「なんだよ……これ……」
やや釣り目がちの青年、山折圭介の視線の先には綺麗な人型に破壊されたコンクリート壁。その先にも同じく人型に破壊された家壁。
それが連続して続き、トンネルのような道を作り出している。
恐らくこれを作り出した存在は自分と同じ正常感染者。それも壁を破壊できるほどの力を持った強力な。
であるならば、答えは一つ。光を取り戻すためにも早々に始末しなければならない。
得物は腰に差した木刀。そして特殊部隊員、広川成太との戦闘の最中に手にしたグレネードランチャー『ダネルMGL』。
そのグリップを握り締める。そして傍らにいる恋人、日野光の手を握り、優しく語りかける。
「大丈夫だ、光。お前を絶対に助けるからな……」
恋人の返答はない。彼女はVHにてウイルスに適合できず、ゾンビ化してしまった被害者であったため、それは当然のことである。
圭介は無意識のうちに異能を使用した。使用してしまった。すると、光は圭介を肯定するように、こくんと頷いた。
異能の使用に気づき、圭介は虚無感を感じる。しばしの沈黙の後、光の手を取り、駈け出した。
命乞いをする相手を無慈悲に殺害した凶行から逃れるように。そして、これからも罪を重ね続ける黒い決意を抱いて。
【B-3/気喪杉邸前/一日目・黎明】
【
山折 圭介】
[状態]:健康
[道具]:木刀、懐中電灯、ダネルMGL(5/6)+予備弾6発、サバイバルナイフ
[方針]
基本.VHを解決して光を取り戻す
1.女王を探す(方法は分からない)
2.正気を保った人間を殺す
3.穴の先にいると思われる正常感染者を殺す。
※異能によって操った光ゾンビを引き連れています
◆
「ギィ……あが……げァ……ガハッ……!」
敷布団の上で黒髪の青年、八柳哉太は身体から人体から発してはならない音のはーもにーを奏でながら悶え苦しんでいた。
時折口から吐き出される赤黒い血反吐には肉片が混ざり、シーツの上に悍ましい水たまりを作り出す。
その様子をすぐ傍で座り込んで見つめる金髪の美しい少女、天宝寺アニカ。
腫れあがった右頬には消毒液を浸み込ませたガーゼで処置が施してあり、頭部の怪我の処置も鼻血も止血されている。
表面上の傷の処置は済んでいても、刻み込まれた心の傷はどうしようもない。
「カナタ……ごめんなさい……」
彼の異能である『肉体再生』。命だけは助けてくれるものの、その苦痛は肩代わりなどしてくれない。
故に、アニカは下手に手を出すことはできず、パートナーと呼んでくれた青年が苦しむ様子を見ていることしかできない。
頬にはいくつもの涙の跡ができてあり、現在進行形で増えつつある。
憔悴し、呆然とするアニカを見て、悲しそうに顔を歪める巫女服の美女、犬山はすみ。その傍らにはこの家の救急箱が置いてある。
「あの、はすみさん。大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ~恵子ちゃん。アニカちゃんのことが気になって~……。手当、遅くなってごめんなさいね……」
「……いえ、大丈夫です。こんなことは慣れてますので」
そう言ってはすみに痛々しい笑顔を見せる小柄な黒髪の少女、字蔵恵子。自身が務める役場の同僚、字蔵誠司の実娘。
男尊女卑の旧世代の男。彼が実の娘にしでかしていたことが想像できてしまう。『慣れている』とはそういうことだろう。
大人である自分ができることがあったんじゃないか。そう思うとやるせない気持ちになってくる。
今もそうだ。治療と言いながらもできることは彼女の折れた右腕に救急箱から取り出した包帯を巻いて固定することだけ。
苦しんでいる友人の弟分である哉太に何もしてあげられず、彼と深い仲と思われるアニカの心を癒すこともできない。
むしろ怪我人である恵子に『私よりも先に天宝寺さんの治療をお願いします』と気遣いをされている始末だ。
はすみ達のいる場所は高級住宅街の端の方にある一軒家の二階。
一階には夫婦と思われる中年の男女のゾンビ二体が闊歩していた。
それらへの対処法を持たない彼女らは重症である哉太を二階の寝室へ運び、布団を敷いてそこに寝かせた。
救急箱は一階に一人降りたアニカが自身の能力であるテレキネシスを使い、持ってきてくれたものだ。
包帯を巻いている途中、恵子が口を開く。
「……はすみさん。ひなたさん達が戦ってくれている人間?っぽい太った男の人って、誰なんですか?」
「……あの人は気喪杉禿夫。この村で一番の危険人物。高級住宅街に来たのは、彼に対してクレームが入ったと注意するためなんです。
総務課長や振課課長からは明日でいいって言われたけれど私自身、彼に我慢できなかったから今日済ませる予定で来ました。
でも……まさか小さい子にまで手を上げる人物だったなんて……」
ちらりとアニカに視線を向ける。妹と一緒に見る動物と触れ合うテレビ番組でしか見たことのない少女。
可愛らしく無邪気に笑う彼女しか知らないはすみにとって、痛々しく泣いている姿は見ていて辛いものがある。
「はい、巻き終わったわよ、恵子ちゃん。……こんなことしかできなくてごめんね……」
「ありがとうございます。……謝らないでください、はすみさん。私は大丈夫ですから……」
