カツミ「うぅっ…… あ、あれ? えっ?」
湊カツミが、目を覚ます。
ウルトラマンロッソとなった自分が、逆さ向きでビルに突き刺さっている。
ビルの中で、人々が逃げ惑う。
ロッソ「あれ、人? あ、すいません、すいません。ビ、ビルが!? あ、抜け……」
ブル「あちゃぁ……」
ロッソ「あ、ちょっと!?」
俺の名は湊カツミ。
なんでこんなことになってしまったのか──
話は1日前にさかのぼる。
綾香市に怪獣が出なくなり
1年が経った。
カツミたちの自宅、セレクトショップ・クワトロM。
イサミが呑気に居眠りしている。
こいつは弟のイサミ。
イサミは大学で、
宇宙考古学の研究に打ち込んでいる。
もっとも俺には宇宙のことなんて
さっぱりわからない。
地下街でだって、道に迷うのに。
アサヒの級友たちが店を訪れ、ウシオが服を勧めている。
ウシオ「どうですか、これ? いいでしょう!」
父さんは相変らず、商売に精を出している。
ウシオ「アサヒがデザインしたんですよ!」
客たち「あぁ。アサヒちゃん勉強もできるし、男子にもてるし、絵も…… 個性的」「うん、個性的!」
アサヒ「お待たせぇ!」
ウシオ「アサヒ、もてるの?」
アサヒ「お父さん、エリにゃん家に、お勉強しに行ってきます」
アサヒは看護師になるべく
受験勉強の真っ最中だ。
今はとっても大事な時期で
父さんも気が気じゃない。
ウシオ「アサヒ…… もてるって」
カツミ「えっ!?」
ウシオ「ミーしゃんに電話しなきゃ!」「ミーしゃん、大変だよ! アサヒ、もてるって!」
アイゼンテック社。
ミオが忙しそうにしつつ、電話を受ける。
ダーリン「社長、早く!」
ミオ「わかった、わかった。帰ったらちゃんと聞くから」
母さんは綾香市の復興を手助けするため
一時的にアイゼンテックの社長に就任した。
ミオ「もう、書類ばっかり!」
あれから1年。
皆が、前に向かって歩き始めている。
俺はと言えば……
ウシオ「おい、カツミ。どこ向いてんだよ。お客さんだ、ほら」
来客は、テレビ版にも登場したイサミの学友、二宮ユウハ。
ユウハ「ご機嫌よう。イサミさん、いますか?」
イサミ「うーん…… えっ?」
ユウハ「それでね、そろそろ返事が欲しいんですって」
イサミ「研究レポートが大詰めなんだ。もうちょっと待ってよ」
ユウハ「先方は、研究費も桁違いだし、この留学は大きなチャンスになると思うんです」
カツミ「留学?」
ウシオ「あら? お前、知らなかった? いや、なんでもユウハさんが通っているカリフォルニアなんちゃら大学が、イサミの研究を評価したみたいでさ。共同研究の話があんだよ」
カツミ「全然、知らなかった……」
最終更新:2020年04月03日 22:21