「そーしてうまうまと食ってるトコわりぃが、お前ら国に帰りゃゴチソウなんて幾らでも食えるだろうよ?そんな嬉しいかねぇ?」
宴も酣、俺も幾分か酔いが回ってるのは否めねぇがまぁ…面子が面子だ。
それにこの話の主な対象である大義大義と鳴く
触手人間…は聞いちゃいねぇ!!?
そうだ!お前だ!お前!!こっちを見ろ!馬刺しと薬味の組み合わせに凝り始めるな!!
流石
スタートゥの
王子は物分りが良いな、苦笑して流そうっていう如何にもな大人の対応が鼻を突くが…まーだ若いのにンな肩肘張るなよなぁ!
オイ、テメーもだ
薄幸褐色頭!何素知らぬ顔してやがる!
「そう僻むな
ミリオンよ、それに貴殿が言うほど王侯貴族の食事は豪勢な物ではないぞ」
「自覚無いかもだけど君も煽ってるからね
グザン?折角の祝勝会で刃傷沙汰は止してくれよ」
「…まぁ事実ではある、俺はそういうアレコレとは縁遠かったが」
ンだよ、反応が芳しくねぇなオイ?
お前らはホラ?あれだろ?夜な夜なマブいねーちゃん侍らせて飲めや歌えやのドンチャン騒ぎじゃあねェのかよ?
「それもそれで大分偏ったイメージだからね!?」
「…そんな奴、王侯貴族どころか人として失格だろ」
ハァ!?何この流れ!?
なんかこっちが然るべき常識を弁えてないみたいになってねェか!?
「一応利もある行為ではあるよ?ある程度贅沢な暮らしをすることは内外に対するアピールになるしね」
「だが行き過ぎれば当然自滅する訳で…ぶっちゃけ王権を簒奪した奴が自滅するのってそこら辺の匙加減がわかって無いんだよな」
「然り。それに関しては後継に恵まれなかった場合にも同じ事が言えような」
何やらウンウンと頷き合ってやがる!オイ!俺を除け者にしてんじゃねェやい!
というかドンチャン騒ぎは現実的じゃなかったとしても好きなモンを好きなだけ食えるし酒だって飲み放題なんだから十分に夢のある話だろうが!
「あー…うん。そっかぁ…そう思われてたかぁ…」
「その、夢を壊す様で悪いが…」
「そんな訳が無かろう戯けが」
何でちょっと申し訳なさそうにしてんのそこ2人!?
というかテメェ今人を指差して「タワケ」つったかこの触手野郎!!!!
「焼きたてのパンの美味しさを知ったのって冒険者になってからなんだよね…」
「炊きたての白飯とはあれほど旨い物かと…一時期
アイビーと盛り上がったぞ」
「まぁ、温かいなら兎も角、熱い食事は望めないからな」
ハイぃ!?!?なんじゃそりゃあ!?
お前ら国ン中でも一番良いモン食える立場じゃ無ェのかよ!?
「いや実際、食うも食わんやという民草が存在する以上、飯時に食事にありつけるのはこの上無く恵まれた身の上ではあろうよ」
「…だからこれは贅沢な悩みって奴になる」
「そうなんだよ…良いものは食べさせて貰えるんだよ…」
まーた3人でウンウン頷き合ってるよ…なんだその
初・
顧・
桜の三国同盟!!イジメか!?イジメなのか!?終いにゃ泣くぞオラァ!!
「…そんな勿体ぶる程の話じゃない」
「そうさな、煎じ詰めればこれは公人という立場に依拠する煩わしさよ」
「突き詰めれば王侯貴族って奴はどこまでも政治的な存在って事」
大分酒が回った頭でも流石にそこまで言われちゃ理解できた、そいつァつまり…
「ンだよ、期待させるだけさせて要はただの毒見じゃねぇか。ケッ!ツマンネ!」
なんて俺そこ毒を吐いちゃあ見せたが妥当っちゃ妥当だわな。
そうで無くともメシ食ってる時なんざ無防備そのもの、暗殺を危惧して然るべきだろう。
野の獣に然り、三大欲求を満たしてる時とクソしてる時が一番無防備だからな人間は。
「故郷(くに)では鬼役と言ったな」
「何だその凡そ毒見役に見合わない名前…後は呪いとか?遅効性の可能性も含めて暫く時間置かなきゃならんからな。どうしたって料理は冷める」
なんともつまらん着地点だが、まぁ気に食わないなら文字通り食わなきゃいいだけだしな。
「あー…それは…」
「…ダメなんだよ、食わなきゃ」
ホワッツ!?何でいきなりそんな物騒な話になった!?
「事細かく『アレをお召し上がり下さい』『ソレはもうよろしいかと』とかねぇ…」
「故に無理にでも食さねば責任問題に発展する。そして料理人の首が飛ぶ」
それを世に理不尽と呼ぶのでは!?カーッ!これだから権力者って奴ァよぉ!!
「それこそ毒見役の人が食中毒でお腹壊そう物なら目も当てられない…」
「…良くて投獄、最悪処刑」
「魚に小骨が一本残っていたと、自責の念から介錯も付けずに腹を切った話も聞いたことがある」
そん↑な事で腹を切るなーーー!!!やっぱオカシイよお前の国!!覚悟の決まり方がこえーよ!!
というか何?魚に小骨だぁ?ンなモンあって当たり前…
「当たり前じゃないんだよ、ミリオン」
「勿論丁寧に取ってくれるんだが…どうしても身が崩れる」
「そもそも使える食材の種類が少ないのだ、料理人も手を尽くしてくれているのだろうが」
…絶句するしかねェんだが?
するとナニか?お前さんらそんな監獄みてぇな食生活してたのか?
「…諸侯の献上品とか、正直そんなに美味しくなくともきちんと食べた上で感謝の手紙とか送らないと関係性にヒビが入りかねないんだよね…」
「…品目が少ないのも慣習的な部分が多いしな。やれ下賤だの貴い方に相応しくないだの」
「姫飯…
苺が言うに柔らかく蒸した米だそうだが、冷めてしまってはその下賤な炊き立ての白飯の方が旨いぞ」
…纏めるぞ?
お前ら王侯貴族は毒殺暗殺謀殺を警戒しながら、冷めきった然程美味くも無い飯を、監視とプレッシャーの中、それでも言われた通り食わにゃならんと?
「…列挙すると改めて酷いなコリャ」
「何なら同時に身支度と医者の診察、後は一日の公務の確認も並行で行う」
「一挙手一投足が政治的な意味を持つ以上はまぁつまりこうなる訳で…」
…正直門外漢がナマ言ってスマンかった。
「「「わかればよろしい」」」
なんでそこだけ息ピッタリなんだよお前ら!!
ここまで徹底的にやり込められると逆に腹立って来たぞコラ!
「だが所詮先頃
ヴァンが言っていた様に贅沢な悩みである事には変わるまいよ、取り立てて苦痛という訳でなし」
「…噛み砕いて言えば人生そのものが仕事だからな。食事もまた仕事の内ってだけ」
「何も意地悪されてる訳じゃ無いしね、お陰で健康を維持できるんだから感謝こそすれ恨むなんて筋違いもいい所さ!」
…じゃあ聞くが、そうしてゴチソウと酒を並べてウマウマやってるのをその医者が見たら何某か言われるんじゃねぇか?
「「「それとこれとは話が別(だよ!)(だ…)(よな)」」」
ンだよやっぱ不満だったンじゃねェかお前らーーー!!!!!
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最終更新:2025年05月27日 00:25