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「-CROSS OVER THE BEAST 2-奈落の獣-」


作者:本スレ 1-710様

444 名前:-CROSS OVER THE BEAST 2-奈落の獣- 投稿日: 2012/08/18(土) 17:39:53

本スレ1-710です。
本スレ1-091様のお子様とうちの子のスピンオフな二次SSの第2話を仕上げましたので、
お知らせします。以下、属性表記です。(第1話は、創作してもらうスレ 1-374へ)
 ・本スレ1-091様(本スレ1-866)の設定と、うちの子の設定(設定スレ1-036)を足した
  現代風ファンタジーな世界観での二次SSです
 ・前回の「-CROSS OVER-」と同設定で展開する後日談的ストーリーですが、
  一応、これだけでも読めるはず
 ・エロあり、ただし、暴力描写、残酷、痛覚に触れる描写少々(前回より多め)
 ・ストーリーは長めで、続きあり、今後も多分、ご都合主義的展開あり
 ・登場キャラクター&メインCPは、柳様×エイシアです
 ・設定準拠ではない表記を若干含みます
 ・キャラ&設定が1-091様の公式設定から外れている可能性あり
 こんな感じですがよろしかったらどうぞ

445 名前:-CROSS OVER THE BEAST 2-奈落の獣- 投稿日: 2012/08/18(土) 17:48:26

そんな筈など、全く、無いのに。
でも、その瞬間、確かに、あのひとの声が聞こえた気がした。
自らの名前を、あの青年に、呼ばれた気がしたのだ。

白銀の髪とアイスブルーの瞳の青年――エイシアは、途切れ途切れに、消失しそうになる
意識の中で、今、この状況にあっては全く聞こえる筈なども無い、自らが脳裏に思い描い
た青年等の声を耳にして、背中を震わせながら、鋭敏な反応を返した。
あわせて、エイシアが反射的に自らの左手の手元を握り込むような仕草を見せた瞬間に、
彼の手元には、再び激痛がはしる。

「ぅあ!」

手元に生じる強い痛みに応じるように、エイシアは、また小さな悲鳴をあげた。
彼の左手は、先程からもうずっと、小さなナイフによって、左手の甲を上にしたままの状
態で、ベッドの上に縫い留められるようにして、刺し抜かれたままだった。
左手の甲から流れる血液の量は、刺し抜かれた位置の所為か、思ったよりも少ない。
それでも、今、現時点においても、エイシアには、もう、自らの口元から零れる悲鳴を押
し止める余裕など、残っていなかった。

「……あ、ぁ……っ!!」

エイシアは、無意識のうちに、再び艶やかな声を上げ、自らの目元から溢れるように涙を
零していた。
それは、彼自身が、先程から、熱を帯び続けていた自らの身体に、痛みとは異なる性質を
再び、充分すぎる程に感じ初めていたからでもあった。
より一層の激しさ増して、相対する男から与え続けられるこの行為に、彼の身体は、エイ
シア自身が意識する事などなくとも、更に解りやすい反応を返し始めていたのだから。

「エイシア、その痛みとともに、お前自身が感じた事のない程の快楽を与えてやろう」
「んぅ、あ、ああっ!」

相手から掛けられた言葉によって、エイシアは自らの名前を、今、自分自身の身体の上に
覆い被さるようにして跨るこの男――柳から呼ばれていたのだ、という現実を改めて強く
する事になった。

エイシアは、もう、先程からずっと、身に纏うものなど何ひとつ無い状態で、柳から身体
を強く押さえ込まれるようにして、この豪奢なホテルのベッドの上で、うつ伏せの状態に
させられていた。
彼は、緑闇色の瞳と黒髪の整った顔立ちの男――柳からの欲望の証を身体の最奥へと、快
楽の兆しとともに、受け入れ始めていたばかりだった。

彼の身体は、今、この時点に至って、漸く、先程来から続く、痛みだけではない、新たな
感覚を帯び始めていたのだ。
それは、彼、エイシア自身が、この男から、この行為を受け始めた当初の時点と比べれば、
随分と大きな感覚の変化だと言って良いものだった。

「やはり、お前は、あの同族の獣に、仕込まれたのだろう?」
「あぅ! ん! あぁっ!」

相手の口から、直接的な名前は未だに一度も告げられては、いない。
それでも、エイシアの身体は、その言葉を受けて、また、小さく跳ねあがった。

この男からは、先程、自分の身体に、こうした手解きを最初に施したのが、今、現在でも、
最も信頼を寄せている青年のうちのひとり――ウィルである事を言い当てられたばかりだ。
その時から、この男から与えられる愛撫とエイシア自身が感じる感覚の質が、少しずつ変
わってきていた。

エイシアは、自分が青いトパーズブルーの瞳と長い墨色の真っ直ぐな髪を持つ、精悍な顔
つきの同族の青年――ウィルから、手解きを受けたという、事実を否定する気など、全く
なかった。

ただ、今も、エイシア自身の身体の動き封じ、上から覆い被さるように身体を重ねられて
いるこの黒髪と緑闇色の瞳の男に、そういった事柄をより明確に悟られてゆくのだという
現実の方が、より一層、辛くて、苦しかった。

