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リリカ2
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orz1414
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今日はクリスマスである。
幻想郷では例年通り、紅魔館でパーティが開かれていた。それには毎年多数の人間や妖怪が招待され、俺も参加していた。
楽しい時間が過ぎていく。ふと時計を見ると、短針が11の文字を指そうとしていた。
「あっ!」
俺は慌てて紅魔館を後にした。実は今日は、もう一つ招待を受けていたのだ。
「12月24日の23時に、私たちの屋敷でクリスマスコンサートを開きます。是非ご来場ください プリズムリバー」
その道中で、手紙を今一度読み返す。しかし、この招待には奇妙な点があった。
まずどう考えても時間が遅い。もう深夜ではないか。こんな時間に、誰か来るのだろうか。
なにより、当の三姉妹はついさっき紅魔館で演奏をしていたのである。どういうことなのだろうか。
まぁ俺も深夜まであそこで騒いでいるのはあまり気が進まなかったので、別によかったのだが。
そうこうしているうちに、プリズムリバーの屋敷に到着した。
「すいませーん」
「ど、どうぞ!」
三女リリカのものと思われる声がしたので、ドアを開けた。
部屋の中は真っ暗だった。
「……間に合った……」
闇の中から小さな声が聞こえたが、気にしないでおく。
しばらく待っていると、部屋の一箇所に光がさした。
スポットライトの先には、一人の少女が立っていた。リリカだ。
なんとなく落ち着かない様子のリリカは、一度大きく息を吸うと口を開いた。
「ようこそ私のコンサートへ。では、聞いてください」
演奏が始まった。
いつもは手を使わずに演奏しているリリカが、今日は手を使ってキーボードを弾いていた。
その細い指が奏でる調べは、クリスマスソング。俺が一度も聞いたこともないような、幻想的な音。
俺はその場に自分とリリカしかいないことにも気がつかず、演奏に聞き入っていた。
「すごい……」
その時、突然スポットライトの明かりが消えた。
再び真っ暗になった部屋の中から、リリカの慌てる声が聞こえた。
「え、な、何!」
「リリカちゃん!」
俺は急に不安になり、真っ暗な部屋の中に足を踏み入れた。
「リリカちゃーん!」
「○○さーん!」
暗闇の中、二人が互いを呼び合う声だけが響く。
どこまで進んだだろうか。何かにあたるような感触がした。
「きゃっ!」
すぐ近くで、リリカの声がした。
手を伸ばすと、何かに触れた。俺はそれが何なのか直感的にわかった。
リリカの手を掴み、近くに引き寄せた。
「あ……」
「リリカちゃん、大丈夫?」
「う、うん……」
月が高い位置に来たようで、窓から月明かりがさしこんできた。
それでようやく、リリカの姿を確認することができた。
リリカは恥ずかしそうに俯いていた。
「ねぇ、お姉さんたちは?」
「…………だけ」
「え?」
「今日は、私だけ……」
消え入りそうな声で、リリカが言った。
リリカは言葉を続ける。
「私だけ、抜け出してきた。○○さんを招待したのも、私……」
「え、どうしてそんなことを……」
俺がそう尋ねると、リリカが顔を上げた。
その目は光っていた。涙を浮かべた瞳で、こちらを見つめていた。
「○○さんに聞いてもらいたかったの……私の演奏……」
「リリカちゃん……」
外には雪が降っていた。
月明かりだけが二人を照らしている。
二人だけの、ホワイトクリスマス。
「……どうだった?」
「うん……すごくよかった。最高だったよ」
「よかった…………ねぇ○○さん」
「なんだい?」
「私、私ね…………」
その時、後ろの方で大きな音がして部屋の明かりがついた。
振り向くと、そこには折り重なるようにして倒れているルナサとメルランがいた。
「いたた……あ」
「…………」
「……姉さんたち……?」
「…………メ、メリークリスマス!」
「……こらぁーっ!」
リリカは即座に俺から離れると、突然現れた姉たちに向かって行った。
その後、虹川邸を部隊に盛大な鬼ごっこが繰り広げられたのはまた別のお話である。
「はぁはぁ……全く……」
「ははは……」
「あっ……ねぇ○○さん」
「うん?」
「その……あの時私が言ったこと……忘れてね」
「ああ、あれか……いやー、実は最後のとこだけよく聞こえなかったんだよ。なんて言ったんだい?」
「あ、そ、そうなの。じゃあ気にしないで!たいしたこと言ってないから!」
「ふーん……まぁいいけど」
リリカにはそう言ったが、実はしっかりと聞こえていた。もちろん忘れるつもりもない。
このあたりは、自分は彼女よりよっぽど狡猾だと思う。
「それにしてもなぁ……また聞きたいなー、あの演奏」
「あれは特別気が向いたってだけよ。もうやってあげないもん」
来年もまた過ごせるといいな……二人だけのホワイトクリスマス。
頬を少しだけ赤く染めて話すリリカの姿を見ながら、俺は心からそう願ったのだった。
6スレ目>>529
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幻想郷のとある場所に存在する洋館。門扉は外れ、窓は割れ、惨々たる様をさらしているその館はし
かし、幻視力に優れるものが観れば、まったく異なる姿をうかがうことができるかもしれません。実際、
とても人が住めたものではなさそうなこの館には、ちゃんと住人が存在するのです。
もっとも、在りし日の豪奢な調度の幻と同じように、その住人たちもまた幻に近い存在ではあるので
すが。
「たっだいまー!」
2月15日の朝、まったく人生が楽しくてたまらないといった風に玄関のドアを開けるメルランを、
妹がヘラヘラと出迎えます。
「おやまあ姉さんったら、朝帰りたぁいいご身分だ」
生きてるのか死んでるのかよく分からないような存在の癖に、今日のメルランはやたら生気にあふれ
ていました。まあいつもあふれているんですが、今はもっとあふれているとご理解ください。メルラン
は妹のからかいに目じりを下げ、なぜかつやつやしている頬を薄く染めました。
「だって彼が帰してくれないんだもーん」
聞く人が聞けば世界を呪いたくなるような台詞ですが、本当に心の底から嬉しそうに報告する姉の姿
を、リリカはしょうがないなあ姉さんはと苦笑交じりに眺めました。彼女とて独り身なのですが、よっ
ぽどのことでもない限りこんな顔を見せられたらおめでとうと言いたくなる。笑顔というのは実に強い
力を持っているのです。
「姉さん楽しいのはいいけど、またテンション上げすぎて夜中にトランペット鳴らしたりしなかったで
しょうね? 苦情処理が大変だったんだから」
「大丈夫よ、私だってちゃんと前回の反省を生かして、今回はバグパイプの霊持ってったから」
「そ、そういう問題なのかな……」
夜の帳も降りきった人里、今日の業をなし終えて安らかな眠りにつこうとしたときに突如として鳴り
響くスコッティシュな木管楽器の調べ。想像するに、お相手の彼が引越しを考えざるを得なくなる日は
そう遠くなさそうです。
「ところでリリカ」
メルランはそう言うと、小柄な妹の頭越しにエントランスの隅っこを見やりました。
「姉さんはどうして隅っこで体育座りをしているのかしら」
もし空気に色が付けられるのなら、その一角の空気はまったく闇一色であったに違いありません。ル
ーミアも自分のアイデンティティが奪われて半泣きです。つまりそれほどまでにルナサは落ち込んでい
た。どれくらい落ち込んでいるのかというと、それはもう大変なくらい落ち込んでいた。近寄ったが最
後、その鬱磁場にとらわれて因果の地平まっしぐらです。妹の朝帰りにもピクリとも反応しないあたり、
要するに「よっぽどのこと」があったということなのでしょうか。
リリカは姉に合わせて長姉の方を向くと、訳知り顔に口の端を吊り上げてへっへっへと声を漏らしま
した。
「それはねえ。まあ、姉さんの朝帰りとも、まったくの無関係ってわけでもないかなあ? 日付から言
って、さ」
「ふうん?」
目線で先を促すメルランに、リリカが語った内容はおおよそ次のようなものでした。
◆
○○という青年とルナサが出会ったのはいつのことだったのか、とにかくリリカが最初に○○を見た
とき、彼は館のそばの湖で太公望としゃれ込んでおり、そしてその横には姉がちょこんと座っておりま
した。一体何を話しているのかとリリカは興味を覚えたのですが、なんと何も喋っていません。ただ○
○はぼーっと釣り糸を垂れており、姉は起きてるのか寝てるのかよく分からない糸目で、しかもそれで
いて二人ともなんとなく楽しそうでした。
不思議な光景もあったもんだと陰でこっそり眺めていると、一天にわかにかき曇り、まもなく夕立と
言うには少々パンチの効きすぎた土砂降りの雨が降り出しました。姉は青年の手を取って彼を館に連れ
て行ったのですが、なんとなくタイミングを逃して出るに出られなかったリリカが大いに体を冷やした
というそんなエピソード。とにかく、妹の目から見ても、この二人が一緒にいるのは実に自然なように
見えました。もう五十年連れ添ったような夫婦がかもし出すオーラを既に会得しているがごとくでした。
また、話してみると意外にも彼は結構気さくな人柄であり、それもリリカにしてみれば中々好ましい
事柄であるように思えました。なぜかと言うと、彼女の姉は少々堅物すぎるきらいがあり、こういう男
と付き合うことによって、姉ももうちょっと柔らかくなれるのではないかと思ったからです。ただ彼は
少々鈍いようでした。どう見ても姉は彼にベタ惚れであるにも関わらず、自分に向けられる好意に対し、
一向に気づいていないようです。まあルナサがあまり表情や言語コミュニティー能力豊かではないとい
うのもあるでしょうが、おそらく、あまり異性から好かれることに慣れていないのでしょう。
しかしそれでは一向に話が進みません。姉が奥手であることもまたリリカは知っていたので、このま
ま放っておいたらおそらくあと十年は進展がないと思われました。そんなに待ってられるかと彼女は思
いました。
そこでリリカは姉を焚き付けました。バレンタインデーにプレゼントを贈れ、その場の勢いで告白し
てしまえ、云々。ルナサは何やかやと抵抗していましたが、結局妹の口車に乗り、端正なお手製チョコ
レートを作り上げたのでした。
それでまあ当日、この寒いのに相変わらず釣り糸を垂らしている――釣れるんでしょうか?――彼の
元へ、緊張のあまりふらつきがちな足に乙女の決心を支えとしたルナサが訪れたというわけなのです。
◆
「……その展開で、どうしてこうなるのよ? 普通に考えて、『好きなんです!』『僕もだよ』でめで
たしめでたしじゃない?」
メルランの疑問はもっともでした。普通に考えればそうなります。でもそうならなかったということ
は、つまりは何かが普通じゃなかったのですね。
はたして、リリカは遠い目をして、嘆息交じりに事の次第を話すのでした。
「まあこんな感じよ。まず姉さんがやってきて、『やあ』『や』と挨拶をする。ここまではいつものパ
ターンね」
「へえ」
「で、そこですぐに渡せばよかったのに、○○君の隣に座り込んじゃった。でそのまま何をするでもな
くぼーっと」
「それもいつものパターンね?」
「そうそう。それで、さすがにちょっとまずいと思ったのか、姉さんが一大決心をして沈黙を破る。
『ね、ねえ』『ん?』」
「ほうほう」
「それでねえ、姉さんも何か気のきいたことの一つでも言えばよかったのに、こう、『ん』って無造作
に」
「ロマンのかけらもないわねえ」
「で、○○君は当然まあ受け取るわね。『僕にくれるの?』『うん』『ありがとう、まさかもらえるな
んて思ってなかったから、嬉しいよ』で、爽やかに笑う」
「いい雰囲気じゃない」