そう言って再び痛々しい笑顔を向ける恵子。こんないい子に辛い思いをさせている自分が情けなく感じる。
せめて、この子の腕だけでも治療できないか。自分にもそんな異能があるんじゃないか。
そう思い、恵子の腕に巻いたばかりの包帯に優しく触れて、目を瞑る。
すると、自分の中の奥深くに何が、暖かいものがある感じがした。
『それ』はまるで自分に第三の腕が生えたようなもののように感じる。
はすみは自分の中に眠る『それ』を掬い上げ、掌まで押し上げる。
すると、掌に淡い光が灯る。その光を包帯へと移動し、浸透させる。
「はすみさん……これって……」
「……多分、私の異能だと、思う。もうちょっと使ってみるからじっとしていて」
言いながらも、異能の使用を続ける。自分の中から何かが吸い取られるように感じるが、無視する。
しばらくして掌の淡い光が消える。どうやら異能の行使が終わったらしい。
「……終わったわよ、恵子ちゃん。調子はどうかしら?」
「……なんだかじんわりとポカポカしてきて癒される感じがして、右腕だけじゃなく、足の痛みも少しずつ楽になった気が……」
言葉を途中で区切り、驚いた表情でズボンをふくらはぎまで捲る。すると、煙草で根性焼きされた跡がうっすらと消えかかっていた。
「はすみさん、これって」
「もしかすると、私の異能は掌で触れたものに何か、特別な力を与えるものなのかも……うッ……」
「はすみさん!」
唐突に眩暈がし、床に手が付く。身体を左腕で支えようとする恵子に大丈夫だと答える。
「……大丈夫じゃないと思います。きっとそれははすみさんの力の代償じゃ……」
「本当に大丈夫よ~恵子ちゃん。先週茶子と飲みに行って二日酔いになった時もこんな感じだったから~」
「そ、それならいいんですが……」
例えを出すと納得してくれた。自分を見る恵子の目が残念なものを見る目に変わったのは気になるが。
「……ひなたさん達、大丈夫でしょうか」
「……きっと大丈夫よ~。勝子さんも、ひなたさんもガッツがあるから、負けませんよ~」
二人の視線は―――気喪杉禿夫(デストロイヤー・フリークス)の戦場。
◆
はすみ達の滞在する二階建ての一軒家から大分離れた高級住宅街。
電柱が折れ、半ば千切れかかった電線が地面へ垂れ下がる。アスファルトには亀裂が入り、何かによって潰された軽自動車が燃え盛る。
異様な光景をバックに本当に人かと疑いたくなるような醜悪な風貌の男、気喪杉禿夫は下心丸出しの下劣な笑みを浮かべる。
相対するは金髪の茶色い学生服を纏ったお嬢様、金田一勝子と夏登山用の服の長身ポニーテールの少女、烏宿ひなた。
「んっふっふ~、モノホンの爆乳お嬢様にぃ~ちょっと百合が入ってそうな恵体のポニーテールJK♡二人のさくらんぼで俺のハイパー兵器を挟んで欲しいんだな♡」
全身を舐めまわすようなオーク擬きの視線に二人の少女は揃って激しい嫌悪感を示す。
汚物。ハーレムなどと宣い、女性をトロフィーとしか見ていないような最底辺の男にくれてやるものなどない。
勝子自身もその美貌故に多くの男性からそう言った視線をぶつけられたことも多々あるが、ここまでの嫌悪感を抱いたことはない。
「そんなの……お〇ックですわ!!この……ド変態マザーお〇ック野郎!!」
その言葉と共に小石を気喪杉の頭上へと投げ、異能を発動させる。すると小石が街路樹へと変貌し、怪物を押しつぶさんとする。
怪物は豚のような雄叫びと共に掲げた金属バットを振り下ろし、樹木へと叩きつける。
ミシミシ、バキリと樹木は怪物の膂力によって小枝のように叩き折られる。
怪物に接近戦を許せば即敗北。勝子もひなたもそれを理解してるため、攻撃手段が限られる。
「おいたをする小鳥ちゃんには~分からせが必要なんだな♡」
勝子をターゲットに定めた気喪杉は背中に汚らしい短パンの隙間に金属バットを差し込むと、抱擁するかのように両手を広げて悪臭を放つ体で迫ってくる。
凄まじい速度だが、軌道がまるわかりなため、回避するのは容易い。
怪物の脇をすり抜けるように走る。抱擁を求めた気喪杉の両腕は空を切る。
それと同時に足元に落ちていた千切れかかった電柱のワイヤーを手に取り、気喪杉の腹肉の間に挟む。
「ぶひッ」
「……ひなたさんッ!!」
「はいッ!」
それと同時に異能を使用し、勝子はひなたと自身の位置を入れ替える。
ワイヤーを掴んだひなたは気喪杉が反応する前に異能を発動させる。
電線を伝い、自身の最大出力――およそ3000Wの電流が気喪杉の身体へと流れる。
駄目押しとばかりに勝子は再び小石を怪物の頭上に投げ、異能を発動。頭上には気喪杉の着地によって破壊され、炎々と燃え盛る軽自動車が落下する。
必殺の布陣。勝子とひなたの考えうる限りの最善手。並の人間であるならば、生き残れるはずもなし。
しかし、相手は異能により爆発的に強化された怪人。
「ブモオオオオオオオオオ!!!」
怪物は牛とも豚とも言えぬ雄叫びを上げて電線を掴んで引き千切り、頭上の車へは脂肪で分厚くなった両手でフロント部分を支えて持ち上げ、そのまま勝子の背後にある民家へと投げつける
激突した車は爆発し、勝子の金髪を風で揺らす。
「ビリビリさせると女の子のお×××は濡れ濡れになるんだな♡君より小さい子で試したことがあるから分かるんだな♡」
「お〇ック……!」