大切に想い慕う、青年等との間で交わされている、そうした関係性に確証を得てゆく度に、
整った顔立ちに更なる残忍な表情を見せていたのであろう、この男が。
自分自身とウィルが併せ持つ残忍な本質を更に強く持ち合せている、この柳という男が。

もう一人の大切な存在として、彼自身が認識している、金髪碧眼の秀麗な容姿を持ち、純
白の狼へと変幻する能力をも備えた青年――アルと、ウィルのそれぞれが、与えてくれて
いたものよりも、数倍、強い快楽を加える為に、より一層激しい、行為をと痛み与えてく
る事が判っていたからだ。

自分の身体に負荷がかかるのは、一向に構わない。
けれども、幾ら、自らが、この仕事を引き受けた結果であったとしても、ここまでの仕打
ちを受けたという事を、アルやウィルが、後に知ったら、どう思うのだろうか?
彼等を悲しませる事など、もう、したくはないのに。

たとえ、断る事など許されない、仕事を引き受けた結果であったとしても、常日頃から大
切にしたいと想っている、あのひと達を、また悲しませるような結果になるのだ。

それでも、なお、この柳という男が与え始めた快楽に対し、鮮やかな反応を返し始めた自
分自身の事が、エイシアには心底許せなかった。

ただし、それは、この柳という男が、普段から、エイシアが信頼を寄せる青年達が彼に施
すのと同じように、彼の身体が、心地良いと思う場所をより直接的に、嬲り始めたからで
もあるが。

「んぅ! はあっ! あ、うぁ!」
「ほら、ここが悦いんだろう? 本当に他愛もない生き物だな、お前は」

覆い被さるその男が、後孔の内側の最も敏感な部分を再び強く抉るように、自らの腰を激
しく突き入れてきた瞬間、エイシアの口からは、再び切ない声色を帯びた喘ぎ声が漏れた。
また、加えて、エイシアの背中で背骨の窪みに沿って、男のしなやかな指が、腰のあたり
から、肩甲骨の方へと向けて、なぞるように、添えられていく。

「あっ! 嫌っ、あぁあっ!!」

それだけの他愛もない、所作だった。
男からの行為を受けて、エイシアは、自らの腰の辺りから、背中へと這い上がる熱を帯び
た感覚をより、一層、鮮烈な形で受け止める事になった。
エイシアは、その事を認識しながらも、しなやかな曲線を描く自らの身体を続けざまに小
さく震わせ、それを止める事も出来ずに、熱を帯びた嬌声を口元から零す。

同時に、彼は無意識のうちに、自らの後孔の辺りの筋肉の緊張をより一層、強めた。
そうして、エイシアは、其処を引き裂かれるようにして、無理矢理押しこまれ、痛烈な圧
迫感を伴いながら受け入れている、相手の熱い塊を強く締め付けていく。

「先程よりも、更に激しく締め付けてくるとはな。
 やはり、お前は、我々、人間が創り上げた、最高の淫売というわけだ」
「ん、……! ああっ! そこ、嫌……っ! や、ぅあ、あぁっ!」

柳の灼熱の楔を受け入れ、其処から直接的に送られてくる感覚は、エイシア自身が身体の
深部まで引き裂かれるように感じる程だった。
つい先程まで、エイシア自身が差し入れていた、自らの指の圧力とは比べものにならない。
エイシアは、身体の最奥の部分まで引き裂かれてゆくかのような激しさを伴う、その感覚
を受け止めるだけで、精一杯になった。

そんな状況にあっても、彼の後孔は無意識のうちに収縮し、柳のものが突き挿れられる度
に、その行為に抗いながらも、受け入れた相手のものを締め付ける動作を繰り返した。
だが、それは、エイシアにとっては、決して、快楽を求める故の反応などでは無い。

彼の意識は、むしろ、この相手を、柳という男を受け入れる事など、出来ていなかった。
だからこそ、エイシアの意思とは関係無く、無意識のうちに、勝手に身体が強張るのだ。

エイシアの其処は、相手の先奔りを受けて、既に熱く潤み、最奥の場所にまで、柳のもの
を受け入れ切っていた。
それでも、未だに相手のものを、拒もうとする自らの身体の動きに反して、エイシアは、
相手の男――柳から最も感じやすい、あの場所を強烈に抉るようにして、激しく突き上げ
られる。

「は、ああっ! く、うぁ! ……あぁ!!」

途端に、エイシアは、柳から受ける為がもたらした、全身が痺れるような激しい衝撃に耐
えようと、自らの口を大きく開き、喘いだ。
最も敏感な反応を返さざるを得ない、自らの身体のあの場所から、瞬く間に全身へと、拡
がってゆく、圧倒的な快楽と痛みを帯びた感覚から逃れる為に、悲鳴にも近しい声を上げ
る。

組み強いした白銀の髪の青年が、そんな反応を返しているにも拘わらず、柳の方は、愉悦
感とともに、冷静さも滲む、その表情を未だに大きく崩していない。
青年の上に覆い被さるようにして跨る、この男の方は、自らが纏う純白の騎士服にも似た
上着の釦を、少し外している程度で、自らの衣服を脱いでなどいなかった。

また、柳の方は、自分自身の武装さえも解いていない。
彼の腰には、その後ろの辺りでベルトを渡し、しっかりと固定するようにして装備してい
る刃渡り50㎝程度の小刀が装着されたままだ。
今、こうした行為に及んではいるが、柳の肌がエイシアの身体に直接触れている部位とい
えば、彼の後孔へと差し入れているあの場所と、ベッドの上へと強く押さえ付けるように
して、肩へと添えられた、腕と掌のみだった。

