問題児と問題児
アルカードは吸血鬼オタクだ。
ヘルシングや月姫、更にはDies iraeなど吸血鬼が関わっている作品はだいたいチェックしている。――ただし原作はスルーしてアニメ版のみだが。
ヘルシングや月姫、更にはDies iraeなど吸血鬼が関わっている作品はだいたいチェックしている。――ただし原作はスルーしてアニメ版のみだが。
ゆえに彼の中でアーカードは「人間風情が」なんて言うような性格をしているし、ヴィルヘルム・エーレンブルグの魅力をあまり理解出来ていない。信者から不評な例のシーンすらカッコいいと思い、嬉し涙を流してしまう程だ。
もっともDiesはそのプレイ時間から仕方ないとも言える。本筋だけでも非常に長い上、外伝も豊富なのだから。
真月譚月姫についても仕方ない――気もするが、こちらは何度か「漫画版読めば?」とアルカードは言われている。しかし彼は、そういう声をガン無視して月姫談義に平然と混ざる。
そしてヘルシング。
こちらも漫画は全10巻と買いやすく、それはアルカードも知っている。だが同じく全10巻の真月譚月姫を読まないことからも察せられるように、当然だがヘルシングも読む気がない。
そもそもアルカードはアニメ版を気に入ってるので、彼からしたら漫画こそがアニメレイプ。そんなものを読みたくはない。
こちらも漫画は全10巻と買いやすく、それはアルカードも知っている。だが同じく全10巻の真月譚月姫を読まないことからも察せられるように、当然だがヘルシングも読む気がない。
そもそもアルカードはアニメ版を気に入ってるので、彼からしたら漫画こそがアニメレイプ。そんなものを読みたくはない。
誰がなんと言おうと、アルカードという男はアニメ版ヘルシングやDies iraeを愛している。
ゆえにそれらを黒歴史する原作ファンをアルカードは唾棄すべき人間と考え、自分が本当にアーカードのように強い吸血鬼になれた日には『教育』してやりたいと思っていた。
ゆえにそれらを黒歴史する原作ファンをアルカードは唾棄すべき人間と考え、自分が本当にアーカードのように強い吸血鬼になれた日には『教育』してやりたいと思っていた。
アルカードは彼らを盲目的な原作信者、原作厨だと見下しているが――彼自身も盲目的にアニメ版を愛し、黒歴史という声を気にするあまり過激派になっているのだから皮肉なものである。
だがアルカードは先程、人間に負けてしまった。それも自分を『エアプ』などと罵る愚劣な輩に、だ。
エアプという言葉はこれまで何度も受けてきた。エアプアーカードと聞けば、彼を思い浮かべる人間も多い――1種の名物みたいなものだ。
原作ファンから酷い言葉で罵倒されたことだって何度もある。それでも彼は折れず、ロールプレイを続けてきた。
エアプという言葉はこれまで何度も受けてきた。エアプアーカードと聞けば、彼を思い浮かべる人間も多い――1種の名物みたいなものだ。
原作ファンから酷い言葉で罵倒されたことだって何度もある。それでも彼は折れず、ロールプレイを続けてきた。
だが精神的に屈服していないだけで、怒りはある。エアプなどと好き勝手言われているが、彼はアニメ版ならしっかり見たのだ。なんなら何度も見返した。
そんな熱狂的なファンに向かって『エアプ』呼ばわりするなど、アルカードからしたら失礼極まりない行為だ。
そんな熱狂的なファンに向かって『エアプ』呼ばわりするなど、アルカードからしたら失礼極まりない行為だ。
このアーカードのようなアバターだって何十万も払ってオーダーしたものだ。それほどまでに彼はアニメ版ヘルシングを愛している。
「それにしてもあの劣等め!どいつもこいつも原作、原作と言うが……そんなに原作が大事なのか!?」
『原作読んだのかしら………』
ティアラの言葉を思い返し、アルカードはブチギレる。
ああいうことを言ってくる輩は何人も居たが、その度に彼は苛立っている。そういう人が世の中に多いのも、彼がここまで過激派になってしまった大きな原因だ。
ああいうことを言ってくる輩は何人も居たが、その度に彼は苛立っている。そういう人が世の中に多いのも、彼がここまで過激派になってしまった大きな原因だ。
「そういう貴様らこそ、アニメを見たのか!?」
自分に向かって言いたい放題な奴らは、アニメ版もちゃんと見ているのか?原作だけ読んで上から目線で偉そうな態度をしているのではないか?
