ラピス「契約成立♪」
ラピス「わたしはナゾの宝石商ラピス・ラズリ。今まで願いをかなえる宝石とひきかえに、心の宝石を手に入れてまいりました。
どなたも、欲望に支配され、その結果・・・、最後には人類ずべてが滅んでしまいました」
これまで集めてきた全ての心の宝石を吸収したラピスの両目が渦巻き模様の証である魔眼に、いや全身に魔眼が浮かんでいた。
ラピス「すばらしいっ!!わたしのナカで絶望がうごめいているっ!!これで客の願いしかかなえられなかった魔石商の理をねじ曲げて、わたし自身の願いをかなえることができる・・・!!わたしの願いはただ一つ、過去にもどり、やつをほうむりさせること・・・♪」
数百年前―――。宝石の民のかくれ里――――。
ラピス「!、できたっ♡」
当時のラピスが宝石のラピス・ラズリを生み出した。
ラピス「やった―♪ペリドット~~~~~♪」
ラピスが宝石の民の少女、ペリドットに抱きついた。
ペリドット「あら、ラピス?」
ラピス「ホラ、見て見て♡」
ペリドット「おめでとう、ラピス!宝石を出せるようになったのね?」
男「スゴイな!」
女「キレイな青。この宝石、あなたの名前と同じラピス・ラズリだわ。」
男「これでラピスも一人前の宝石の民だな」
ラピス「へへーっ♡」
「ボクたちがつくる宝石は、人間の願いをかなえる力があるんでしょ?」
ペリドット「ええ。そうよ、ラピス」
ラピス「それで聞きたいんだけど・・・人間ってなぁに?ボク、会ってみたい!!」
ペリドット「に・・・、人間っていうのはね、身のたけ10メートルのおそろしい怪物なの!!ラピスなんてひと口で食べられちゃうよ~~~?」
ラピス「うはあ♡」
ペリドット「あれ?こわがらない!?と、とにかく人間の欲望は不幸をまねくんだから!!おきてをやぶって里を出て人間に会いに行こうだなんて、絶対ダメだからね!!」
ラピス「うん、わかった」
しかし、ラピスはますます人間に、興味を持ってしまうのでした。
ラピス「なんだ。見た目はボクらとあまり変わらないのか・・・」
そして、ある日、おきてをやぶり、こっそり里をぬけ出してしまったのです。
ラピス「里の外なんて初めて見た。この森の向こうに人間の世界がひろがっているんだ♪早く会ってみたいなぁ」
森を歩くラピスの後ろで、茂みが音を立てた。
ラピス「・・・・・。今の音って・・・」
そこに二匹の狼(オオカミ)がいた。
ラピス「オオカミっ!?ひっ!しまっ・・・・!!」
腰を抜かしたラピスに狼(オオカミ)が襲いかかる。
ラピス(ダメだ・・・・!やられる・・・・!!)
「うわぁあああ!!」
ラピスに飛びかかった狼(オオカミ)が木の棒で弾き飛ばされた。
ラピス「!?」
ラピスを助けたのは、人間の少年だった。
少年「おい、立てるか?」
ラピス「・・・・うん!」
少年「それじゃあ・・・・、にげるぞ!!」
ラピス「あっ」
少年がラピスの手を取って走り出した。
少年「なんとか・・・まいたみたいだな。ここは魔の森と呼ばれるおそろしい場所・・・・。まるごしなんて自殺行為だぜ」
ラピス「・・・助けてくれてありがとう。もしかしてキミは人間?ボクのこと・・・食べる?」
少年「食べるかっっ!!変なやつだな」
ルーベ「オレはルーベってんだ。もちろんただの人間だ」
こうして、ラピスは人間と出会い―――、友だちとなったのでした。
ペリドット「ねぇ、ラピス。最近。どこで遊んでいるの?あまり見かけないわ」
ラピス「ペリドットには関係ないだろ?」
ペリドット「まぁ!・・・いつも、これくらいの時間にいなくなるのよね」
ラピスは里を抜け出し、ルーベに会いに行った。
ラピス「ゴメン、おそくなった」
ルーベ「・・・毎回よくぬけ出してこれるな」
ラピス「みはりとかいないから楽勝だよ♪」
二人は森の中で釣りをした。
ルーベ「・・・まあ、この森に入るもの好きなんて、オレくらいなものだしな。さてと、これから仕事に行かないと」
ラピス「仕事?」
ルーベ「この森でとれたキノコや薬草を、町まで売りにいくのさ」
ラピス「そんなことしてたの?」
ルーベ「オレのオヤジはどうしようもないやつで、やることといえば酒を飲んでるか、仲間とつるんで町で暴れているか・・・。だから、オレが働かないと、・・・・生きていけないんだ・・・」
ラピス「あ・・・、待ってよ、ルーベ!!ボクの宝石をあげる・・・!!」
ラピスが自分の生み出した宝石をルーベに渡した。
ラピス「キミには命を救ってもらった恩がある。そのお礼さ。この宝石を売れば、もう無理に働く必要はないよ」
ルーベ「!」
ラピス「・・・ただ、ルーベが森に入る理由なくなっちゃうけど、またボクに会いに来てくれるかな?」
ルーベ「・・・・そんなの、毎日来るに決まってるんだろっ!?これからもっといっぱい遊べるな♪」
ラピス「うん♪」
こうしてラピスはまた一つ、あやまちを犯すのでした。
ルーベは大金を家に持ち帰り、ルーベの父は大よろこび。
もう働きたくないという息子の願いを、きいてあげました。
しかし、父は不思議に思いました。
息子のルーベはどうやって、こんな大金を手に入れたのだろう・・・と。
ルーベの父のライズは、ルーベの後を追って森に入った。
ライズ「ルーベのやつ、入ったら呪われるってウワサの――――、魔の森になんの用だ・・・!?なんだあの・・・、頭が宝石のガキはっっ!?それにこの建て物は・・・」
(・・・この穴から入れるな!)