柳にとっては、エイシアが人工生命体であり、純粋たる人間でない以上、自らが好んで、
快楽を与えたいと思える対象ではなかったのだ。
今、柳自身が快楽を与えてやっている、この青年は、魔獣と呼ばれる、獣の血筋を交雑さ
せた上で、生成される白銀の豹へと変幻する能力を持つ、人工生命体だった。

だから、柳は現時点に至っても、エイシアに対して、ある目途を持って、この行為を施し
てやっているに過ぎない。
その意思は、人間ならざる存在には、人が人に対して与えるものと同質の快楽など、決し
て与える必要などは、ないという、柳自身が当初から持ち合せていた、信念故のものでも
あった。

柳自身が、当初抱いていた、その意思を変えたのは、つい先刻、ほんの少し前の時点で、
僅かではあるが、快楽を伴う行為を与えてやった際に、この青年魔獣が見せた、艶やかな
反応故だ。
このエイシアという名の青年魔獣は、今までにも大勢の人間から、快楽の施しを受け、そ
れを、ただ、単に、享受してきた訳では、決して無い。

恐らくは、複数人ではあるものの、誰か、極めて限定的な立場の者から、こうした行為を
従順かつ、抵抗感無く受け入れ、この行為を共に成す相手に対しても、最大限の快楽を施
すようにと、徹底した手解きを受けているのだ。

それを施す事が可能な相手のうちの一人は、柳が知る限りにおいては、つい先日、白き槍
が所有する施設内で、自分と剣を交わした、魔獣のうちの一体――青いトパーズブルーの
瞳と長い墨色の真っ直ぐな髪を持つ、精悍な顔つきの青年魔獣である事が明らかだった。

あの青年魔獣は、今、自らの身体の許に、うつ伏せにさせた体勢のまま、組み敷く、この
白銀の髪の青年魔獣が、気を失っていた際に、殊更大切そうに、抱きかかえていたのだ。

今までの反応の返し方から見ると、この白銀の髪とアイスブルーの瞳の青年魔獣の方は、
自らと最初に剣を交えていた、白い狼へと変幻した青年魔獣とも、情交を交わしているよ
うにも思われた。

柳から見れば、このエイシアという、青年魔獣が先程から見せた、快楽への兆しに対する
反応は、それが、特定の個人のみから、与えられている場合とは、大きく異なる事が明白
だった。

この青年魔獣に対し、まだ、それほど多くの快楽を与えてやった訳ではない。
それでも、つい先程より、幾つか場所を変え、この魔獣の身体に対し、耳元や、首筋から、
しなやかな線を描く背中、そして、脇腹に至るまでの辺りへと、自らの指先で、ほんの少
し愛撫を施してやると、青年は、その都度、必ず敏感に反応を返してきていた。

今、柳によって、自らの身体を組み敷かれた状態にあって、本来であれば、こうした行為
への抵抗感を持ち合せているような場合においては、快楽としての反応を返す確率など、
極めて少ない場所に、幾度か形を変えて触れてやった、ただ、それだけだというにも拘わ
らずに、だ。

このエイシアという名の青年は、明らかに複数の青年魔獣に抱かれ、その身に快楽を注が
れた事があるのだと、ほぼ、断定してやっても差し支えないだろう。

青年の身体に、今までに感じた事の無い程の快楽と、痛みを植え付け、決して消える事の
無い記憶として、その脳裏に灼き付けてやること――。

それが、つい先日、自らの前に現れ、白き槍が所有する施設の一部を破壊し、捕虜として
拘束していた、弥終と呼ばれる世界に住まう魔人――繊を奪取し、立ち去った、この魔獣
共にとって、どれ程の痛手になるのか、柳には良く解っていた。

また、この白銀の髪の青年の精神と身体に、深手を負わせる事になる、この行為が、トパ
ーズブルーの瞳と、長い墨色の真っ直ぐな髪を持つ、精悍な顔つきの青年魔獣にとっても、
耐えがたい程の屈辱を与える事になるのだということも了知していた。

その事を改めて認識した直後に、柳は、自らの許に組み敷いたままの青年が、涙を零しなが
ら、喘ぐように息を切らせている、なんとも扇情的にも思える、その様へと、視線を投じた。

柳は、エイシアの様子を改めて確認すると、自らの流礼かつ、整った面ざしに、先程より
も、更に冷酷かつ、残忍な笑みを浮かべながら、挿し込んだものの先走りを受けて、熱く
潤み始めた青年の身体の最奥の場所を突き上げ始める。

「っあ! う……う、あぁっ!! も、……止め……」

エイシアは、左手の痛みと相まって、全く自由にならないままの身体を柳から揺さぶられ
続けた。
そうして、自らの身体の全身で、その痛みと快楽を受け止めたまま、切ない声色を帯びた
声をあげながら、アイスブルーの瞳から溢れるように涙を零し喘ぎ続ける。

今までに、アルか、ウィルを相手にした時以外に、この行為を受けながら、こんなにも激
しい感情に揺さぶられながら、涙を零した事も、本気で許しを請う言葉を口にした事も無
かったのだ。

