突如として出現した巨大メカ恐竜・ブイレックスに、タイムレンジャー5人の乗るタイムロボαと、タイムシャドウが立ち向かう。
タック「とにかく、押さえないと」
レッド「押さえるって、どうやって!?」
ブイレックスの突撃で、タイムロボが地面に叩きつけられる。
タイムシャドウが単身で奮闘するも、ブイレックスの反撃で吹っ飛ばされる。
グリーン「シャドウが!?」
ヘルメットを損傷していたレッドが、一際ダメージを浴び、変身を解除された達也が倒れる。
竜也「うわぁっ! うぅっ!」
ブルー「竜也、しっかりしろ!」
ピンク「竜也!?」
浅見グループにより新設された警備会社・シティガーディアンズが、人々の避難誘導にあたる。
「隊員各班は、救助者の確保!」「急げ!」
その中に加わっていた直人が、タックを見つける。
タック「シオン、ブイレックスには非常用の制御装置があるはずだ! 額の部分をサーチしてみれくれ」
グリーン「わかりました。クロノサーチ! ──あぁっ!? タック、見当たりませんよ?」
タック「そんなはずは……!?」
ピンク「一体どうすれば!?」
イエロー「こうなったら、ブッ倒すしかねぇだろう!」
タック「いや、もう少し待て! ブイレックスは生体メカだ。傷を負うと自己修復機能が働いて、24時間の休眠状態に入るはずなんだ」
ブイレックスの強烈な攻撃が炸裂する。
タイムレンジャー一同は、タイムロボから放り出された上、変身を解除される。
竜也は深手を負い、気を失ってしまう。
アヤセ「竜也……!?」
ブイレックスが、忽然と姿を消す。
ユウリ「消えた!?」
竜也「う…… うぅっ……」
一同「竜也!」
シオン「竜也さん!?」
ユウリ「竜也、大丈夫!?」
アヤセ「メットがない状態で無理しすぎたんだ……」
ユウリ「とにかく一旦、戻りましょう」
ギエンがほくそ笑んでいる。
ギエン「ブイレックス…… とんだ掘り出し物だな!」
ロンダーズファミリーの本拠地、ロンダー刑務所。
ドルネロ「ギエン! ギエン、あの恐竜騒ぎは何だ!?」
リラ「それに、ヘルズゲートの鍵も隠してたなんて、一体どういうつもりかしら!?」
ギエン「まさに、こういうときのためだ」
ドルネロ「何だと……?」
ギエン「あのロボットを手に入れる」
一方、トゥモローリサーチの事務所。
タック「ブイレックスは、大規模な非常時を想定して造られた戦闘メカで、まだ開発されたばかりの時間移動技術の実験に使われた。だが、その実験は失敗。ブイレックスは戻って来なかった。たぶん、制御装置もその際に……」
ユウリ「それが、どうして急に現れたのかしら?」
タック「恐らく、時間流を漂っていたんだと思うが、よくはわからない」
アヤセ「わからないって、どういうことだ?」
タック「実験の詳しいデータが、僕の中にインプットされてないんだ」
ドモン「別に構わねぇよ。とにかく、その制御装置って奴を捜して、あの恐竜をおとなしくさせりゃいいんだろ!?」
ユウリ「シッ!」
声を荒げるドモンを、ユウリが窘める。
傍らでは、傷ついた達也が眠っている。
タック「制御装置からは、特殊なパルスが出てるはずだ。それを今、分析している」
竜也が苦しそうに、喘ぎ声をあげる。
ユウリ「今は、そっとしときましょう」
ドルネロ「なるほど。だがそのブイレックスって奴を、どうやって手に入れる?」
ギエン「奴には制御装置があるはずだ。こいつに捜してもらおう。探査の得意な武器の密売人、ハマーだ」
ドルネロ「いいだろう。だが、俺の目は節穴じゃねぇ。ギエン、てめぇの悪い趣味はいい加減、ひっこめな」
ギエン「すまんな。こればかりは、病気のようなものだ」
ドルネロ「病気って奴は、下手すると命取りだぜ」
部下「昨日の出動によって、かなりシティガーディアンズに対する問合せが来ています。そのまま契約に至る数も少なくありません。報告書は治安維持局にもFAXしてあります」
会長「隊長が負傷したようだが」
