魔獣と怪人。それに抗う者達。彼らにより築かれた魔人戦線。
絶望は深淵の如く深く。希望は遥か彼方。黎明は何処へ。
されど時は無情にも進む。常夜など存在しない。
夜が明け―――――。
◆
「ヴッ……ヴッ……ヴッ……ヴッ……!」
未だ薄闇が支配する家屋の中。短い唸り声が反響する。
音の主は片目を潰された巨大な羆――仮想名称『
独眼熊』。
対峙するは銃を構えた登山服姿の女子高生――烏宿ひなた。
そして独眼熊の背後――居間の壁際に追い込まれた小柄な少女――字蔵恵子。
この三名が小さな空間にて新たな戦線を繰り広げる演者である。
銃を構えつつ水平に構えつつ、ひなたは独眼熊へとゆっくりと歩み寄る。
近づく度に羆は歯を向き、荒い呼吸音を上げて威嚇する。
嵐山岳、通称せんせー曰く、羆は小太鼓を叩くような音で威嚇するらしい。
即ち導き出される解は一つ。この魔獣は銃を知り、恐れている。
ひなたは猟師ではない。村唯一の女性猟師である漆川真莉愛に駄々を捏ねて銃を実際に構えさせて貰ったことはあるものの、引き金を引いたことは一度もない。
銃弾は残り四発。予備弾数は零。猟師ですらない己の武器はたったそれだけ。
だが、引くわけにはいかない。魔獣の背後には己が心から笑顔にしたいと願う少女がいる。
数メートル先でひなたの足は止まる。羆の唸り声もそれに伴う。
暫しの沈黙の後―――
「ヴオオオオオオオオオオオオオ!!!」
雄叫びと共に独眼熊は凄まじい速さで突進を仕掛けてきた。ひなたは両隣を素早く確認する。
片方の部屋は洗面所。袋小路での戦闘になるが、恵子と魔獣との距離を離せる。
もう片方は和室。広い場所で対応できるが、恵子のいる居間と引き戸一枚で繋がっている。即ち羆との戦闘区域に恵子を巻き込むことになってしまう。
到達まで一秒未満。選択肢を誤れば自分だけでなく、恵子まで羆の食料となってしまう。
「――――――ッ!!」
新米猟師未満は和室へと転がり込む。魔獣は獲物がいた位置で緊急停止する。
片膝立ちの体勢で銃を構え、引き金を引く。乾いた音が木霊する。
だが独眼熊の背中を掠め、体毛を削っただけの結果に留まる。
「……くっ……」
銃を持つ手が震える。
猟友会に足げなく通っていたお陰で猟に対する知識は豊富だと自負している。猟を生で見て、獲物の解体の手伝いもしたこともある。
だが肝心の経験は皆無。ずぶの素人が猟銃を持ったところで獣――熟練の猟師すら仕留めることが叶わなかった羆を狩れる筈はない。
隻眼の魔獣がこちらをゆっくりと向く。表情はよく見えないが自身を嘲笑っているようにも思えた。
「ッ!このッ!!」
構え、芽生えかけた恐怖を振り払うかのように引き金を引く。
「―――ヴォッ!」
銃弾は独眼熊の左前脚を掠め、肉を削ぎ取る。
銃の威力は魔獣の皮膚を貫くことができる。その事実にひなたは安堵する。。
独眼熊は後退るようにひなたとの距離を取り始めた。
弾は残り二発。次は頭蓋を貫通させ、仕留める。
知識だけの素人に自信が芽生え始める。銃を警戒する獣はひなたを睨めつけ、後退する。
片膝立ちのまま構え、引き金に指をかけ―――
「ヴァッ!!」
「―――うわッ!!」
羆がひなたに向かって何かを投げつける。驚き、銃弾が明後日の方向へと飛んでいく。
半ば反射的にひなたの視線は自身に投げつけられた物体へと向く。
「…………ヒッ……!」
それは頭蓋が割れ、ピンク色の脳が露出した女ゾンビの顔。
頬が齧り取られて舌が力なく垂れ下がり、破壊された眼窩から飛び出した神経が繋がったままの眼球がひなたを見つめていた。
それはまるでひなたの末路を暗示しているかのようだった。
「ヒナタサン、オナカスカナイ」
魔獣が語り掛ける。その時になって漸く目の前の獣がゾンビではなく自分達と同じ正常感染者だと理解した。
独眼熊は字蔵恵子との戯れの中、悪意を成長させた。
どのような行動をすれば人間は怯えるのか。また、人間が反射的に目を背けてしまうものは何か。
それは同族の骸。仲間の死骸を貪って腹を満たしたことさえある独眼熊にとってはとんだお笑い草だった。
既に魔獣にとって烏宿ひなたは天敵の猟師ではない。生意気にも銃を持っただけの獲物に成り下がった。
僅か数十分前にひなたと対峙した怪人、気喪杉禿夫は驚異的な身体能力の人型の異形であった。
あれがぶつけていたのは汚らしい性欲。嫌悪感こそ吐きそうなほどあったが、恐れは微塵も抱いていなかった
だが目の前に存在するのは人とは異なる存在。相互理解など不可能な魔獣。
「ブオオオオオオオオオオオオ!!!」
羆は二本足で立ち上がり、耳を劈くような咆哮を上げた。
銃を構えようとしていた両腕が下がる。少女の自惚れは砕かれ、心に絶望が満ちる。
弾は残り一発。知恵をつけた魔獣を撃退できる自信は既に失せた。
その様子に独眼熊は嘲笑し、一歩、一歩と恐怖を煽るように接近する。
そしてひなたの眼前に迫る。上から見下ろしたひなたの目には明確な恐怖が浮かんでいた。
その首を弾き飛ばすべく、前足を振り上げ――――
「――――うぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
叫び声と共に独眼熊の背後から小さな衝撃が伝わる。
体毛を掴む華奢で小さな手。それが魔獣の両側を掴んでいた。
愉しみを台無しにされかけた出来事に苛立ちを感じながらもそれを振り払おうとした瞬間。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
電撃が迸り、独眼熊の身体を熱で焼き始める。
自身の生を半ば放棄していたひなたはハッと正気を取り戻す。
彼女はこの電撃の正体を知っている。それはひなたが誰よりも幸せにしたいと想っていた人物。
「―――――恵子ちゃんッ!!」
◆
「てててめえええええええええええ!!!俺のアニカママに何をするんだなああああああ!!!!」
天を衝く怒号。怪物は頭から湯気を吹き出し吠える。
自分が美味しくいただく筈だった推しとのまぐわいをその相棒を名乗るイケメンに割り込みされたことに激昂した。
思い通りにならないと癇癪を起こす性欲だけの愚物には目も呉れず、青年の視線はわきに抱える痛々しく頬にガーゼを当てた少女に向けられた。
「…………怖かったか?」
「――――ッ!こわ……かったわよぉ……!!ビンタされて……お腹……叩かれて……臭いMonsterに……襲われかけて……!!