今更、相手の行為が止まる筈など無いのに。
多分、余計に酷くされると判ってるのに。
この男からの行為に、これ以上、反応を返したくないのに。

「うぁ! あ、ぁっ!」

彼自身の想いとは裏腹に、エイシアの口元からは、艶めいた声色の吐息が途切れる事なく、
零れてゆく。
その吐息は、彼自身がその身体で、与えられている感覚を従順に受け止め、快楽として敏
感に感じ続けている事を相対する柳に対しても、より一層、明確に伝えていく事に他なら
ない。

先程からもう既にずっと、エイシアの雄としての証を示す性器の方は、彼がこれまでの行
為に感じているという事を明らかに証明し、熱く張りつめており、柳に対しても、その事
実を伝えていた。

「はあっ、あ、あぁっ!」

エイシアは、自らの陰茎から這い上がるように生じる感覚を堪え切れずに、声をあげた。
柳が触れているという訳でも、自らの右掌を添えている訳でもないのに。
それでも、柳から強く身体を揺さぶられる度に、雄としての証がシーツで擦られるように
動かされる。
その結果、エイシアは、自分自身の性器からも、熱く疼くような感覚を充分すぎる程に味
わっていた。

「あっ……ん、ん!」

加えて、エイシアは、自らの胸元に桜色に色付く、小さな両の突起からも、其処がシーツで
擦られる度に、甘く、疼くような感覚を受け続けている。
エイシアは、柳から与えられる腰の動きに合せて、再び自らの背中を震わせた。
もう、今、この時点において、エイシアは、柳から与えられる快楽と痛みに対し、極めて従
順に反応を返すようになってきていた。

だが、彼が自らの後孔に受ける、熱く、激しい、刺激と感覚は、エイシア自身の昂りが最後
まで、達する事までは許していない。
どんなに激しく打ち挿れられようとも、柳が与える感覚は、エイシアが彼本来の性別の証た
る男性器によって、達する事のないようにと、その間隔が今、現時点に至るまで、意図的に
抑制されていた。

「良い様だな、魔獣。
 自らの利き手を、ダガーナイフで差しぬかれ、ベッドに括りつけられるという、
 この状態にあって、なお、これ程までに快楽を求め続けるとはな……」
「っふ、あ、ぁあっ!!」

柳が耳元で囁いた直後に、後孔の内壁の最も敏感な部分を強く抉るように、自らの腰を激
しく突き入れてきた瞬間、エイシアの口からは、再び切ない声色を帯びた喘ぎ声が漏れた。

同時に、エイシアは、自らの身体の上に身を置き、今、最も敏感になっている後孔のあの
部分の最奥を抉るように、容赦なく腰を打ちつけてきた柳の動作に合わせるように、僅か
に背中を仰け反らせ、涙に濡れた面差しを僅かに正面へと上げる。

「思ったとおりの反応を返すとはな。
 もう、理性の欠片も残らなくなってきているのか? ……ほら、感じるか?」
「あっ! はあっ! あ、ぐっ……!」

エイシアが首を仰け反らせた動作にあわせるように、覆い被さる男のしなやかな指が、彼の
首筋から、顎の線に沿って、優しく、這うように添えられてゆく。
彼が切ない吐息を零して喘ぐ呼吸にあわせて、彼の口元が開いた直後に、柳の指が柔らかな
咥口内へと、半ば強引に差し入れられた。

「……んぅっ! ……っは、あ!」

嫌だ……もう、そんな事を俺にしないでくれ。
アルと、ウィルがするような、そんな行為を俺に施さないでくれ。

エイシアは、自らの瞳から涙を零し続けながら、声にさえならない想いを抱えたままで、それ
でも、差し入れられた柳の長くしなやかな指に対して、自らの舌を這わせる。

相手へと、その行為を施していくうちに、エイシアは、つい先程までの想いとは、打って変わ
って、この行為を施す事に対する抵抗感を徐々に失っていった。
それは、柳から受け続けていた行為によって、エイシアの意識が混濁しつつあったからだ。
その一瞬、エイシアにとっては、口腔内に差し入れられた、この男の指が、まるで、自らが大
切に想い慕う青年の指のように思えたのだ。

だから、口腔内に差し入れられた柳の指を、エイシアは濡れた音を立てながら、ひどく愛おし
げに舐めた。
まるで、「その指先が本当に、殊更愛しいのだ」とでも言いたげな、その行為が、相対する
柳に対しても、エイシアの心境を充分に感じ取らせていた。

柳へと愛撫を施し続けていた最中に、エイシア自らが愛しく思う青年等への想いは堰を切っ
たように溢れ、あっという間に、彼の心の琴線の限界を超えていく。

――好きだよ、君の指が。君の声が。君の事が好きなんだ。愛しているから。

相手の指に深い愛撫を与えるように舐め続けていたエイシアの脳裏には、その一瞬に、自
らが大切に想い慕う、青年等と交わした熱情を帯びた行為と、それに伴う、激しさを内包
した記憶が火花を散らすように瞬く間に次々と浮かび、消えていく。

