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  • 水星魔性

オリロワVRC @ ウィキ

水星魔性

最終更新:2024年01月16日 06:24

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水星魔性


「じゃーん。どうよこの衣装♪」

 扉を勢いよく開けながらリビングに出てくる姉さんの姿。
 緑色のスカート、青色のブレザーに赤いリボンが目立つ学生服で、
 お団子とロングのピンク髪は、小学生の僕でも綺麗だって言える自信がある。
 ただ、その服は姉さんの高校で指定されてる制服とは違うはずだ。

「……姉さん、その恰好何? 髪もどうしたの。」

「何ってコスプレよ。ってか知らない? さとちゃんの服なんだけど。」

 名前だけは聞いたことがある。
 確か女子高生と女の子が暮らす、
 なんて作品だっけ。ちょっと思い出せない。
 とにかく、SNSで話題になったアニメなのは知ってる。

「小学生に多分深夜アニメの知識求められても困るんだけど。」

 子供の寝る時間を考えれば普通にリアタイなんてできないから、
 当然姉さんとのアニメの範囲の認識の違いは出てくる。最初だけは。

「じゃあ録画した奴あるし一緒に見ない?」

「いや、僕宿題が……」

「宿題しながらでも見れるって。
 可愛い女の子の百合が楽しめるよ~? 噓は言ってない。」

「姉さん、今すごく不穏なこと言わなかった?」

 半ば強引に姉さんによってアニメを見ることになって、
 結果そのアニメにはまったりすることがあるのは、割と茶飯事だ。
 なお、そのアニメはしばらくの間僕のトラウマになったりもしたけど。
 あの時は小学生になんてものを勧めるんだこの姉はと思ったよ。

 姉さんはコスプレイヤーとしてもちょっとした有名人でもある。
 親は余り受け入れてはないものの、それで成績は落とすことはなかったし、
 そういうこともあってか余り強く言えなくもあった。
 僕が女装と言うものに興味を持ったのも姉さんが始まりだ。
 ある日、素体が良いからと女装を試してみないかと軽く誘われた。
 たまに姉さんは服を作ることもあるので、要は都合のいい実験台だ。
 子供だから体格が小さい分、練習する素材が安上がりになるらしい。
 その時はアイスを奢ってくれるからってことで試しに着てみたところ。

「おー可愛いじゃん?」

 鏡に映る自分の姿は見違えてしまうほどだ。
 黒くてフリフリの、ゴスロリって言う服らしい。
 それを着て髪を三つ編みに結んだ姿は自分とは思えなかった。
 子供だからまだ未発達で、女の子とも受け取れる顔つきや声なのもあって、
 自分から言わなければ十分女の子として通用する容姿に少し驚いてしまう。

「ど、どう? 変かな?」

「いやこれ行けるね! 流石にウィッグとかつけないと、
 アンタだってバレそうだし写真が撮れないのは残念だけど。」

 男なのに女を演じられる。
 そんな二面性に何処か惹かれたところがある。
 まるで自分が自分でなくなったかのようなこの感覚が楽しい。
 アニメとかで聞いたような表現を、リアルで使うとは思わなかった。
 その後も不定期で姉さんの着せ替え人形感覚で女装を試すことになる。
 小学生の僕には道具とか服なんて到底揃えられなかったのを考えれば、
 姉さんがいなかったらそもそもできなかったことだなって。

(でも、これは姉さんとの二人だけの秘密にしておかないと。)

 ただ、僕の考えが異常であると言うことの自覚はある。
 それとなく回りに女装の話を聞けば、殆どの答えは批判的なものだ。
 まあ小学生からすればオネエだなんだと笑われるのはよくあることだし、
 僕にとっての世界はまだ瓶のように狭くて、異常者と言う自覚は強まった。
 だから友達にも親にも言えず、姉さんとだけで共有することにして女装を楽しむ。
 たまにできるその日を待ち遠しく思いながら生活をする日々。

 でもそんな狭い瓶も、蓋をされる時が来た。
 普段は精々女装で外出しても、家の周囲を歩くだけに留めていた。
 でも、その日はちょっとした遊び感覚で女装したまま街を徘徊してみた。
 何度か外出したことで慣れたのと、外を歩いてみたい好奇心が勝ったから。
 誰も僕が男だとは思わず素通りしていく。面白おかしくて楽しい時間のひと時。
 でもその日は最悪に変わった。帰り道に車の事故に巻き込まれたから。
 幸いにも大したけがはしなかったけど、そのせいで親に女装がバレた。
 元々コスプレとかそういうのを姉さんの存在から好きじゃなかったから、
 両親の嫌悪感は凄まじいものとなって、女装は全面的に禁止にされた。
 でも仕方ないと思う。僕の考えは、周りからしたら変なんだから。

「ん? どした?」

「……いや、姉さんのプレゼントにしてもいいかなって。」

「お、いいね。こういうモコモコしたの好きかも。」

 女装を禁止されたまま、僕は中学生になった。
 時の流れは速い上に惨酷だと言うことが嫌でも分からされる。
 この頃は第二次成長期。少し遅れ気味だけど僕も声や体格が変わっていく時期、
 声変わりはさほどしてないので女声は出そうと思えばまだ普通に出せたけど、
 段々体格が変わっていくことに対して恐怖が何処かあったと思う。
 後数年もすれば、もう女装を試すのも困難になるのかなと。

「ほいこれ!」

 ある日、僕の部屋には父さんのお下がりのPCがあったはずなのに、
 今部屋にあるPCは全く知らない、高そうな新品が鎮座している。
 よく漫画とかで見るVRゲームをするためのヘッドギアまであったが、
 全く状況が呑み込めず目をぱちくりとしてしまう。

