ウルトラマンR/Bの最終回

※ ここまでのあらすじは、ウルトラマンR/Bの第24話をご覧ください




ミオ「まずい!! どちらが勝っても、
このままじゃ地球はおしまい!!」

アサヒ「ツルちゃぁぁん!!」

サキ「私は…… ハッピー……」

アサヒ「ツルちゃああぁぁ──ん!!」



美剣サキはウルトラマンロッソとブルを守るため、コスモイーター・ルーゴサイトの前に力尽き、消滅した。
アサヒはサキを喪い、呆然と座り込んでいる。
サキのルーブジャイロと飴玉だけが、空しく遺されている。


ウルトラマンロッソとブルが怒りに燃えて、ルーゴサイトに立ち向かう。

音声『キワミクリスタル!』
カツミ・イサミ「セレクト・クリスタル!」
音声『兄弟の力を1つに!』
カツミ・イサミ「纏うは(きわみ)! 金色(こんじき)の宇宙!」
音声『ウルトラマンルーブ!』

ウルトラマンロッソとブルが合体し、ウルトラマンルーブとなって、ルーゴサイトに挑む。

カツミ・イサミ「ルーブコウリン!」

戦闘の衝撃で、近くの送電塔が砕ける。

ダーリン「電源ケーブル破損! これ以上、予備電源がもちません!」

送電塔が倒れ、激しい土煙がアサヒを襲う。

アサヒ「きゃあぁぁっ!」

衝撃の最中、アサヒの脳裏を、何かの映像が去来する。

頷き合うカツミとイサミ──
父ウシオと母ミオ──
草原に横たわる自分自身──

アサヒ「……今のは、何!?」

電源が途絶え、ルーゴサイトを覆っていたバリアが解除されてしまう。

イサミ「バリアが破られた!」
カツミ「ヤバいぞ、イサミ!」

ミオ「ダーリン! 大至急、地下に走るレイラインのスペクトルゲージを出して」
ダーリン「はいはい~!」
ミオ「レイラインと怪獣拘束システムを、接続しなさい」
ダーリン「システム、接続しま~す!」

ルーゴサイトの猛攻で、ルーブの合体が解け、ウルトラマンロッソとブルに分離してしまう。
ロッソとブルを目掛け、ルーゴサイトが、必殺光線ゲネシスレクイエムを放とうとしている。
それはミオが異次元から見た未来、ロッソとブルの最期の光景──!

ミオ「駄目ぇぇ──っっ!!」

ミオが咄嗟に、手元のスイッチを入れる。
カツミとイサミのルーブジャイロがひとりでに動き、ロッソとブルが消滅する。
誰もいない虚空に、ルーゴサイトの光線が炸裂する。

カツミとイサミが変身を解除され、地面に投げ出される。

カツミ「どうなってんだ……!?」

2つのルーブジャイロが、そばに転がっている。
ロックが施され、変身の操作をすることはできない。

イサミ「ロックかよ、母さん!?」

ダーリン「システム、接続完了しました! 強化拘束システム、怪獣ロック・オン!」
ミオ「発射ぁ!!」

アイゼンタワーからの光線がルーゴサイトを捉え、動きを抑える。

ダーリン「怪獣の拘束に成功しました!」
ミオ「ハドロン衝突型加速器、作動開始」
ダーリン「ハドロン衝突型加速器、システム作動します!」


カツミとイサミは、アサヒを捜し回る。

イサミ「アサヒぃ! ……アサヒ!?」

アサヒが呆然と座り込んでいる。

カツミ「アサヒ、大丈夫か!?」


ミオはアイゼンタワー内で、機器を操作している。

ミオ「この座標軸に転送しなさい」
ダーリン「この数値ですと、アイゼンタワーは虚数次元に転送されることになります。ディメンションホールの入口は破損し、二度と戻って来ることはできません……」
ミオ「それが狙いよ、ダーリン」

アイゼンタワーの頭上の虚空に、巨大な穴が形成されてゆく。

イサミ「まさか時空を歪めて、ディメンションホールを作り出そうとしてるのか!?」
カツミ「ディメンションホール?」
イサミ「要するに、異次元へ続く穴さ! 母さんはゲートの力を増幅させて、あの怪獣を異次元に飛ばそうとしている。恐らく、自分も一緒に……」