ライズは宝石の民達を見つけてしまった。
ライズ「おいおい・・・。頭から宝石がはえてるバケモノで・・・・いっぱいじゃないか・・・!!こんなのが住みついてるなんて、やっぱりここは魔の森なんだ!!」
酒場。
ライズの不良仲間「ライズ、もうよっぱらっちまったのか?」
ライズ「うるせェ!!本当にオレは見たんだっっ!!息子のやつもその宝石のバケモノに、とりつかれちまったみてェでな・・・。だからようおめぇら・・・やらねェか?」
仲間「やるってなにを・・・?」
ライズ「へへっ、決まってるだろォ?魔の森のバケモノたいじさ・・・!!でけェ宝石がたんまり手に入るぜェ~~~~♪」
ペリドット「ラピスったら、またどこか行っちゃて、もしかして忘れてるのかしら・・・。今日はラピスの誕生日、なのにね♡よろこぶかな♡」
ペリドットはラピスへのプレゼントを用意していた。
宝石の民「キャアアア」
「うわあああ」
ペリドット「あら?なんだかさわがしい・・・」
宝石の民の男「や・・・、やめっ・・・ギャッ!!」
ペリドット「え?」
ライズは二人の不良仲間と共に、宝石の民を殺し、頭の宝石を奪っていた。
仲間「スゲエ、本当に宝石がついてやがる!!」
「やっぱりコイツら、人間じゃねェな」
ライズ「そうさ!バケモノどもに宝石はもったいねェ。このでっかい宝石は全部・・・、オレたちのもんだァァァ!!」
ペリドット「あ・・・ああ・・・!た・・・、助けて・・・!」
(ラピス・・・!!)
ラピス「あれ?今、声が聞こえなかった?」
ルーベ「なにも聞こえなかったけど?」
ラピス「気のせいだったかな?だれか、知ってる声に呼ばれた気がしたんだけど・・・」
ペリドットがライズに襲われ――――
ルーベ「どうせまた、ラピスが好きな女の子のことでも考えてたんだろ?」
ラピス「か、からかわないでよね!!」
ルーベ「ははっ。でも、どんな娘か見てみたいなぁ」
ラピス「じゃあ、ボクの里に来てみる?みんなにキミのこと紹介するよ」
ルーベ「でも、宝石の民って、たしかおきてで・・・」
ラピス「・・・・みんな人間をよく知らないから、こんな森の中にかくれ住んでいるのさ。ボクたちは人間と友だちになれるって、教えてあげるんだ」
ラピス(人間と友だちになれるって・・・)
しかし、宝石の里に行った二人が見たのは、ペリドット達、殺された宝石の民の死体だった。
ラピス「あっ、ああああ!」
(みんな・・・ペリドット・・・!)
ラピス「ウソだ・・・こんなのウソだっっ!!」
ルーベ「う・・・みんな死んでる・・・宝石をぬかれて・・・!!だれがこんなひどいことを・・・あ、あんまりだっっ!!」
ラピスはペリドットが用意していた自分へのプレゼントを見つけた。
ラピス「っっ・・・!!う・・・、うあああああ~~~~~~~!!」
ライズ「まだ残っていたようだぜ。バケモノが・・・♪お。ルーベじゃねェか」
ルーベ「オ・・・・、オヤジ!」
ライズ「おまえのおかげでほら♡宝石がこぉ~~~~んなに手に入ったぜゼ♪」
ラピス「おまえのおかげ?」
ルーベ「ちがう!オレはオヤジに里のことを教えてなんか・・・!!」
ラピス「はは・・・この男、ルーベの父親・・・!!」
(みんなみんな・・・、死んでしまった・・・ボクが人間なんかを信じたせいで。)
ラピスの心の宝石が砕け散り、右眼が渦巻き模様の証である魔眼になり―――現在の魔石商の姿になった。
ラピス(今日はボクの誕生日・・・。そして、魔石商の誕生日・・・!!)