「これ、何?」

「誕プレにVRChat。十三歳からなら、
 親の同意があればできる奴。勿論許可は貰った。」

「嬉しいけど、なんで?」

「女の子のアバターで潜ることもできる、って言えば分かるでしょ?
 まあ、親には女装ができるなんてこと言っていないんだけどねアッハッハ。」

 十三歳の誕生日、姉さんからまさかのPCとVRCのヘッドギアをプレゼントされた。
 女装はできると言ってもゲーム内での話。オフ会をするなどしなければ事件にもならない。
 これなら仮にバレても許されるだろうと言うことで、姉さんが用意してくれたものだ。
 正直困惑した。調べたらかなりの額になるし、ヘッドギアを使わないタイプなら、
 もっと安く抑えられることだってできたかもしれないのだから。

「また内緒で女装して外へ出るとかして、
 飛び火して怒られたくないだけなんだけどなー。
 そっかー、これだけじゃ満足できないかぁー、残念だー。」

「……ずるいなぁ、姉さんのそういうところ。」

 姉さんはああ言ってたけど、
 あれは多分僕を見かねたんだと思う。
 女装を楽しいって思える程に没頭してたし、
 あれほどのめり込んだのはまだ出会えてないし。
 それでこういうことできるんだから姉さんは凄いよ本当に。
 プレゼントは素直に受け入れて、VRCを存分に楽しんでみた。
 体格が成長しない世界。これなら思うがままに楽しむことができる。
 まあ、女装と言うよりは女体化みたいなものではあるんだけどもね。
 どちらにしても、VRCの世界にのめり込んでいたのは事実だと思う。
 ネットで歌手やってた人とかを見たり、海賊団のファンも少し考えたり。
 充実した日々を楽しんだけど、姉さんの考えは一つだけ間違いがあった。

「事件はあったよ、姉さん。」

 開けた草原の真ん中にて、
 嘗ての事を思い返しながらごちる一人の少女がいた。
 白を基調としたコルセットスカートに青い外套を羽織り、
 此処に杖と帽子をがあれば、よくあるRPGの魔法使いらしい格好だ。
 水瓶のような髪飾りを付けた、長い水色の髪を靡かせる姿は可愛らしさがある。
 肉体的には女性ではあるのだがこの姿が少年のアバター、
 此処ではアクリアと言う名前で参加していた。

「これを姉さんの落ち度とは思うつもりはないけど。」

 興味を持った話題のワールドがリアルデスゲームでした、
 なんてものを事件と言って姉にどうやって責めろと言うのか。
 此処に来たのは(知らなかったとはいえ)最後は自分の意志だ。
 自分のことをあそこまで親身になった姉を責める気など欠片もない。

(それはそれとして、現実……だよね。)

 非現実的な出来事ばかりで今一つ受け入れきれておらず、
 人が死んだり自分が死ぬかもしれない状況下でありながらも妙に冷静だ。
 試しにと手をパン、と叩けば掌にはヒリヒリとした痛みが軽く残留したり、
 首元にアバターにはない首輪、ヘッドギアの感触がないなどで素直に受け入れる。
 漫画とかであるデスゲームを、自分が参加者となるとは想像もしなかった。
 本物なんだと実感すると寒気が走るし手も軽く震えるものの、
 何とかちょっとだけ年不相応に大人びた冷静さを取り戻す。
 冷静さと言うよりは、やせ我慢と言うべきかもしれないが。

(とりあえず、様子見大事。)

 アバターを殺せば現実でも人が死ぬ。
 人を殺すことは道を踏み外してない彼には縁遠いものだ。
 生存以外の道がないと言う最悪のルートだけなら諦めるとしても、
 敵しかいないとかでない可能性もある今は無理に事を起こさないのが大事になる。
 バトロワのゲームは何度かやったことがあるのでその時の鉄則として、
 余計に目立ったりしてヘイトを稼がないことだけは理解していた。
 勿論ゲームとは違う。相手だって命懸けで行動してくるはずだ。
 セオリー通りとは思わず、柔軟に考えるべきだと思考を巡らせる。

「えーっと、確か……水瓶(サダクビア・ポッド)だったかな。」

 アクリアは天才的な発想や才能を持っているわけでもない。
 身の丈以上にできることはさほどなく、非力な部類になる。
 だから必要なのは、このゲーム上におけるルールで得た力だ。
 手を空へ向けながら意識すると、水道の蛇口を捻ったかのように、
 手から水が溢れ出して草原の大地へと染み込んでいく。
 もう少し意識してみると、ボールのような形状で宙を漂う。
 更に意識して使えば、弾丸のように水を飛ばして攻撃も可能だと分かる。

(悩む。これ、弱くはないけど強いの?)