それは、以前、エイシア自身が愛しく想う青年二人それぞれに対して、自らの想い伝えた
際の拙い言葉と、その瞬間の情景にほかならない。

「ぅ、あ、ぁ!」

自らの脳裏に、そんな情景が幾つも瞬くように思い浮かんだ直後、エイシアは誰にも触れ
られてなどいないのに、自らが雄として持ちあわせる性器の方で達していた。
エイシアは、自らが達したと同時に、後孔に受け入れたままの柳のものを強く締めつけ、
自分自身の身体を小刻みに震わせる。

「くっ、」

エイシアの後孔のから受ける、あまりに強い締め付けに応じるように、柳の方も、ほんの
一瞬だけ、自らの口元から吐息を零す。
そんな所作を受けて、柳は自らの片方の手指を相手の口腔内に差し入れたままで、自らの
熱量を帯びた楔を青年の後孔へと再び激しく、強く打ちつけた。
柳は、相手の熱を帯びた内側の更に奥深い限界に達する部分にまで到達するように、激し
く穿つようにして、自らの精をそのまま、後孔の奥へと思い切り放つ。

「う、く、あぁあ! っあ、ぁあ!!」

腹の内側の奥深くへと、熱いものが放たれた事を敏感に感じ取ったエイシアは、今までの
一連の行為の中で、最も艶めいた声を放ち、相手の指を咥えたまま、喘ぎ声をあげた。
そして、柳が与えてきた、今までで、一番強い快楽と刺激を受けて、自らの後孔に入る力
をより一層、強める。
エイシアは、精を放ち、熱く脈打つ柳の性器から受け取る感覚を余す事なく感じ取ろうと
するかのように、相手のものを強く締め付けていく。

「ふっ、く、あ!」

与えられた快楽が自分の身体から駆け抜けてゆく最後の瞬間に、自らの口腔内に指を差し
入れられたままの状態で、エイシアは口元から熱を帯びた吐息を零した。
その状態で、エイシアは不用意にも、無意識のうちに、差し入れられている柳の指へと自
らの犬歯を充てた。

エイシアの様子を目にしながらも、柳は、吐精し終えたばかりの自らの熱を帯びた性器を
相手の内側の最も感じやすい部分に、再度、打ちつけながら、灼けるような熱量を伴う感
覚を相対する青年の身体の奥深くへと強く刻み込むように、揺さぶり続ける。

「まだだ、お前の身体の奥に、私の跡をしっかりと刻み込んでやろう。
 最後まで、しっかりと付き合え」

「あ、ぐっ!!」

柳から激しく打ち据えられたエイシアは、あの部分から全身へと駆け巡ってゆく、痺れる
ような熱量を帯びた感覚を遣り過ごそうと、反射的に口元を強く引き結んだ。
無意識のうちに口元へと力を入れた瞬間に、エイシアは口内に差し入れられたままの柳の
指を軽く噛んで歯を立て、其処に小さな切り傷を付けていた。

「っあ!」

程無く、全く意識を傾ける事もなく、自らの身体を束縛しているこの男へと、その所作を
自然に施していた事に気付いたエイシアは、小さく声をあげた。
同時に、柳から切り返される次の仕打ちを恐れるかのように、エイシアの肩が反射的に小
さく震えた。

「この後に及んで、愚かだな。
 お前には、未だに、しっかりとした躾が施されていないとみえる」

「……っぅ……」

自らの口腔内から柳の指が引き抜かれた後も、エイシアは、小さく喉を引き攣らせ、軽く
気管を鳴らすようにして、息を吐き、荒い吐息を零し続ける。
エイシアの下肢の最奥の部分からは、未だに、その熱とかたちを先程とほぼ、同じ状態で
保ったままの柳の性器は、引き抜かれてなどいない。
この状況の中で、これから自分が何をされるのか、判断する意識の余地など、今のエイシ
アには、もう、欠片も残っていなかった。

それでも、このままの状態で、これが終わる筈などない。
今、エイシアに解るのは、ただ、それだけだった。

「お前をこのまま抱くのは、もう飽きた。
 ここから先は、お前がいかに淫靡な獣かをもう一度、実感させてやろう。
 どうせ、この後で、残りの奴等がお前を引き取りに来るのだろうからな」

「っあ! ……や……だ……」

柳がそう告げた直後に、エイシアは、息を切らしながら涙を零し、小さな声で、この男
からの行為を拒む言葉を口にした。

出来れば、ここまで酷い、こんな有様は、誰にも見せたくなど、なかった。
でも、既に、左手の甲がナイフで刺し抜かれていて。
多分、もう、何もかもが無理だというのに。

エイシアの胸中を無視するかのように、柳の手が、彼の殆ど力の入らなくなっていた右手
首へと、添えられた。
柳の手によって、エイシアの右掌は、既に手の甲がナイフで刺し抜かれた左腕の肘の少し
手前の辺りへと、重ねるようにして添えられる。
エイシアの腕に自ら左腕を添えた柳は、改めてこの青年の体勢をそのままの形で保持させ
ながら、逆に今まで添えていた、自身の右手を外す。

「聡いお前の事だ。これから、何をされるのか、解るな?」
「……あ、……」

再び自分の肢体の上へと折り重なるようにして、柳が囁くように耳元で告げた言葉に対し、
エイシアは、敏感に身体を震わせて、反応を返した。

「そうだ。これをくれてやる」

柳は、自らの右腰の後側に装備していた、刃渡り50cm程の小刀を素早く引き抜き、エイ
シアの右手掌の甲の辺りを目掛けて思い切り振り降ろす。
直後に、その小刀が、エイシアの右手の甲とその下の左腕の骨と腱を打ち砕く、鈍く強い
音が響いた。