OVAは見た――と言ってくる者は多かったがアルカードからしたら「ちゃんとGONZO版も見ろ」という話だ。
原作ファン的には黒歴史と呼ばれているアニメを見るなんて拷問なのだから、アルカードの主張は理不尽なのだが――それならいちいちバカにするな、というのがアルカードの意見だ。
ゆえに彼と原作ファンは決して相容れない。
ゆえに彼と原作ファンは決して相容れない。
「あの人間共は必ず私が殺す!人間如きでは埋まらない格の差を見せ付けてやろうではないか!!」
アルカードはプライドを傷付けられたが、自身の敗北は決して認めない。
こうしてまだ生きているし、大した負傷もしていない。ゆえに自分は敗北していない、負けていないというのが彼の主張である。
こうしてまだ生きているし、大した負傷もしていない。ゆえに自分は敗北していない、負けていないというのが彼の主張である。
「この闘争――最後まで勝ち残るのは吸血鬼の始祖たるこの私だ!」
ズタズタにされたプライドを修復するかのように、己を鼓舞するかのようにアルカードは声高らかに宣言した。
吸血鬼の始祖は雑種如きに殺されない。人智を超えた存在だけが、アルカードを打倒することが出来る。
そういう意味ではティアラのことも『こちら側』だと思ったのだが、人間と聞いて落胆した。そしてあんな人間共にプライドを傷付けられたことにイラついた。
吸血鬼の始祖は雑種如きに殺されない。人智を超えた存在だけが、アルカードを打倒することが出来る。
そういう意味ではティアラのことも『こちら側』だと思ったのだが、人間と聞いて落胆した。そしてあんな人間共にプライドを傷付けられたことにイラついた。
「あらま!あんたさん、吸血鬼なのかしら?」
そんなアルカードの叫びを聞いて、彼に近付いてきたピエロが一人。
男が悪ふざけで出すような甲高い声で――まあ悪く言えば典型的なカマホモ声というやつだ。
男が悪ふざけで出すような甲高い声で――まあ悪く言えば典型的なカマホモ声というやつだ。
VRCには女声を練習しているユーザーも多数いるが、この声はそういう存在からも掛け離れている。不愉快極まりないものである。
だがアルカードはこの不快な声の主に顔を顰めたりはしない。
何故なら彼――いや、ピエロだから性別もわかりづらいが胸があるから彼女と言った方が正しいのだろうか。
ユーザーネーム『タケピィー』は『吸血鬼』
と呼んでくれたからだ。
エアプなどと言われた挙句、プライドを傷付けられた彼にとってこういう存在は心地好くすら思える。
何故なら彼――いや、ピエロだから性別もわかりづらいが胸があるから彼女と言った方が正しいのだろうか。
ユーザーネーム『タケピィー』は『吸血鬼』
と呼んでくれたからだ。
エアプなどと言われた挙句、プライドを傷付けられた彼にとってこういう存在は心地好くすら思える。
「いやあ、吸血鬼と聞いて気になったのよ。あたしは貧弱ゥ貧弱ゥな人間だから吸血鬼様に出会える機会なんてなくってね!」
「フフフ、そうか。私のことが気になるのか!」
「フフフ、そうか。私のことが気になるのか!」
「そりゃあもう!その姿、あのアーカードそっくりでめちゃくちゃカッコいいのもいいわね~!あたし好みの男よ♡」
「そうか、そうか。人間共は私の魅力もわからずエアプなどと抜かすが、貴様は違うのだな!」
「あらやだ。世の中にはそんな酷いことを言う奴もいるのね!あたしはアルカード様に一目惚れよ♡」
「そうか、そうか。人間共は私の魅力もわからずエアプなどと抜かすが、貴様は違うのだな!」
「あらやだ。世の中にはそんな酷いことを言う奴もいるのね!あたしはアルカード様に一目惚れよ♡」
好みの男、一目惚れ。
相手は初対面でカマホモ声の女?道化だが――これまで罵声ばかり浴びてきたアルカードにとって、ここまで褒められるのは素直に嬉しいことだった。
相手は初対面でカマホモ声の女?道化だが――これまで罵声ばかり浴びてきたアルカードにとって、ここまで褒められるのは素直に嬉しいことだった。