 この能力、決して弱いものではないとはアクリアも思っていた。
 水はウォーターカッターのような刃物にもなりうることもあれば、
 拷問、津波、溺死等人を苦しめたり殺す手段に関してはかなり豊富だ。
 一見すると悪くはないのだが、問題はそれらを使いこなすまでの精度か。
 人間は水を操る能力は当然ない。人間に翼が生えたところですぐに飛べない。
 相応の練習に工夫、練度を経てようやく完成する代物。いわば大器晩成型だと。
 水と言えばヒーラーの要素がゲームではありがちだが、それもできない状態。
 いかに遠からずくる戦いまでに練度を高められるか、時間との勝負のようなもの。
 早急に練習に入り、自衛のための攻撃手段をなるべく練習しておく。
 とりあえず集中を切らさず戦うと言うのは今後必要だと思って、
 歩きながら能力の行使を軽く数分練習する。

「───アアアアアッ!!」

「!」

 練習を続けていると、
 遠くから聞こえる誰かの声に足を止める。
 悲鳴のような類ではない。何方かと言えば怒号だ。
 敵だったら怖いとは思いつつも、接触しなければ何も始まらない。
 せめていい人でありますようにと願いながら向かう。



 ◇ ◇ ◇



 星空高則(ほしぞら たかのり)は大学で体育教師を務める。
 正義感に溢れた典型的な熱血教師として世間的な評判はいい。
 VRCでも外見が星型の顔と言うインパクトは強いものの、
 ヒーロー的な外見らしい振る舞いをすることが多い人物で見知った人には通ってる。
 スポーツ漫画やアメコミの漫画にでもいそうな人物ではあるが、

「ふっざけんなあああああ!!」

 今はこの通り癇癪を起こしていた。
 草原にあった一本の木へ、八つ当たりの如く蹴りを叩き込む姿は、
 とてもヒーロー的な外見でする行いとはかけ離れている行為だ。
 スターマンと言うヒーローのような表記がされたネームプレートは、
 この光景だけを見てはヴィランと言われても差し支えることはないだろう。

 テンプレートのような体育教師である要素は単なる仮面に過ぎず、
 本来は自分が星の如く高い所に居座っては、自分の想い通りに人を動かす。
 脅迫は勿論として、必要であれば殺人すら厭わないどす黒い邪悪の化身だ。

(ふざけるな、ふざけるな!! なんで俺がこんな目に遭ってんだよ!!)

 表向きの彼はさほど上昇志向と言ったものはない。
 身動きが取れない立場になるより、今の方が気楽だからだ。
 当然、その気楽と言うのは女性との関係がスムーズに進むも含まれる。
 だがあくまでそれは表向き。本来の彼は人を支配する立場を楽しむ側だ。
 自分にとって他の連中は全て見下す。星である自分こそが天上にあるのだと。
 別に邪魔をしないならそれでいいが、自分より上の立場で自分の邪魔をしてくる。
 邪魔をしてくる存在には一切の容赦しない。死に追いやった人も数知れずだ。

「ハァ、ハァ……お、落ち着け。落ち着こうかスターマン。」

 八つ当たりしても事態の解決にはならず、ようやく落ち着く。
 とりあえずの目的だ。殺し合いの優勝とか彼はどうでもいい。
 願いが叶うとか都合のいいものはないと言うことは察してるし、
 何より自分の邪魔をしておいて高みの見物をする連中が許せない。
 アバターの姿で生活? この姿で人間社会にいれば即刻通報ものだ。
 そういった理由もあって殺し合いについてはどうでもよかった。
 今の平穏な暮らしで十分に満足しているのだから。

「あの、大丈夫ですか?」

 落ち着いたところに、アクリアは声をかける。
 振り向けばそこには脅迫された生徒のような不安の眼差し。
 ああ、良い。自分が上にいると言う優越感に浸れる表情だ。

「コホン、すまないな!
 我ながら恥ずかしい所を見せてしまったな。
 俺はスターマン! 今のを見て誤解を招いたらすまないな。
 ただ断っておくと、俺としては別に殺し合いなどするつもりはないさ!
 と、言ってもさっきの様子を見て話しかけてくれた君も同じとは思うがね!」

 ではあるものの、あくまで今は表向きの仮面を被る。
 正義感の強い人物を演じ続ければいずれ人は集まっていく。
 そうすれば高みにいる主催を引きずり降ろすのも難しくはない。
 少し言い訳が苦しいとは自覚しているが、普段のスターマンとして接する。

「僕───私アクリアって言います。私も同じ考えです。」

 咲の行動で少し不安だったものの、
 大丈夫そうだと安心して胸をなでおろす。
 格好と行動からかなり近寄りがたい外見だが、
 話してみればヒーロー的な言動に安心感を覚える。
 奇抜なアバターもアメコミのヒーローと思えば、
 さほど変にも感じなくなってきた。

「アクリア君! 此処で会ったもの何かの縁だ!
 共にこの殺し合いを帰結して元の世界へ戻ろうじゃあないか!」

(い、勢いが強い人だ。)

 背中をバシバシと叩かれながら、軽く前のめりになる。
 アクリアは暗い性格ではないものの、活発的かと言うとそうでもない。
 どちらかと言えばレベルで本を読んでる方が好きな側で、
 こういう押しの強い人には少し気後れしてしまう。
 特に、今は性別を詐称している状態でもある。
 余り素を出せないともあって委縮気味だ。

「ところでアクリア君、何か人を探せる支給品はないかね?
 この先人を集めるのは大事なことだと私は思っているのだが。」

「何はともあれ数ですよね。分かりました。」

 スターマンの言うことはもっともな話だ。
 敵と戦うには数が一番強いのは彼でもわかる。
 特に、仮に出鱈目に強い創造武具やスキルがあったとしても、
 制限がされると言う表記から100%無敵の人物は存在しない。
 勿論、敵か味方かの審議を見極めるのは大変ではあるのだが、
 かといって集まらないことには始まらないのも事実。
 人柄は少し苦手ではあるものの人を引っ張るまとめ役、
 と言う意味での適任の度合いで言えば自分よりも高いと感じる。
 こういう人がいないと人を集めてもバラバラになりがちなので、
 そういう意味でも早めに出会えてよかったと思っていた。