ひなたの最大出力の電撃も気喪杉には効果が薄い。長い間培った怪物の脂肪の鎧を貫くには些か火力が足りず、皮膚をほんの少し焦げさせるだけになった。
自身の物体転送による押しつぶしも怪物の膂力の前には残骸という結果に終わる。
決定打がなく、攻め手にかける。その上時間が経つほど転送する物体もなくなり、臨時バディとなったひなたの体力も減っていく。
短期決戦も長期戦も不可。今のところ、防戦はできているがそれもいつまでもつのか。既に八方塞がりの状況だった。
次の手を打とうと、マーキングした小石を取り出そうとポケットに手を入れた瞬間―――
「勝子さん!」
「――――え?」
ほんの僅かな時間、気喪杉から注意を逸らしてしまう。ひなたの声で怪物への警戒した時にはもう遅い。
勝子の眼前には悪臭をまき散らし、脂ぎった笑顔で手を振るう怪物の姿。
「ファミリー♡分からせビ~ンタ♡」
「―――くっ……!」
目を瞑り、無駄だと知りつつも腕で張り手の衝撃を防ごうとする、
しかし、気喪杉のビンタが勝子を張り飛ばすことはなかった。
無人で走る原付―――スーパーカブ90CCが最大速度で気喪杉の身体に激突してビンタの軌道をずらす。
「ブモぉッ……この、クソボケがあああああああ!!!」
顔から湯気を出し、原付のハンドル部分を両手で握り、はるか遠方へと投げ飛ばす。
そして怒りの表情のまま、スーパーカブが走ってきた方向を向く。
「誰がやりやが……おお♡君は……♡」
気喪杉から怒りの表情が消え、代わりに勝子達に向けた以上の下品で邪悪な笑顔を浮かべる。
勝子達も突然の乱入者に驚き、その方向を向く。
「君は……!」「貴女は……」
異能による物体操作で原付のエンジンを動かし、気喪杉へとぶつけた正常感染者。
月明かりに照らされた長いストレートの金髪。探偵のような服装に西洋人形のように愛らしい顔。
腫れた右頬をガーゼで処置されてもその美しさに変わりはない。
怒りに満ちた表情で気喪杉へと敵意を露わにする少女の名前は美少女探偵――――
「アニカママぁ~~~~~♡♡♡♡」
――――天宝寺アニカ。
◆
窓から顔を出す月をバックに恵子はテレビでしか見たことがないアイドル的存在――天宝寺アニカの隣に並んで座る。
寝室にははすみと未だ恐怖を感じている男性、八柳哉太がいる。
彼の身体からの発されていた異音が既に小さくなり、現在は新たに敷き直した布団の上で安らかな寝息を立てている。
今は容態を見るため、はすみが哉太の傍らにいる。
はすみはアニカに「哉太くんはもう大丈夫だから、少し夜風にあたって見たら?」と気遣い、アニカもそれに応え、寝室の外へと出た。
そして、恵子にも優しげな声で「恵子ちゃん、アニカちゃんのこと、見ててくれる?」と頼み、恵子もそれに応えた。
「……天宝寺さん…あの、大丈夫ですか……?」
「……Yes。ありがとう、ケイコ……」
掃き出し窓から流れる夜風が、二人の身体を優しく撫でる。
アニカの言葉には張りがない。恵子自身もひなたに慰められていたばかりであったため、自分よりも小さい子を慰めるためにはどんな言葉をかければいいのか分からない。
「ケイコ……Elementary schoolでは、どんな風に過ごしているの?」
「え……あの、えれめんたりースクールって、一体……?」
「……Sorry。小学校のことよ……。友達のこととか、好きな給食のこととか、休み時間に何をしているかとか聞きたいの……」
「あの、私は……不登校ですけれど…高校生……です。べ…別に呼び捨てが嫌なわけじゃなくて……ええと……。
む、むしろケイコっていう呼び方の方か天宝寺さんと友達になれたって感じがしてそっちで読んでもらった方が……!」
「……I'm Sorry、ケイコ……」
言葉と共に再び膝の中に顔をうずめるアニカ。
ひなたに救われるまで対等なコミュニケーションなど数えるほどしかなかった恵子にとって、はすみやひなたのように子供を慰めることは困難だった。
再び静寂が場を支配する。
「……あのね、ケイコ。私の話、聞いてくれる?」
「……はい」
そうしてぽつぽつとアニカは自分のことを語りだす。
初めて哉太と出会ったのは約半年前。木刀による殺人事件の容疑者として接したことが始まりだった。
そこで自分が最も疑われた彼の無罪を証明したこと。もう二度と会わないものだと思っていたが、二ヶ月前の事件で彼と再会した。
とある孤島での出来事。脳科学の研究を行っている科学研究機関とスポンサーとなった企業のショッピングモールの複合施設。
そこで犯人の分からない大規模なテロ事件が発生し、哉太とアニカは成り行きでコンビを組み、一週間共に過ごし、事件を解決させたこと。
その時知った互いのパーソナリティやある程度の人間関係。人死にが出ていたのに不謹慎な話だが、楽しかったこと。
天宝寺さんは八柳さんのことを大切に思っている。
それはまるで自分がひなたに抱いている感情と似ていると感じ、得体のしれない人物だと思っていたアニカに対してシンパシーを恵子は感じていた。
アニカの話が終わり、再び沈黙が続く。
自分も何か話すべきか迷っていると、再びアニカの口が開く。
「ケイコ……少しトイレに行きたいから、先にBedroomに戻ってMs.ハスミとカナタの様子、みていてもらえる?」