ダーリンのドローンから、通信でミオの声が響く。

ミオ「カツミ、イサミ、アサヒ! 早くここから離れなさい! 急いで遠くへ逃げて!」
イサミ「母さん!? やめてくれ!!」
ミオ「こうするしか、もう方法が無いの。あなたたちも…… 地球も守るには、これしか無い」
カツミ「母さぁん!! 母さんのこと、15年も待ったんだぞ!」
ミオ「……」
カツミ「またどこかへ行っちゃうなんて、ひどいよぉ!!」
ミオ「……そうよね。ひどい母親よね」
カツミ「母さぁん!!」
ダーリン「通信、終了します」

イサミ「カツ兄、行こう!」
カツミ「あぁ! アサヒ、おまえは父さんと一緒に逃げろ」


ダーリン「この建物は、間もなく異次元へ転送されます。大至急、建物の外に出てください!」「磁気パルス上昇、異次元転送まであと5分です!」

ミオが家族の写真を取り出し、しばし見つめ、ため息をつく。

カツミ「母さぁん!!」

カツミとイサミが息を切らして、駆け込んで来る。

ミオ「……あなたたち!?」
イサミ「はぁ、はぁ…… 母さん、ちょっと待って」
ミオ「なんで母さんの言うこと、聞かないの!? 早くこのビルから出て!」
カツミ「俺たちは逃げない…… だから母さんも行くな!」
ミオ「こうするしかないの! これが一番いい方法なの!!」
イサミ「母さん、母さんの中で俺たちは、まだまだ子供なんだろ? でも俺たちはもう、自分で考えて行動できるんだよ!!」
カツミ「だから、俺たちを信じてくれ!!」
ミオ「……駄目なものは、駄目!」
カツミ「俺たち家族じゃないか! どうして信じてくれないんだよ」
イサミ「父さんだってきっと、そう言うよ!」
ダーリン「異次元転送まで、あと4分です!」
声「なんだなんだ、なんだぁ?」

ウシオが傷を庇いつつ、姿を現す。

ウシオ「今、父さんのこと話題になってんなぁ?」
ミオ「……うーたん! 怪我してるの?」
ウシオ「ハハ……」

ウシオが上着をはだけると、シャツに「父の背中を超えていけ」のロゴがある。

ウシオ「ねぇ、母さん。子供ってさぁ、俺たちが思ってるより、ずぅっと大人なんだ…… 一緒に暮せば、わかるよ」
ミオ「私だって…… 私だって一緒に暮したかったよぉ! ローンに追われて、受験やら何だって、一緒に泣いたり笑ったりしたかったよぉ!」
ウシオ「……」
ミオ「だけど、私にはこれしか、してあげられることが無いの…… だって…… だって全部、私のせいだから!! 私がジャイロなんて見つけなければ」
カツミ・イサミ「……」
ミオ「私、あの子たちが死ぬ未来は耐えられない……」

ミオが、涙混じりの声で訴える。

ダーリン「拘束ビームが負荷に耐えられません!」

ルーゴサイトが拘束ビームを打ち破り、再び動き出す。

ダーリン「拘束ビーム、大破! ルーゴサイトのパワーが、計算を遥かに上回っています!」
ミオ「まさか……!?」
ダーリン「異次元転送まで、あと3分です」

イサミ「母さんが見た未来は、1つの可能性だ。未来は1つじゃない!」
カツミ「そんな未来…… 俺たちが変えてやる。変えてみせるさ!」
ミオ「……」

カツミ「だって俺たちは……」
カツミ・イサミ「ウルトラマンだから!!

カツミとイサミが、力強くルーブジャイロを突き出す。
2人の信念と共に、ジャイロを覆っていたロックが、ひとりでに砕け散る。

両拳を打ち合ってハイタッチ、いつもの「ルーブタッチ」を決めて、2人が窓から飛び出す。

カツミ・イサミ「俺色に染め上げろ! ルーブ!!