「ルールだと、そういうのはアプリにあるかな……え?」

 暫くタブレットを閲覧していたが、
 身を強張らせた状態で固まるアクリア。
 スターマンを軽く一瞥したりした後に、再度手が動くようになる。

「ん? どうしたんだい?」

「い、いえ。姉さんが名簿に載ってると勘違いしてしまって。
 よく見たら別の名前だったので、不謹慎ながら安心しただけです。」

 申し訳なさそうな顔と共に答える。

「えっと、アプリにはなかったから他の支給品を……」

「アクリア君。今何を見たんだね?」

「いえ、ですから名簿を───」

 視線を向けると同時に、飛来する膝蹴り。
 丸太のような鍛えられたようなアバターの足は、
 無防備だった彼の鳩尾へと叩き込まれ軽く吹き飛ぶ。
 肺の中に入っていた空気を殆ど吐き出すことになり、
 何が起きているのか分からないまま草原を転がる。

「ゲホッゲホッ!!」

 痛いの一言で埋め尽くされるほどに強烈な蹴りだ。
 VRCでどの程度アバターが肉体の外見通りに反映されるかは不明だが、
 元々膝は鍛錬してなくとも硬い部位であり、格闘技でも頻繁に使われるもの。
 不意打ちもあって、胃に何かあったらまず吐いてるような鋭い一撃だ。

「早く見せろって言ってんだよ。」

 アクリアを蹴り飛ばした足が視界に入る。
 見上げればスターマンが笑顔で立っているが、
 状況のせいで先ほどまで受け入れたはずの絵面が恐怖へと変わる。
 急な切り替わりに、同一人物なのかと疑いたくなってしまう。
 確かに最初八つ当たりしてた光景を少し見てしまったものの、
 この状況で八つ当たりするなと言う方が難しいのでそこはスルーした。

「っと、いけないいけない! すまなかった。
 いいかいアクリア君。この状況で大切なのは信頼だよ。
 蹴ったのは済まないと思うが、君に対する疑念みたいなものさ。
 疑念を持ったままでは信頼は続かないだろう? 君は何を見たのかな?」

 しゃがんで目線を合わせながら再度尋ねる。
 先程自分を見たアクリアの視線にスターマンは覚えがあった。
 あれは恐怖や怯え。脅迫した生徒を相手によく見てきた視線だ。
 出会った時にもしていた視線を再度向けたが、其方は自分の奇行のせい。
 離し合えばそのような視線は向けられなかったのを見るに、
 タブレットの中に何があったのか。

「ほら、早く見せてくれないかな。」

 数々の生徒を食い物にしたり抹消したし、
 元々過去の痕跡を消すと言う完璧主義な側面がある男だ。
 だから些細なものであっても気づきやすく、見間違えるはずはない。
 何を見たか知らないが、少なくとも先程と見る目が違っていると。
 このまま放置するのはよくないと、直感が告げていた。
 アクリアは腹部を抑えながら蹲ったままで答えることはない。

「早く見せろって言って───」

「明星、朱雀。」

 もう一度蹴りを叩き込むべきか。
 そう思っていた中、思わぬ名前に言葉を失う。
 過去の事件の痕跡をほぼ消していると言うことは、
 相応の情報収集能力がなくしては成立できないことだ。
 だからその名前もしっかりと覚えている。嘗て殺し損ねたが、
 同時に何も知らないので結果的に見逃した明星一家の唯一の生き残り。

「知ってる人、ですよね。」

「おい、なんでその名前……」

 まさかと思って名簿を確認する。
 名簿には紛れもない朱雀の名前が記されていた。
 VRCで本名のままやるで奴がいるのかとは思ったが、
 それよりも。数十人の名簿の中からピンポイントに当てたのは何故だ。

「明星玄武(あけぼし げんぶ)、明星由美(あけぼし ゆみ)、
 明星神楽耶(あけぼし かぐや)、瑠守乱時(るもり らんじ)……!」

 正直まさかだとは思った。あってはならない、そんなことが。
 痛みをこらえながら起き上がるとともにアクリアが呟くその名前も忘れない。
 あの時、自分が殺したはずの名前が何故次々と挙げられているのか。
 何かは分からない。だが、間違いなく自分に関する何かだ。

「なんで!! テメエが知って───」

「今ッ!!」

 発言に目を張った瞬間、アクリアは手を振り払う動作と共に水を飛ばす。
 簡素な目潰し。ただの水である以上視界を少しだけ悪くする程度だが、
 目に水が入れば、人はたとえ問題がなくとも咄嗟に目を閉じてしまうもの。
 一時的に目が閉じざるを得ないのは、単純に視界を塞ぐことが目的なのだが、
 意図してないこととしてスターマンのスキル『スターフラッシュ』は、
 目からビームを出すスキルである為偶然にも攻撃の手も封じていた。

「ッ!」

「それと、おまけ!」

 目を塞いだ隙に、追加で掌を前へと翳して思いっきり水を放つ。
 水の蛇とも言うべき水圧が、今度は逆にスターマンの鳩尾に直撃。
 大きく吹き飛ばした後、全力でその場からダッシュで逃走を始める。

(これ、本物だったの!? どんな確率でこうなるの!?)