「……はい。天宝寺さん、あまり気を落とさないで……」
「Thanks……」
アニカの言葉の後、恵子は寝室へと足を運ぶ。
引き戸を開けると、疲れた様子の犬山はすみと恵子が未だ恐れ、近づけないでいる男という存在――眠る八柳哉太。
「恵子ちゃん、おかえり。アニカちゃんは?」
「天宝寺さんはトイレに行くから先に戻ってって言って……」
「そっか……。ん?待って、確かトイレは一階にしかなかった記憶が……」
「―――え?」
はすみの言葉に頭が一瞬、真っ白になる。下にはまだ二体のゾンビがいるはずだ。
脳裏に浮かぶのは最悪の光景。自分より幼い女の子が抵抗できず、肉を貪られるビジョン。
「―――すみません、私、天宝寺さんの様子見てきます!」
制止しようとするはすみの声を聴かず、寝室から飛び出す。
階段の一歩手前。降りる前にふとベランダを見やり、恵子の足が止まる。
掃き出し戸の開いたベランダ。その手すりに固結びされたロープが見えた。まさか―――。
「天宝寺さん!」
ベランダへと飛び出すと同時にロープが解け、落下する。
急いで下を見下ろすと、庭先にはロープをショルダーバッグにしまい、駈け出すアニカ。
恵子が声をかけたところで止められる訳もない。美少女探偵は怪物が暴れまわる戦場へと駈け出していた。
◆
「アニカママ~♡♡ようやくあの腐れイケメンを捨てて俺のママになってくれるんだな~♡♡」
気持ち悪い猫撫で声で自分の三分の一も生きていない少女への身勝手な恋慕を振りかざすオーク擬き。
肉を揺らす汚らしい歩き方で近づき、ねっとりとした声色でアニカに囁く。
「お・に・い・ちゃ・んって呼んで欲しいんだな♡」
性欲丸出しの気喪杉に対するアニカの返答はこれだ。
「身体洗ってから出直してきなさい!Disgusting man!!!出直しても絶っっっ対に呼んでやらないけどね!!!」
「な……な……な……!!」
数時間前に最推しになった少女からの罵倒。その言葉に大人の対応をできる程、子供部屋おじさんの精神は育っていない。
「こ……このメスガキーーーーーーー!!!」
耳と鼻、口から蒸気を吹き出すモンスターチャイルド。あまりにも大人げなさすぎる姿へのアニカの目線は冷ややかだ。
飛びかかろうと両手を広げ、飛びかかるもアニカは横に身体ごと飛び込んで回避。
愛とオシオキの抱擁を回避された気喪杉は血走った目でアニカの方へと向き直るも、目の前には異能によって宙へ浮く催涙スプレー。
気喪杉が反応する前にスプレーが発射される。両手で目を覆い、悶え苦しむ。
「ぶいいいいいいい!!いだい……いだいんだなあ!」
「そっちのええと……金髪の人と背の高い人!!」
「金田一勝子ですわ!」「烏宿ひなただよ!」
「私は天宝寺アニカ!Ms.ショウコとMs.ヒナタ!お願い!!」
こんな小さい女の子が頑張ろうとしているのだ。ここで踏ん張れなくては年上としての面子が保てない。
勝子とひなたは気喪杉が悶えている隙に次の攻撃の準備をする。
「……おや?これは……?」
物体のマーキングをしている最中に、勝子の足元にはあるものが転がっている。
気喪杉への有効打にはなりえるものではなさそうだが、この物体の名前を勝子は知っていた。
「あれ?」
遠方―――恵子達の避難先で雷鳴が聞こえる。これは確か、恵子の異能によるものだと記憶してる。
不安が胸を過るが、すぐに気持ちを切り替え、怪物への対策を練り始める。
◆
アニカが視界から消え、どれくらいの時間が経ったであろう。
行動しようにも、長い間父親によって植え付けられていた諦観がそれを許さない。
ふと、背後からみしみしと床を踏みしめる音が聞こえる。はすみではない。気配からそれを察する。
足音が止まる。冷汗が流れ、恵子の矮躯が固まる。
恐る恐る振り返るとそこにはひなたの頭半分ほど高い巨躯があった。
「―――アニカは、行っちまったのか?」
はすみの高い声ではない。恵子が恐れる存在―――男の声。
「ヒィ……!!」
「お、おい!大丈夫か!?」
怯える自分を気遣う男。天宝寺さんの大切な人、八柳哉太。
傷つけてはいけないと理性では分かっていても恐怖に支配された本能が許してくれない。
「あ……ぁ……」
「ちょっと、はすみさん、来てください!この子なんか……!」
「いやぁあああああああああ!!!」
やっちゃいけないと分かっていても本能で脅威を退けるべく、異能が勝手に発動する。
哉太はそれを察すると、バックステップでベランダから距離を取る。
雷鳴が轟き、空間を揺らす。その様子に何かできる訳もなく、哉太は呆然と眺める他なかった。。
「哉太くん、ちょっとどいて!」
「は……はい……!」
声と共に蹲る恵子の背中を優しくさする女性の手。何か背後で二人が話しているようだが内容が分からない。
背中をさすられ続け、恵子はようやく落ち着きを取り戻す。
きょろきょろと辺り見渡す。そこにはゴム手袋を嵌めたはすみと気まずそうにベランダから出て背を向ける哉太。
「恵子ちゃん。何があったのか、話してもらえる?」
こちらを心配するはすみの優しい声。その声に安堵と罪悪感が募り、恵子の双眸から大粒の涙が溢れだす。
そしてぽつぽつと先程あった出来事を言葉を詰まらせながら話し出す。