カナタが……死にそうになって……もう……会えないんじゃないかって……バカぁ……!!」
抱えられながら足をバタバタさせ、大粒の涙を零して罵倒する金髪の少女―――美少女探偵天宝寺アニカ。
口を大きく開けて嗚咽を漏らすその姿にいつもの生意気な態度や自信に満ち溢れた表情の面影はない。
弱り切った相棒の泣き声に黒髪短髪の眉目秀麗な青年――八柳哉太の表情が曇る。
次いでアニカを嬲り、泣かせた張本人である心も体も人とは思えぬほど歪んだ汚物――気喪杉禿夫に怒りと敵意の混じった視線を向けた。
「いい年したおっさんが女子供相手にイキってんじゃねえ!」
「黙れえええええええええ!!!アニカママは俺のハーレムに入る覚悟がないメスガキだったから分からせが必要だったんだな!!
てめえみたいな周りに甘やかされて生きてきたコネだけのクソガキに分かるはずがぁないんだなぁあ!!」
「ハァ……おっさんマジで終わってるな、頭」
顔を真っ赤にして駄々っ子のように地団太を踏み、アスファルトに罅を入れる気喪杉へ呆れと侮蔑を吐き捨てる。
肉欲と稚拙さを言葉と行動で露わにする男へ向ける哉太の目は冷ややかだ。
こんな器の小さく幼稚な人間など見たことがない。村のヤクザの跡取りですらもここまで酷い甘ったれではない。
「ブギイイイイイイイイイイイイ!!!」
豚着いたの断末魔を彷彿させるような叫びと共にオーク擬きは略奪者を排除せんと突進を仕掛ける。
目の前にいるのは自分が最も憎む存在である男。性欲の全てを排除したその突撃は先程の蹂躙とは比較とならない速度。
小脇に抱えたアニカから感じる不安そうな視線。それを肌で感じながらも迫る単細胞へ呆れた目を向けた。
「―――――けっ」
いくら速度があろうとも、技術のへったくれもなく軌道が丸分かりな突撃ならば避けるのは容易い。
吐き捨てと共にバディを抱えたまま跳躍し、タックルを仕掛けてきた気喪杉の脂ぎった禿げ頭を踏みつける。
鉢巻きに括り付けられている懐中電灯がスポットライトの様に二人の整った顔を照らす。
勢いを殺さずに怪人の体毛と垢で黒ずんだ背中へと足を進め、二歩歩いた後、再び跳躍。背後へと着地する。
激突先を失った猛牛はその勢いのまま、ブロック塀を破壊し、家壁へと突っ込んだ。
「―――――ッ!かはっ……!」
「カナタッ!!」
地に足を着けた瞬間、膝を起点に衝撃が全身に広がり、激痛が走る。揺れ動かされた内蔵の傷が開いて呼吸器を締め上げる。
抱えていたアニカを落とし、膝を着いて咳き込む。口を押さえた哉太の手には血がべったりと貼り付いていた。
その様子を見ていたアニカの顔が青褪める。
「ウソ……アンタの身体……まだ治ってないじゃない……!?」
「まだ……大丈夫だ……!!」
全身から発せられる悲鳴を無視し、立ち上がる。そして気喪杉が突っ込んでいった方角を見据える。
遠くからでは聞こえていなかったが哉太のすぐ傍で耳を傾ければ、バキバキと苦痛を伴う異能による再生の音が聞こえてくる。
耐え切れず、アニカは哉太のTシャツを掴み、涙声で訴える。
「―――――逃げましょう!」
「駄目だ。奴を放っておいたら確実に犠牲者が出る。あそこで倒れている金髪みたいにな」
アニカに視線でその場所を示す。そこには自分を庇って重傷を負わされた上に辱められた金髪の高校生――金田一勝子が眠っている。
「それに―――――あの豚は俺のことを何があっても殺しておきたいらしい」
言葉を終えると同時に、アニカを抱いて数メートル先へ飛ぶ。
轟音と共に哉太達のいた場所にクレーターができる。
土煙の中には悍ましい顔にいくつもの青筋を立て、憎悪と殺意を剝き出しにする魔人、気喪杉が立っている。
「てめえみたいな!!ガキが!!勝手にアニカママの!!相棒を名乗っていい訳ないんだな!!!
アニカママのすべすべのお腹に厭らしく触るなストーカー野郎おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
妄言を悪臭と共に吐き出して激昂する気喪杉。びりびりと空間を震わす騒音にアニカの身が竦む。
対する哉太は頭から湯気を吹き出す年齢を重ねたお子様を挑発する。
「だったらその手に持っている玩具で俺を殺してみろ、マザコン野郎」
その言葉で漸く気喪杉は哉太と相対してからずっと握り締めていた武装の存在に気が付く。
左手に金属バット。右手には必殺武器、ショットガン。二つの構え、再び咆哮する。
アニカや倒れ伏す金髪――勝子への欲情は全て己への殺意へと変換された。
その事を確認すると、隣で不安そうな顔を浮かべている相棒へと声をかける。
「――――あそこの金髪を安全な所へ頼む」
「――――OK、I got it。信じているからね、カナタ」
信頼の言葉と共に勝子の元へと駈け出すアニカ。
受けた傷は治らず、怪物は恐らく万全。自身の戦闘スタイルである接近戦は死と同義。
だが絶望することはない。たった一つだけ。それも一度きり。怪物を無力化する手段がある。
◆
クエスト:完全武装・気喪杉禿夫(デストロイヤーフリークス・コンバットエディション)の撃破――開戦(オープンコンバット)
◆
「てめえみたいなぁ!!逃げてるばかりの卑怯者はぁ!!処刑してやるんだなあああああ!!!」
片手でショットガンを持ち上げて哉太の顔へと銃口を向ける。
その綺麗な顔を吹っ飛ばしてやると云わんばかりに構えなしの発砲をする。
気喪杉の頭にはイケメンの不快な顔が吹き飛ばされ、その亡骸へ向けて罵倒と勝利宣言をするという明確なビジョンが存在していた。
だが、気喪杉は何一つ人生経験を積んでいないヒキニート。銃を手に入れたところで標的に当てられるはずがない。
対するは気喪杉の半分以下の年齢で彼以上の修羅場を潜り抜けてきた青年。
地元のヤクザに銃で脅されたこともあり、その脅威や対策などは十分に理解している。
更に二ヶ月前のアニカと共に立ち向かった大規模テロ事件では、知識だけであった対処法を経験へと昇華させた。
「素人が動いている的に当てられる訳ないだろ」
直立して狙いを定めている気喪杉の周囲を旋回するように疾走し、照準を定めさせない。
忍耐など一欠片も存在しない怪物は、苛立ちを抑えきれず発砲する。
当然、哉太に命中することはなく、明後日の方向へと飛んでいく。
「ブッギイイイイイイイイイイイイイ!!!殺す!殺すぅぅぅうぅぅぅうぅぅう!!!」
二発目、三発目と銃弾を放つが哉太を掠めもしない。
本日何度目かも分からない癇癪を起こし、ダンダンと両足で飛んで地を鳴らす。
思い通りにならなければ幼児のように喚き散らして周囲に当たり散らす。
それを何十年も続けてきたであろう最底辺の男。何もしなくても勝手に冷静さを失って暴走する男。