 気付かれていたことだが、
 タブレットには名簿以外にもアプリはあるにはあった。
 しかしこれは余りにもピンポイントだ。使い道がほぼないし、
 これを支給されたことを幸か不幸か判断するのがすごく難しい。
 『明星一家死亡事件の真相』なんてデータを支給されても、
 これで得られる情報はたった二人だけでは殆ど外れよりだ。
 貴重な武器となりうるものを一つ潰されてるとみるべきか、
 敵となる存在と味方になるかもしれない存在の提示とみるべきか。
 何にせよ、今の水瓶ではとても戦闘をこなすことはできないし、
 戦うことが可能な支給品を確認する暇もあるとは思えない。

「スターフラッシュ!」

 エコーがかかった(ような気がする)声と共に、
 後方から伸びてくる光線に気付き転がって回避する。
 光線は近くの地面に直撃と同時に軽い爆発を起こす。

「ずる!? なにそれ!?」

 圧倒的な攻撃力の差に思わず素が出る。
 全力でやって人を吹き飛ばす程度の攻撃しかできないと言うのに、
 向こうは平然と爆発まで起きるスキルか創造武具を取得している。
 先ほど100%無敵はいないだろうと言う考えはしたものの、
 だからと言ってバランスが取れているわけではないという事実。
 アクリアからすれば酷い戦力差だと思わずにはいられない。

「この、メスガキが……わからせが必要ってかぁ?」

 先ほどまでのヒーローのような爽やかさはない。
 ヴィランのような凶悪で、視線だけで人を怯ませそうな表情だ。
 水が目に入ったのもあってか、充血した瞳はヴィランの如き形相。
 自分どういうミスをしたかは分からない。ただ分かることは一つ。
 あの女は思いもよらぬ何かを得ている可能性が高いのだと。
 冗談ではない。このまま生かせば自分の立場は危うくなるのは事実で、
 仮に運よく生還したとしてもリアルではどのような姿かもわからない人物に、
 自分の過去を握られた状態でいるなど、断じてあってはならない。

「スターフラッシュ!!」

 ご丁寧に技名を叫んでるお陰でタイミングは掴めるので、
 直撃することはないとしても当たれば致命傷なりかねない威力。
 ゲームでもシビアな回避はあるが当たればリアルの死に直結する為精神的な摩耗に繋がる。
 特に今いる場所がかなり悪い。B-4のほぼ平地のど真ん中での戦いになるので、
 遮蔽物を使って防ぐは勿論、身を隠して逃げたり時間を稼ぐことすら困難だ。
 勿論支給品の確認をする暇さえない。森へ逃げるまでSTGの如く、
 只管回避を続けるしかない。

(多分叫んだり目からしか出せない条件だと思うけど、
 ちょっとこれゲームバランス考えてるんだよね本当に!?)

 この一方的な状況についてお気持ち表明のメールを送りたくて仕方がない。
 使い慣れてきたのか、先程よりも速度と威力が上がってるように見えていた。
 バトロワ方式ならば最初に武器を拾えない方が悪いと言えるところはあるのだが、
 皆最初に必ず武器となる創造武具やスキルがある手前、その理論は通用しない。
 多少の差ぐらいは気にしないが、開幕から差がありすぎるのはいかがなものか。
 などと現実逃避のようなことを考えながら光線を搔い潜って逃走を続ける。

 逃避行は続くも次第に距離は詰められる。
 相手は掛け声と技名があれば走りながらでも撃てるので、
 どうあがいてもロスがない分距離は縮まってしまうものだ。

(こうなったら、一か八か賭けてみる!)

 攻撃を避けたと同時に近くに転がっていた適当な小石を拾う。

「いっけぇぇ!!」

 拾った後親指で弾くと同時に、水を噴出させ弾丸のように飛ばす。
 水に攻撃力がなければ、長時間出して相手を溺れさせることもできない。
 なら、水で飛ばしたもので攻撃材料にしてみる以外に今は思いつかない。
 銃弾のように飛ばされた小石は初めてにしては勢いも狙いもうまく決まった。
 小石は吸い込まれるようにスターマンの肩へと直撃し、










「イデッ。」

 それだけで終わった。
 確かに攻撃にはなったしうめき声になる威力はあるものの、
 人が投げた石とさほど変わらない程度。一瞬怯むだけに終わる。
 殺し合いの場ではあまりにも貧弱な攻撃で互いに唖然としかけた。
 これは単に慣れてないので勢いが弱いのもあるが、別の理由もある。
 アクリアの水瓶は生身で使うよりも、杖や魔法陣と言ったものがあれば、
 より効果を発揮できると言う明確にスキルの強化が確約されているものだ。
 なので、先程からゲームバランスが悪いのではと嘆いた彼だが実際は違う。
 安定した強化手段が存在してる時点で、素の威力は弱まるのは当然である。
 彼の言う大器晩成型と言うのは、そういう意味でも間違いはないとも言えた。

(やばいやばいやばいやばいやばい!!)

 なんてことを考えてる暇は当然ない。
 余りにもしょうもない攻撃をするだけで足を止めてしまった。
 向こうは全力で追いかけてくる中でのこの差は決定的だ。
 怯みはしてもアクリアにとっては無駄なロスになっただけになる。

「スターフラッシュ!」

「ッ!」

 もう何度目か分からない光線にギリギリのところで避けるも、
 ギリギリだった故にその後の爆風に煽られ軽く草原を転がる。
 地面に背中を打ってもすぐに立ち上がるが、その間にも向こうは迫っている。
 既にその差は二メートルを切っているほどに接近されていた。

(お互い創造武具かスキルの内容が大体分かってるし、
 向こうは目を使っての攻撃。もう目潰しも絶対に通用しない。)