いつの間にか用意されているティーセットで紅茶を堪能しつつ、声帯模写を交えながら熱演する妹に、
メルランは中々上手いなと思いながら相槌を打ちます。しかしリリカはそれに対して眉根を寄せつつ首
を振りました。
「そっから先がよくなかった。照れたのか慌てたのか、姉さんこんなこと言っちゃった。『ふ、普段お
世話になってるから、そのお礼に、と思って』」
「あー。モロ義理よね、その台詞は」
「○○君。『そんなに気を使わなくてもいいのに。でもありがとう。本命だったらもっと嬉しかったか
な、ははっ』『へ、変な冗談やめて』『はは、ごめん』……という顛末よ」
「やっちゃったのね……」
「やっちゃったのよ……」
姉妹二人で天を仰ぐ。鈍感な男と奥手な女をくっつけるのはかくも難しいものなのです。いつも元気
なメルランも、このときばかりは哀れを感じました。天の配剤を恨みました。もうちょっとこの二人の
性格なんとかならなかったんですか。
「それで、戻ってくるなり一晩中あんな感じなのよ。姉さんがよろしくやってる最中、私ずっとあのオ
ーラに耐えてたんだから少し褒めて」
「頑張ったわねリリカ」
「わーい。それで、あれどうしようかってことなんだけど」
「そうねえ。もう宇宙が滅んでしまえばいいとか思ってるわよねきっと」
「姉さんが暗くなるたびに宇宙が滅んでいたら、もう世界は三千周くらいしてるわよ。あとはそうねえ、
あぁー私のバカー、とか」
「きっと嫌われたに違いないー、とか」
「私ってなんて駄目な子なんだろうー、とか」
「もう○○君とどんな顔して会えばいいのかわからないー、とか」
好き勝手に心の中を想像されている、そのルナサはといえば相変わらず体育座りでうつむいておりま
したが、話がちゃんと聞こえている証拠には、透き通った金糸の合間から覗く耳が真っ赤なのでした。
まあ要するに大体当たっていたのでしょう。長い付き合いの姉妹ですから。
その辺はもちろんメルランリリカの両名とも分かっており、ニヤニヤしながらあーもう可愛いんだか
ら姉さんはーなどと思っているのです。仲良しですね。
そうしているところで、メルランが「ん」と何かに気づいたように顔を上げました。
「ところでリリカ、やけに臨場感たっぷりの説明だったけど、それ姉さんから聞いたの? それとも陰
でこっそり見てた?」
そうです。昨日の今日のこと、リリカがこの顛末を知るには、当事者に聞くか、こっそり見ているか
のどちらかしかありません。とは言うもののルナサから話を聞けたとは思えません。そうすると、覗き
見していたということになりますが、リリカはどっちでもないよ、と首を振りました。
「いや、私も姉さんが帰ってきたあとで、○○君に渡しに行ったから、チョコ」
その言葉を聞くやいなや、今まで微動だにしなかったルナサが、首が千切れるんじゃないかと心配に
なるような勢いで顔を上げました。そのままガン見してくる姉にかなりびびりながらも、リリカはその
先のことを話し始めます。
「い、いや、だって何が起きたのか気になったしさあ? 一応私だって知り合いなわけだし、ぎ、義理
チョコくらい渡してきたっていいじゃない!?」
「ふうん、じゃあ○○君に直接聞いたわけだ」
「そういうこと。○○君、姉さんが急に帰っちゃったもんだから、『今日は忙しかったのかな』なんて
言ってたけど」
「鈍さもそこまで行くと、もう芸よね」
「でしょ? 鈍いのよ、彼。でもね」
そこでリリカはいったん言葉を切り、にんまりと笑みを浮かべました。
「なんと○○君、この私のチョコレートを受け取りませんでした。どうしてだと思う?」
そうして、目の前の姉と、隅っこの姉を見比べました。二人ともその顔に疑問符を浮かべ、早く言え
と無言の圧力をかけてきます。リリカはそれに満足し、ゆっくりと口を開きました。
「『ルナサさんから以外はもらいたくないんだ。義理だってことは分かってるんだけど、でも、それく
らい僕にとっては大事なものだし、嬉しかったから』……どうよ、中々カッコいいこと言うじゃないの
○○君」
「へえ」
メルランが感心したように相槌を打ったのと同時、ルナサはこれまた心配になるような勢いで立ち上
がりました。目は泳ぎ、頬は染まり、何かを言いかけては止め、わたわたと落ち着きないその様子は中
々に面白いものでしたが、もちろんメルランもリリカも、それをからかうほど悪い子ではないのです。
「あー、そういえば」
メルランが思い出したようにぽつりと言いました。
「○○君、さっきも湖畔で見たなあ」
ルナサはその言葉を聞くとぴたりと静止し、数秒の逡巡のあと、何かを決意したような力強い目をし
て走り出しました。
「ちょっと、出かけてくるから」
すれ違いざまに、こんな言葉を残して。
「いってらっしゃーい」
「晩御飯がいらないときは連絡してねー」
そして妹二人は、こんな言葉をかけて、姉を送り出したのでした。
◆
「はぁ、これでようやく一件落着ね」
何事にもきちんとしているルナサにしてはほとんどありえないことに、彼女はドアを開け放したまま
出て行きました。きっと、それだけ必死だったのだと思います。リリカは苦笑交じりにドアを閉めると、
やれやれと息をつきました。
「要は○○君だけじゃなくて、姉さんも大概鈍かったってことなのねー」
「そうそう。まったく苦労させるんだから。でもこれで、ようやく収まるところに収まるってもんよ」
メルランはカップに残っていた紅茶を飲み干すと、椅子から腰を上げました。
「リリカも早く彼氏作んなって」
「大きなお世話だ」
そのままメルランは二階の自室に上がって行こうとしましたが、思い直してリリカの前まで来ると、
ぽんぽんと頭を軽く叩きました。
「な、なによ」
「よく頑張ったわね」
「何がよ」
「姉さんは行っちゃったし、泣いてもいいわよ?」
「なんで私が泣くのよ」
リリカは仏頂面で反論します。その顔はまったくいつものリリカでしたが……でも、よく見ると、ま
ぶたがほんの少し、腫れているような気もしました。
「できた妹を持って、私は幸せだわー」
メルランはそう言って、ふわふわと笑いながら今度こそ自分の部屋に行きました。残されたリリカは
しばらく一人でむくれていましたが、やがてため息一つ、頬を叩いて普段のリリカに戻ります。
そう、分かっていたんです。
どう考えたって、○○とルナサは両思い。お似合いの二人です。
だから、ちょっとくらいこじれたところで、最終的に上手く行くのは、分かりきっていました。
でも、ルナサが暗い顔で戻ってきたとき、少し……ほんの少しだけ、リリカの心のどこかが、よかっ
たと思ってしまいました。
私にもチャンスがあるかも、と思ってしまいました。
リリカはそんな自分を、とても汚いと思いました。
だから、○○の気持ちがはっきりと分かったとき、リリカの胸はナイフで刺されたように痛みました
が、同時に、とてもほっとしたのでした。
やっぱり、ちょっと泣いてしまいましたけど。
でも、もう大丈夫です。○○とルナサが腕を組んでやってきても、リリカは笑いながら冷やかすこと
ができるでしょう。
「……私も、素敵な姉さんたちを持てて、幸せだわ」
一人リリカはつぶやいて、彼女もまた二階の部屋に上がっていきます。
「あーあ、どっかにいい男いないかなあ」
その言葉を最後に部屋の扉が閉まり、真っ赤なじゅうたんの敷き詰められた美しいエントランスは、
くもの巣が張り、埃の積もった廃墟へと変わっていきます。
やがてどこからともなく楽器の演奏音が聞こえてきて、そうしてプリズムリバー邸の一日は過ぎてい
くのでした。
13スレ目>>26 うpろだ933
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それはいつもの日のことでした。
里の端っこにある小さな小さなお化け屋敷、そこにはいつも騒霊達が遊びにきて演奏をしています。
「○○ってなんかおかしいよねー」
「……うん、私達といても何もないよ」
メルランとルナサがにこにこしながら演奏を聞いていた○○に奇異な表情を浮かべ聞きました。
人間は妖怪や幽霊が普通は怖いものです。
「いいじゃん、別に邪魔するわけでもないし」
「そうね、それに誰かに聞いてもらった方が張り合いもあるしね!」
「私も……嬉しいな」
末っ子のリリカが言うとお姉さん達もそれもそうだと演奏を再開しました。
リリカも音を出そうとすると○○はにこにこ嬉しそうな顔をしながらお礼を言いました。
「ありがとう、リリカ」
「別に。あんたがいた方がお客の反応が分かりやすいし」
とリリカは素っ気なく○○に言いましたが○○は首を振り
「そうじゃない、そうだとしてもありがとう。僕、リリカの事大好きだよ」
「なっ……ッ!?」
リリカは急に○○が言い出したことに驚きを隠せません。何か言おうとしても口だけがあうあうして言葉が出てこないのです。
「ルナサも好きだしメルランも好き」
そうにこにこ笑いながら言う○○にリリカは肩すかしを喰らいました。
なんだ……、そういう事か。リリカは残念半分にホッとしました。
「姉さん達もアンタのこと好きよ。だからアンタのこと心配してるんだから」
「僕は大丈夫。それよりやっぱりリリカが一番好きだよ」
リリカはさっき安心したせいかかなりびっくりしてしまいました。
ちょっと目を泳がせながら何を言おうかとしていたら
「どうかしたの、リリカ?怒った?」
○○はちょっと悲しそうにしながらこっちを向いています。
「ち、違うよ。……それより、メルラン姉さんよりも……?」
「うん」
「ルナサ姉さんよりも?」
「うん、だってリリカは口では意地悪しても優しいもん」
「そっか……」
おやおや何だかんだでリリカも嬉しそうです。
○○と一緒ににこにこ笑いながらどんな音を出そうかと考えてるとルナサが心配そうに声を掛けてきました。
「…暗くなってきたから、○○を、家まで送って行くわ」
「いいわよ、姉さん。今日は私が送って行く」
「そう……」
「○○、暗くなってきたから帰るわ。早くしてね」
○○はそう言われると座っていた椅子に掛けていた杖を手慣れた感じで手に取り軋む床を叩きながら歩いてきました。
「わかった、ちょっと待っててね」
そう言って○○は杖で進路を決めながらスタスタリリカの下に来ると
「帰ろ?」
とにこにこしながら言いました。
しばらくしてお化け屋敷から遠ざかって歩いていく○○とリリカをルナサは心配そうに見ていました。
「心配?お姉ちゃん。大丈夫よ、リリカもいるし里の中なら妖怪も来ないわ」
「そうじゃない……、でも、今はいい」
否定しながらルナサは浮かない顔をしながらもう見えない○○とリリカが歩いていった方をじっと見ていました。
13スレ目>>222 うpろだ963
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めでたく俺の彼女であるリリカと結婚することになった。
やっぱりご挨拶は必要だよねというわけでプリズムリバー家にご招待。
よーしお姉さん方に結婚を承認してもらえるように頑張るぞー。以上。
「なんでリリカこの春うららかな季節に家の中でマフラーなんか巻いてるの」
リリカの上お姉さんであるルナサさんの言葉に俺は溢れ出てくる冷や汗を普段は持たないハンカチで拭う。
昨日の夜慌てて買ってきたチープなものだがこんな席でだらだらと汗を垂れ流しているわけにはいかない。
リリカも冷や汗なのかマフラーが暑くてなのか分からないがなんだか頬が高揚していて暑そうである。
「いいいいいや私冷え性だからね!ねっ○○」
「あれ?冷え性って手足が冷たくなるんじゃなかった?ねっ○○くん」
「はっ はいそうですねメルランさん、いやでも、首周りには血管が集中していますから、そこを暖めると血行が良くなって宜しいかと」
「へーそうなんだーさすが○○くんーねっルナサ姉○○くんすごぉい」
「・・・ふぅん本当に頭の回転がいいね○○さんは」
え?あれ?今の嫌味じゃないよなルナサさん嫌味じゃないよな?