アニカ程の推理力がなくともこの男のパーソナリティについては理解できた。
再び対峙してからの僅かな時間で構築した術理は奴の幼稚な精神性にかかっている。
自分らしくなく挑発したいのはアニカ達を安全圏へ避難させるだけではない。技の成功率を上げるためでもある。
再び自身に銃口が向けられる。それを遠目で感じ取った哉太は再び周囲を旋回しようとするが―――。
「ヴァーーー……」
気喪杉の癇癪や銃声が近場にいるゾンビが哉太と気喪杉の戦闘区域に集まってきた。
魔人は左手の金属バットを人ならざる膂力で旋回させ、ゾンビ達を肉塊へと変えた。
だが哉太はその精神性故、ゾンビを殺すという選択肢を取れないでいた。
気喪杉に向けていた精神的リソースを一時的にゾンビ達へ向け、回避するという選択肢以外は取れない。
故に動きが一時的に止まる。憎むべきイケメンを殺す機会を怪物は見逃さない。
「ぶッッッッッッッッ殺してやるんだなああああ!!!」
哉太へと狙いを定め、引き金を引く。三発も発砲した経験は無駄にならず、銃弾は確実に静止している哉太の身体を捉えていた。
「―――――クソッ!!」
咄嗟に自分の傍にいたゾンビを蹴り飛ばして銃弾の盾にする。
銃弾を受け、仮初の命を終えたゾンビは倒れ伏す。その事実を哉太は噛み締める。
そして気喪杉のショットガンが再び哉太へと狙いを定める。
哉太も先程と同様に銃弾を躱そうと走り出そうとした瞬間―――。
「――――ガフッ!」
重症のまま酷使し続けてきた哉太の身体が悲鳴を上げ、臓腑を締め上げる。
胸を抑え、苦悶の表情で咳き込んで吐血する哉太にゆっくりと標準を定める。
己のハーレム要因への一途で純粋な愛を踏み躙り、ロリママへのストーキングでムカつかせたイケメンの行き先はただ一つ。
「ゴオオオオオ!トゥウウウウウウ!ヘエエエエエル!!」
今度こそ仕留めんと引き金に指をかけた瞬間――――。
『突っ込め』
どこからか聞こえた言葉と共に周囲を彷徨いていたゾンビが、人間の限界を超えた速さで気喪杉へと体当たりした。
その衝撃でショットガンの銃弾が明後日の方向へと発射された。
「…………!!」
死を覚悟していた青年は突然の出来事に困惑する。耳に届いた男の声。この声の主を哉太は知っていた。
衝動的に声がした方向へと顔を向ける。
「今度は誰がやりやったんだなあああああ!!!」
何度目かも数えていない横槍に激昂する。その怒りの赴くまま、突っ込んできたゾンビの頭を踏み砕く。
憤怒の形相をその声の主へと向ける。
そこには自分のハーレム要因の一人『姉妹丼』の姉担当である光ママ。
その手を取ってこちらを睨む釣り目がちの男。立場を利用し、毎晩姉妹丼を楽しんでいると思い込み目の敵にしている男。
「山折圭介えええええええ!!!」
◆
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
独眼の怪物が天を仰ぎ、咆哮する。その巨体を覆う電撃が灯りとなり空間を照らす。
字蔵恵子の異能『雷撃』。それは自身の精神的負荷を電撃に変換し、体外へと放出する異能。
独眼熊の悪意によって蓄積され続けていた恵子のストレスは、ひなたの登場により胡散した。
しかし、魔獣の咆哮によってひなたの表情に絶望が浮かんだ瞬間、恵子の中の何かが弾けた。
『烏宿ひなたが殺される』その恐怖が精神的負荷となり、衝動的に恵子の体を突き動かす。
だが、その電撃は羆を感電死させるのには至らない。
瞬間的恐怖は蓄積された恐怖に満たず、雷撃の出力はひなたの異能による電撃の最大出力未満まで落ちていた。
独眼熊は電撃から逃れようと恵子を振り払うために身体を左右に動かす。
その怪力に少女の矮躯が浮き、藻掻きに合わせて左右に揺れ動く。
数秒も経たぬうちに左手が獣の身体から離れる。残るのは右手。
「ッ……!ううぅぅぅうぅ……!!」
苦悶の声を漏らしながらも掴んだその手は決して離さない。
「――――ッ!恵子ちゃんッ!!そいつから手を離してッ!!」
「……い……や……ですッ!!」
ひなたと焦りと憤りの混じった怒声にも恵子は決して怯むことなく反論する。
恵子の右腕は骨折している。振り回される度に感じる激痛は『慣れているから』という言葉で片づけられるほど生易しいものではない筈だ
どうしよう。どうすればいい。
先程感じていた絶望以上の焦燥がひなたの頭を支配する。
時間と共に恵子の身体から発せられる電撃の威力が弱まり、独眼熊の挙動が激しさを増す。
その最中、呆然と立ち尽くすひなたの耳に届く恵子の叫び。
「私は……今まで……ッ……お母さんと、一緒にお父さんに……いじめられてきた……あグぅ……!
……お母さんが……出て、ぃギ……行ってからは……私は独りぼっち……!」
「…………恵子ちゃん……」
悲痛が吐き出される。孤独だった少女の独白は多くの人に愛されてきた少女の胸に突き刺さる。
「でも……ひなたさんが……!助けてくれた。私は……楽しいって……生きたいって……思えたんだ……!!だから――――」
少女の身体から放電が止まる。最後の言葉が発せられることのないまま、魔獣は残った右手を振り払い、小柄な体を弾き飛ばす。
「うあッ……!」
「――――恵子ちゃん!!」
振り払われた勢いのまま、少女の矮躯は和室からすぐ向かいの洋室まで転がる。
その最中、夫婦の血と臓腑でコーティングされた床上を通過し、髪と衣服を赤黒く染める。
獲物を仕留め損ねた魔獣は、窮鼠の一噛みに激昂し、人間のような憤怒の形相を浮かべる。
殺意の矛先が木偶の坊と化した"ヒナタサン"から己の皮膚を焦がした"ケイコチャン"へと向けられた。
既に心が折られた猟師見習いに背を向け、隻眼の羆は二足歩行で小柄な少女へ歩み出す。
ひなたと恵子。手の届きそうな距離にも関わらず、魔獣が行く手を阻む。
獣が天を仰ぎ、勝利の雄叫びを上げ、爪を振り上げる。そしてひなたの視線に映る恵子の顔。
儚さと安堵が入り交じった優しい笑顔。笑顔を湛えたまま、少女の口が動く。
あ り が と う
瞬間、ひなたの中で何かが爆ぜた。
足を肩幅まで開き、体を安定させる。先台を左手で支え銃床を顎の高さまで持ち上げる。
銃床を右肩で抱えるようにホールドし、右手の一指し指は引き金へ。
顔は真っ直ぐ。標準は視線の先へ。
引き金を引く瞬間、異能を発動させる。肉体に蓄積されたエネルギーを電気へと変換。
少女の髪が淡く光を放ち、周囲を日向の如く明るく照らす。
左手から放電し、ライフル銃の先台から内部へと電流を伝わせる。
引き金を引き、内部の爆発と同時に電磁力によって銃弾を加速させる。
理論も過程も放棄し、ひなたは結果だけを実現させた。