 逃げも戦いも詰み。
 何をするにしても思考する時間でさえも足りてない。
 どうすることもできないままアクリアの目の前まで迫り、もう一度蹴りを叩き込む。
 最初と違い加減をしない一撃。当たり所次第では骨にすらダメージが届く鋭さだ。















 しかし、蹴る寸前にアクリアがその場から消えた。

「な!?」

 これまでの戦いから持ちうる能力は水を飛ばすだけだ。
 ワープ等あるなら最初からそれを使って逃げればいい。
 此処までギリギリになってまで出し惜しむほど余裕はなかったはず。
 何処へ行ったのかと思って辺りを見渡してみれば、アクリアは近くにいた。

「君、大丈夫かい!?」

 ただし、別の参加者も居合わせている。
 アクリアを脇に抱えた状態で立っており、
 黒と青銅色を組み合わせた何処かの学生服のような恰好だが、
 灰色の髪と黄緑の瞳の端正な顔立ちをした外見は、白馬の王子様とも受け取れそうだ。

「え、あ、はい。」

「舌を噛まないよう気を付けて。速いから!」

 そう言うと同時に、青年は走り出す。
 人一人を抱えているはずなのに機敏なもので、
 あっという間にスターマンから距離を取っていく。

「あ、おい! チッ、スターフラッシュ!」

 攻撃をするも直線的で避けられてしまい、
 逃げた先も森の中。彼の攻撃が通用しないし、
 追跡も困難になってしまう最悪のフィールドだ。

(冗談じゃねえぞ!? 一人だけでも厄介なのに、
 俺の子喋られた上に別行動されたら手がつけられねえ!!)

 純粋な追跡では二人を追うのは難しい。
 支給品にこの状況に打開できるものがあると願って、
 追跡を一旦中断して、手持ちのアイテムを確認する。

 星は高みから降ろされた。
 平等であり不平等な殺し合いの名の下に。
 彼を仇とする青年と同じ舞台に立つ役者の一人として。

【B-4 平原と森の間/一日目/深夜】

【スターマン】
[状態]:疲労(小)、怒りと殺意(極大)、ずぶ濡れ
[装備]:スターフラッシュ@スキル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:主催をぶっ殺す。平穏の邪魔をするな。
1:殺し合いに乗るつもりはないので他の仲間を探す。
2:なんで明星朱雀がVRCにいて、なんで一緒に参加してるんだよ!?
3:少なくともガキ共(アクリア、風凪)は殺す。過去は消し去るべき試練だ。
4:支給品を確認して追跡できるものを探す。





 目まぐるしく動くことで、
 草原から次々と光景が変わる様子に軽く酔うアクリア。
 最終的に途中から速度が急激に人並みに戻ったことで、
 B-5の川の近くで二人は足を休めることにする。

「この薬あんまり長くないのか。」

 青年は使い切った注射器のようなものを一瞥した後しまう。
 先ほどの脚力はスキルとかではなく支給品の効果によるもの。
 まだ何本かあるものの無暗にに使うべきではないと理解する。

「あの、さっきはありがとうございます。」

「いいんだ。気にしないで。僕がしたくて助けただけだから。」

 自分の行動に何処か真っすぐな、
 そんな風に受け取れる答え方に感心を抱く。
 どことなくアクリアは姉を思い出しながら服の水分に気付く。
 あれだけ散々水の力を行使し続ければ当然ずぶ濡れになる。
 (相手がアバター通りの性別なら)男同士とは言え、
 微妙に肌が透けて見えたりするのは少し恥ずかしくなる。

(こういう時もすぐ乾燥できるの便利だなぁ。)

 胸元に手を当てれば、
 乾燥機は不要とでも言わんばかりに水分を集約していく。
 乾いた後の集まった水は適当に飛ばせばあっという間に元に戻る。

「あ、まだ名乗っていませんでした。私は───」

「ゴメンね。」

 振り向けば青年がいつの間にか持っていた槍が軽く肩に刺さる。
 攻撃としては余りに軽微で殺す気があまり感じられない一撃だが、
 咄嗟に傷口に手を当てた状態でたたらを踏む。

「え……」

 訳が分からない。
 今度ばかりはどういうことだ。
 助けてくれた人が裏切ったと言う点もだが、
 同時に此方は避けることすら考えず油断していた。
 もっと負傷が深くなるだけの攻撃もできたはずなのに、
 飛んできた一撃はそれだけで、思考停止した一瞬にアクリアは押し倒される。
 そのまま槍が突き刺さるのかと思えば、それすらもない。

「ゴメン、最初は我慢するつもりだったんだ……でも、やっぱり無理だ!」

「え、え?」

 スターマンのような殺意とは違う。
 今見ている目は、全く知らない視線。
 幼い彼にはまだ理解することがないそれは、
 言葉を知っていれば情欲的な目とでも表現するのが正しいだろう。

(ああ、またやってしまうんだ僕は。)

 青年、此処でのアバター名前において風凪は半ば自棄になっていた。
 その自棄になる理由を語る前に、彼の過去を語る必要がある。

 彼は人よりも数段は性欲旺盛、
 と言う言葉以上の性欲の権化ではあったが、
 親の厳しい躾けや周りはそうではないのもあって、
 それらの存在を悪徳として封印し続けてきていた。
 結果周りからはよくできた人物として羨望の眼差しを向けられ、
 男子生徒の中でも誠実さに溢れた人物として過ごしてきた。
 でも本来は違う。自分の内に秘めた欲望は次第に増幅し続ける。
 理解者となる人物と出会うことなくいつかやらかすと思ってた中、
 やがて彼は最高、或いは最悪とも受け取れる出会いを果たして爆発した。