まさかリリカみたいな明るい子の面倒を見てきた家庭の長女たる人がそんな嫌味とか・・・
そう思う俺の心自体が嫌味だよ!と俺は必死に自分をラブ&ピースな方向に持っていこうと努力するけど
ルナサさんがチラッチラと俺に視線をやりながら二回目の
「ふーん・・・○○さんは本当に頭がよく回るね・・・」
をおっしゃるのでもうほんとどうしよう俺絶対いい印象もたれてないっていうかコレでまだ俺のこと好印象だったら
俺は「もっと妹のことをよく考えろ!」と激怒しかねない勢いだしっどうしよう俺ってばなんて日頃の行いが悪いんだ・・・
俺はこれまでの人生に無いほど絶え間なく愛想笑い。というか俺宜しいかと、とかいうキャラじゃない・・・!
幾らこう、一目惚れしたリリカのライブに通いつめてなんとかリリカに告白して付き合うことになって
ほのぼの幸せ絶頂の中またもやライブに行ってリリカが演奏してる途中に何故かプロポーズしてしまい色んなメーター振り切っちゃったっ
からって、あ、あんなめちゃくちゃに、跡、つけること、なかったよな俺・・・!
どんな激しいこと、いやここでは言えないようなことだけど、したってあそこまではつけないよな・・・!
変だなあっ俺そのライブから帰ってきてからほんとにキスしかしてないのにへんだなあっあっこれほんとだからっ
俺リリカにプロポーズしちゃった事件の後は色々と慌しくて落ち着く時間も無かったしほんとにそんな何かするような間なかったんだほんとだよっ
その、ちょろっと首に何かしたくらいであとは何も・・・いや跡は、その・・・
「私リリカの首がどんなものだったか忘れたから見たい」
「いやほんと大したことない首だよ あっ嘘っなんかブツブツとか出てて気持ち悪いから見ないほうがいいよルナサ姉さん」
「私妹の首が気持ち悪い状態になってるの見たい」
「うそっじゃあうそっ 気持ち悪くないから面白くないからっ ねっ○○っ」
「あっはい、ええ、ほんとすべすべのとても健やかな首です」
「そう・・・リリカは姉には首見せないのに○○さんには見せたんだ。それってもしかして差別?」
「さささべつなんてそんな違うよ何いってんのルナサ姉さんもう」
「おっ 俺はただあの偶然リリカがマフラーを外してるところを目撃しただけで・・・」
やばいなんかもう生まれて初めて緊張で尿意が刺激されるという状態に陥ってしまった
「ルナサ姉もうっあんまり○○くんとリリカをいじめないのー あっ○○くんお菓子どんどん食べてね」
「あっそうそうメルラン姉さんの作ったかりんとうおいしいよ」
「うん○○さん確かにメルランの作ったかりんとうおいしいよ」
なんかプリズムリバー家の皆さんって全体的に統一感があるな・・・。
「で、なに」
「なにってなに?ルナサ姉さん」
「今私○○さんに話しかけたナリ」
「やだもうルナサ姉さん○○の前でナリとかやめてよっ」
「何言ってるのリリカだっていつも『おはようナリ』ってコロスケのものまねしてるじゃない!」
「やめてよやめてよメルラン姉さんのバカっ○○の前で」
「い、いや俺も・・・たまに言いますよ、ナリとか・・・うん・・・」
ナリとか今人生で初めて言ったよ・・・
でもリリカおうちでおはようナリとか言ってるんだ・・・なにそれ可愛い・・・なんかもう・・・姉妹の前のみっていうのが可愛い・・・
「・・・」
「なぁにルナサ姉むずかしい顔して」
「あははルナサ姉さんってばいつもそんな顔だからわかんないよ」
俺は姉妹の会話を聞きながらリリカの薦めてくれるかりんとうを熱いお茶と共にぽりぽり頂く。
うわぁほんとにおいしい・・・これ手作りなのか?すごいなぁ・・・リリカも意外と料理出来るけどそれはきっと家の環境もあるんだな。
「でもーリリカと○○くんもちょっと抜けてる子と頭のいい子でバランスよくていいよねっ」
「むー、抜けてるって何さ」
「いえ俺はほんとに・・・俺だってリリカに教えられることがたくさんありますから・・・」
「お、おおー」
「お、おおー」
え、今どっちが先言った?
「うう、○○は立派だなぁ」
「うんっほんとにっ○○くんってかっこいいっ好きだよー」
「好きっ・・・って姉さんはダメだよっ」
わぁ目を瞑ったらリリカが二人みたいだ・・・!ルナサさんはちょっと系統が違うけどこの二人は実にほのぼのしてていい・・・!
いいなぁこんなハーレム。うらやましいなぁ俺もこんな人生を送りたい
ということを考えていたらいつの間にかルナサさんがテーブルからいなくなっている。あれ?
身代わりに巨大なカエルのぬいぐるみが置かれていたから気付かなかった・・・って気付け俺!ノリ突っ込み!
プリズムリバー家内には人の頭脳をプリズムリバー風にする成分でも流れているのか!?
「・・・あの・・・ルナサさんはどこに・・・」
「あれ?そういえばいないねルナサ姉」
「お手洗いかな」
「どうしたんだろうね」
えっ!?まさか俺が二人ばっかりに構ってへらへらしてるから気分を害してお席を・・・!?
あぁ!まさか自分がこんなに猛烈に彼女の姉上との関係に頭を悩ませる日が来るとは少なくとも
一昨日には想像できなかったよ!人生って何が起こるかわかんないよ!俺は思わず頭を抱えて蹲りたくなるが
だめだっがんばらないと俺っ!そもそも俺ってなんかルナサさんに嫌われてるっぽいけど頑張らないと俺っ
ほんとに頑張れ俺!いつまでも子供じゃいられない!
「おまたせ」
「うわぁルナサ姉さんなに!?その格好!」
「わぁルナサ姉懐かしいもの出してきたわねー」
「懐かしいっていうか懐かしいっていうかかなり年季はいってるように見えるんだけど私の気のせい?」
気のせいっていうか気のせいじゃないっていうかルナサさんそれ所謂『甲冑』じゃないですか!?
~一言解説・『甲冑』とは?~
戦いのとき身を守るために着用する武具。胴体を覆う甲(よろい)と、頭にかぶる冑(かぶと)。/大辞泉
突如現れた現在では武具というより民芸的・工芸的価値が高く着て歩いている人・または着て戦っている人よりは
圧倒的に観賞用として利用している人が多いって言うか大多数むしろ100%なはずの甲冑を小粋に着こなしている
ルナサさんの姿に俺は・・・俺はもう一体どうすれば・・・あれなんか俺ってすごい普通の人じゃんみたいな・・・
ルナサさんは、しゃらんと時代劇のような音を立てながら鞘から日本刀を取り出す。
リリカが「ぎゃー!」と叫んで俺の腕にしがみついた。なっ、なっ、ええ!?ええっ何っルナサさんの職業って確かバイオリニストだよな!?
「ルナサ姉はねっ昔日光江戸村で一番強い殿の役のバイトをやってたのよ!」
「やってたナリ」
「それで本気で結構強かったのよ!」
「つよかったナリ」
「でも今は普通にプリズムリバー楽団の一員なのよ!」
「でも一員ナリ」
な、なにやってんだバイオリニストーー!!!!!俺はとりあえずリリカをかばって前に出る。
いやかばってっていうか、俺が斬られそうになったときリリカが前に飛び出したりとかしたら困るし・・・ってえ!?俺斬られるの!?
「なんか○○さんが意気込んで遊びに来てるからこれは・・・これはあれ。そういうイベント」
「え!?なにルナサ姉!?」
「そういうイベントってなにルナサ姉さん!?」
「メルランとリリカにはわからなくてもいい。これは私たちの問題だから」
ルナサさんが俺に刀の先を突きつける。無駄の無い動作だ。思わず目を奪われる。
カブトの下で首をかしげたルナサさんが薄く笑った。
「表に出よう。○○さん」
(そんでナリ)
「ルナサ姉さん、びっくりしたよ!まさか○○と斬り合いでもするのかと思ったー」
「リリカってばルナサ姉がそんな危ないことするわけないじゃない」
「そうよ・・・私は蚊に血を吸われたって殺さないしね」
・・・・・・・・・。
いや、いやいや・・・別に、呆れてるとか、そういうんじゃないんだよ。これはほんと。
家の庭に出た三人姉妹含む俺は、鎧姿のルナサさんが日本刀(レプリカだそうです)でざりざりと
俺と自分の間に一本の境界線を引くのを見ている。そして、用意されたのは一般家庭にあるのは珍しいような
随分立派な荒縄・・・。
なんだこれ。綱引き用?
「どうせ君は俺にリリカを下さい!とか言いに来たんでしょう!」
今までずっと俯いて暗い印象だったルナサさんが突然声を張り上げる。
そしてまた刀を流れるような動作で振り上げて、俺の目の前に突きつけた。
うお!あぶなっ・・・っていうか鎧着てて重いはずなのに俺に避ける隙を作らせないなんてルナサさん普通にかなりすごいんじゃないのか?
と思ってルナサさんの発言の意味を汲むのを忘れていたがようやく脳が受け入れて俺は物凄くどきっとする。
「・・・!」
「というかこれで言われないでただかりんとう食べて帰られても困るけど!」
「ル、ルナサ姉さんってば!なんかキャラ変わってるし変なこといって、やめ・・・」
リリカが俺とルナサさんの間に飛び出してこようとするが、俺はそれを遮る。
一瞬だけ視線を彼女の顔にやると、目が合った。
すぐに逸らしてルナサさんを見る。
「おっしゃるとおりです。今日はリリカを貰いに来ました」
俺が言うと、ルナサさんは不敵に笑って「その言葉を待ってた」と呟く。不敵に笑うとか出来たんだな。
というもしかしたら失礼なことを考えているとルナサさんは日本刀を鞘に戻して、縄を持った。ギュッと固く手首に巻きつける。
「縄を握って○○さん。種目は綱引き、ルールは簡単。この境界線を越えた方が負け」
俺は地面に刻まれた浅い茶色の溝を見る。ルナサさんに習って、しっかりと縄を掴む。
「リリカは一生勝者のものになる。つまり君が負けたらリリカは一生私たちのもので独身のイカズゴケになるの」
「なぬえええええーー!?」
「えっへへルナサ姉ってば話をややこしくするんだからぁ」
俺はなぬえええええーー!?と叫んでいるリリカを振り返る。そして不安そうな彼女の目をじっと見つめた。
大丈夫だリリカ、絶対負けないよ!