加速された銃弾は隻眼の魔獣の脇腹に風穴を開け、恵子のすぐ傍の壁を貫く。
コンマ一秒にも満たない時間、小柄な少女のすぐ傍で鳴る破裂音。
その時恵子は精神的負荷を感じた。感じることができた。
恵子の異能もひなたと同じ電撃。しかしそれは似て非なるもの。
自身の感じた精神的負荷を電気エネルギーへと変換し、放電する。精密性と持続性に欠ける代わり範囲と威力はひなたよりも上。
ひなたに呼応するように恵子の身体も光を放つ。
電撃の持続は一秒未満。ストレス量も少なくひなたと同程度の電力しか発生しない。
だが、範囲はひなたの異能以上。電撃は羆の傷口から内部へと侵入し、内臓を焼く。
痙攣の後、独眼熊の身体は恵子を圧し潰すように倒れる。300kgを超える巨躯が恵子を潰す瞬間――――。
「―――――恵子ちゃんッ!!!」
銃を肩に担いだひなたが駆け出し、恵子の小さな体を抱きしめ、救い出す。
その背後で魔獣が大きな音を立てて倒れた。
ひなたは恵子の身体を見る。自身のおさがりの登山服は赤く染まり、頭部にも血の跡。
「―――恵子ちゃん!!どこか……どこか怪我を……!早く手当てを……!!」
「だ……大丈夫です。これはさっき転がった時の―――ひなたさん!後ろ!!」
恵子の視線の先には意識を取り戻し、二本足で立ち上がる独眼の怪物。空間を歪めかねない程の殺気がひなたの背中に伝わる。
憎悪と憤怒に塗れた表情でひなたの背中を引き裂かんと爪を振り上げ―――。
「―――――――」
ひなたは担いだ銃を膝立ちの状態で構え、銃口を怪物の隻眼へと向けた。
猟師と獣。それぞれの視線が交差する。静寂の中、響くのは互いの心音のみ。
「――――ゴアアアアアア!!」
折れたのは独眼熊。屈辱の叫びの後、ひなたに背を向けて玄関へと駈け出した。
「…………終わったんですか?」
猟師となった少女の背後から聞こえる守り抜いた少女の声。
ライフル銃の残り弾数は零。ひなたは独眼熊の銃への無知に賭けた。その賭けに猟師は勝利した。
構えていた銃を降ろし、大きく息を吐く。
「…………うん……終わっ―――――」
極度の緊張が解けた瞬間、張り詰めていた精神が限界を迎える。
言葉を終える前に全身から力が抜け、視界がぼやける。
「―――――!!―――――!!」
すぐ傍で誰かの悲痛な叫び声を聞きながら、ひなたの意識は闇に沈んでいく。
◆
気喪杉禿夫が山折圭介を憎悪するように山折圭介もまた気喪杉禿夫を侮蔑していた。
その関係性は異常事態になっても変わらない。互いの間に存在する感情は冷たい殺意のみ。
「ブモオオオオオオオオオオオオ!!!」
猛牛の如き雄叫びが地を震わす。その叫びと共に左手に持った金属バットが旋回し、周囲に集った亡者を血祭に上げる。
そして、己のハーレム要因の一人である日野光を奪い取るべく、圭介の方へと駈け出そうとするも―――。
『突っ込め』
再び気喪杉の四方からゾンビが限界を超えた速さで気喪杉の肉を喰らおうと突っ込んできた。
怪物は自身の身を守るべく武器を振るう。
気喪杉が暴れるたびに圭介は恋人の光の手を引き後退する。まるで何かから引き離すように。
このままではキリがないと気喪杉は右手に持ったショットガンを圭介へと向け、引き金を引く。
だが既に弾数は零。八柳哉太への止めを刺し損ねた瞬間に、珠は尽きていた。
「○▼※△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●!!!!」
もはや人が発する音とは思えない言語で激昂し、ショットガンを遠くへと投げ捨てる。
その愚行の後、今度は両手で金属バットを握り締め、亡者達を肉塊へと変えながら突き進んでいく。
ゾンビの海を掻き分けて進む中、気喪杉の金属バットは気喪杉好みの十代前半の少女の首を吹き飛ばした。
その事実に気喪杉は激昂し、怒りの叫びを上げる。
「てめえは人間じゃないんだなああああああ!!!」
『飛び掛かってあのばい菌野郎の腹肉を食え』
返答は冷ややかな視線と亡者への指示のみ。再び怪物の元へとゾンビが襲い掛かる。
八柳哉太を殺し損ねた怒り。ハーレム要因である光と×××できないもどかしさ。怨敵山折圭介への激しい憎しみ。
いくつもの要因が重なり、気喪杉の怒りのギアが更に一段階上がる。
「ブモアアアアアア!!!」
自信の腹肉に亡者が齧りついたまま、気喪杉は圭介へ向けて跳躍する。
その着地点を瞬時に予測する。光を横抱きにして、横へと飛んだ。
その数舜後、圭介をミンチにしようとバットを振り下ろした気喪杉が降ってくる。
地面へ激突する金属バット。振り下ろした場所を起点にアスファルト上に罅割れができた。
圭介と気喪杉。憎み合う者同士が対峙する。
数で圧し潰す圭介と感情によって身体能力を爆発的に上昇させる気喪杉。
既に勝敗は決した。憤怒の表情を浮かべた魔人は怨敵を磨り潰すべく得物を振り上げ―――。
「俺に気を取られていいのか?ばい菌野郎」
徹底的な侮蔑の表情を浮かべたまま、怪物へと問う。
「命乞いは!!地獄でやってるんだな!!!」
「そうじゃなくて、お前がご執心だった黒髪の奴が逃げるけれどいいのかって聞いてるんだよ」
命の危機を感じつつも侮蔑の表情のまま、あくまで冷静な態度で怪物へと問いかける。
その瞬間、気喪杉の中に怒りと憎悪以上のものが芽生える。
憎き山折圭介を殺している隙にあのクソッタレのイケメンが逃げたらどうなるのか。
この数時間の間で色欲と憤怒以外の感情が、気喪杉の精神を揺るがす。
近場の巨乳JKを取るか。それとも超絶レアのロリママ候補ののアニカママを取るか
欲しいものは何でも手に入れてきた気喪杉に初めて出てきた二択。二兎を追い、二兎を得たい気喪杉にとっては地獄の選択。
数秒の逡巡のうち、気喪杉は苦虫を嚙み潰した表情を浮かべる。
「アニカママをゲットした後!!お前をぶっ殺して光ママをゲットする!!てめえの死体の前で3Pしてやるんだなあああああ!!!」
天を仰ぎ、最低の咆哮をする魔人。
結局、駄々っ子から精神が成長していない気喪杉は優先順位をつけて両方取るという選択しかできなかった。
圭介に憎しみの一瞥をくれた後、哉太を抹殺すべく背後を振り返る。
そこには哉太とアニカ。剣士と探偵が逃げずに待っていた。
アニカは気喪杉へと怒りの籠った眼差しを向け、哉太は腰を落とし、こちらへ走り出そうとする体勢を取っている。
◆
魔剣とは、理論的に構築され、論理的に行使されなければならない。
◆
「アニカ、サーカスは好きか?」
勝子を戦闘区域から離脱させた後、心配になって哉太の元へ戻ってきたアニカは彼に意図の読めない質問をされた。