隊員「はい。しばらく、現場復帰は難しいようです。やはり、装備にまだ問題点が……」「研究班は、タイムレンジャーの装備を調べられれば、と言っていますが」
会長「タイムレンジャーか……」
(竜也『なんでもビジネスで考えるのはやめろよ! これ以上、浅見の名を大きくしてもしょうがないだろう?』)
直人が、浅見会長のもとへ進み出る。
直人「会長。少し、お時間をよろしいでしょうか?」
会長「急ぐ。簡単に言ってくれ」
直人「隊長の跡を、私に任せていただきたいのですが」
会長「……」
直人「自信はあります。タイムレッドに負けない程度には」
浅見会長は直人ではなく、先の隊員を見やる。
会長「君に当面、隊長代理を任せる。そこら辺の人間に任せるわけにはいかん」
隊員「はい!」
直人 (眼中になし、か…… さすがに手強いな)
(タック『ブイレックスには非常用の制御装置があるはずだ!』)
直人「制御装置ねぇ……」
翌朝、トゥモローリサーチでは制御装置の捜索が続けられている。
ロボター「ブイレックスのお目覚めタイムまで、あと8時間──!」
ユウリ「タック。制御装置、まだ見つけられない?」
タック「何しろ、ブイレックスの情報は少ないからな…… もう少し待ってくれ」
シオン「でも不思議ですよね。なんでタックが、ブイレックスの情報をあまり持ってないのか」
ドモン「時間保護局のやることは本当、わけわかんねぇよ」
アヤセ「保護局というより、リュウヤ隊長ってことなんだろう。タイムロボやシャドウを送って来るのも全部……」
ユウリ「たぶんね……」
ロンダーズファミリーから派遣された武器密売人ハマーは、制御装置の信号を追い、工場地帯へやって来る。
ハマー「確かに、制御装置はこの近くだ」
タック「あった! 制御装置のパルスをキャッチした!」
ユウリ「時間がないわ。急いで!」
竜也を残し、ユウリたち4人だけで出動する。
密かに一同を見張っていた直人が、それに続く。
その後、竜也も意識を取り戻す。
ロボター「竜也、お目覚めターイム! みんな、ここに行っタイム!」
竜也がロボターの示した地図を確認し、傷を負ったまま飛び出す。
ロボター「がんばってターイム!」
ユウリたちが工場地帯に到着する。
ハマーがジャンクドロイド・ゼニットを引き連れて、現れる。
一同「ロンダーズ!?」「てめぇら、もう嗅ぎつけやがったのか!?」
ハマー「なんだ、貴様らは?」
ユウリ「いくわよ!」
一同「クロノチェンジャー!」
未来人4人がタイムレンジャーに変身し、ハマーに立ち向かう。
ハマー「タイムレンジャーか。面白い、相手になってやる!」
一同「ダブルベクター!」
ハマー「食らえぇ!」
タックも飛んで来て、制御装置を発見する。
タック「あれか!」
ゼニットたちが制御装置へと近づいて行く。
タック「まずい! あれを取られたら、ブイレックスがロンダーズの物に!?」
直人も到着するが、ゼニットたちに阻まれる。
直人「制御装置ってのは、あれか! どけぇ!」
タック「彼は!? いかん、あの男の手に渡ってもまずい! みんな、早く来てくれ!」
タイムレンジャー4人はレッドを欠き、苦戦を強いられている。
ブルー「ベクターハーレー!」
ハマー「甘いわ!」
直人は制御装置へと近づきつつ、ゼニットたちを銃で蹴散らす。
直人「あばよ!」
ついに、制御装置の目の前にたどり着く。
直人「あれか! もらったぜ!」
直人が制御装置を抱えて、駆け出す。
だが、ゼニットたちが立ち塞がる。
あわやと思いきや、タイムレッドが飛び出して直人を救う。
直人「浅見!?」
レッド「くっ…… 直人、なんでお前が!?」
ゼニットたちが追って来る。
レッド「直人、逃げろ!」
直人「冗談言うな! お前に助けられた上に逃げられるか!?」
直人が銃撃で応戦するが、銃弾は尽きてしまう。
レッド「直人!? 逃げろ、直人! ここは俺が……」
直人「半病人が強がり言うな!」
ゼニットたちが銃撃を放つ。