お前のために、俺はもう何にも負けないって決めたんだ!こんな初めからくじけるような俺に、お前の旦那さんなんか任せられない!
と俺が熱く思っていたら
「○○くん頑張って!あっルナサ姉は昔象使いのバイトをしていた頃象との綱引きに勝利したという過去もあるのよ!」
「過去もあるナリ」
「あと里のヒーロショーでバルタン星人の役を任されたこともあったのよ!」
「あったナリ」
ば、バルタン星人どうでもいいいいいーー!!!なんだか知られざる過去が明らかになりまくるルナサさんだが、
象・・・象くらいで!負けてたまるもんか!象なんかに怯まないぞ!象でもバルタン星人でも何でも来いってもんだ!
俺は絶対リリカと結婚するんだ!
「メルラン、コールよろしく」
「オッケー!はっけよーい」
「え?ここはよーいドン、じゃないの」
「あっそうかな」
「まぁどっちでもいいけど」
「そう?でも別によーいドンでもいいよと見せかけてはっけよーいドーン!!」
フェイントかーーーーーーーー!!!!
俺はリリカが「卑怯!なにこのひとたち!?私も人のこと言えないけど卑怯!卑怯!」と涙声で叫んでいるのを聞きながら一歩遅れたが必死に縄を引く。
うおっ・・・なにこれ!?えっ!?うそだろ!えっこれすごくない!?俺もかなり力は強いはずなのにビクともしない、というか
気を抜いたら向こう側に連れて行かれそうだ・・・えっルナサさん絶対バイオリニストだけじゃないよね仕事?カタギじゃない?
俺は足を強く踏ん張って、歯を食いしばる。うおお甲冑重たいっ・・・!重量を増すための甲冑だったのか!
ルナサさんは非常に華奢で女の子だし俺より小さいけど、甲冑を着られただけでこうも伯仲するとは。
一歩出遅れたのがかなり効いて、なかなかこちらを優勢にすることが出来ない。やっばいまさかこんなところで最大の試練・・・!!
「はっはっは!所詮そんなもの!そんなんじゃうちのリリカはあげられないよ」
「まっ○○!!頑張って!うわあああんルナサ姉さんのばかああ妹の幸せの邪魔をしないでくれよおおお」
「リリカ一生私とメルランといるのもそこそこ楽しいと思うよ」
負けるかーーー!!!
「うっ、リリカを俺に下さい!」
「いやだ!やるものか!」
「くださいってば!」
「絶対いや!」
「リリカが俺がいいっつってんだよっ」
あっ思わず悪い言葉がっ
「そうだー!!○○がいいんじゃー!!」
「なにそれ?ありえない!昔リリカはバイオリンと結婚したかったんだよ?」
「あっ○○それルナサ姉さんの嘘!私キーボードと結婚するって言ってた子だから!」
「そうそうリリカはキーボードと結婚するって言ってたのよねー トランペットの方がいいと思うんだけどなぁ」
「今は俺と結婚するって言ってるんです!!」
・・・言い返す俺も俺だが・・・
「ってか今だけじゃなくて一生俺のなんです!リリカは!」
「そうだー!!○○!おーえす!おーえす!」
「くっこしゃくな・・・メルラン手伝って!」
何!?こいつ・・・ってルナサさんにこいつ・・・とか思っちゃったよまぁいいやもうこいつ・・・!
正々堂々真剣勝負中に助っ人を頼むなんて、しかも妹に、それほどリリカを俺に渡したくないか!?
気持ちはわかるが往生際が悪いぞ!今更俺以外とリリカが結婚できるわけないだろう!今断るなら交際を容認するな!
「わーい皆で綱引きなんてハッピー」
「あっ二人ともずるい!二対一なんて・・・○○私もっ」
がっばあとリリカは綱じゃなくて俺にしがみついてくる。ええ!?リリカなにそれ一種の妨害!?
びっくりして二歩ぐらい前に進んじゃったよ!
「っしゃあーー!バカめ、若さが仇になったな!」
「ルナサ姉も十分若いわよー」
「だよね」
来た!力緩んだぞっチャンス!今で決める!
「リリカ今だ引くぞ!」
「っしゃあーー!」
あっやっぱり姉妹だ
「っていうかーちょうヒキョいんですけどー私だってそれなりに長い年月を過ごしてきたわけだしぃ体力とかー」
「もうルナサ姉ってばー今度はギャル系?ダメよ負けたのにグチグチ言うのはクズのすることよ」
「く、クズ・・・」
「メ、メルラン姉さんクズまで言ったらさすがにかわいそうだよ」
メルランさんは結構おくち悪いな。
甲冑を庭の真ん中でガチャガチャ脱いで元の格好に戻ったルナサさんが言う。
「じゃあなに・・・○○さんはリリカを貰い受けた末どうするの」
俺は慌てて姿勢を正す。
「そ、それはもちろん・・・彼女と結婚させていただきたいと思ってます」
「ふぅん・・・奴隷にするんじゃなくて?」
GAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!
なんでルナサさんがあの台詞を知っているんだ!?
この前ポロッと言ってしまった『リリカは俺の奴隷だもんな?』って冗談のような実際冗談に近いけどあの台詞をなんで!?
俺は耳を塞いでその場で昏倒しそうになったがすんでのところで堪えた。え!?えっ!もしかしてもしかして!?あの現場見られてた!?
「・・・ってリリカのこと思ってそうだから言ってみたんだけど」
「お、思ってるわけないじゃん○○がまさか・・・ねえ?」
「あっははは そそうだよ思ってるわけなななないじゃないか・・・ねえ?」
リリカも俺も汗だらだらだ。
よかった、どうやらただのハッタリだったらしい・・・にしては的を射すぎているが。
俺が胸を撫で下ろすなり恥ずかしさで血圧が140くらいになるなりしていたらルナサさんが鎧と兜を抱えて
「じゃあこれ片付けてくるから」と言って部屋の中に入っていく。
・・・これで・・・いいのか・・・?
何か想像してたのと9割くらい違ったな・・・と思っていると、縄を片付けていたメルランさんが
「しばらくお家に入らないでいてあげようねー」
と言う。
「え?どうして?」
「なんでもー」
メルランさんはくすくす笑ってる。・・・この人いっつも笑ってるなー
窓から明かりが漏れて、リリカの家の中がくっきりと俺の目に映る。
でもルナサさんは見えるところにはいないようだ。リリカは縄をぐるぐるまとめて物置に置きに行ってる。
「リリカのことどういう風にしてもいいけど、仲良くしてあげてね」
「はい・・・って、あいや、どういう風に・・・ほ、本当に大事にするつもりでいますから」
「うんっ!」
メルランさんがにこにこ笑っている。
リリカと違ってメルランさんはふわふわした人だけど、雰囲気がよく似てる。
一見似てないルナサさんとも、ちょっとした仕草や表情がとてもよく似てるし。うん、やっぱり姉妹だ。
メルランさんは明るい笑顔を浮かべながら、夜空を見上げて、長い睫毛を瞬かせた。
「奴隷だもんね、かぁ・・・」
「ぶはっ」
俺は飲んでもいないものを噴出してしまったがメルランさんはスルー。
「私も若い頃、よく言ったなあ・・・男の人に」
俺は聞かなかったことにして夜空を見上げた。幸せの形は人それぞれ。俺もきっと、リリカと世界一の幸せ者になるぞ。
「今以上に彼女を幸せにしてみせます、絶対」
14スレ目>>22 うpろだ1015
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八雲紫の提案した神無月の外界旅行、プリズムリバー3姉妹ももちろん参加している。
しかし今回はそれぞれの想い人と一緒に、3人別々での行動である。
そして僕はリリカと一緒に幻想郷の外への旅行であり帰省を楽しんでいる。
「うっわー!うわー!!ねぇ○○!!あれ何あれ!!?」
「あれは飛行機って言って「あれは!?」」
さっきからずっとこの調子、電車の中で何かを指さしては答える前に次の物を指さす。
騒霊の名に恥じないせわしなさだね、全く。
まぁ、はしゃいでるリリカも可愛いからいいんだけどね。
そんなことを繰り返しているといつの間にか夕方、電車を降りる時間になった。
電車で少しいちゃいちゃするのも良かったと思うんだけど、結局質問攻めで終わってしまった。
まぁいいさ、時間はまだまだたっぷりあるんだ。
駅のホームは幻想郷よりも人が多くて、リリカの目も幾分か輝いて見える。
やっぱり演奏したいのだろう、アーティストの性って奴かもね。
離れないように指をからませ合った手を少し緩めてから
わかった上で、僕はあえて聞いた。
「演奏・・・したい?」
「うん!!!」
あぁ分かってたよ、僕とのデートのはずだったんだけどなぁ・・・。
「演奏ね、路上ライブでもやってみたらどうかな?」
許可とってないとマズかった気がするけどまぁいいよね。
ふと目を向けるとリリカはすでにキーボードを弾き始めていた。
呆れつつも僕は既に集まりだした観客の中に紛れる。
幻想の廃れた世界で、しかし僕にとっては見慣れ聞きなれた幻想の音を奏でるリリカは、やはり少し幻想的であった。
それが音のせいなのか、夕焼けを受けているリリカの美しさのせいなのかは分からない。
その本物の幻想に惹かれ、リリカに惹かれて人も集まり始めた。
幻想を捨てたふりをした人たちが、心の底で求めていた幻想の音楽。
さぁ、このライブはどこまで大きくなるんだろうね。
「ありがとーございましたー!!」
盛大な拍手とともにリリカのライブが終わった
リリカが演奏を終えて感謝の言葉を述べる頃には既に日は落ちていた。
人数もざっと後ろを見ただけで300人はいる。
中には警察も―――って、いいんですか警察さん。
僕は山のような人ごみをかき分けて、リリカの手をつかみ人だかりを抜けた。
「さぁ、そろそろ行こうか」
「うん、どこ行く?」
「とりあえずは宿にいかないと・・・」
「そうだね、それじゃしゅっぱーつ!!」
左手で僕の手を握りつつ満面の笑みでこぶしを上げるリリカ。
あぁもう、実は時間くいすぎて少し怒ってたんだけど、こんな笑顔見たら文句なんていえないや。
若干観客たちからねたみの視線が痛いです・・・おお、パルスィパルスィ。
宿泊先は予想外に大きなホテルだった。
紫さんは一体どうやってこんなところに予約を取ったんだろうか・・・
「さすがに部屋はスイートルームじゃなかったか」
ま、当たり前だよね。
するとリリカは僕の肘に抱きついて
「○○と一緒ならどんな部屋でもいいんだよ♪」と満面の笑みで言ってきた。
嬉しいこと言ってくれるじゃない・・・恥ずかしいけどね
「それじゃ僕は先にシャワー浴びてくるね」
にやけた顔のごまかしも含めてそう言い残し僕は脱衣所へはいる
――数分後
「ふぅ、僕は出たけどリリカも入る?」
「それよりすごいねー!ベッドふっかふかー!!」
「・・・あれ?」
おかしい、さっき二つあったベッドが一つしかない
本来ベッドがあるべき場所には・・・
巨大なスキマがその口を閉じようとしていた
「こらああああああああああああああああああああああ!!!!!」
なんていうか、まったく、あの人は・・・
「リリカもなんで気付かないのさ、真横でベッドが落下してるんだよ?」
「ん?あたしは気付いてたよー」
―――あぁ、もう、この子は
「でさっ!ひっじょーに残念ながらベッドは一つしかないから」
―――本当にずる賢くて
「一緒に寝よ?」
―――本当に
「あぁ、ベッドが一つしかないんじゃしょうがないな」
―――本当に可愛い僕のお姫様だ
翌朝布団を全部はがれ、僕が風邪をひいたけれどそれはここで話すことでもないだろうし、別の機会に。
新ろだ64
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幻想郷では例年通り、紅魔館でパーティが開かれていた。それには毎年多数の人間や妖怪が招待され、俺も参加していた。
楽しい時間が過ぎていく。ふと時計を見ると、短針が11の文字を指そうとしていた。
