイクの音に呼び寄せられたのだろう。
“あれは確か、照井竜”
メズールは男が誰かをすぐに思い出し、同時にどう対処するかを考える。
高熱を発するアクセルの能力は、彼女にとって苦手とするところだ。
現状敵対するのは望ましくない。もし戦うなら、不意をついて一撃で殺すのが望ましいだろう。
となれば、まずは当初の予定通り弱者のフリで取り入るべきだろう。
そう結論すると、照井竜のほうから話しかけてきた。
「俺は照井竜、警察だ。君の名前は何だ?」
「私は志築仁美といいます」
カザリたちがほかのグリードの情報をばら撒いたときの事も考え、ほかの参加者の名前を騙る。
なぜ志築仁美を選んだかというと、彼女がもっとも弱く、参加者たちの初期位置的にも死にやすいと判断したからだ。
あとは放送前に照井竜と別れるか、あるいは彼を殺してしまえば、簡単には自身の正体には辿り着けないだろう。
「では志築仁美、先ほどこっちの方角からバイクのエンジン音が聞こえたのだが、何か見なかったか?」
「はい。男の人が一人、この殺し合いに乗るようなことを言って、バイクに乗ってあっちに行きました。
私は怖くて隠れてたから、多分気づかれてはいないと思うんですけど……」
「なるほどな」
照井竜はそう言って思案を始める。
その様子からメズールは、照井竜は自分がルール説明のときにいた怪人の一人だと気づいてないと判断した。
海東大樹が殺し合いに乗ったと言ったのは、そちらへの移動を避けるためだが、照井竜の内心を確認するためでもある。
照井竜がメズールを仮にも守るべき弱者だと判断したのであれば、殺し合いに乗った人物がいる方向への移動は避けるはずだからだ。
「一つ訊くが、その男はどんな雰囲気だった?」
「えっと……少し軽い感じの、中高校生ぐらいの人でした」
「そうか。なら、とりあえずは安全と思われる場所へ移動するぞ」
「はい、わかりました。……あの、」
「俺に質問をするな」
さっきの質問はどういう意味か、と訊こうとすると、バッと手の平で遮られそう言われた。
なるほど。やはり事前知識通りの人物であるらしい。
であれば、先ほどの質問の意味も訊くまでもない。メズールが言った男が、井坂深紅郎かを確かめたのだろう。
そしてメズールの話した人物が海東大樹ではなく井坂深紅郎だったなら、照井竜は今すぐにでもバイクを追って行っただろう。
だがそうはならず、メズールたちは彼女の作戦通り、海東の向かった方向から離れる事となった。
そうして照井の提案で至急品の確認をした後、メズールたちは北東へと移動していた。
支給品に関しては、拳銃とコアを一枚見せるだけで誤魔化した。それを見て照井竜は、ますます自分を弱者と見たらしい。
なぜなら照井は何も言わずに、彼女を庇うように歩き出したのだから。
だがそれとは別に、メズールは先導する照井竜の背中を見ながら小さく笑った。
彼女自身、弱者のフリはどうにも上手くいったとは思えなかったのだが、彼は特に何かに気づいた様子もなく歩いている。
その理由はやはり、井坂深紅郎への復讐心が先立って視野狭窄に陥っているのだろう。
そしてその復讐心が、メズールには心地良かった。
なぜなら彼の復讐心の強さはそのまま、彼の家族愛の強さとなるのだから。
もしそれほどの感情を一身に受けることが出来れば、いったいどれほど満たされることだろう。
そう思い、メズールは静かに愉悦を零していた。
【一日目-日中】
【E-6/エリア中央付近】
【照井竜@仮面ライダーW】
【所属】白
【状態】健康
【首輪】100枚:0枚
【装備】アクセルドライバー+アクセルメモリ@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
【思考・状況】
基本:井坂深紅郎を探し出し、復讐する。
1.志築仁美(メズール)を、邪魔にならない安全な場所に送る。
2.ウェザーを超える力を探す。
3.ほかの参加者を探し、情報を集める。
【備考】
※参戦時期は第28話開始後です。
※志築仁美(メズール)の支給品は、グロック拳銃と水棲系コアメダル一枚だけだと思っています。
【メズール@仮面ライダーOOO】
【所属】青・リーダー
【状態】健康
【首輪】85枚:0枚
【コア】シャチ:1、ウナギ:2、タコ:2
【装備】グロック拳銃(15/15)@Fate/Zero、紅椿@インフィニット・ストラトス
【道具】基本支給品、T2オーシャンメモリ@仮面ライダーW、
【思考・状況】
基本:青陣営の勝利。全ての「愛」を手に入れたい。
0.照井竜の復讐心(=家族愛)が心地良い。
1.照井竜と同行し、利用する。ただし、第一回放送前に別れるか殺す。
2.まずはセルと自分のコア(水棲系)をすべて集め、完全態となる。
3.可能であれば、コアが砕かれる前にオーズを殺しておく。
4.完全態となったら、T2オーシャンメモリを取り込んでみる。
【備考】
※参戦時期は本編終盤からとなります。
※自身に掛けられた制限を大体把握しました。
※ISは女性であれば、専用機であっても使用可能です(ただし、相応のメダルを消費します)。
【紅椿@インフィニット・ストラトス】
メズールに支給。
紅い第4世代型IS。篠ノ之箒の専用機。白式の対となる存在で、コンビ運用を前提として開発された機体。
現行機を遥かに凌駕する機体性能に加え、「展開装甲」により攻撃・防御・機動のあらゆる状況に即応することが可能。
単一仕様能力の「絢爛舞踏」は、白式の一対零のエネルギー消滅能力に対して一対百のエネルギー増幅能力となっている。
紅椿の高性能さはこのアビリティーの使用を前提にしており、発動していない時は機体がすぐにエネルギー切れを起こしてしまう。
完全に操れるようになればほぼ無尽蔵のエネルギーが供給される事となるが、発動には操縦者の精神状態が大きく影響する。
待機形態は左手首に巻かれた金と銀の鈴が一対になってついている赤い紐。
【T2オーシャンメモリ@仮面ライダーW】
メズールに支給。
大洋の記憶を内包したT2ガイアメモリで、使用者をT2オーシャン・ドーパントへと変身させる。ドーパント態は本編未登場。
使用者に水弾の発砲・体を液体化させる能力を与える。
最終更新:2012年10月21日 15:14