「……そう。そんなことがあったのね……」
「………………」
話し終えた恵子を責める訳でもなく、悲し気な表情で背中をさすりながらはすみは答えた。
哉太は恵子を気遣ってか、背中を向けたまま無言を貫いていた。
数秒の沈黙の後、はすみは手すりを掴んでふらつきながらも立ち上がる。
「は、はすみさん?どうしたんですか?」
「心配しないで、恵子ちゃん。ちょっとあの子を、アニカちゃんを助けに行くだけだから……」
「で……でも、そんな様子じゃ……」
「大丈夫よ~。すぐ行って戻ってくるだけだから~」
力なく自分に微笑みかけるはすみにかける言葉が見つからない。身体を使って押しとどめようにも、指先一本動かない。
ベランダから出て、階段を降りようとするはすみは背後を、恵子へ向き直る。
「それじゃあ行ってきま」
「―――はすみさん、俺が行きます」
はすみの言葉を遮る青年、八柳哉太の声。
怯えて竦み出す恵子の傍をすり抜け、ベランダの手すりに足をかけ、登る。。
「か……哉太くん!?身体、大丈夫なの?」
「……正直立っているのもきついっす。歩くたびに激痛が走るし、呼吸するたびに口の中には血の味がします」
「だったら――」
「でも、この中であの豚野郎の相手ができるのは俺だけっすよ。
それに、奴が殺そうとしているのは俺で、他は言っちゃ悪いが戦利品。俺に執着している間に逃げれば何とかなると思います。
それから、字蔵さん……だったか?」
「は……はい……!」
不意に名前を呼ばれ、恵子の身体が硬直する。
哉太が安全な存在だとだと分かっていても、男という存在だけで心が明確な拒否反応を起こす。
その様子を背中で感じながらも、哉太は精一杯の優しい声で恵子に語り掛ける。
「俺は奴との戦いで多分、死ぬと思う。そうなると心残りはあのバカ――アニカだ。
そうなったら押し付けるようで悪いが、アンタがその、あいつのことを助けてやってくれ。
はすみさんからアンタは人に寄り添える優しい人だって聞いた。だから、あいつの友達になれると思う」
「…………ッ!!」
寂しそうな優しい男の声。天宝寺さんが大切に思っている男は勝手に死にに行こうとしているのだ。
恵子は男という存在に対して恐れだけではなく、明確な怒りを持った。
それを口に出そうとしても、癒えぬ傷跡が言語化を許さない。
「じゃあな、字蔵さん。はすみさんとあいつを頼ん」
「待ちなさい、哉太くん」
ベランダから飛び降りようとする哉太の腕を白く華奢だが、力強い手――はすみの手が掴んだ。
そのまま静かな怒りを湛えた目線で、彼にベランダから降りるよう促す。
「哉太くん、君がいなくなった時のこと考えてる?」
語気こそ穏やかだが、大人として子供を叱る厳しい口調。
その言葉にまだ高校三年生の子供である哉太は何も反論できず、視線を逸らすことしかできなかった。
「私だけじゃない。藤次郎さんも、アニカちゃんも、恵子ちゃんも、二度と立ち直れないほどの深い傷を負うと思うの。
まだ君は圭介君との仲直りもしていない。それに―――また茶子を泣かせるつもりなの?」
「…………でも、方法はこれしかないじゃないっすか……!」
はすみに言い負かされ、弱々しい反論しかできない哉太の様子に恵子に衝撃を与えた。
男が女に暴力ではない方法で敗北する。ドラマや映画などのフィクションでしか見たことがない光景が目の前に広がっていた。
恵子の様子に気づくことなく、はすみは俯く哉太に優しく語り掛ける。
「哉太くん。鞘から大きい刀と小さい刀、抜いてくれる?」
「……はい。はすみさん、一体何をするつもりなんすか……?」
抜き身になった脇差と打刀をはすみに渡す。はすみは二振りの刀の反りを左右の手でそれぞれ掴む。
はすみの両手に淡い光が灯り、刀へと行き渡る。恵子と哉太は同時に理解する。これは彼女の異能だと。
「……ッ……ぅ……」
「はすみさん、大丈夫ですか!?」
「……ぅ……まだ……大丈……夫……!」
苦しそうな顔をしながらも恵子に気丈に笑いかけ、異能の行使を続ける。
その様子に耐え切れず、哉太は彼女から刀を取り上げようとするが、その背中の気迫に押され、見守ることしかできない。
「哉……太くん……。絶対に死んじゃ駄目よ……。必ず、みんなで帰ってきて……!」
「―――――ッ!」
その数秒後、はすみの手から二振りの刀が離れ。彼女の身体は仰向けに出す。
意識を失う寸前、はすみと哉太の視線が合う。はすみは優しく微笑んでいた。
困惑の表情を浮かべる哉太に、はすみの口が動く。
「がんばれ、男の子」
◆
奇抜な髪色の小さなメスが飛び出してさほど時間が経たないうちに、手負いだった筈の背の高いオスが家屋の二階から飛び降りて駈け出した。
今、家屋にいるのは猟師ではない力を持たぬメス二匹。うち一匹は狙いを定めていた小さなメス――ケイコチャン。
これはストックを補充する好機だ。
人の知恵を異能という形で身に着けた恐るべき害獣――
独眼熊は獲物を狩るべく、ヒトの塒へと歩み出す。
◆
哉太の寝ていた布団に恵子は意識を失ったはすみを寝かせた。
やつれ、眠る彼女にできることなど自分にはない。
他の人の優しさに甘えて寄生し、自分では何も行動せずに与えられるのをただ待つプレデター・プリンセス。。