「あっ!」
俺は慌てて紅魔館を後にした。実は今日は、もう一つ招待を受けていたのだ。
「12月24日の23時に、私たちの屋敷でクリスマスコンサートを開きます。是非ご来場ください プリズムリバー」
その道中で、手紙を今一度読み返す。しかし、この招待には奇妙な点があった。
まずどう考えても時間が遅い。もう深夜ではないか。こんな時間に、誰か来るのだろうか。
なにより、当の三姉妹はついさっき紅魔館で演奏をしていたのである。どういうことなのだろうか。
まぁ俺も深夜まであそこで騒いでいるのはあまり気が進まなかったので、別によかったのだが。
そうこうしているうちに、プリズムリバーの屋敷に到着した。
「すいませーん」
「ど、どうぞ!」
三女リリカのものと思われる声がしたので、ドアを開けた。
部屋の中は真っ暗だった。
「……間に合った……」
闇の中から小さな声が聞こえたが、気にしないでおく。
しばらく待っていると、部屋の一箇所に光がさした。
スポットライトの先には、一人の少女が立っていた。リリカだ。
なんとなく落ち着かない様子のリリカは、一度大きく息を吸うと口を開いた。
「ようこそ私のコンサートへ。では、聞いてください」
演奏が始まった。
いつもは手を使わずに演奏しているリリカが、今日は手を使ってキーボードを弾いていた。
その細い指が奏でる調べは、クリスマスソング。俺が一度も聞いたこともないような、幻想的な音。
俺はその場に自分とリリカしかいないことにも気がつかず、演奏に聞き入っていた。
「すごい……」
その時、突然スポットライトの明かりが消えた。
再び真っ暗になった部屋の中から、リリカの慌てる声が聞こえた。
「え、な、何!」
「リリカちゃん!」
俺は急に不安になり、真っ暗な部屋の中に足を踏み入れた。
「リリカちゃーん!」
「○○さーん!」
暗闇の中、二人が互いを呼び合う声だけが響く。
どこまで進んだだろうか。何かにあたるような感触がした。
「きゃっ!」
すぐ近くで、リリカの声がした。
手を伸ばすと、何かに触れた。俺はそれが何なのか直感的にわかった。
リリカの手を掴み、近くに引き寄せた。
「あ……」
「リリカちゃん、大丈夫?」
「う、うん……」
月が高い位置に来たようで、窓から月明かりがさしこんできた。
それでようやく、リリカの姿を確認することができた。
リリカは恥ずかしそうに俯いていた。
「ねぇ、お姉さんたちは?」
「…………だけ」
「え?」
「今日は、私だけ……」
消え入りそうな声で、リリカが言った。
リリカは言葉を続ける。
「私だけ、抜け出してきた。○○さんを招待したのも、私……」
「え、どうしてそんなことを……」
俺がそう尋ねると、リリカが顔を上げた。
その目は光っていた。涙を浮かべた瞳で、こちらを見つめていた。
「○○さんに聞いてもらいたかったの……私の演奏……」
「リリカちゃん……」
外には雪が降っていた。
月明かりだけが二人を照らしている。
二人だけの、ホワイトクリスマス。
「……どうだった?」
「うん……すごくよかった。最高だったよ」
「よかった…………ねぇ○○さん」
「なんだい?」
「私、私ね…………」
その時、後ろの方で大きな音がして部屋の明かりがついた。
振り向くと、そこには折り重なるようにして倒れているルナサとメルランがいた。
「いたた……あ」
「…………」
「……姉さんたち……?」
「…………メ、メリークリスマス!」
「……こらぁーっ!」
リリカは即座に俺から離れると、突然現れた姉たちに向かって行った。
その後、虹川邸を部隊に盛大な鬼ごっこが繰り広げられたのはまた別のお話である。
「はぁはぁ……全く……」
「ははは……」
「あっ……ねぇ○○さん」
「うん?」
「その……あの時私が言ったこと……忘れてね」
「ああ、あれか……いやー、実は最後のとこだけよく聞こえなかったんだよ。なんて言ったんだい?」
「あ、そ、そうなの。じゃあ気にしないで!たいしたこと言ってないから!」
「ふーん……まぁいいけど」
リリカにはそう言ったが、実はしっかりと聞こえていた。もちろん忘れるつもりもない。
このあたりは、自分は彼女よりよっぽど狡猾だと思う。
「それにしてもなぁ……また聞きたいなー、あの演奏」
「あれは特別気が向いたってだけよ。もうやってあげないもん」
来年もまた過ごせるといいな……二人だけのホワイトクリスマス。
頬を少しだけ赤く染めて話すリリカの姿を見ながら、俺は心からそう願ったのだった。
6スレ目>>529
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幻想郷のとある場所に存在する洋館。門扉は外れ、窓は割れ、惨々たる様をさらしているその館はし
かし、幻視力に優れるものが観れば、まったく異なる姿をうかがうことができるかもしれません。実際、
とても人が住めたものではなさそうなこの館には、ちゃんと住人が存在するのです。
もっとも、在りし日の豪奢な調度の幻と同じように、その住人たちもまた幻に近い存在ではあるので
すが。
「たっだいまー!」
2月15日の朝、まったく人生が楽しくてたまらないといった風に玄関のドアを開けるメルランを、
妹がヘラヘラと出迎えます。
「おやまあ姉さんったら、朝帰りたぁいいご身分だ」
生きてるのか死んでるのかよく分からないような存在の癖に、今日のメルランはやたら生気にあふれ
ていました。まあいつもあふれているんですが、今はもっとあふれているとご理解ください。メルラン
は妹のからかいに目じりを下げ、なぜかつやつやしている頬を薄く染めました。
「だって彼が帰してくれないんだもーん」
聞く人が聞けば世界を呪いたくなるような台詞ですが、本当に心の底から嬉しそうに報告する姉の姿
を、リリカはしょうがないなあ姉さんはと苦笑交じりに眺めました。彼女とて独り身なのですが、よっ
ぽどのことでもない限りこんな顔を見せられたらおめでとうと言いたくなる。笑顔というのは実に強い
力を持っているのです。
「姉さん楽しいのはいいけど、またテンション上げすぎて夜中にトランペット鳴らしたりしなかったで
しょうね? 苦情処理が大変だったんだから」
「大丈夫よ、私だってちゃんと前回の反省を生かして、今回はバグパイプの霊持ってったから」
「そ、そういう問題なのかな……」
夜の帳も降りきった人里、今日の業をなし終えて安らかな眠りにつこうとしたときに突如として鳴り
響くスコッティシュな木管楽器の調べ。想像するに、お相手の彼が引越しを考えざるを得なくなる日は
そう遠くなさそうです。
「ところでリリカ」
メルランはそう言うと、小柄な妹の頭越しにエントランスの隅っこを見やりました。
「姉さんはどうして隅っこで体育座りをしているのかしら」
もし空気に色が付けられるのなら、その一角の空気はまったく闇一色であったに違いありません。ル
ーミアも自分のアイデンティティが奪われて半泣きです。つまりそれほどまでにルナサは落ち込んでい
た。どれくらい落ち込んでいるのかというと、それはもう大変なくらい落ち込んでいた。近寄ったが最
後、その鬱磁場にとらわれて因果の地平まっしぐらです。妹の朝帰りにもピクリとも反応しないあたり、
要するに「よっぽどのこと」があったということなのでしょうか。
リリカは姉に合わせて長姉の方を向くと、訳知り顔に口の端を吊り上げてへっへっへと声を漏らしま
した。
「それはねえ。まあ、姉さんの朝帰りとも、まったくの無関係ってわけでもないかなあ? 日付から言
って、さ」
「ふうん?」
目線で先を促すメルランに、リリカが語った内容はおおよそ次のようなものでした。
◆
○○という青年とルナサが出会ったのはいつのことだったのか、とにかくリリカが最初に○○を見た
とき、彼は館のそばの湖で太公望としゃれ込んでおり、そしてその横には姉がちょこんと座っておりま
した。一体何を話しているのかとリリカは興味を覚えたのですが、なんと何も喋っていません。ただ○
○はぼーっと釣り糸を垂れており、姉は起きてるのか寝てるのかよく分からない糸目で、しかもそれで
いて二人ともなんとなく楽しそうでした。
不思議な光景もあったもんだと陰でこっそり眺めていると、一天にわかにかき曇り、まもなく夕立と
言うには少々パンチの効きすぎた土砂降りの雨が降り出しました。姉は青年の手を取って彼を館に連れ
て行ったのですが、なんとなくタイミングを逃して出るに出られなかったリリカが大いに体を冷やした
というそんなエピソード。とにかく、妹の目から見ても、この二人が一緒にいるのは実に自然なように
見えました。もう五十年連れ添ったような夫婦がかもし出すオーラを既に会得しているがごとくでした。
また、話してみると意外にも彼は結構気さくな人柄であり、それもリリカにしてみれば中々好ましい
事柄であるように思えました。なぜかと言うと、彼女の姉は少々堅物すぎるきらいがあり、こういう男
と付き合うことによって、姉ももうちょっと柔らかくなれるのではないかと思ったからです。ただ彼は
少々鈍いようでした。どう見ても姉は彼にベタ惚れであるにも関わらず、自分に向けられる好意に対し、
一向に気づいていないようです。まあルナサがあまり表情や言語コミュニティー能力豊かではないとい
うのもあるでしょうが、おそらく、あまり異性から好かれることに慣れていないのでしょう。
しかしそれでは一向に話が進みません。姉が奥手であることもまたリリカは知っていたので、このま
ま放っておいたらおそらくあと十年は進展がないと思われました。そんなに待ってられるかと彼女は思
いました。
そこでリリカは姉を焚き付けました。バレンタインデーにプレゼントを贈れ、その場の勢いで告白し
てしまえ、云々。ルナサは何やかやと抵抗していましたが、結局妹の口車に乗り、端正なお手製チョコ
レートを作り上げたのでした。
それでまあ当日、この寒いのに相変わらず釣り糸を垂らしている――釣れるんでしょうか?――彼の
元へ、緊張のあまりふらつきがちな足に乙女の決心を支えとしたルナサが訪れたというわけなのです。
◆
「……その展開で、どうしてこうなるのよ? 普通に考えて、『好きなんです!』『僕もだよ』でめで
たしめでたしじゃない?」
メルランの疑問はもっともでした。普通に考えればそうなります。でもそうならなかったということ
は、つまりは何かが普通じゃなかったのですね。
はたして、リリカは遠い目をして、嘆息交じりに事の次第を話すのでした。
「まあこんな感じよ。まず姉さんがやってきて、『やあ』『や』と挨拶をする。ここまではいつものパ
ターンね」
「へえ」
「で、そこですぐに渡せばよかったのに、○○君の隣に座り込んじゃった。でそのまま何をするでもな
くぼーっと」
「それもいつものパターンね?」
「そうそう。それで、さすがにちょっとまずいと思ったのか、姉さんが一大決心をして沈黙を破る。
『ね、ねえ』『ん?』」
「ほうほう」
「それでねえ、姉さんも何か気のきいたことの一つでも言えばよかったのに、こう、『ん』って無造作
に」
「ロマンのかけらもないわねえ」
「で、○○君は当然まあ受け取るわね。『僕にくれるの?』『うん』『ありがとう、まさかもらえるな
んて思ってなかったから、嬉しいよ』で、爽やかに笑う」
「いい雰囲気じゃない」
いつの間にか用意されているティーセットで紅茶を堪能しつつ、声帯模写を交えながら熱演する妹に、
メルランは中々上手いなと思いながら相槌を打ちます。しかしリリカはそれに対して眉根を寄せつつ首
を振りました。
「そっから先がよくなかった。照れたのか慌てたのか、姉さんこんなこと言っちゃった。『ふ、普段お