彼の視線の先―――およそ50メートル前方にはゾンビの群れと格闘している気喪杉がいる。
「えっと、Circusは結構好き、かな?」
「そうか。じゃあ今から曲芸を見せてやる」
◆
ゾンビの群れを乗り越えた気喪杉はこちらの方へと体を向ける。
遠目からでも分かるほど憎悪と殺意に塗れた表情をしているのが分かる。
魔人は両手で金属バットを頭上まで持ち上げる。己は腰の刀には手を置かず、屈んで走り出す体勢を維持する。
薄闇に静寂が満ちる。心臓の音だけが激しい音を奏でる。
一条の風が吹く。
「―――――ッ!!」
「ブモオオオオオオオオオオ!!」」
それを合図に互いを打倒せんと駈け出す。
気喪杉は全裸で体中のブヨブヨの贅肉を揺らしながら頭上に得物を掲げて突進する。
哉太は得物には手をかけず、地面とほぼ平行―――足に向かってタックルを仕掛けるような体勢で駆ける。
あのイケメンの刀は飾りだ。俺に体当たりなんて聞かないのに馬鹿丸出しなんだな。
気喪杉は己の無知を棚に上げ、哉太の愚行を心の中で嘲笑する。
そして互いに数メートル先まで接近する。到達まで一秒未満。
気喪杉がバットを振り下ろそうとしたその瞬間、哉太は身体を捩じらせて地面を蹴った。
思った通りタックルだ。自分以外の男は馬鹿なんだなと心の底から青年の愚行を嘲る。
走った速度のまま自分へと突進してくる愚か者に対し、気喪杉は全力でバットを振り下ろす。
「イケメンのハンバーグ完成なんだなあああああ!!!!」
勝利宣言と共に金属バットが眼前の物体を叩き潰す瞬間―――。
気喪杉の濁った双眸と哉太の双眸。二つが重なり合う。刹那、金属音と共に肉を切り裂く音が響く。
八柳哉太は飛んだ数メートル先で体勢を整え着地する。左手には脇差。右手には打刀。
その背後には尻餅をついた気喪杉禿夫。金属バットは諸手で握られたまま、両肘ごと気喪杉の隣に転がっていた。
数秒の沈黙の後――――。
「ぎぃぃぃいぃいいいいいいいあああああぁぁぁ!!!!」
◆
ベースは彼の流派である八柳新陰流『這い狼』および八柳新陰流、二刀『朧蟷螂』
地滑りの如く疾走し、相手の膝を砕く『這い狼』の走法で脇差と打刀、二振りで防御と反撃を同時に行う『朧蟷螂』。
決して交わることのない剣術を以って、魔人を殺さずに無力化する。
それを可能としたものが『這い狼』による疾走の最中に僅かに軌道をずらして身体を捩じって地を蹴る動作。
勢いを殺さずに相手の脇をすり抜けるような体当たりが行われる。その際に捩じりによって発生する回転は一度。
上段から振り下ろされる攻撃に対し、逆手で脇差を抜いて打撃の軌道をずらす。それと同時に行われる抜刀する『朧蟷螂』
回転の勢いのまま無防備になった両肘を切り落とす。その勢いのまま、反撃から逃れるように相手の背後へと着地する。
八柳新陰流の『柔』の理念に則りながらも型から外れたあまりにも無滑稽な剣術。理論は穴だらけで剣術と呼べる代物ではない。
ほんの僅かでも気喪杉が冷静さを持っていれば反撃を喰らっていた。間に遮蔽物があれば失敗は必然だった。
その上、よしんば成功していたとしても気喪杉の贅肉の鎧を骨ごと断ち切るには至らなかったであろう。
しかし、それらを可能にしたのは気喪杉の足止めをしていた勝子、ひなた、アニカの奮闘。遮蔽物を取り除いて討伐の土台を作り出した。
そして犬山はすみによる打刀と脇差の強化。犬山はすみを始めとした面々は誰もが気喪杉を人型の異形だと判定していた。
故に力を付与された二振りも同様に気喪杉を異形と判定する。
犬山はすみの異能は強化の大小に関わらず、必ず異形への特効を持たされる。
故に、力を得た刀は気喪杉の肉の鎧を裂くことが可能になった。
曲芸の銘は――――八柳新陰流『這い狼』が崩し、『捩り風』
八柳新陰流は独自の魔剣を以って『皆伝』と認定される。
皆伝保有者は現在まで八柳藤次郎及び虎尾茶子のただ二名のみ。
八柳哉太、未だ皆伝に至らず。
◆
「い゛だい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!い゛た゛い゛ん゛た゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
両腕を落とされ、激痛に悶え苦しむ全裸の不審者。
「無様……ですわね……」
「Ms.ショウコ……起きたのね……」
「ええ……アニカさん、避難させてくれてありがとうございますわ」
そう言って両腕から血を流し、顔を土砂崩れの如く汁を垂らしながら咽び泣く男を睨む。
この汚物はもう二度と食事をとることも、排泄すらも一人ではできなくなった。
だがそのことに憐憫を向ける者は誰もいない。ここにいる全員、目の前の汚物に絶対零度の視線を向けている。
「……止血だけでもしておこうか」
「……そうね、勝手に死なれちゃ困るもの」
アニカはロープを手に取り、真っ直ぐに宙に浮かせる。それを哉太は打刀で半分に切る。
それから他にも包帯やら消毒液やらが必要なのだが―――。
「ご安心なさい。私が先程マーキングしておきましたわ」
勝子が手に持った小石を宙に投げると、手元に救急箱が現れた。
「ぶええええええええええええええええええ!!!」
幼児のような見っとも無い泣き声をあげて、気喪杉は壁を破壊しながら走り去っていく。
止血が済んだ際は、こちらを顔中のの穴という穴から液体を垂らしながら睨んできたものの、哉太の存在を見た瞬間、立ち上がって逃げ出した。
少なくとも、ずっと逃げ隠れさえすればゾンビに食い殺されることはないだろう。
「ざまーーーーーーみろですわーーーーーーー!!!」
汚らしい背中を見せながら逃げ出す最底辺の男に対して勝子は高笑いする。
その様子を苦笑しながらアニカは彼女を見ていた。
「……もうダメだと思ったけど、何とかなったみたいねカナタ。……カナタ?」
シャツを引っ張ってみるが哉太の反応はない。不安を感じたアニカは彼の伺う。
哉太の視線は真っ直ぐ。その表情は沈み切っている。
パートナーの目には何が映っているのか。その視線の先を見ると、こちらに歩み寄ってくる男女。
男は一釣り目がちで健康的な体つきをしている。自分達と同じ正常感染者のようだ。
女は男と手を繋いでいる。色褪せた瞳に開いた口。彼女は男の異能によって操られたゾンビのようだ。
男女が哉太の前で制止する。
男と哉太は互いに目線を決して合わさずに話しかける。
「助けてくれたのか、山折」
「帰ってきてたのか、八柳」
親分と子分第一号。もう二度と会うことがないと思っていた元親友同士が一年ぶりに言葉を交わす。
◆
それは私がまだ小学生の頃。
夏休みのある日。朝から山で遊びまわり、お昼を食べた後にうたた寝してしまったある日のこと。