「……っ!! あ゛ぁ! う、ぐっ、あ、あぁっ……!!!」

軽く息を吸い込み、一瞬の沈黙を経た後で、エイシアは、悲鳴をあげていた。
先程、左手の甲を刺し抜かれた時とは、比べものにならない程の強烈な痛みを受けた所為
で、直後には声を出す事さえも出来なかったのだ。
エイシアは、悲鳴とも、咆哮ともつかない声をあげると同時に、全身の筋肉を硬直させ、
自らの下肢の最奥の場所に受け入れたままの柳の男性器を今までになく、強く締め付けた。

「解るか? こんな状況にあっても、お前は未だに私のものを締め付けているぞ。
 今までにない程に強くな!」

「ぐ、うっ! かはっ!!」

痛みを遣り過ごす事も出来ないまま、再び腰を突き上げられたエイシアは、噛みしめよう
としていた口元を反動で大きく開き、嗚咽に咽び込んだ。
加えて、大きく呼吸が乱れた所為で、その一瞬に、まともに息が出来なくなっていた。

エイシアの様子に全く構う事無く、柳は引き続き、自らの腰を数度、打ちつけるようにし
て、律動を速める。
相手から、律動を伴う動きが施される度に、自らの内側に放たれた柳の精液を受け止めた
ままのエイシアの後孔の部分からは、粘液が音を立てて零れた。
その動きによって、激しい痛みの中にあっても、一度、萎えかけていた、エイシアの雄の
部分も再び熱を持って張りつめていく。

「あ、あ! なんで……また……い……く! もう、いやだぁっ!!」

エイシアは、相手からの律動と、あの場所を的確に何度も突き上げられ、与えられる熱い
感覚の波に合わせて、涙を振り零しながら、再び呆気なく果てた。
内側から湧き上がるように高まり続ける熱を、全く逃がすことが出来ずに果てたエイシア
は、全身を震わせ、再び自らの内側へと熱い精を放つことを促すように、柳のものを締め
付け続ける。

「っ! お前は、本当にこれが好きだとみえる。ほら、お前の其処で、たっぷりと味わえ」
「っは、あぁっ!! あ、あ……!」

熱の籠った自分自身の内側へと再び放たれた迸りによって、内部が灼かれる感触を受けて、
エイシアは、激しい痛みの中で再び喘いだ。
こんなにも激しい絶頂の中にあっても、自らの両腕から這い上がる強い痛みの所為か、エ
イシアが気を失くすことは無かった。

ただ、痛みと、快楽の中で混濁しそうになる意識の中で、今度こそ、それが自分の中から
完全に引き抜かれる感覚を受けて、エイシアは、強張り続けていた自ら全身の緊張を解く。

「……ぅっ、く、ぁ……」

身体の緊張を解くと同時に、後孔に受けていた、熱い粘気を帯びた柳の精液が、自らの内
股に僅かな音を立てて零れ、伝わり落ちる感触を感じたエイシアは、僅かに喘いだ。
加えて、短刀に刺し抜かれたままの彼の左腕からは、生温かい血液がゆっくりとした速度
で流れ落ち、ベッドの上を徐々に真紅の色合いに染め上げ、その範囲を拡げていく。

そんな状況に置かれながらも、エイシアは、自らの身体の上から、柳の体重の重みが退い
ていく感覚を受けて、未だに激しく息を切らせながらも、安堵の溜息をついた。
柳の方も、エイシアの身体の上から、一度、自らの身体を退けると、傍にあったコンフォ
ータークロスを用いて、自分自身のものの始末を終えてから、軽く身なりを整える。

息を切らして、荒い呼吸を繰り返すエイシアの姿を目にしながら、柳は、自分自身の身な
りを整えてから、間を置かずに、ベッドの上から降りた。
同時に、柳は自らの目の前で心身共に酷く傷ついた様子を、恐らくは自らの矜持に反する
かたちで姿を晒している哀れな青年魔獣へと視線を送り、再び声をかける。

「魔獣、まだだ、まだ仕上げが残っているぞ」
「っあ!」

柳から新たに施された所作にエイシアは再び息を詰めた。
もう解放されたと思っていた自身の体が、ベッドサイドの左側から腰と肩の双方を相手の
腕で強く押し付けられるようにして、再び抑え込まれたからだ。

「何をされるか解るか?」
「……ぅ、……」

相手からの声に応える気力など、今のエイシアには、もう、全く残っていなかった。
ただ、自分に対して、これからまだ、何らかの仕打ちが施されるということだけを認識し、
僅かに身を竦ませる。

「良い反応だな」

エイシアのそんな様子を目にして、柳は青年の身体を押さえ込んだまま、薄く微笑んだ。
それから、柳は最後まで残しておいた二本目の小型ナイフを上着の懐から取り出し、自ら
の右手に構えた。

「良く解っているようだな。
 これから、お前の背中に私をそれなりに満足させた証を刻んでやろう」

柳の言葉とともに、エイシアの背中の中央から僅かに逸れた位置で、腰から押さえ込まれ
ていたままの肩の間際の部位へと、一気に、引き裂くように、手元のナイフが振るわれて
いく。
直後に、エイシアの口元からは、もう、何度目になるのか解らない悲痛な叫び声が零れた。