 宮倉伸史と出会ってしまったのだ。
 後に風凪も参加する未解決事件でも最悪の事件としても名高い、
 女子高生集団輪姦殺人事件。その主犯格となる存在が宮倉だ。
 彼の取り巻きの多くが惹かれていたそのカリスマや財力、
 権力とかおこぼれ、そういったもので集まったりはしてたが、
 風凪にとってはそれらは対して惹かれるものではなかった。
 彼に惹かれたのはただひとえに、自分を理解してくれた存在だから。
 誰にも理解されないまま生き続けることになると覚悟していたそれを、
 理解してくれた上で解放できる場を設けてくれた彼には感謝している。
 とは言え、女子高生集団輪姦殺人事件を筆頭に数々の犯罪行為に手を染めた。
 元々真面目な人間を演じたのもあって、良心の呵責や罪悪感で悩むことはある。
 ……まあ、相手の女性や死体を哀れみと思いながらも欲望に抗うことはできず、
 性のはけ口にしてる時点で同情の余地については全くないのだが。

 さて、そんな彼は宮倉に誘われてこうしてVRCの世界へ来たわけだが。
 誘った以上はいると思っていた宮倉こと勇者リチャードも参加者にいた。
 風凪は事件発覚後は売られるのではと怯えこそしているし、罪悪感に苛まれてはいる。
 だがそれでも、リチャードに対しては感謝し続けている側面も併せ持つ。
 これは元々が人当たりのいい青年を演じ続けた産物でもあるだろう。
 トカゲの尻尾切りされる可能性があると言うことが分かっていても、
 彼と敵対して戦うことになる、そんなことは考えたくはなかった。
 いや、考えたところで勝ち目がないと言う諦念が含まれているのだろう。
 彼と言う人物に勝てる要素はあるとしても、精々その有り余る性欲ぐらいだ。
 リチャードと殺し合いするとなれば、最早風凪にとって勝ち目はない。
 戦わずしてそれを理解してしまっている。
 だったら此処で彼はどうするか。

(此処で思いっきり───)

 死ぬまで自分の思うがままに生きると。
 自分の尽きぬ情欲を、好き勝手に発散する。
 その為に、このような創造武具になったのだろう。
 魅了や発情と言ったある程度の良心の呵責が入り混じりながらも、
 結局は自分の性欲を満たすためだけの槍『精槍・情愛』は。

 昔からよく言われることではあるのだが。
 人とは死に直面すると種の保存欲求、つまるところ性欲が高まると。
 ある程度立証もされている。内戦の多い国はその分娯楽も少ないので、
 性行為以外の娯楽がないのも含まれるとしても、出生率が高くなる傾向がある。
 風凪にとっての行為は本人の解放された性欲も勿論含まれていることではあるが、
 殺し合いと言ういつ死ぬか分からない環境が、爆発的にブーストさせている。
 だから後先は最早考えてない。相手の性別だって男か女かでさえどうでもいい。
 元々彼は簡単に染まりやすい。性欲を解放した結果、死姦すらいけるのだから。
 おそらくこの舞台であれば、たとえケモナーにも両刀にもなりうるはずだ。
 精神は最悪の黒と同時に、何にでも染まってしまう白色の存在が風凪と言う男だ。

(待って、何これ。)

 今自分は何をされているのか思考が止まっていた。
 いろんなことが目まぐるしく置きすぎて理解が追いつかない。
 視線を下へ向ければ、アクリアの胸は風凪に触られている。
 くすぐったいと言うよりは電流のような感覚が何度も走り出す。
 知らない感覚もあって戸惑いが隠せない。

(何で、抵抗してないの。)

 風凪を見てると別の感情が芽生える。
 風凪の持つ創造武具『精槍・情愛』に刺された相手は、
 所有者に対しての魅了と発情効果を齎すと言う効果を持つ。
 今のアクリアはそのせいで、彼に対して魅了と発情の両方が発生した状態だ。
 だから今の彼のフィルターからは、とても魅力的な人物に見えてしまう。
 たとえ、その前後の事がおかしなことであったとしても抵抗力が薄れる。

(身体が、熱い。)

 刺された傷が熱い。痛みと言うよりももっとの別の感覚。
 胸から伝わるそれに嫌悪感はさほど感じられない、寧ろ求めたくなる。
 目の前にいる彼を見て変な感覚だ。黄緑の瞳を持った端正な顔立ちは、
 寧ろ彼から求められていることに悦びすら感じてしまう程に。

(───嫌だ。)

 怖い。
 逃げろ。
 知りたくない。
 知っちゃいけない。
 知れば戻れなくなる。

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!)

「アアアアアアアアアアッ!!」

「え、水───ゴハッ!?」

 全力で叫びながら我に返り、
 やけくそに手のひらから水を勢いよく飛ばして風凪を吹き飛ばす。
 今自分の身に起きている感覚に対しての感想は最終的に『気持ち悪い』だ。
 最初に女装したあの時のと同じ『自分が自分でなくなる感覚』だと言うのに。
 今回のはそれを受け入れたくない。あの時のような楽しさが何処にもない。
 受け入れるのはダメだと直感で悟ったアクリアは両手で頬を叩いて気付けをした後、
 死に物狂いで走り出して近くの川へ飛び込む。