当時は短かった私の髪を誰かが撫でる。それが嬉しくて、気恥ずかしくて、誰かの膝の上で不貞腐れてまた眠ってしまった。
拗ねた顔を覗き込む自分に似た優しい女性の顔。そんな何でもない日の夢を見た。
髪を撫でられるくすぐったい感触で目を覚ます。
誰に撫でられているのか、不思議に思い、その手の主へと視線を向ける。
「起きちゃいましたか?」
夢の声とは違う、幼さの残る声。寝ぼけ眼をこすりながらその人物へと声をかける。
「恵子ちゃん?」
こくんと頷く。夜が明けかけ、空が白みを帯び始めていた。
薄明りが恵子の顔を照らす。目は赤く腫れ、泣いていたみたいだ。
誰だ泣かせた奴は。
「ひなたさんが倒れてから、大変だったんですよ」
不機嫌な声でそう漏らす恵子。
疑った皆さん、ごめんなさい。私が泣かせたみたいです。
「……怒ってる……?」
「怒ってます」
泣きそうな寂しそうな声。そこまできっぱり言われたら何も言えなくなる。
「……ごめん……」
恵子は何も言わず、ただひなたの髪を撫で続ける。
しばらくの沈黙。だが、気まずさはいつしか暖かさに変わる。
「あのさ……我儘……言っていいかな?」
「……特別ですよ」
ほんの少しだけ不機嫌そうだが、優しさに溢れた声。
その声の形は、大好きなお母さんに似ていた。
だから、少しだけ、甘えたくなった。
「……もう少しだけ、お昼寝したいから、膝枕の続きをしてもらってもいいかな?」
返答はなく、ただ優しく髪を撫でられ続ける。
掌の温かさ、膝の柔らかさが心地よい。
微睡み、ゆっくりと瞼が落ちていき――――。
「チェストーーーーーーーーー!!」
「何事ーーーーーーー!!??」
隣部屋でガラスが勝ち割られる音がした。
微睡みが失せ、一気にたたき起こされる感触がした。
勢いよく起き上がる。その際、ひなたの頭が恵子の顎を直撃する。
恵子は涙目で顎をさすっていた。
驚き、腰を抜かした二人の前に現れたのは、金属バットを肩に乗せた金髪の美女、金田一勝子。
「あの……勝子さん?普通に玄関から入ってくればいいんじゃ……」
「そんな……時間なんて……ありませんわーーーーー!!」
ひなたのツッコミを逆ギレで無常に返す。理不尽というものを垣間見た。
その直後、
「emergency!!emergency!!emergency!!」
玄関から幼い声、天宝寺アニカの大声が響き渡る。
「カナタ!!二階からMs.ハスミを運んできて!!」
その言葉と同時にバタバタと誰かが階段を上る音が聞こえた。
「早く準備してここを脱出しないとお〇ックされますわよ!!」
「いや、どういう意味か全く分からないんですけど、何があったんです?」
ひなたは当然の疑問を投げかける。すると勝子は冷汗を流しながらその答えを言い放つ。
「特殊部隊が、今ここにいる人間全員を殺しに来ますのよーーーーー!!!」
◆
圭介と哉太。十年来の親友同士だった間柄。しかしすでにその関係は冷え切っており、互いに目線すら合わさない。
すぐ傍で困惑する二人の少女を他所に、ぽつぽつと会話らしきものを始める。
「まだこのクソド田舎でお山の大将気取ってんのかよ、山折」
「金魚の糞だった分際でよくでかい口を叩けるようになったな、八柳」
口から吐き出される言葉には棘があり、互いに歩み寄る気配を見せない。
哉太が地元を『クソド田舎』と蔑むようになった原因。そして圭介が決して友人として哉太をカウントしなくなった原因。
それは、去年起きた大きな確執に合った。
「……そっちは彼女の、光ちゃんか……」
「……誰に聞いた」
「……珠ちゃん」
「……あいつらを泣かせたお前に名前を呼ぶ資格なんてねえよ」
「……お前も同罪だろうが」
その確執は当人二人だけの問題ではない。
諍いは飛び火し、仲良しグループであった彼らの絆を踏み躙った。
二人を宥めようとした諒吾。何もできず涙を流すしかできなかったみかげ。トラウマを植え付けてしまった珠。
そして、二人を叱るわけでもなく、ただただ泣かせてしまった光。
二人はどちらも加害者であり、被害者でもあった。
「…………」
「…………」
いつ終わるかもわからぬ沈黙が続く。
そして不意に、その沈黙が破られる。
「……じゃあな」
「……ああ」
圭介が背中を向け、ゆっくりと歩きだす。
その背中に対しても、哉太は視線を向けようとしない。
「いいのですの、哉太さん?これが今生の別れになっても後悔しませんの?」
横から勝子の厳しい声が聞こえる。それでも、哉太は何も返せない。
拳を握り、体を震わせる情けない男に向けて、呆れて溜息をつく。
「どうやら私は哉太さんを買い被り過ぎていたようですわね。女々しい男ですこと」
その言葉にも反論できない。歯を食いしばって耐えること以外できなかった。
今更自分に何が言える?彼らを裏切り、諍いを自分の都合で飛び火させ、絆を踏み躙った人間がかけていい言葉など知らない。
震える手にそっと小さな手が添えられる。横を見ると自分のパートナー、天宝寺アニカがこちらを悲しそうな表情で見上げていた。
「本当に、後悔しない?」
目に涙をためて訴えかける彼女に、かつて自分が傷つけてしまった妹分の姿が重なり―――――。
「圭ちゃん!!」
気づくと確執を忘れ、衝動的に昔の呼び方で彼を呼んでいた。
圭介の背中がピクリと動き、足を止める。
「圭ちゃんは皆の……諒吾くんに、みかげちゃん、珠ちゃんに光ちゃん……あいつらのリーダーなんだ!!」
いつかその背中に追いつきたい。どんなヒーローよりもかっこ良かった親分の大きな背中に叫ぶ。
「それから……光ちゃんを幸せにできるのは圭ちゃんしかいないって……俺はずっと信じている……!!
だから……絶対に死ぬな……!!絶対に死んじゃ駄目なんだ!!!」
衝動に任せた叫びを終え、圭介へ背を向ける。
もうこれ以上彼に言うことはない。きっとこれが最後の会話になる。
そう自分に言い聞かせる。
「……ま、アニカさんのパートナーとしては及第点ギリギリですわね。彼女に相応しい殿方になるよう、努力なさい」
謎の上から目線で哉太の評価をする勝子へ複雑そうな表情を浮かべる。
そんなことを知ってか知らずか、勝子は勝気な笑みを哉太に見せつけた。
「カナタ、よくできました。Good boy、Good boy」
爪先立ちで哉太の頭を撫でようとするアニカに若干馬鹿にされてないか?と苛立ちを感じる。
ガキがガキ扱いするなという意味を込めて軽く頭にチョップをする。
そして、はすみ達のいる一軒家へ歩み出そうとした瞬間――――。
「哉太!!」
不意に名前を呼ばれて足が止まる。
「この村には特殊部隊員が俺達を殺そうとしてきている!!ガスマスクに迷彩柄の防護服の奴らだ!!