世話になってるから、そのお礼に、と思って』」
「あー。モロ義理よね、その台詞は」
「○○君。『そんなに気を使わなくてもいいのに。でもありがとう。本命だったらもっと嬉しかったか
な、ははっ』『へ、変な冗談やめて』『はは、ごめん』……という顛末よ」
「やっちゃったのね……」
「やっちゃったのよ……」
姉妹二人で天を仰ぐ。鈍感な男と奥手な女をくっつけるのはかくも難しいものなのです。いつも元気
なメルランも、このときばかりは哀れを感じました。天の配剤を恨みました。もうちょっとこの二人の
性格なんとかならなかったんですか。
「それで、戻ってくるなり一晩中あんな感じなのよ。姉さんがよろしくやってる最中、私ずっとあのオ
ーラに耐えてたんだから少し褒めて」
「頑張ったわねリリカ」
「わーい。それで、あれどうしようかってことなんだけど」
「そうねえ。もう宇宙が滅んでしまえばいいとか思ってるわよねきっと」
「姉さんが暗くなるたびに宇宙が滅んでいたら、もう世界は三千周くらいしてるわよ。あとはそうねえ、
あぁー私のバカー、とか」
「きっと嫌われたに違いないー、とか」
「私ってなんて駄目な子なんだろうー、とか」
「もう○○君とどんな顔して会えばいいのかわからないー、とか」
好き勝手に心の中を想像されている、そのルナサはといえば相変わらず体育座りでうつむいておりま
したが、話がちゃんと聞こえている証拠には、透き通った金糸の合間から覗く耳が真っ赤なのでした。
まあ要するに大体当たっていたのでしょう。長い付き合いの姉妹ですから。
その辺はもちろんメルランリリカの両名とも分かっており、ニヤニヤしながらあーもう可愛いんだか
ら姉さんはーなどと思っているのです。仲良しですね。
そうしているところで、メルランが「ん」と何かに気づいたように顔を上げました。
「ところでリリカ、やけに臨場感たっぷりの説明だったけど、それ姉さんから聞いたの? それとも陰
でこっそり見てた?」
そうです。昨日の今日のこと、リリカがこの顛末を知るには、当事者に聞くか、こっそり見ているか
のどちらかしかありません。とは言うもののルナサから話を聞けたとは思えません。そうすると、覗き
見していたということになりますが、リリカはどっちでもないよ、と首を振りました。
「いや、私も姉さんが帰ってきたあとで、○○君に渡しに行ったから、チョコ」
その言葉を聞くやいなや、今まで微動だにしなかったルナサが、首が千切れるんじゃないかと心配に
なるような勢いで顔を上げました。そのままガン見してくる姉にかなりびびりながらも、リリカはその
先のことを話し始めます。
「い、いや、だって何が起きたのか気になったしさあ? 一応私だって知り合いなわけだし、ぎ、義理
チョコくらい渡してきたっていいじゃない!?」
「ふうん、じゃあ○○君に直接聞いたわけだ」
「そういうこと。○○君、姉さんが急に帰っちゃったもんだから、『今日は忙しかったのかな』なんて
言ってたけど」
「鈍さもそこまで行くと、もう芸よね」
「でしょ? 鈍いのよ、彼。でもね」
そこでリリカはいったん言葉を切り、にんまりと笑みを浮かべました。
「なんと○○君、この私のチョコレートを受け取りませんでした。どうしてだと思う?」
そうして、目の前の姉と、隅っこの姉を見比べました。二人ともその顔に疑問符を浮かべ、早く言え
と無言の圧力をかけてきます。リリカはそれに満足し、ゆっくりと口を開きました。
「『ルナサさんから以外はもらいたくないんだ。義理だってことは分かってるんだけど、でも、それく
らい僕にとっては大事なものだし、嬉しかったから』……どうよ、中々カッコいいこと言うじゃないの
○○君」
「へえ」
メルランが感心したように相槌を打ったのと同時、ルナサはこれまた心配になるような勢いで立ち上
がりました。目は泳ぎ、頬は染まり、何かを言いかけては止め、わたわたと落ち着きないその様子は中
々に面白いものでしたが、もちろんメルランもリリカも、それをからかうほど悪い子ではないのです。
「あー、そういえば」
メルランが思い出したようにぽつりと言いました。
「○○君、さっきも湖畔で見たなあ」
ルナサはその言葉を聞くとぴたりと静止し、数秒の逡巡のあと、何かを決意したような力強い目をし
て走り出しました。
「ちょっと、出かけてくるから」
すれ違いざまに、こんな言葉を残して。
「いってらっしゃーい」
「晩御飯がいらないときは連絡してねー」
そして妹二人は、こんな言葉をかけて、姉を送り出したのでした。
◆
「はぁ、これでようやく一件落着ね」
何事にもきちんとしているルナサにしてはほとんどありえないことに、彼女はドアを開け放したまま
出て行きました。きっと、それだけ必死だったのだと思います。リリカは苦笑交じりにドアを閉めると、
やれやれと息をつきました。
「要は○○君だけじゃなくて、姉さんも大概鈍かったってことなのねー」
「そうそう。まったく苦労させるんだから。でもこれで、ようやく収まるところに収まるってもんよ」
メルランはカップに残っていた紅茶を飲み干すと、椅子から腰を上げました。
「リリカも早く彼氏作んなって」
「大きなお世話だ」
そのままメルランは二階の自室に上がって行こうとしましたが、思い直してリリカの前まで来ると、
ぽんぽんと頭を軽く叩きました。
「な、なによ」
「よく頑張ったわね」
「何がよ」
「姉さんは行っちゃったし、泣いてもいいわよ?」
「なんで私が泣くのよ」
リリカは仏頂面で反論します。その顔はまったくいつものリリカでしたが……でも、よく見ると、ま
ぶたがほんの少し、腫れているような気もしました。
「できた妹を持って、私は幸せだわー」
メルランはそう言って、ふわふわと笑いながら今度こそ自分の部屋に行きました。残されたリリカは
しばらく一人でむくれていましたが、やがてため息一つ、頬を叩いて普段のリリカに戻ります。
そう、分かっていたんです。
どう考えたって、○○とルナサは両思い。お似合いの二人です。
だから、ちょっとくらいこじれたところで、最終的に上手く行くのは、分かりきっていました。
でも、ルナサが暗い顔で戻ってきたとき、少し……ほんの少しだけ、リリカの心のどこかが、よかっ
たと思ってしまいました。
私にもチャンスがあるかも、と思ってしまいました。
リリカはそんな自分を、とても汚いと思いました。
だから、○○の気持ちがはっきりと分かったとき、リリカの胸はナイフで刺されたように痛みました
が、同時に、とてもほっとしたのでした。
やっぱり、ちょっと泣いてしまいましたけど。
でも、もう大丈夫です。○○とルナサが腕を組んでやってきても、リリカは笑いながら冷やかすこと
ができるでしょう。
「……私も、素敵な姉さんたちを持てて、幸せだわ」
一人リリカはつぶやいて、彼女もまた二階の部屋に上がっていきます。
「あーあ、どっかにいい男いないかなあ」
その言葉を最後に部屋の扉が閉まり、真っ赤なじゅうたんの敷き詰められた美しいエントランスは、
くもの巣が張り、埃の積もった廃墟へと変わっていきます。
やがてどこからともなく楽器の演奏音が聞こえてきて、そうしてプリズムリバー邸の一日は過ぎてい
くのでした。
13スレ目>>26 うpろだ933
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それはいつもの日のことでした。
里の端っこにある小さな小さなお化け屋敷、そこにはいつも騒霊達が遊びにきて演奏をしています。
「○○ってなんかおかしいよねー」
「……うん、私達といても何もないよ」
メルランとルナサがにこにこしながら演奏を聞いていた○○に奇異な表情を浮かべ聞きました。
人間は妖怪や幽霊が普通は怖いものです。
「いいじゃん、別に邪魔するわけでもないし」
「そうね、それに誰かに聞いてもらった方が張り合いもあるしね!」
「私も……嬉しいな」
末っ子のリリカが言うとお姉さん達もそれもそうだと演奏を再開しました。
リリカも音を出そうとすると○○はにこにこ嬉しそうな顔をしながらお礼を言いました。
「ありがとう、リリカ」
「別に。あんたがいた方がお客の反応が分かりやすいし」
とリリカは素っ気なく○○に言いましたが○○は首を振り
「そうじゃない、そうだとしてもありがとう。僕、リリカの事大好きだよ」
「なっ……ッ!?」
リリカは急に○○が言い出したことに驚きを隠せません。何か言おうとしても口だけがあうあうして言葉が出てこないのです。
「ルナサも好きだしメルランも好き」
そうにこにこ笑いながら言う○○にリリカは肩すかしを喰らいました。
なんだ……、そういう事か。リリカは残念半分にホッとしました。
「姉さん達もアンタのこと好きよ。だからアンタのこと心配してるんだから」
「僕は大丈夫。それよりやっぱりリリカが一番好きだよ」
リリカはさっき安心したせいかかなりびっくりしてしまいました。
ちょっと目を泳がせながら何を言おうかとしていたら
「どうかしたの、リリカ?怒った?」
○○はちょっと悲しそうにしながらこっちを向いています。
「ち、違うよ。……それより、メルラン姉さんよりも……?」
「うん」
「ルナサ姉さんよりも?」
「うん、だってリリカは口では意地悪しても優しいもん」
「そっか……」
おやおや何だかんだでリリカも嬉しそうです。
○○と一緒ににこにこ笑いながらどんな音を出そうかと考えてるとルナサが心配そうに声を掛けてきました。
「…暗くなってきたから、○○を、家まで送って行くわ」
「いいわよ、姉さん。今日は私が送って行く」
「そう……」
「○○、暗くなってきたから帰るわ。早くしてね」
○○はそう言われると座っていた椅子に掛けていた杖を手慣れた感じで手に取り軋む床を叩きながら歩いてきました。
「わかった、ちょっと待っててね」
そう言って○○は杖で進路を決めながらスタスタリリカの下に来ると
「帰ろ?」
とにこにこしながら言いました。
しばらくしてお化け屋敷から遠ざかって歩いていく○○とリリカをルナサは心配そうに見ていました。
「心配?お姉ちゃん。大丈夫よ、リリカもいるし里の中なら妖怪も来ないわ」
「そうじゃない……、でも、今はいい」
否定しながらルナサは浮かない顔をしながらもう見えない○○とリリカが歩いていった方をじっと見ていました。
13スレ目>>222 うpろだ963
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めでたく俺の彼女であるリリカと結婚することになった。
やっぱりご挨拶は必要だよねというわけでプリズムリバー家にご招待。
よーしお姉さん方に結婚を承認してもらえるように頑張るぞー。以上。
「なんでリリカこの春うららかな季節に家の中でマフラーなんか巻いてるの」
リリカの上お姉さんであるルナサさんの言葉に俺は溢れ出てくる冷や汗を普段は持たないハンカチで拭う。
昨日の夜慌てて買ってきたチープなものだがこんな席でだらだらと汗を垂れ流しているわけにはいかない。
リリカも冷や汗なのかマフラーが暑くてなのか分からないがなんだか頬が高揚していて暑そうである。
「いいいいいや私冷え性だからね!ねっ○○」
「あれ?冷え性って手足が冷たくなるんじゃなかった?ねっ○○くん」
「はっ はいそうですねメルランさん、いやでも、首周りには血管が集中していますから、そこを暖めると血行が良くなって宜しいかと」
「へーそうなんだーさすが○○くんーねっルナサ姉○○くんすごぉい」
「・・・ふぅん本当に頭の回転がいいね○○さんは」
え?あれ?今の嫌味じゃないよなルナサさん嫌味じゃないよな?