アニカや哉太のように恐ろしい目に合いながらも戦場に向かう勇気も、はすみのように男に立ち向かえる強さも自分にはない。
ぽつぽつと手の甲に雫が滴り落ちる。
そして、安らかに眠るはすみに。戦場に向かっていったアニカ達に。今なお怪物に立ち向かっているひなた達に。
「役立たずで……ごめんなさい……」
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
玄関からチャイムが何度も鳴る。
意識外の出来事に文字通り飛び上がった。
もしかして、ひなたさん達が帰ってきたのかも。
自己嫌悪によって冷静さを失っていた恵子はそう判断し、寝室を飛び出した。
急いで下の階へ降り、玄関の鍵を開ける。
「おかえりなさい!ひなたさ―――――」
「ダダイマ、ケイコチャン」
◆
先程とは比べ物にならない大きさの雷鳴がひなたの鼓膜を揺らす。
気喪杉から意識が逸れ、音のした―――恵子達が治療を受けていた一軒家の方向へと顔が向く。
「ひなたさん!」
「え……うわっ……!」
「ロリ♡JK♡お嬢様♡俺♡の分からせ4Pなんだな♡」
勝子の声で集中力を取り戻す。
その刹那、上空から自分の数メートル先に偏った保健体育の知識を披露する子供おじさんが降ってきた。
「マンマ♡」といい年をした中年のおっさんが女子高生に母性とハグを求め、両手を広げて突進を仕掛ける
突然の出来事に回避行動が取れず、身を固めると十数メートル先まで転送される。
気喪杉が抱きしめたのは自分ではなく街路樹。それも数秒も経たないうちにバキバキとへし折られる。
そのすぐ後ろでアニカが異能を使用し、家に置かれていたバイクのエンジンを動かして突撃させる。
だがそれも気喪杉が十メートル近く跳躍することで難なく回避される。
アニカの参戦により二人だけだった時よりは幾分か戦いは楽になったものの、戦況は変わらず。
自分達の疲労は溜まるばかりで、気喪杉へは有効なダメージをほとんど与えられていない。
「ぼーッとしているとあの変態にお〇ックされますわよ!」
「ご……ごめん、勝子さん」
フォローしてくれた勝子に謝罪し、戦闘へと意識を向けようとする。
「ひなたさん、受け取りなさい!」
「え……?」
勝子から小石を投げられ、ひなたはそれをキャッチする。
すると勝子の能力によって小石は別の物体に変貌する。それは―――。
「なんでここにライフル銃が……?」
せんせーやししょーが自分によく見せてくれていた銃が手元に現れた。
純粋な疑問を問う前に、ひなたの耳に勝子の声が届いた。
「―――行きなさい、ひなたさん」
「でも……それじゃ、勝子さんとアニカちゃんの負担が……!」
「たった今、私はあのお〇ッククソデブ野郎をお〇ックする策を思いつきましたの。
冷たい言い方ですけれど、その作戦にはあなたの存在が寧ろ邪魔になりますわ。
だから私達の役に立ちたいのであれば、はすみさんにあの小さな女の子、怪我人を頼みましたわよ」
ちらりとアニカの方を見る。気喪杉の次のターゲットはあの子のようだ。
そして、勝子の方を見る。彼女の指揮のおかげで戦線が成り立っていた。だから、自分にできることは彼女達を信じることだけ。
戦場を放棄することに申し訳ない気持ちを感じながらも、ひなたは背を向ける。
「勝子さん、ありがとう!信じているからね!!」
銃を背負い、その言葉と同時に駈け出す。
勝子の目に映るのは徐々に小さくなっていく戦友の背中。
「……ま、そんな策がポンポンと思いついたら苦労などしませんけどね」
苦笑し、ポケットに手を入れる。
たくさん補充していたマーキングしていた小石はすでに片手に収まるほど少なくなっていた。
それでも諦める訳にはいかない。せめて、今現在も怪物に執拗に狙われ続けている小さなレディーだけでも逃がさなければ。
決意を胸に秘め、勝子は小石を取り出した。
◆
走るたびに全身に激痛が走る。呼吸するたびに内臓が悲鳴を上げる。
治りかけている傷が開き、その度に異能によって無理やり回復される。己の耳に全身から発せられる異音が響く。
立ち止まりたい。休みたいと全身が訴える。
それでも地獄へ向け、走り続けるしかない。
『がんばれ、男の子』
俺は託された。皆の命を。心を。
勝手に自分の事情に首を突っ込んで勝手に自分を絶望の底から救い出したバカのことを。
音のする方へと走り続けると、銃を背負った長身の少女の姿が見えた。
少女も自分も立ち止まることなく駆け抜ける。そしてすれ違う。
一瞬だけ目が合った。
互いに名も知らぬ人間同士。だがその目だけで伝わることがあった。
"任せろ/任せて"
◆
ぐちゃり、ぐちゃりと片目を失った巨大熊は人間の肉と内臓を貪る。
今の壁際に追い込まれた少女、字蔵恵子は熊の補色を身体を縮こませ、震えて見ていた。
怪物が貪るのは、ゾンビとなっていた中年夫婦の死体。
食事の傍らで恵子に視線を向けるたびで小さな悲鳴を漏らし、怯える姿は独眼熊の心を大いに愉しませてくれた。
知能が人間並みになった怪物は、時間が経つにつれ進化を遂げていた。
その進化の最中、開花したもの。それは獲物を嬲り、嘲るという原罪『悪意』
もっと愉しませてもらおう。
そう考えた羆は獲物からある部位をもぎ取り、恵子へと投げつける。
「……ヒィ……!!」