俺もさっき殺されかけた!!奴らは強い!!もうすぐそこまで来ている!!」
「ええ何それ聞いてませんわ」や「Oh my gosh!」などの声が隣から聞こえる。だが情報以上の衝撃が哉太の中にあった。
「だから、お前もお前の仲間もそんな奴らに殺されるな!!絶対に死ぬんじゃねえぞ!!!」
◆
高級住宅街から離れた道沿いにある一軒家。
一行は最低限の荷物をまとめた後、全速力で高級住宅街から走り去った。
途中、哉太、勝子、ひなたら体力お化けがバテかけた三人を背負い、緊急避難先の一軒家へと雪崩れ込んだ。
その際、勝手に家を借りるのは抵抗があるといったはすみを気遣い、ここを今から自分の別荘として買ったから問題ないと力ずくの理論で無理やり納得させた。
その後は作戦会議。行動の際の最低限の
ルールを決めた後は疲労が溜まっていたメンバーは居間で雑魚寝することになった。
そんなこんなが起こった後の話。
もしゃもしゃ
もしゃもしゃ
玄関の軒下にて、探偵と助手が二人並んでバナナを食べていた。
時折首から下げた双眼鏡を覗き込んで招かざる客が来ないか確認している。
探偵――天宝寺アニカの顔には木乃伊の如く包帯
――怪我が大分治ったと字蔵恵子から渡されたもの――が巻き付いている。
どうやらこの包帯は犬山はすみの異能によって強化されたものらしく、直に触れている箇所には強い効果が発揮されるらしい。
会議での決定事項その一。
緊急避難先にいる間は必ず外に見張りを着けること。
率先して引き受けた二人には、家にあった双眼鏡がそれぞれに支給され、また感謝の印として一房のバナナがプレゼントされた。
「アンタ、寝なくて平気なの?」
「あー、今日は昼飯食った後は晩飯まで昼寝してた。それから晩飯食った後は茶子姉に叩き起こされるまで寝てた」
「ダメ人間」
「お前はどうなんだよ、家出少女」
「Lunch頂いた後は役場で観光案内して貰って、民宿でDinnerまでの五時間、お昼寝してたわ」
「そーかよ」
いつもとは違う生返事。何となく調子が狂うが、その原因は既に分かっている。
自分にできることは話してくれるのを待ち、相談に乗ることくらいだ。
ふと、視線を隣のパートナーへと向ける。
朝日に照らされる憂いを帯びた横顔。
八柳哉太。二ヶ月前の事件にて彼の人となりを深く理解した。
容姿端麗。それでいて自分をサポートできる程度には頭が回る。身体能力はかなり高い。
やさぐれてはいるものの、性格は善人より。
趣味はまあ、あいつまだ高校生だし、許容できる範囲……かな?
だが、最大の問題はそれらではない。
「アンタ、そのシャツのドラゴン何?」
「これは俺の切り札。オーダーメイド品だ。ヤバいだろ?」
「……アンタのスマホのストラップ、この旅館で叩き売りされてそうな剣?の奴は何?」
「叩き売り言うな。邪竜の力を宿した魔剣だ。ネトオクで一万円で落とした奴だ。ヤバいだろ?」
突っ込む気すら失せる壊滅的なセンス。この男のセンスは男子小学生の段階でお亡くなりになったらしい。
彼に不覚にもときめいたことは何度もある。しかし、そのときめきはコイツのセンスのヤバさで数秒で萎えさせられる。
「お疲れ様、アニカちゃんに哉太くん」
背後から大人の女性――犬山はすみの柔らかな声がかけられた。
手には暖かいココアが二つ。アニカと哉太に手渡される。
「Thanks、Ms.ハスミ」
「あざっす」
揃ってココアを一口含む。優しい甘さが全身に広がり、張り詰めていた緊張の糸をほぐす。
気が緩んだせいか、我慢していた眠気が一気に襲いかかり、二人の前で大欠伸をしてしまった。
「アニカ、お前は一度寝とけ」
「でも……」
「見張りは元気になった私が引き継ぐから大丈夫よ~。実は私はアニカちゃんのファンなの~。だからすっきりした頭で凄い推理を見せてくれると嬉しいな~」
会議での決定事項そのニ。
休憩は臨時会議終了後、二時間取る。
会議での決定事項その三(最終)
休憩後、今後の立ち回りや特殊部隊員への対策の後に天宝寺アニカが事件解決への推理のため、各々に聞き取り調査を行う。
◆
はすみと哉太に促され、他の皆が仮眠を取っている居間へと足を運ぶ。
そして他の三人と同じように毛布に包まり、瞼を閉じる。
意識が落ちる前に脳裏を過ったのは二ヶ月前の大規模テロ事件。
八柳哉太が正体を表したテロリストの頭目と死闘を繰り広げていた時。
アニカは更なる真相を求め、研究所の奥深くまで単独潜入していた。
廊下に出た途端、目についたのは斬殺死体の山。テロリスト達とは異なる装備の武装集団。
気配を消しながら奥へと進むと、そこには二人の人間の姿。
片方は全身に迷彩色の防護服を纏った小柄な人物。遠目で見た限り、重火器は装備しておらず、代わりに利き手には血濡れた日本刀と思わしき刃物。
体つきからおそらく女性。
もう一方は白衣を纏った若い男性。おそらくこの研究施設に勤めている職員だろう。
物陰に隠れ、聞き耳を立てる。
女性と思わしき防護服の声はボイスチェンジャーで変えているのであろう、無機質で無個性な音を出している。
彼女の口から僅かばかり聞こえたキーワード。それは「ヤマオリ」と――ー。
「ミナサキ……?」
◆
半ば廃墟と化した高級住宅街の一角。そこで圭介は呆然と立ち尽くしていた。
思い出されるのは先程の気喪杉との戦闘。
光を取り戻すため、正常感染者を抹殺するため、打てる最善手はいくらでもあったはずだ。
例えば、気喪杉と哉太の戦闘の最中。二人へとグレネードをぶち込めば、光を取り戻せたかもしれなかった。
例えば、己と気喪杉との戦闘。ゾンビ共が群がっているいる隙にグレネードを爆発させれば危険人物をノーリスクで排除できたはずだ。
だが、できなかった。光と哉太。二人は物心ついたばかりの頃からの付き合いがある存在。
己の愚行のせいでもう二度と揃うことはないと思っていた三人組がこの極限状態の中で奇跡的に揃った。
脳裏に過る記憶。自分がヒーローで光がヒロイン。哉太は怪人役かサイドキックのヒーローごっこ。
何のしがらみもなく、毎日が充実していて楽しかった遠い日。
そんな思い出が蘇り、心の奥底で眠っていた「ヒーロー」だった頃の己を呼び出してしまい、らしくない行動を起こさせた。
「……光、俺はどうすれば良かったのかな?」
正常感染者の抹殺を選択してしまった圭介。
「光」を取り戻すという大義名分は揺らぎ、崩壊の兆しを見せつつある。
ギロチンリストには「八柳哉太」の文字が刻まれている。
これから更に「湯川諒吾」「上月みかげ」「日野珠」の文字が刻まれるとしたら―――。
「―――ッ!駄目だ!」
頭を振って答えを出すのを止めた。
「……学校だ。学校は避難所に指定されていたはずだ。だから、あいつらのゾンビがいる……筈だ」
圭介の口から願望が吐き出される。
「……行こう、光。俺はあいつらのリーダーだから、特殊部隊員に殺されないように守ってあげなきゃ」
物言わぬ恋人の手を引いて「リーダー」は学校へと向かう。その背中を光のない色褪せた目が見つめていた。
◆
◆
戦線が起きた住宅街から離れた場所。独眼熊の視線は眼下の物体に注がれていた。
それは、気喪杉が戦闘の最中、役立たずと罵り、投げ捨てた物。
己の目を打ち抜き、プライドを粉々にし、幼き頃に「母」を奪った物体「銃」
これが、獲物であった二匹のメスに力を与え、今まで以上の傷を負わせたのだ。
「ガアアアアアアアア!!」
屈辱と憎悪、殺意に魔獣は吠える。
それに向けて、破壊すべく前足を振り上げ―――止めた。
独眼熊の異能は脳を活性化させ、ヒトと同等の知能を授けるギフト。
魔獣は憎悪によって進化し、「悪意」を覚えた。
なれば、人の悪意に興味を持つのは必然。
魔獣は決意する。我も貴様らと同様に猟師になろう。
貴様らは我の尊厳を破壊し、大切なものを奪い、蹂躙を繰り返してきた。
ならば、貴様らもそうされても文句は言うまいな?