まさかリリカみたいな明るい子の面倒を見てきた家庭の長女たる人がそんな嫌味とか・・・
そう思う俺の心自体が嫌味だよ!と俺は必死に自分をラブ&ピースな方向に持っていこうと努力するけど
ルナサさんがチラッチラと俺に視線をやりながら二回目の
「ふーん・・・○○さんは本当に頭がよく回るね・・・」
をおっしゃるのでもうほんとどうしよう俺絶対いい印象もたれてないっていうかコレでまだ俺のこと好印象だったら
俺は「もっと妹のことをよく考えろ!」と激怒しかねない勢いだしっどうしよう俺ってばなんて日頃の行いが悪いんだ・・・
俺はこれまでの人生に無いほど絶え間なく愛想笑い。というか俺宜しいかと、とかいうキャラじゃない・・・!
幾らこう、一目惚れしたリリカのライブに通いつめてなんとかリリカに告白して付き合うことになって
ほのぼの幸せ絶頂の中またもやライブに行ってリリカが演奏してる途中に何故かプロポーズしてしまい色んなメーター振り切っちゃったっ
からって、あ、あんなめちゃくちゃに、跡、つけること、なかったよな俺・・・!
どんな激しいこと、いやここでは言えないようなことだけど、したってあそこまではつけないよな・・・!
変だなあっ俺そのライブから帰ってきてからほんとにキスしかしてないのにへんだなあっあっこれほんとだからっ
俺リリカにプロポーズしちゃった事件の後は色々と慌しくて落ち着く時間も無かったしほんとにそんな何かするような間なかったんだほんとだよっ
その、ちょろっと首に何かしたくらいであとは何も・・・いや跡は、その・・・
「私リリカの首がどんなものだったか忘れたから見たい」
「いやほんと大したことない首だよ あっ嘘っなんかブツブツとか出てて気持ち悪いから見ないほうがいいよルナサ姉さん」
「私妹の首が気持ち悪い状態になってるの見たい」
「うそっじゃあうそっ 気持ち悪くないから面白くないからっ ねっ○○っ」
「あっはい、ええ、ほんとすべすべのとても健やかな首です」
「そう・・・リリカは姉には首見せないのに○○さんには見せたんだ。それってもしかして差別?」
「さささべつなんてそんな違うよ何いってんのルナサ姉さんもう」
「おっ 俺はただあの偶然リリカがマフラーを外してるところを目撃しただけで・・・」
やばいなんかもう生まれて初めて緊張で尿意が刺激されるという状態に陥ってしまった
「ルナサ姉もうっあんまり○○くんとリリカをいじめないのー あっ○○くんお菓子どんどん食べてね」
「あっそうそうメルラン姉さんの作ったかりんとうおいしいよ」
「うん○○さん確かにメルランの作ったかりんとうおいしいよ」
なんかプリズムリバー家の皆さんって全体的に統一感があるな・・・。
「で、なに」
「なにってなに?ルナサ姉さん」
「今私○○さんに話しかけたナリ」
「やだもうルナサ姉さん○○の前でナリとかやめてよっ」
「何言ってるのリリカだっていつも『おはようナリ』ってコロスケのものまねしてるじゃない!」
「やめてよやめてよメルラン姉さんのバカっ○○の前で」
「い、いや俺も・・・たまに言いますよ、ナリとか・・・うん・・・」
ナリとか今人生で初めて言ったよ・・・
でもリリカおうちでおはようナリとか言ってるんだ・・・なにそれ可愛い・・・なんかもう・・・姉妹の前のみっていうのが可愛い・・・
「・・・」
「なぁにルナサ姉むずかしい顔して」
「あははルナサ姉さんってばいつもそんな顔だからわかんないよ」
俺は姉妹の会話を聞きながらリリカの薦めてくれるかりんとうを熱いお茶と共にぽりぽり頂く。
うわぁほんとにおいしい・・・これ手作りなのか?すごいなぁ・・・リリカも意外と料理出来るけどそれはきっと家の環境もあるんだな。
「でもーリリカと○○くんもちょっと抜けてる子と頭のいい子でバランスよくていいよねっ」
「むー、抜けてるって何さ」
「いえ俺はほんとに・・・俺だってリリカに教えられることがたくさんありますから・・・」
「お、おおー」
「お、おおー」
え、今どっちが先言った?
「うう、○○は立派だなぁ」
「うんっほんとにっ○○くんってかっこいいっ好きだよー」
「好きっ・・・って姉さんはダメだよっ」
わぁ目を瞑ったらリリカが二人みたいだ・・・!ルナサさんはちょっと系統が違うけどこの二人は実にほのぼのしてていい・・・!
いいなぁこんなハーレム。うらやましいなぁ俺もこんな人生を送りたい
ということを考えていたらいつの間にかルナサさんがテーブルからいなくなっている。あれ?
身代わりに巨大なカエルのぬいぐるみが置かれていたから気付かなかった・・・って気付け俺!ノリ突っ込み!
プリズムリバー家内には人の頭脳をプリズムリバー風にする成分でも流れているのか!?
「・・・あの・・・ルナサさんはどこに・・・」
「あれ?そういえばいないねルナサ姉」
「お手洗いかな」
「どうしたんだろうね」
えっ!?まさか俺が二人ばっかりに構ってへらへらしてるから気分を害してお席を・・・!?
あぁ!まさか自分がこんなに猛烈に彼女の姉上との関係に頭を悩ませる日が来るとは少なくとも
一昨日には想像できなかったよ!人生って何が起こるかわかんないよ!俺は思わず頭を抱えて蹲りたくなるが
だめだっがんばらないと俺っ!そもそも俺ってなんかルナサさんに嫌われてるっぽいけど頑張らないと俺っ
ほんとに頑張れ俺!いつまでも子供じゃいられない!
「おまたせ」
「うわぁルナサ姉さんなに!?その格好!」
「わぁルナサ姉懐かしいもの出してきたわねー」
「懐かしいっていうか懐かしいっていうかかなり年季はいってるように見えるんだけど私の気のせい?」
気のせいっていうか気のせいじゃないっていうかルナサさんそれ所謂『甲冑』じゃないですか!?
~一言解説・『甲冑』とは?~
戦いのとき身を守るために着用する武具。胴体を覆う甲(よろい)と、頭にかぶる冑(かぶと)。/大辞泉
突如現れた現在では武具というより民芸的・工芸的価値が高く着て歩いている人・または着て戦っている人よりは
圧倒的に観賞用として利用している人が多いって言うか大多数むしろ100%なはずの甲冑を小粋に着こなしている
ルナサさんの姿に俺は・・・俺はもう一体どうすれば・・・あれなんか俺ってすごい普通の人じゃんみたいな・・・
ルナサさんは、しゃらんと時代劇のような音を立てながら鞘から日本刀を取り出す。
リリカが「ぎゃー!」と叫んで俺の腕にしがみついた。なっ、なっ、ええ!?ええっ何っルナサさんの職業って確かバイオリニストだよな!?
「ルナサ姉はねっ昔日光江戸村で一番強い殿の役のバイトをやってたのよ!」
「やってたナリ」
「それで本気で結構強かったのよ!」
「つよかったナリ」
「でも今は普通にプリズムリバー楽団の一員なのよ!」
「でも一員ナリ」
な、なにやってんだバイオリニストーー!!!!!俺はとりあえずリリカをかばって前に出る。
いやかばってっていうか、俺が斬られそうになったときリリカが前に飛び出したりとかしたら困るし・・・ってえ!?俺斬られるの!?
「なんか○○さんが意気込んで遊びに来てるからこれは・・・これはあれ。そういうイベント」
「え!?なにルナサ姉!?」
「そういうイベントってなにルナサ姉さん!?」
「メルランとリリカにはわからなくてもいい。これは私たちの問題だから」
ルナサさんが俺に刀の先を突きつける。無駄の無い動作だ。思わず目を奪われる。
カブトの下で首をかしげたルナサさんが薄く笑った。
「表に出よう。○○さん」
(そんでナリ)
「ルナサ姉さん、びっくりしたよ!まさか○○と斬り合いでもするのかと思ったー」
「リリカってばルナサ姉がそんな危ないことするわけないじゃない」
「そうよ・・・私は蚊に血を吸われたって殺さないしね」
・・・・・・・・・。
いや、いやいや・・・別に、呆れてるとか、そういうんじゃないんだよ。これはほんと。
家の庭に出た三人姉妹含む俺は、鎧姿のルナサさんが日本刀(レプリカだそうです)でざりざりと
俺と自分の間に一本の境界線を引くのを見ている。そして、用意されたのは一般家庭にあるのは珍しいような
随分立派な荒縄・・・。
なんだこれ。綱引き用?
「どうせ君は俺にリリカを下さい!とか言いに来たんでしょう!」
今までずっと俯いて暗い印象だったルナサさんが突然声を張り上げる。
そしてまた刀を流れるような動作で振り上げて、俺の目の前に突きつけた。
うお!あぶなっ・・・っていうか鎧着てて重いはずなのに俺に避ける隙を作らせないなんてルナサさん普通にかなりすごいんじゃないのか?