直人は思わず、制御装置を盾とする。
制御装置が銃撃を受け、強烈な光を放ち、逆にゼニットたちの方が吹っ飛ぶ。
直人「なんだぁ……?」
制御装置から、人工音声が響く。
『Now I'll stand up── Put your left hand into the box──』
直人「なんだ、『左手を入れろ』って? こん中に?」
タック「竜也、彼を止めろ! 制御装置が、その男を持ち主として認識してしまう!」
レッド「えぇっ!?」
直人「なるほどね…… そういうことなら」
直人が制御装置に、左手を入れる。
制御装置が変身ブレスレット・ブイコマンダーと化し、直人の左手首に装着される。
『V-commander mounted── V-commander mounted── I'll reccord youe voice── Input a start-up code── "TIME FIRE", "TIME FIRE"──』
直人「ナビゲーション付きとは親切だな」
レッド「直人!? よせっ!」
直人はレッドの制止に耳を貸さず、ニヤリと笑ってみせる。
レッド「直人……?」
直人「タイムファイヤ──ッッ!!」
強烈な衝撃と電撃が巻き起こる──!
爆炎の中から姿を現したのは、直人がレッドそっくりのスーツを纏った新戦士、タイムファイヤー。
タック「あ、あれは……!? どういうことだ、あんなスーツの情報はない!」
一方の、タイムレンジャー4人とハマーの戦い。
ピンク「ボルスナイパー!」
ハマーがピンクの砲撃をかわし、反撃する。
ピンク「うぅっ!?」
一同「ユウリ!?」「ユウリ!?」
イエロー「これじゃ、キリねぇぞ!」
ブルー「しょうがねぇだろ、4人じゃボルテックバズーカも撃てないんだ」
ハマー「フフフ、そろそろ決着をつけるか。死ね」
ハマーが一同に銃を向けるが、逆に誰かの銃撃で、ハマーの銃が吹き飛ぶ。
ハマー「な、何だ、今のは!? 誰だ!? 出て来い!」
攻撃の主、タイムファイヤーが姿を現す。
イエロー「お、おい…… あれ、竜也か?」
グリーン「いや、違いますよ」
ハマー「なんだ、貴様は!? タイムレンジャーか!?」
ファイヤー「さぁな…… それより、練習台になってほしいんだがな。何しろ、初めてだから」
ハマー「何だとぉ? ふざけるな! ゼニット!」
ファイヤー「さてと、おっぱじめますか」
タイムファイヤーが、ゼニットたちを銃撃する。
一同「あいつ、攻撃してるぞ!」「どういうこと!?」
タイムレッドが、傷ついた身を引きずって現れる。
レッド「みんな!」
ピンク「竜也!?」
レッド「あいつは…… あいつは、直人だ!」
ファイヤー「DVチェンジ・バルカンモード! DVバルカン!」「DVチェンジ・ディフェンダーソード!」
タイムファイヤーは、銃と剣に変形する万能武器・DVディフェンダーを振るい、ゼニットの大群を瞬く間に一掃する。
ハマー「野郎……! これがてめぇの、最初で最後にしてやる! 死ねぇ!」
ファイヤーがハマーの攻撃をはね返し、銃撃でハマーを吹き飛ばす。
『Final mode "DV REFREEZER" is stand-by── Now you can press freeze it──』
ファイヤー「『圧縮冷凍』? なんだか知らないが了解! DVチェンジ・ファイナルモード!」「DVリフレイザ──!!」
タイムファイヤー必殺の剣撃が炸裂──!
大爆発と共に、ハマーは圧縮冷凍され、小さな人形と化して地面に転がる。
『Press freeze completed──』
イエロー「すげぇ…… 何なんだよ、あいつ!?」
タック「あのスーツは、やはりまったく情報がない!?」
レッド「直人……」
初登場にして初勝利を収めたタイムファイヤーが、悠然とタイムレッドと睨み合う──
Case File 29
2000. Aug. 28.
最終更新:2023年12月27日 21:17