隻眼の魔獣は銃を口に加える。
そして引き金についた悪臭から猟師として狩る獲物を選別する。
◆
―――――朝が来る。かくして兵どもは集い、迷い、歩み出す。
だが、夜明けを超えられぬ者がここに一人。
◆
ぐちゃぐちゃと肉を貪る音が民家の中に響く。
その協奏曲を奏でる主は贅肉に顔を突っ込んで臓腑を食らう魔獣。
合いの手を添えるように時折苦悶の声を漏らすのは、両肘を失い、無力な人間と化した元怪物。
すでに臓腑の大半は食い荒らされており、例えどのような名医でも首を横に振るほどの重傷だ。
だが、気喪杉は未だ生存していた。
彼の異能である身体能力強化は感情によって精度を上げるもの。
彼の心は恐怖と絶望に満たされていた。
恐怖は生存欲求を呼び覚ますべく千切れかけた神経を活性化させ、痛覚を呼び覚ます。
絶望は一秒でも生存させるべく足りなくなった臓器を別の臓器で補うような働きをする。
自分を省みず、誰からも顧みられることのなかった男。最期は自分にすら見限られた。
「い゛た゛……ィ゛……か゛ぁ゛……ち゛ゃ゛」
その言葉を最後に男の意識は闇へと沈んだ。
気喪杉禿夫、39歳。山折村にて朝焼けを見ることなく無価値な生涯を終えた。
【気喪杉 禿夫 死亡】
【D-4/道沿いの一軒家/一日目・早朝】
【烏宿ひなた】
[状態]:感電による全身の熱傷(軽度・手当て済)、肩の咬み傷(手当て済)、疲労(大)、精神疲労(中)、睡眠中
[道具]:夏の山歩きの服装、リュックサック(野外活動用の物資入り)、ライフル銃(0/5)
[方針]
基本.出来れば、女王感染者も殺さずに救う道を選びたい。異能者の身体を調べれば……。
1.皆の体調を考えて、一先ず休憩する。
2.生きている人を探す。出来れば先生やししょーとも合流したい。
3.VHという状況にワクワクしている自覚があるが、表には出せない。
4.……お母さん、待っててね。
【字蔵恵子】
[状態]:ダメージ(小)、下半身の傷(小)、疲労(大)、精神疲労(大)、睡眠中
[道具]:夏の山歩きの服装
[方針]
基本.生きて、幸せになる。
1.ひなたさんについていく。
2.ここにいる皆が、無事でよかった。
【金田一勝子】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)、睡眠中
[道具]:スマートフォン、金属バット
[方針]
基本.基本的に女王感染者については眉唾だと思っているため保留。他の脱出を望む。
1.休憩後、犬山うさぎとの合流を目指す。
2.マジ疲れましたわ…。
3.能力のこと、大分分かってきましたわ。
4.先程の白豚といい、ロクでもねぇ村ですわ。
5.生きて帰ったら絶対この村ダムの底に沈めますわ。
【犬山はすみ】
[状態]:疲労(大)、異能使用による衰弱(大)
[道具]:救急箱
[方針]
基本.うさぎを探したい。
1.今は自分とここにいる子供達のことを考えて、休憩する。
2.生存者を探す。
3.ありがとう、勝子さん。
※自分の異能を知りました。
【
天宝寺 アニカ】
[状態]:全身にダメージ(小・回復中)、顔面に腫れ(回復中)、頭部からの出血(回復中) 、疲労(大)、精神疲労(小)、睡眠中
[道具]:催涙スプレー(半分消費)、スタンガン、八柳哉太のスマートフォン、斜め掛けショルダーバッグ、包帯(異能による最大強化)
[方針]
基本.このZombie panicを解決してみせるわ!
1.休んだらここにいる皆からHearingするわよ。
2.Ms.チャコが地下研究施設について何かを知ってるかもしれないわね。
3.私のスマホどこ?
※異能の存在に気がつき、任意で発動できるようになりました。
※他の感染者も異能が目覚めたのではないかと考えています。
※虎尾茶子が地下研究施設について何らかの情報を持っているのではないかと推理しました
※異能により最大強化された包帯によって、全身の傷が治りつつあります。
【
八柳 哉太】
[状態]:全身にダメージ(中・再生中)、臓器損傷(再生中)、全身の骨に罅(再生中)、疲労(大)、山折圭介に対する複雑な感情
[道具]:脇差(異能による強化・中)、打刀(異能による強化・中)
[方針]
基本.生存者を助けつつ、事態解決に動く
1.このバカ(アニカ)を守る。
2.休憩後、アニカの推理を手伝う。
3.ゾンビ化した住民はできる限り殺したくない。
4.圭ちゃん……。
※自分の異能を知りました。
※脇差と打刀が異能により強化され、怪異及び異形に対する特効を持ちました。
【C-4/高級住宅街/一日目・早朝】
【
山折 圭介】
[状態]:健康、精神疲労(中)、八柳哉太への複雑な感情
[道具]:木刀、懐中電灯、ダネルMGL(5/6)+予備弾6発、サバイバルナイフ
[方針]
基本.VHを解決して光を取り戻す
1.女王を探す(方法は分からない)
2.正気を保った人間を殺す。
3.避難所である学校へ行く。
4.八柳哉太以外の知り合いはゾンビであって欲しい。
※異能によって操った光ゾンビを引き連れています
※学校には日野珠と湯川諒吾、上月みかげのゾンビがいると思い込んでいます。
【D-3/とある一軒家/1日目・早朝】
【独眼熊】
[状態]:出血(小)、左脇腹貫通、感電による全身の熱傷(中)、内臓にダメージ(小)、知能上昇中、烏宿ひなたと字蔵恵子への憎悪(極大)、屈辱(極大)、人間への憎悪(大)
[道具]:ブローニング・オート5(0/5)、予備弾多数、リュックサック、懐中電灯×2
[方針]
基本.人間を狩る
1.『猟師』として人間を狩り、喰らう。
2."ヒナタサン"と"ケイコチャン"はいずれ『猟師』として必ず仕留める。
3.『猟師』の経験を積むために"ヒナタサン"と"ケイコチャン"のいない群れを狩るか、"山暮らしのメス"(
クマカイ)と入れ違いになったメスを狩るか(どちらかは、後続の書き手さんに任せます)
※食い荒らされた気喪杉禿夫の死体を自身のストックとして保存しています。
※烏宿ひなたを猟師として認識しました。
※知能が上昇し、道具の使い方を覚えました。
※銃に興味を持ちました。
最終更新:2023年07月23日 12:47