カツミがウルトラマンロッソに、イサミがウルトラマンブルに変身し、地上に降り立つ。
2人のウルトラマンが土煙を上げて突進し、ルーゴサイトに立ち向かう。

ロッソとブルが連携して、ルーゴサイトを攻撃する。
ルーゴサイトのパワーの前に、ロッソとブルが吹き飛ばされる。
すかさず、ロッソは火のフレイムから風のウインドへ、土のグランドへ、水のアクアへ。
ブルは水のアクアから火のフレイムへ、風のウインドへ、土のグランドへ。
次々にタイプチェンジを繰り返しつつ、連続攻撃を繰り出す。

それでもなお、ルーゴサイトの攻撃は強力である。
ルーゴサイトの光線ゲネシスレクイエムがついに、ロッソとブルに浴びせられる。
激しい爆炎が上がる──

アサヒ「カツ兄、イサ兄ぃぃ!!」

ミオの見た未来では、この光線でロッソとブルが消滅したはず──
だが、立ち昇る煙の中から、ロッソとブルの合体したウルトラマンルーブが姿を現す。

ミオ「未来が…… 変わった!?」

カツミとイサミが力を合せ、ウルトラマンルーブがルーゴサイトに挑む。

ウシオ「子供はちょっと見ない間に、大きくなっちゃうんだなぁ…… これが」
ダーリン「異次元転送まで、あと1分です!」

ミオが、息子2人の成長を認めるように、加速器のスイッチを切る。

ダーリン「ハドロン衝突型加速器、システムダウンしました」

ディメンションホールが消え去る。

ミオ「そうね…… 私たちを、追い越して行くのね」

ウルトラマンルーブとルーゴサイトの激闘が続く。

カツミ・イサミ「ルービウム光線!!」

ルーブのルービウム光線と、ルーゴサイトのゲネシスレクエムがぶつかり合い、双方の威力が相殺される。
さらに戦いは、空中戦に移行する。
ルーブが空を舞って攻撃を避け続けるものの、ついに直撃を食らい、地上に叩きつけられる。

ルーブが苦悶し、カラータイマーが点滅を始める。
そこへアサヒが駆け寄り、自ら盾となるように、手を広げる。

ウシオ「アサヒ!?」
カツミ「アサヒぃ!!」
アサヒ「ツルちゃんが言ってました。『兄妹3人が力を合せれば、乗り越えられる』。だから私も一緒に…… 戦います!!」

ルーゴサイトの光線ゲネシスレクエムが放たれる。
アサヒが思わず、目を閉じる。

ルーブ「アサヒぃぃ!!」

アサヒの手にしていたサキのジャイロが輝き、アサヒの脳裏に映像が去来する。

かつて、ミオの持っていたルーブジャイロが、カツミとイサミのもとへ──
カツミたちがそれらを手にすると同時に、新たなクリスタルが誕生──
草原に横たわっている自分が目覚める──
その隣には、初陣を終えて倒れているカツミとイサミ──

アサヒ (そう…… 私はあのとき、生まれた──)

ルーゴサイトの攻撃が炸裂し、爆炎が上がる。
カツミとイサミが思わず目を覆う……

視線を戻すと、そこには光に包まれたアサヒがいる。
その胸に、見たことも無いクリスタルが輝いている。

カツミ「アサヒ…… 君は、クリスタルだったのか」

アサヒが微笑みつつ、頷く。
「真」の字が刻まれた新たなクリスタルが、カツミの手に収まる。

ルーブが新たな力を得て、力強く立ち上がる。
ルーゴサイトのゲネシスレクエムが三たび、迫る。

音声『マコトクリスタル! 輝け、希望の光!!』

新たなクリスタル──マコトクリスタルを装填したルーブコウリンを、カツミとイサミが2人で構える。

カツミ・イサミ「シン・ボルテックバスタ──!!

カツミとイサミが、渾身の力を込める。
ウシオとミオは、それを固唾を呑んで見守っている。

アサヒ「カツ兄、イサ兄、お父さん、お母さん…… 私、うちの子で良かった。ハッピー……」

ルーブボルテックバスターを上回る、最強最後の光線が放たれる。

カツミ・イサミ「はああぁぁ──っっ!! やああぁぁ──っっ!!」

ルーゴサイトのゲネシスレクエムと、ルーブのボルテックバスターがぶつかり合う。
ボルテックバスターがルーゴサイトの力を押し戻し、そのままルーゴサイトの胴を貫く。
ルーゴサイトが断末魔の叫びと共に、大爆発──!!