壁に張り付いて、ずり落ちた物体。それは喰らっているメスから捥ぎ取った片方の乳房だった。
それからは少女にとっての地獄、羆にとっての娯楽が始まる。
怪物が食事を中断する度に投げつけられる。
眼球、肋骨、男性器、肺腑、胃袋、脳、子宮。
恵子の周りにも簡易的に地獄が広がる。これがお前の末路だと言わんばかりに。
そしてしばらくして独眼の怪物の食事が終わる。
独眼熊は恵子に嗜虐的な笑顔を見せた後、立ち上がる。
自分の身長の倍はあると思われる巨躯が一歩一歩と近づく。
恵子の恐怖で彩られた顔は、次の食事前の最高の娯楽だった。
◆
「おおお俺から何で逃げるんだなああああ!!!」
顔から湯気を出し、父親ほどの年齢の性犯罪者が性欲の赴くままに襲い掛かってくる。
馬鹿の一つ覚えとばかりに突撃を繰り返す気喪杉の行動を読んで回避することは小学生でも容易い。
だが、それが幾度となく繰り返されると話は別だ。
運動神経がクラスで一番高くとも天宝寺アニカはただの小学生。
異能によって持ち上げられる物体もなくなりつつある。
催涙スプレーを使おうにも、バックから取り出した瞬間に気喪杉に接近を許してしまう。
最初に使ったのなら最後まで手に持っておくべきだったとアニカは後悔した。
サポートしてくれていた勝子の体力も限界に近い。
つい先程、マーキングされた最後の小石を使い切った彼女のできることは少ない。
現在のロリコン怪人のヘイトは自分にのみ向けられてる。
「アニカママのぉ!赤ちゃん部屋にぃ!ファミリービンタなんだなぁ!!」
眼前に迫るモンスターチャイルドの横凪ぎの張り手。
アニカはバックステップで回避しようとするが、もつれ思うように動かない。
遂に体力の限界が来てしまった。
迫る怪物の張り手。アニカのできることは衝撃に備え、身を縮めることだけだった。
しかし衝撃は全く別の方向から来て、アニカは地面へとうつ伏せに倒れこんだ。
急いで顔を動かす。そこには勝気な笑顔を浮かべる金髪の美女、金田一勝子。
次の瞬間、張り手が勝子の身体を吹き飛ばし、ブロック塀へと叩きつけられる。
「Ms.ショウコ!!」
叩きつけられたブロック塀からずり落ちる勝子の身体。
意識が落ちる寸前、勝子の唇が力なく動く。
「お〇ック」
ガクンと首が下を向き、勝子は気を失う。
その様子を見た気喪杉は落胆した顔をしながら十メートルほどの高さに跳躍し、意識を失った勝子の前に立つ。
性犯罪者はしゃがみ込ん贅肉が纏わりついた両手を突き出し、無防備の彼女の胸に置いた。
「―――――――!!」
そのまま醜悪に顔を歪めて何度も胸を揉みしだいた。
アニカ自身もこの手の輩に付きまとわれたことはあるし、そう言った犯罪についても何度も関わったことがある。
その中でもこの汚物は下位を首位独走するほど汚らしい。
自分の口では発したくない罵倒が心の中で何度もこの社会不適合者にぶつけられている。
ひとしきり楽しんだ後、気喪杉はアニカに向き直る。
「アニカママは心配しなくてもいいんだな。俺、手加減したから死んでいないんだな」
鼻の下を伸ばして君の悪い笑顔を向けた怪物は優しさを勘違いした言葉を悪臭のする猫撫で声で話しかける。
気喪杉は笑顔らしきものを向けたまま、脂肪を揺らしながら接近する。
185cmの怪物は145cmの探偵を見下ろす。
「アニカママが素直にならないからお嬢様も酷い目に合ったんだな。悪いのはアニカママなんだな」
その言葉の後、怪物はアニカの目線まで屈んで、右頬を向ける。
「俺は紳士だからほっぺにキッスで許してあげるんだな。分からせられたくなければ、いい子だから分かるよね?」
目を閉じ、お姫様の口づけを待つ。アニカの返答は既に決まっていた。
バッグから取り出したスタンガンを怪物の右頬に当てた。
「私のAnswerはこれよ!このDisgusting man!!」
「づ……ぁ……このメスガキがああああああ!!!」
怒号と共にアニカの腹部を優しく押す。
それだけで彼女の矮躯は数メートルほど吹き飛び、咳き込む。
アニカは気喪杉の顔を見る。
怒りのあまり感情がオーバーフローし、無表情になっていた。
気喪杉は短パンを力ずくで引き千切り、怒張を見せつける。
「メスガキが……分からせてやるんだな」
分からせ宣告に対して美少女探偵は敵意を持った瞳で吐き捨てる。
「Go to hell(地獄に落ちろ)」
◆
手の届く距離まで獲物に迫る独眼熊/気喪杉。
かたや怯えて涙を浮かべた瞳、かたや敵意と怒りに満ちた瞳。
獲物に向かって同時に、同じ言葉を言う
「イ・タ・ダ・キ・マ・ス」
◆
その瞬間、背後から銃声が響いて、独眼熊は手を止める。
手を伸ばした気喪杉の手は空を切る。
振り向いた片目の怪物の視界にはライフル銃を構えたもう一匹の獲物。
空を切った数メートル先にはアニカを抱きかかえ、こちらを睨むクソッタレのイケメン。
恵子/アニカは彼女/彼の名を呼ぶ。
「ひなたさん……!」「カナタ……!」
【C-4/高級住宅街・ある一軒家内/一日目・黎明】
【犬山はすみ】
[状態]:異能使用による衰弱(絶大)、気絶
[道具]:救急箱
[方針]
基本.うさぎを探したい。
1.勝子さんと行動を共にする。
2.勝子さん、ひなたさん、哉太くん、アニカちゃんは大丈夫でしょうか……?