「わたしにこれほどの絶望を味わわせてくれて、ありがとうございます。お礼に絶望のおすそわけ♡願いごとを1つだけ、かなえてさしあげましょう♪」
ライズ「コイツ、急におかしくなりやがったぜ!願い事!?はっ!!金だ!!たくさんの金に決まってんだろうがよぉ!?だから、おまえもぶっ殺して――――、その高く売れそうな宝石をいただくぜっっ!!」
ライズが剣を構える。
ルーベ「やめろ!!オヤジィ~~~!!」
しかし、ライズの構えた剣が落ちた。
ライズ「・・・・!?急に手の先にチカラが入らなく・・・!?」
(!?)
ライズの右手は、無数の金貨に変わり続けていた。
ライズ「ギャアアア!!オレの体がァァ!!金貨に変わっていくゥゥ!!」
ライズの仲間たちの体も金貨に変わっていく。
仲間「フゲェェ!!オレたちもだアア!!」
ラピス「キヒィ♪あなた方のたくさんお金がほしいという願い、かなえてさしあげましたよ。もっともあなたたち自身が、お金になってしまうんですがねェ♪」
ライズたち「「「ギャアアアアア・・・」」」
ライズ「あ、ああ」
ライズたち3人の体は完全に金貨になり、金貨の山だけがその場に残った。
ルーベ「フフ・・・フフフフ。金貨になった――――♡オヤジが金貨に・・・ピカピカきれいな金貨~~~~~~~!!♡」
ラピス「・・・どうやらあなたも、こわれてしまったようですね・・・」
ルーベ「うひっ。あ、ひゃひゃ、ひゃ」
ラピス「さようなら・・・。わたしの最初で最後の、人間の友だち・・・・」
―――こうして魔石商となったラピスは、数百年、人間を絶望におとしてゆくのでした・・・
ラピス「そう、すべてはこの瞬間、わたしの願いをかなえるために・・・!!さあ!願いをかなえる宝石ラピス・ラズリよ!今こそわたしの願いをかなえるのです!!」
宝石ラピス・ラズリが砂時計(時の砂時計)になった。
ラピス「!、砂時計・・・!!時間が・・・、空間が、あのとき、あの場所へもどっていく・・・!!」
数百年前、魔の森。
ラピス「見つけましたよ。ルーベ♡魔の森に入る人間は食べてしまいます♡」
ラピスが胸から出した大口でルーベを脅す。
ルーベ「バ・・・、バケモノォ~!!うわぁぁぁぁぁ・・・」
ルーベが魔の森から逃げ去っていった。
ラピス「これでいい・・・。―――今はわたしがルーベと初めて会うよりも少しだけ前の時間・・・。これで、本来出会うはずだった2人はもう会うことはありません。」
過去のラピスに狼(オオカミ)が襲いかかり、そして―――
ラピス(つまり、過去のわたしの命を助ける者はいなくなる。そう、わたしがほうむり去りたかったのはわたし自身だったのです)
「これで里のみんなが、わたしの大切な人たちが・・・、命を失わずにすむ・・・」
「わたしだけをのぞいて」
ラピスが切り株に腰かける。
ラピス(やっと・・・やっとわたしの願いをかなえることができました・・・)
「過去のわたしが死んでしまえば、とうぜん魔石商の存在も消える・・・」
「不本意ですがわたしのお客さまたちも、助かることでしょう。」
そして、切り株の上に座っていたラピスはついに消滅した。
ラピス(わたし以外のすべてを滅ぼしたわたしが――――、わたし以外のすべてを救ってしまうだなんて・・・ひにくな話ですねェ♪)
それから月日は流れ、宝石の民の里。
成長したペリドットが赤子を抱いていた。
夫「どうしたんだい、ペリドット?悲しい顔をして・・・」
ペリドット「あなた・・・。思い出していたの・・・今日はあの子の誕生日・・・でしょ?」
夫「・・・あの事件からもう10年か・・・」
ペリドット「あのときは死ぬほどつらかった・・・でも、今はあなたと、この子がいる。この子はきっとあの子のうまれかわり・・・今度は絶望のない希望の人生を・・・ね、ラピス・・・」
ペリドットの抱いた赤子は、ラピスと瓜二つの顔をしており、笑顔で笑っていた。
現代。ラピスの客となり、破滅していった少年たちも、ラピスの消滅により、平穏な日常に戻っていた。
魔石商ラピス・ラズリの存在が消えたことで―――、お客だった者たちの絶望の運命は回避された―――だが・・・!!
とある学校。
晶子「転校生の魔石晶子です♡みなさん、これからヨロシクお願いします♪」
転校生は、ラピス・ラズリに似た姿の少女だった。
晶子「フヒッ」
絶望はどこまでも追いかけてくる・・・
(おわり・・・・?)
最終更新:2024年12月19日 14:23