ガールズ&パンツァー最終章 継続高校はらぺこ戦車道の第1話

戦車道———戦車を用いた武芸の一つ。
礼節を重んじ、淑やかで慎ましく凛々しい婦女子を育成することを理念とし、
古くから『乙女の嗜み』とされている。

だがそれを極める為————求道しなければならない道があった。
それは食事。

整備や訓練・・・さらに度重なる遠征————チームの士気を維持するには、
食べること。それすなわち戦車道の勝利につながると言われている。
食事道、暗にそう称するチームもあるほどだ。
————しかし
その「食事」に苦戦する学校があった。


1 食事道のはじまりとさばの味噌煮定食


大洗女子学園駐車場

アキ「ご飯できたよ~」
ミッコ「うえ・・・・一応聞くけどメニューは?」
アキ「コケモモ盛り合わせとじゃがいもの塩ゆで!!」
ミッコ「はぁ・・・せっかく大洗に遠征に来たのに、またこれか・・・」
アキ「仕方ないでしょ、遠征続きで予算ないんだから」
ミカ「いいじゃないか。さあ、食べよう」

アキ「いただきまーす・・・」
3人がご飯を食べ始めたが・・・

「・・・・・・・・」
ミッコ「だーっ!!もう限界!」
アキ「ミ、ミッコ?」

ミッコが跳ね上げたイモの籠が、ミカの頭に被さっていた。

ミッコ「毎日毎日、イモかベリーか・・・・この間なんか、BC自由学園に・・・」
『継続の食事は戦車道参加校の中で2番目にひどい』
とか言われちゃったんだよ!!1番目は聖グロらしいけど!!」
アキ「でも予算が・・・」
ミッコ「違う!そもそも姿勢!食事に対する姿勢!食事道って知ってる!?戦車道はね———!!」
アキ「ミ、ミカぁ、なんか言ってよぉ」
ミカ「———ふむ困ったものだ。食べ物をどうこう言うのは賛成できないけど・・・・」
「行こうか――――」
ミッコ「ミ・・・カ?」
ミカ「風が導いてきれるようだ」

ミカ達は学食に向かった。
周囲の生徒たちがざわめいでた。
アキ「ねぇ・・・なんで私たちココにいるんだろ?」
ミッコ「めっちゃ見られてる!!」

特に麻子が見つめていた。

「あ」

みほ達あんこうチームが来た。
みほ「みなさん、どうされたんですか?」
華「たしか模擬戦は明日ですよね?」
ミカ「導かれてね・・・」
みほ「え!?」
ミッコ「じっ、じつはね!!」

みほ「なるほど・・・姿勢ですか」
アキ「でも料理とかわかんないし、どうしようかってかなって・・・」
麻子「そんなの実際にうまいものを食べてみること、そこからはじめるしかないんじゃないか?」
華「そうですね。ではうちの学食を食べていただくのはどうでしょう?」
アキ「でも私たち・・・お金が・・・」
優花里「そろそろ学食が閉まる頃ですし、事情を話して何かないか聞いてみますよ」

ミカ「すまないが、お願いできるかな」
みほ「はい!」

みほ「おまたせしました」
ミッコ「おおっ」
みほ達が持ってきた料理は—―――

みほ「大洗女子の学園名物、サバの味噌煮定食です!」
沙織「今日の小鉢はきんぴらよ」

みほ「じつは私が転入して初めて食べた料理で・・・今の友だちと出会えた思い出のメニューでもあるんです!」
ミカ「なるほど・・・では———」
「いただきます」
ミッコ「いただきますッ」

アキ「ん~・・・
(サバかぁ・・・うちの学校でも出るけど・・・ナマ臭かったり硬かったり・・・)

アキがサバに箸を付けると—―――
アキ(!!)
「身に沿ってほろほろほぐれていく!!」

沙織「ポイントは煮すぎないこと。身が固くならないように火加減を調整してるの」
麻子「なんでそんなこと知ってるんだ?」
沙織「この前学食のおばちゃんに聞いたの。男を落とすのは胃袋からってね♪」

ミカ(なるほど、このひと皿に繊細な工夫が・・・では味のほうは・・・)

ミカ「!!」
ミッコ「~~~っ」
アキ「ふわっと舌の上でサバの身がとろけて」
アキ・ミッコ「「んおいっし~い!!」」

アキ「これは・・・すごいわ!サバの脂身の甘味と味噌だれの酸味が優しく混じり合ってる」
「この皮ぎしのところの・・・身も」
(ああ・・・甘い)
「それにしてもこのタレ・・・なんだろう?深みのある酸味が・・・・」
ミカ「うん、まるで・・・・鼻を心地よい風が通りすぎるような・・・・」
沙織「それはね♪ショウガにこだわってるの!サバの生臭さを消してくれるのよ!そしてタレの味噌は熱しすぎると香りが飛んじゃうから、数回に分けて入れるの!」

アキ「でっ、でもなんで学食で出せるの?サバって最近は高級・・・」
沙織「ゴマサバを使ってるのよ。マサバと違って傷みやすくて生食には向かないから安いけど・・・脂がたっぷりのってて味噌煮にするには最高なの!」
「ちなみにこの定食のお値段は・・・」
沙織がアキに耳打ちした。
アキ「そっ、そんなに安く!?料理サイコー!!」

ミッコ「はは♪アキったら、今は食べることを楽しもうよ。このタレだけでもご飯何杯もいける!」
アキ「確かに箸が止まらない。サバの味噌煮を口に含んだら、ついついごはんを口の中にかきこんじゃう」

ミカ(———そう、この流れは・・・)
(心地よい音となって———私の心を揺らし続ける)

ミッコ「このきんぴらも・・・いい歯ごたえ!!柔らかいサバに甘えてた歯に噛む楽しさを思い出させてくれるね!!」
ミカ(!)
(さらに別の調べも、折り重なっていく————)


ミカ・アキ・ミッコ「「「ごちそうさまでしたっ」」」
ミカ(———ああ)

ミッコ「くったくった———」
アキ「ごはんつぶついてるよ」

ミカ(いい音だ———、食事に満たされた人の心は———なんて楽し気で優雅な音を奏でてくれるんだろう・・・これが食事道————この音に、導かれるのもいいかもしれない)

みほ「どうです?何か掴めましたか?」
ミカ「ああ・・・大洗の「食事道」、しかと見せてもらったよ」
「明日の模擬戦―――、一皮むけた私たちの戦車道、期待してくれるかな?」
みほ「はい!」



(続く)

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最終更新:2020年08月30日 10:05