 アクリアがその効果から逃れられたのは、
 彼がまだ十三歳の少年と言うリアルの環境のお陰でもあるだろう。
 恋愛経験が乏しいため魅了の効果に対する理解が薄い結果の恐怖。
 性的経験は勿論年齢の都合皆無で、今の身体は性別的には女性だ。
 だから魅了と発情に対する部分においてある程度の抵抗ができた。
 あと数年、性に対する理解が深まっていた年齢とかであったなら、
 抗えなかった可能性が高いので本当に運が良かったとしか言えない。

「ああ、逃げられちゃった……」

 凄く可愛い子だと思えた。
 触れた肌はとても柔らかくて、水のような透き通った綺麗な身体。
 長い髪は触り心地が良くて、紅潮した顔はとても煽情的に感じた。
 ああ、これがロリコンの見ていた景色なんだと思うとなんだか納得できる。
 穢した時どういう状態になるのか。想像するだけで達しそうだ。
 創造武具の効果もまだ手探りだし、時間切れの可能性だってある。
 だから彼女を追いたい。殺し合いとは一切無縁の欲望を胸に抱いて。
 最早その性欲は留まることを知らない。死するその時まで、
 己の魔が如き性に従って快楽に浸るだけだ。

【B-5 川沿い/一日目/深夜】

【風凪】
[状態]:諦念、アクリアに対する興奮、罪悪感
[装備]:精槍・情愛@創造武具
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2、足が速くなる薬×4
[思考・状況]基本方針:罪悪感はあるけど欲望に従う。
1:優勝は無理なので欲望のままに動く。
2:リチャードに今会うのは怖いので会いたくない。
3:彼女(アクリア)を追うため川を下る。会ったら……

[備考]
※精槍・情愛の効果がどの程度続くかは後続にお任せします。





 風凪が川の流れる下りへと向かった反対側。
 川に飛び込めば普通は水に流されるのが定石。

「プハァ!」

 勿論、アクリアのスキルを考慮してなければの話。
 水の操作ができると言うことは、流れとは逆の方角に進むことも可能だ。
 溺れることもないし、うまいこと追撃を免れることもできた。
 何とか反対側の方へと流れていき、やがて河原へと這い出る。
 再び服から水分を抜きつつ、肩の傷口から流れる血も能力で疑似的な止血をしておく。

(あ、あの人は何がしたかったの!?)

 ひとしきり落ち着いたところで風凪の事を思い返す。
 自分を助けてくれたからてっきりいい人だと思ってたけど、
 何かよくわからないことをされそうになったのだけは分かった。
 一度ずぶ濡れになったと言うのに、未だに身体が熱く感じる。

(あの感覚、なんだったんだろう。)

 自分で触ってみたら何か分かるのかな、
 などと思いながら胸に手を当てたがそこで止まった。
 知ったら何か踏み外してしまいそうな、甘い誘惑。
 殆ど勘でしかないが何か分かる。これは触れちゃいけない。
 開いたらいけない者だと思いながら、ゆっくりとその手を離す。

(この感覚が何か分からない……怖いよ姉さん。)

 身体は熱いが寒気のする状況に身を震わせる。
 人の悪意と同時に、別の何かを見てしまった。
 多少大人びてると言っても所詮は一端の中学生に過ぎない。
 立て続けに危険人物と出会えば軽い人間不信だって起きてしまう。
 この先上手くやっていけるのかと言う不安だけが残される。
 水とは如何様にも変わる。汚れることも容易に。

【B-5 湖(風凪の反対側)/一日目/深夜】

【アクリア】
[状態]:疲労(中)、肩に刺し傷(軽微・能力で疑似止血)、風凪に対する魅了と発情(中)、恐怖と不安、軽い人間不信
[装備]:水瓶(サダクビア・ポッド)@スキル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2、明星一家死亡事件の真相(アプリに内蔵)
[思考・状況]基本方針:とりあえず殺し合いはしない方向で
1:明星朱雀を探してみる? でも今人と会うのは怖い。
2:スターマンと風凪(名前は知らない)に警戒。と言うより今会いたくない(特に後者)
3:何、この感覚。怖い。
4:スキルになれないと戦う選択肢すら取れない。
5:とにかく今は離れたい。

[備考]
※風凪の精槍・情愛の効果を受けてます
 年齢的な未発達と元が男性のためある程度相殺してますが、
 何かしらのきっかけで状態が悪化します。
 効果がいつまで続くかは後続の書き手にお任せします。
※水瓶は杖や魔法陣がないのと、
 まだ使い慣れてないため弱いです。
 回復能力があることについては気付いていませんが、
 心を開いてること(女装を打ち明ける程度の間柄等)が条件なのでそもそも今は使えません

支給品解説

明星一家死亡事件の真相
アクリアに支給。タブレットのアプリとして記事が収録されている
現実で起きた明星朱雀以外の明星家の家族、及び友人の瑠守乱時が死亡した事件
その事件がスターマンこと星空高則が犯人であることを裏付ける証拠などが纏まったファイル
誰がどうやってその真相に辿り着いてデータを纏めたのか、現時点では謎に包まれている

足が速くなるお薬
風凪に支給。緑色の液体をした注射型の薬
VRCには似たような名前の薬があるがそれとは別
名前の通り短時間の間移動速度の強化がされる
名前もあれだし絵面はバイオハザード7よりではあるが危険なものではない。5本セット


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007:クソゲーマーVSプロゲーマー 投下順 009:これはバトロワですか? ~はい、これが私の自称メイドです~
007:クソゲーマーVSプロゲーマー 時系列順 009:これはバトロワですか? ~はい、これが私の自称メイドです~

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GAME START スターマン 追跡する者達
GAME START 風凪 追跡する者達
GAME START アクリア 知らぬが仏


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