もっともタケピィー自身は本気で言ってるわけじゃなく、ただの処世術なのだがアルカードは気付いていない。
何故なら彼は、意外と純粋な面のある男だ。だから25歳にもなって恥ずかしげもなく全力でロールプレイを楽しめている。
何故なら彼は、意外と純粋な面のある男だ。だから25歳にもなって恥ずかしげもなく全力でロールプレイを楽しめている。
アルカードは吸血鬼の始祖。至高にして、頂点だ。
目の前の道化は明らかに弱者。だが他の奴らと違い、魅力を理解して一目惚れまでしてきた。そこまで言うのなら……一人くらい下僕が居ても、悪くはないだろう。
目の前の道化は明らかに弱者。だが他の奴らと違い、魅力を理解して一目惚れまでしてきた。そこまで言うのなら……一人くらい下僕が居ても、悪くはないだろう。
それにこれまでエアプだのにわかだの散々言ってきた奴らに見せ付けてやりたいのだ。わかるやつには、わかるのだと。
タケピィーが満面の笑みで布袋に手を突っ込むと、打ち上げ花火を取り出した。
真っ暗な夜空に綺麗な花火が打ち上げられる。
真っ暗な夜空に綺麗な花火が打ち上げられる。
「祝砲ですわ♡」
「フハハハ!気が利いてるな、流石は我が下僕だ!」
「あたしなんてアルカード様に比べたらただの雑魚よ。でも、そうね――こうやって場を盛り上げることだけなら得意かしら♡」
「それで良い。闘争は最強の私のみで事足りるのだからな!」
「さっすがアルカード様ですわ♡」
「フハハハ!気が利いてるな、流石は我が下僕だ!」
「あたしなんてアルカード様に比べたらただの雑魚よ。でも、そうね――こうやって場を盛り上げることだけなら得意かしら♡」
「それで良い。闘争は最強の私のみで事足りるのだからな!」
「さっすがアルカード様ですわ♡」
こうして吸血鬼の始祖(自称)と道化は手を組んだ。
全力でロールプレイを楽しんでいる者と、いじめられないために演じざるを得なくならなかった者。そのどちらもが悪気がないとはいえ、他人から疎まれたり嫌われている。
二人の出会いは、このデスゲームでどんな影響を齎すのだろうか――。
全力でロールプレイを楽しんでいる者と、いじめられないために演じざるを得なくならなかった者。そのどちらもが悪気がないとはいえ、他人から疎まれたり嫌われている。
二人の出会いは、このデスゲームでどんな影響を齎すのだろうか――。
【C-7/一日目/黎明】
【アルカード】
[状態]:健康
[装備]:制御術式開放@スキル 杭
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]基本方針:人間共に吸血鬼の始祖の力を教育する
1:あの女達(吸血姫ティアラ&クドラク)をブチ殺す
2:タケピィーは下僕にしてやろうではないか
【アルカード】
[状態]:健康
[装備]:制御術式開放@スキル 杭
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]基本方針:人間共に吸血鬼の始祖の力を教育する
1:あの女達(吸血姫ティアラ&クドラク)をブチ殺す
2:タケピィーは下僕にしてやろうではないか
【タケピィー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:死にたくないし、いつも通り道化を演じる
1:アルカードに守ってもらう。そのために持ち上げとく
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:死にたくないし、いつも通り道化を演じる
1:アルカードに守ってもらう。そのために持ち上げとく
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真面目な奴ほどfeel so bad | アルカード | そして、夏樹尊は本物を求める。 |
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