3.生存者を探す。
4.ごめんね、勝子さん。
【字蔵恵子】
[状態]:ダメージ(中・回復中)、右腕骨折(回復中)、下半身の傷(回復中)、恐怖(特大)、精神的ショック(特大)、無力感
[道具]:夏の山歩きの服装、包帯(異能による最大強化)
[方針]
基本.生きて、幸せになる。。
1.ひなたさん……!
2.死にたくない。
※異能により最大強化された包帯によって、全身の傷が治りつつあります。
【烏宿ひなた】
[状態]:感電による全身の熱傷(軽度・全身・手当て済)、肩の咬み傷(手当て済)、気喪杉禿夫に対する怒り(大)、疲労(大)、決意
[道具]:夏の山歩きの服装、リュックサック(野外活動用の物資入り)、ライフル銃(4/5)
[方針]
基本.出来れば、女王感染者も殺さずに救う道を選びたい。異能者の身体を調べれば……。
1.恵子ちゃんを助ける。
2.まさか……羆……!?
3.勝子さん、ありがとう。
4.生きている人を探す。出来れば先生やししょーとも合流したい。
5.VHという状況にワクワクしている自覚があるが、表には出せない。
6.……お母さん、待っててね。
【独眼熊】
[状態]:健康、知能上昇中、ちょっと喋り方を覚えた、銃に対する驚愕、字蔵恵子に対する悪意(大)
[道具]:なし
[方針]
基本."山暮らしのメス"(
クマカイ)を殺す。猟師どもも殺す。
1.人間、とくに猟師たちに気取られぬよう、痕跡をなるべく残さずに動く。
2."ヒナタサン"は猟師だったのか。
3.ヒナタサン"を殺した後、"ケイコチャン"を嬲り喰らう。
【C-4/高級住宅街/一日目・黎明】
【
気喪杉 禿夫】
[状態]:興奮、天宝寺アニカへの怒りと欲情(大)、八柳哉太への憎悪(絶大)、右頬にダメージ(小)、全身にダメージ(極小)
[道具]:金属バット、懐中電灯付き鉢巻、天宝寺アニカのパンツ、日野光のブラジャー、日野珠のスパッツ、ブローニング・オート5(5/5)、予備弾多数、リュックサック
[方針]
基本.男ゾンビやキモ男を皆殺しにしてハーレムを作るんだな
1.ロリっ娘、巨乳JK、貧乳元気っ娘みたいにバランス良く属性を揃えたいんだな
2.目の前の巨乳JKとお嬢様を黙らせてハーレムにしてやるんだな
3.隠れた女の子たちも纏めてハーレムにするんだな。後、あのイケメンは殺す。
4.美少女JCJK姉妹(日野姉妹)を探して保護するんだな
5.ゾンビっ娘の×××はひんやりして気持ち良かったんだな
【金田一勝子】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(大)、気喪杉禿夫に対する怒り(大)、気絶
[道具]:スマートフォン
[方針]
基本.基本的に女王感染者については眉唾だと思っているため保留。他の脱出を望む。
1.犬山うさぎとの合流を目指す。
2.このクソムカつくお◯ックデブ野郎をお高い態度をへし折って差し上げますわ。
3.能力のこと、段々分かってきましたわ。
4.ロクでもねぇ村ですわ。
5.生きて帰ったら絶対この村ダムの底に沈めますわ。
【
天宝寺 アニカ】
[状態]:全身にダメージ(中)、顔面に大きい腫れ(処置済み)、頭部からの出血(処置済み) 、疲労(特大)、精神疲労(小)、気喪杉禿夫に対する生理的嫌悪感(絶大)
[道具]:催涙スプレー(半分消費)、ロープ、スタンガン、八柳哉太のスマートフォン、斜め掛けショルダーバッグ
[方針]
基本.このZombie panicを解決してみせるわ!
1.あのMonsterは絶対に許さない!!
2.Ms.チャコが地下研究施設について何かを知ってるかもしれないわね。
3.私のスマホどこ?
※異能の存在に気がつき、任意で発動できるようになりました。
※他の感染者も異能が目覚めたのではないかと考えています。
※虎尾茶子が地下研究施設について何らかの情報を持っているのではないかと推理しました
【
八柳 哉太】
[状態]:全身にダメージ(大・再生中)、臓器損傷(再生中)、全身の骨に罅(再生中)
[道具]:脇差(異能による強化・中)、打刀(異能による強化・中)
[方針]
基本.生存者を助けつつ、事態解決に動く
1.このバカ(アニカ)を守る。
2.全員で生きてはすみさんのところに戻る。
※自分の異能を知りました。
※脇差と打刀が異能により強化され、怪異及び異形に対する特効を持ちました。
最終更新:2023年01月20日 20:31