「ひっ! う、あぁっ!! ……や、あぁっ! ぁ、あっ……!!」

新たに柳から与えられた傷は、それ程、深いものではない。
それでも、それは、エイシアに、紅い血液が零れてゆく熱を帯びた感覚と、痺れるような
痛みを確実に与えていく。
また、そうして、傷が身体に与える影響さえも、程良く抑制されており、これまでに柳か
ら受けてきた仕打ちと同様に、エイシアが気を失うことなどは、なかった。

「……あ……ぁ……」

先程から続いて与えていた仕打ちによって、涙とそれ以外の自身の体液にも塗れたエイシ
アがもう、嗚咽さえも零せなくなっている様子を間近に眺めながら、柳は、自らの面差し
に冷酷な笑みを浮かべた。
その後に、柳は、未だに手にしているナイフの先端で、エイシアの背中の皮膚を軽く引っ
掻くようしにて、其処に文字を刻む。

「魔獣、解るか。お前の背中に、お前のような淫売の身体に相応しい文字を刻んでおいた。
 後で、これを目にする者は、どう思うのだろうな?」
「……ぅ、くっ……」

耳元で柳から告げられた言葉に対し、エイシアは全身を強張らせる。
エイシア自身は、自らの両手に力を入れたかったのだが、それが叶わなかった所為で、逆
に全身が硬直したようだった。
この時点において、今更本能の赴くままに急速に昂り始めた生来より持ち合せている魔獣
としての本能を抑え込もうと、エイシアは強く唇を噛んだ。

この男から、何を言われようとも、何をされようとも。
あともう少し、耐え抜けば、これは終わる。これが終わりさえすれば。

護りたかったものは、一応、護り抜ける筈なんだ。
欧州連合の組織内部からの思惑によって、何時も一緒に過ごしている、あいつ等のうち、
誰か一人が隔離されたりする事もなく、この先も、あいつ等と、一緒に過ごしていける
筈だから。

だから、今、この場で、この男を殺したりしては、絶対にならない。
今、この場で自分自身の能力を昂らせ、思い切り、振るったりしたら、絶対に駄目だ。

未だに柳から押さえ付けられたままの体勢にあって、エイシアは、急激に失いかけていき
そうになっていた理性をかき集めながら、途切れそうな意識の中で、そんな風に思考を重
ねていた。
彼自身は、もう、この後に及んで、今、この場で、相手に抵抗するような真似は、敢えて
絶対にしたくないと、心の底から思っていのだ。

エイシアは、今、この場で、自らの全身に力を入れたまま、自分自身の内側に湧き上がり
始めた激しい感情を遣り過ごそうと、必死になっていた。
相手に切迫した表情を晒していることにも構うことなく、エイシアは、歯を食いしばり、
自らの感情を抑え込む。

「お前は、自身の立場を良く心得ているな。
 この場で獣として、その人殺しとしての本来の能力を、如何なく発動させる事など、
 赦されていないのだから」
「……っ!」
「そんな状態にあっても、自分自身の矜持をおざなりにしない、お前に褒美をやろう。
 いささか不本意だがな」
「っあ!」

心の内側に在る想いを逆なでするかのような、憐れみと嘲笑を含むような声色で、柳が言葉
を掛けた直後に、エイシアのしなやかな線を描く身体が揺れた。
それと同時に、何の前触れも無く、エイシアの後孔に柳の指が数本、差し込まれたからだ。

柳は、先程、彼にしては冗長な言葉をエイシアへと投げ掛けたのとほぼ、時を同じくして、
自分の感情を抑え込もうと苦悶に満ちた表情を浮かべていた、この青年魔獣の顔面に程近い
場所で、ベッドの上にナイフを刺し抜いていた。
直後に、柳は、空いた右手指をエイシアの後孔へと宛がい、それをそのまま、強く差し挿
れていたのだ。

「……ん、くっ……!」

エイシアの後孔は、柳との情交を経て其処に放たれたままの白濁液によって、粘気の強い
水音を立てながら、相手の指を易々と受け入れていった。

最も感じるあの部分を何度も刺激され、エイシアの其処は、内側から掻きまぜられるよう
して成される柳からの施しを何の抵抗感もなく、受け入れ続けていく。
それを受けて、先程から続く痛みで既に萎えていたエイシアの雄としての証も、柳から与
えられる後孔への刺激を受け続ける過程を経て、相手へと解りやすい反応を返し始める。

「は、あぁっ!」
「ほら、お前のモノが、また勃ってきたぞ、魔獣。
 私の手は、お前の雄の部分には、未だに一度も触れていないというのにな」

囁くように声をかけながら、柳は相対する魔獣の青年の雄の証が完全に勃ち上がるまでの
間、自らの手指で後孔のその部分へと、快楽を伴う刺激を執拗に施し続けた。

柳の左腕によって身体を押さえ込まれたままの体勢を強いられているエイシアの方も、こ
の場での抵抗をみせる事もなく、相手からの行為を甘んじて受け入れ続ける。
それは、エイシア自身が、今、現時点に至っては、ただ、それだけが、この行為をできる
限り早期に終わらせる最善の選択だと判断していたからだ。