ウシオとミオが抱き合い、勝利を喜び合う。


マコトクリスタルが、アサヒの元に戻る。
カツミとイサミの目の前で、アサヒの姿が次第におぼろげになってゆく。

カツミ「駄目だ…… 駄目だ、アサヒ。逝くな!!」
イサミ「逝くな、アサヒ!!」

カツミたちの声が届くことなく、アサヒは微笑みつつ、姿を消す。

勝利を収めたルーブが、淋しげな背を向けて立ち尽くす。


カツミ、イサミ、ウシオ、ミオの4人が、草原に佇む。
平和を取り戻したはずの一同に、笑顔は無い。

ウシオ「アサヒって、一体、誰だったんだろうね……」
ミオ「あの子は、私の一部だったのかもしれない。ハッピーで、明るい未来を信じてて、私が忘れていたものだわ……」
イサミ「不思議だな…… ずぅっと昔からいた気がすんのに」
ウシオ「あぁ…… 楽しい記憶しか、ねぇもんな」
ミオ「アサヒは、ハッピーな心の集合体なの。明るい未来、希望。たとえそれが、存在しないものであっても」
カツミ「……アサヒは存在したさ」
ウシオ「クリスタルってさ…… 人を思いやる気持ちの、結晶なのかもしれないな」
ミオ「遠い昔、星から来た兄弟が遺したもの、誰かを想う気持ち……」

イサミが空を仰ぎ、ふと、何かに気づく。

イサミ「……見て」
ウシオ「ん?」

イサミが空を指し、一同の視線が集まる。

青空の彼方から、光り輝く何かが、ゆっくりと降りて来る。
光の中に、人型が見える。

カツミ「……アサヒ!?」

番組のエンディングテーマと共に、アサヒが空からゆっくりと降りて来る。
カツミたち一同が、アサヒのもとへと駆け出す。

一同「アサヒぃぃ!!」「アサヒぃぃ!!」

降りてきたアサヒを、一同が受け止める。
4人の腕の中で、アサヒが目覚める。

アサヒ「父さん…… 母さん…… カツ兄…… イサ兄……」

一同がアサヒを視線を交し、涙ながらに微笑む。

カツミ「さぁ…… 帰ろうか」
アサヒ「はい」
ミオ「行こう」

ウシオ「はは…… は、は、」
カツミ「どうした、父さん」
ウシオ「は、は、腰……」

ウシオが傷の痛みを思い出し、慌ててカツミとイサミが支える。

ミオ「うーたぁん!」
ウシオ「はぁっ!」
イサミ「父さん、ウルトラマンみたいじゃん」
アサヒ「大丈夫ですか?」
ミオ「もう~!」
一同「アハハハハ!」


後日の湊家、クワトロM。
ウシオが、店の看板を手入れしている。
着ているTシャツには「大円団」のロゴ。

ウシオ「よぉし。今日から我が家は、5人でクワトロMだぁ!」
イサミ「いや、クワロトって数字の4ってことでしょ。おかしくね?」
カツミ「それよりさぁ、父さんのTシャツ、これ大団円じゃねぇの? 大円団なんて言葉、無いよ!」
アサヒ「まぁいいじゃないですか! はい、飴ちゃん。ハッピー♪」
ウシオ「ハッピー! ハハハ!」
ミオ「みんな! 今日はすき焼きだよ~!」
一同「やったぁ!」「よっしゃぁ!」
ミオ「帰りにお豆腐とネギ、買ってくるね」

ウシオ「ねぇ、ミーしゃん! 今度は絶対に、帰って来いよ。よし! 今日もやるかぁ!」
イサミ「じゃ、俺も行くわ」
カツミ「よし」

カツミとイサミが、お決まりのルーブタッチを交わす。
ハイタッチの音が一際、小気味良く響く。

カツミ「行って来い!」
イサミ「行って来ます!」

カツミが満足気に、一同を送り出す。
店の看板には、Mの字が一つ書き加えられ、5つの「M」が並んでいる。



俺たち兄弟の物語は、これで終わりだ。

そして、これからは家族の物語が始まるんだ!




朝日のあたる家





後日談である劇場版は、ウルトラマンR/B セレクト! 絆のクリスタルのオープニングをご覧ください

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最終更新:2022年07月08日 19:18