「……くぁ!」

そんな心境にあって、決して純粋に快楽だけを感じ取っていた訳でもないのに、エイシア
の身体の方は、柳から受ける行為に対して、徐々にではあるが、再び、純粋に快楽を追う
ように反応を返していく。
エイシアは、後孔に差し込まれた柳の指が、内壁の一番感じやすい場所を強く擦り上げる
その度に、熱を帯びた小さな吐息を零し続けた。

自らの掌と腕、そして背中の痛みが消えたわけではない。
むしろ、先程、腱と骨を砕かれた左腕はもう、既に、熱を持って痺れ、痛みで全体の感覚
さえも麻痺している程だ。
それなのに、何故――俺は、未だに、こんな反応を返し続けているんだろう。

そんな事を思えば思う程に、エイシアのアイスブルーの双眸からは、溢れるように、涙が
流れ落ち続けた。

「……あ、ぁ、また、い、く……っあ、ぁ!」

やがて、柳から施され続けていた刺激を受けて、エイシアは、ベッドへと顔を埋めたまま、
小さく呟くようにして、僅かに身体を震わせると、掠れた喘ぎ声を零し、自らが達する直
前まで、追い込まれていった。
エイシアのそんな声を耳にした柳は、自らの腕をもって押さえつけたままにしている、こ
の白銀の髪の青年魔獣が達しそうになる直前に、再び何の前触れもなく、後孔から指を引
き抜いた。

「魔獣、この場において、最後まで達する事を赦すと思ったか?
 これ程の痛みの中に在っても、お前が、未だに快楽を追い続ける淫卑な存在だという事
 を仲間にも立証してやるといい。これから、お前の事を仲間が迎えに来るぞ。解るか?」

「……ぅ!」

自らが投じた言葉に対して、エイシアが息を詰めた、その表情を目にしながら、柳は、
相手の身体を抑え込む事を止め、自身の身体をその場から引き起こした。
それから、彼は自らの手指を手近にあったコンフォータークロスで、簡易的に拭き清める。

そうした所作を行ってから、柳は、エイシアの涙と涎に塗れた顔前に刺し抜いたままにし
てあったナイフを、この哀れな青年魔獣の目前で微笑みを浮かべながら、引き抜き、自ら
の懐へと収めた。
また、その動作の直後に、柳は自らの腰の後ろの辺りでベルトを渡し、しっかりと固定す
るように身に着けていた刃渡り50㎝程度の小刀の鞘の装備を解く。

柳は、装備を解いた小刀の鞘とベルトを未だに身動き一つ出来ずに、荒い呼吸を繰り返し
ながら横たわるエイシアの顔前へと置いてから、この哀れな姿を晒す青年魔獣へと声を掛
けた。

「ほら、これは、お前にくれてやろう。私をそれなりに満足させたという証だ。
 もっとも、その最たる理由は、お前の腕から小刀を抜き去るのが面倒だという事に尽き
 るがな。お前の腕に差し込んだそれも、せいぜい仲間に上手く抜いてもらう事だ。
 他の魔獣共との情交を経て、お前の傷が癒された後に、また機会があった暁には、お前
 を再び抱いてやろう。より強い快楽と痛みとともにな」

「っ、う゛ぐ、あぁああぁっ!!」

エイシアは、柳からのその言葉を聞き終えた直後に、今、この最後の時点において、自ら
が今まで必死に抑え込んできた感情を抑えきれずに解放し、明らかに強い怒りの情念を乗
せたまま、獣のように咆哮をあげて叫んでいた。
同時に、エイシアは、自らの腕と掌を小刀とナイフによって、刺し抜かれたその体勢のま
ま、明確な殺意をもって、鋭い視線で、目の前の相手を自らのアイスブルーの瞳で睨みつ
ける。

「この後に及んで漸く本性を現したか! 魔獣。だがな、今回は、このまま見逃してやろう。
 私の目の前で、お前自らが本能に屈し、真の姿を露呈させた様を見届けられたのだから。
 それだけでも、この場所にわざわざ足を運んだ甲斐があったというものだ」

柳は、その場で、エイシアに対し、自身の緑闇色の瞳をもって、嘲笑と侮蔑と憐れみをも
含む視線を投じ、はき捨てるようにして、そう言った。
そうして、柳は、そのまま、手負いの獣のように低い唸り声のようにも取れる声を発し、
鋭い視線を送っていたエイシアの方を改めて一瞥する。

直後に、柳は、この場において、未だに我を忘れているかのように、ただ純粋な憎悪に全
身を染め抜いた様を保っているエイシアから不意に、前触れもなく背を向けた。
そうして、彼は、この部屋に来た時と同じく、普段と変わらぬ、平静な様子と表情を戻す
と、そのまま、このホテルの一室を後にしていった。

再び扉が閉められた後のこの部屋には、極限にまで純化された怒りの感情に身を任せて、
絶叫にも近しい声をあげるエイシア唯一人だけが残された。

【 続く 】

お付き合いいただき、ありがとうございました!
柳様に攻められるエイシアは、本当に書いていて楽しかった!ですw

※wiki収録後に、一部修正を加えました。
※この設定で書かれたクロスSSは創作してもらうスレ 1-265368
※設定スレ1-036のSSは、創作してもらうスレ 1-172194



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最終更新:2012年09月05日 10:20