と思ってルナサさんの発言の意味を汲むのを忘れていたがようやく脳が受け入れて俺は物凄くどきっとする。
「・・・!」
「というかこれで言われないでただかりんとう食べて帰られても困るけど!」
「ル、ルナサ姉さんってば!なんかキャラ変わってるし変なこといって、やめ・・・」
リリカが俺とルナサさんの間に飛び出してこようとするが、俺はそれを遮る。
一瞬だけ視線を彼女の顔にやると、目が合った。
すぐに逸らしてルナサさんを見る。
「おっしゃるとおりです。今日はリリカを貰いに来ました」
俺が言うと、ルナサさんは不敵に笑って「その言葉を待ってた」と呟く。不敵に笑うとか出来たんだな。
というもしかしたら失礼なことを考えているとルナサさんは日本刀を鞘に戻して、縄を持った。ギュッと固く手首に巻きつける。
「縄を握って○○さん。種目は綱引き、ルールは簡単。この境界線を越えた方が負け」
俺は地面に刻まれた浅い茶色の溝を見る。ルナサさんに習って、しっかりと縄を掴む。
「リリカは一生勝者のものになる。つまり君が負けたらリリカは一生私たちのもので独身のイカズゴケになるの」
「なぬえええええーー!?」
「えっへへルナサ姉ってば話をややこしくするんだからぁ」
俺はなぬえええええーー!?と叫んでいるリリカを振り返る。そして不安そうな彼女の目をじっと見つめた。
大丈夫だリリカ、絶対負けないよ!
お前のために、俺はもう何にも負けないって決めたんだ!こんな初めからくじけるような俺に、お前の旦那さんなんか任せられない!
と俺が熱く思っていたら
「○○くん頑張って!あっルナサ姉は昔象使いのバイトをしていた頃象との綱引きに勝利したという過去もあるのよ!」
「過去もあるナリ」
「あと里のヒーロショーでバルタン星人の役を任されたこともあったのよ!」
「あったナリ」
ば、バルタン星人どうでもいいいいいーー!!!なんだか知られざる過去が明らかになりまくるルナサさんだが、
象・・・象くらいで!負けてたまるもんか!象なんかに怯まないぞ!象でもバルタン星人でも何でも来いってもんだ!
俺は絶対リリカと結婚するんだ!
「メルラン、コールよろしく」
「オッケー!はっけよーい」
「え?ここはよーいドン、じゃないの」
「あっそうかな」
「まぁどっちでもいいけど」
「そう?でも別によーいドンでもいいよと見せかけてはっけよーいドーン!!」
フェイントかーーーーーーーー!!!!
俺はリリカが「卑怯!なにこのひとたち!?私も人のこと言えないけど卑怯!卑怯!」と涙声で叫んでいるのを聞きながら一歩遅れたが必死に縄を引く。
うおっ・・・なにこれ!?えっ!?うそだろ!えっこれすごくない!?俺もかなり力は強いはずなのにビクともしない、というか
気を抜いたら向こう側に連れて行かれそうだ・・・えっルナサさん絶対バイオリニストだけじゃないよね仕事?カタギじゃない?
俺は足を強く踏ん張って、歯を食いしばる。うおお甲冑重たいっ・・・!重量を増すための甲冑だったのか!
ルナサさんは非常に華奢で女の子だし俺より小さいけど、甲冑を着られただけでこうも伯仲するとは。
一歩出遅れたのがかなり効いて、なかなかこちらを優勢にすることが出来ない。やっばいまさかこんなところで最大の試練・・・!!
「はっはっは!所詮そんなもの!そんなんじゃうちのリリカはあげられないよ」
「まっ○○!!頑張って!うわあああんルナサ姉さんのばかああ妹の幸せの邪魔をしないでくれよおおお」
「リリカ一生私とメルランといるのもそこそこ楽しいと思うよ」
負けるかーーー!!!
「うっ、リリカを俺に下さい!」
「いやだ!やるものか!」
「くださいってば!」
「絶対いや!」
「リリカが俺がいいっつってんだよっ」
あっ思わず悪い言葉がっ
「そうだー!!○○がいいんじゃー!!」
「なにそれ?ありえない!昔リリカはバイオリンと結婚したかったんだよ?」
「あっ○○それルナサ姉さんの嘘!私キーボードと結婚するって言ってた子だから!」
「そうそうリリカはキーボードと結婚するって言ってたのよねー トランペットの方がいいと思うんだけどなぁ」
「今は俺と結婚するって言ってるんです!!」
・・・言い返す俺も俺だが・・・
「ってか今だけじゃなくて一生俺のなんです!リリカは!」
「そうだー!!○○!おーえす!おーえす!」
「くっこしゃくな・・・メルラン手伝って!」
何!?こいつ・・・ってルナサさんにこいつ・・・とか思っちゃったよまぁいいやもうこいつ・・・!
正々堂々真剣勝負中に助っ人を頼むなんて、しかも妹に、それほどリリカを俺に渡したくないか!?
気持ちはわかるが往生際が悪いぞ!今更俺以外とリリカが結婚できるわけないだろう!今断るなら交際を容認するな!
「わーい皆で綱引きなんてハッピー」
「あっ二人ともずるい!二対一なんて・・・○○私もっ」
がっばあとリリカは綱じゃなくて俺にしがみついてくる。ええ!?リリカなにそれ一種の妨害!?
びっくりして二歩ぐらい前に進んじゃったよ!
「っしゃあーー!バカめ、若さが仇になったな!」
「ルナサ姉も十分若いわよー」
「だよね」
来た!力緩んだぞっチャンス!今で決める!
「リリカ今だ引くぞ!」
「っしゃあーー!」
あっやっぱり姉妹だ
「っていうかーちょうヒキョいんですけどー私だってそれなりに長い年月を過ごしてきたわけだしぃ体力とかー」
「もうルナサ姉ってばー今度はギャル系?ダメよ負けたのにグチグチ言うのはクズのすることよ」
「く、クズ・・・」
「メ、メルラン姉さんクズまで言ったらさすがにかわいそうだよ」
メルランさんは結構おくち悪いな。
甲冑を庭の真ん中でガチャガチャ脱いで元の格好に戻ったルナサさんが言う。
「じゃあなに・・・○○さんはリリカを貰い受けた末どうするの」
俺は慌てて姿勢を正す。
「そ、それはもちろん・・・彼女と結婚させていただきたいと思ってます」
「ふぅん・・・奴隷にするんじゃなくて?」
GAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!
なんでルナサさんがあの台詞を知っているんだ!?
この前ポロッと言ってしまった『リリカは俺の奴隷だもんな?』って冗談のような実際冗談に近いけどあの台詞をなんで!?
俺は耳を塞いでその場で昏倒しそうになったがすんでのところで堪えた。え!?えっ!もしかしてもしかして!?あの現場見られてた!?
「・・・ってリリカのこと思ってそうだから言ってみたんだけど」
「お、思ってるわけないじゃん○○がまさか・・・ねえ?」
「あっははは そそうだよ思ってるわけなななないじゃないか・・・ねえ?」
リリカも俺も汗だらだらだ。
よかった、どうやらただのハッタリだったらしい・・・にしては的を射すぎているが。
俺が胸を撫で下ろすなり恥ずかしさで血圧が140くらいになるなりしていたらルナサさんが鎧と兜を抱えて
「じゃあこれ片付けてくるから」と言って部屋の中に入っていく。
・・・これで・・・いいのか・・・?
何か想像してたのと9割くらい違ったな・・・と思っていると、縄を片付けていたメルランさんが
「しばらくお家に入らないでいてあげようねー」
と言う。
「え?どうして?」
「なんでもー」
メルランさんはくすくす笑ってる。・・・この人いっつも笑ってるなー
窓から明かりが漏れて、リリカの家の中がくっきりと俺の目に映る。
でもルナサさんは見えるところにはいないようだ。リリカは縄をぐるぐるまとめて物置に置きに行ってる。
「リリカのことどういう風にしてもいいけど、仲良くしてあげてね」
「はい・・・って、あいや、どういう風に・・・ほ、本当に大事にするつもりでいますから」
「うんっ!」
メルランさんがにこにこ笑っている。
リリカと違ってメルランさんはふわふわした人だけど、雰囲気がよく似てる。
一見似てないルナサさんとも、ちょっとした仕草や表情がとてもよく似てるし。うん、やっぱり姉妹だ。
メルランさんは明るい笑顔を浮かべながら、夜空を見上げて、長い睫毛を瞬かせた。
「奴隷だもんね、かぁ・・・」
「ぶはっ」
俺は飲んでもいないものを噴出してしまったがメルランさんはスルー。
「私も若い頃、よく言ったなあ・・・男の人に」
俺は聞かなかったことにして夜空を見上げた。幸せの形は人それぞれ。俺もきっと、リリカと世界一の幸せ者になるぞ。
「今以上に彼女を幸せにしてみせます、絶対」
14スレ目>>22 うpろだ1015
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八雲紫の提案した神無月の外界旅行、プリズムリバー3姉妹ももちろん参加している。
しかし今回はそれぞれの想い人と一緒に、3人別々での行動である。
そして僕はリリカと一緒に幻想郷の外への旅行であり帰省を楽しんでいる。
「うっわー!うわー!!ねぇ○○!!あれ何あれ!!?」
「あれは飛行機って言って「あれは!?」」
さっきからずっとこの調子、電車の中で何かを指さしては答える前に次の物を指さす。
騒霊の名に恥じないせわしなさだね、全く。
まぁ、はしゃいでるリリカも可愛いからいいんだけどね。
そんなことを繰り返しているといつの間にか夕方、電車を降りる時間になった。
電車で少しいちゃいちゃするのも良かったと思うんだけど、結局質問攻めで終わってしまった。
まぁいいさ、時間はまだまだたっぷりあるんだ。
駅のホームは幻想郷よりも人が多くて、リリカの目も幾分か輝いて見える。
やっぱり演奏したいのだろう、アーティストの性って奴かもね。
離れないように指をからませ合った手を少し緩めてから
わかった上で、僕はあえて聞いた。
「演奏・・・したい?」
「うん!!!」
あぁ分かってたよ、僕とのデートのはずだったんだけどなぁ・・・。
「演奏ね、路上ライブでもやってみたらどうかな?」
許可とってないとマズかった気がするけどまぁいいよね。
ふと目を向けるとリリカはすでにキーボードを弾き始めていた。
呆れつつも僕は既に集まりだした観客の中に紛れる。
幻想の廃れた世界で、しかし僕にとっては見慣れ聞きなれた幻想の音を奏でるリリカは、やはり少し幻想的であった。
それが音のせいなのか、夕焼けを受けているリリカの美しさのせいなのかは分からない。
その本物の幻想に惹かれ、リリカに惹かれて人も集まり始めた。
幻想を捨てたふりをした人たちが、心の底で求めていた幻想の音楽。
さぁ、このライブはどこまで大きくなるんだろうね。
「ありがとーございましたー!!」
盛大な拍手とともにリリカのライブが終わった
リリカが演奏を終えて感謝の言葉を述べる頃には既に日は落ちていた。
人数もざっと後ろを見ただけで300人はいる。
中には警察も―――って、いいんですか警察さん。
僕は山のような人ごみをかき分けて、リリカの手をつかみ人だかりを抜けた。
「さぁ、そろそろ行こうか」
「うん、どこ行く?」
「とりあえずは宿にいかないと・・・」
「そうだね、それじゃしゅっぱーつ!!」
左手で僕の手を握りつつ満面の笑みでこぶしを上げるリリカ。
あぁもう、実は時間くいすぎて少し怒ってたんだけど、こんな笑顔見たら文句なんていえないや。
若干観客たちからねたみの視線が痛いです・・・おお、パルスィパルスィ。
宿泊先は予想外に大きなホテルだった。
紫さんは一体どうやってこんなところに予約を取ったんだろうか・・・
「さすがに部屋はスイートルームじゃなかったか」
ま、当たり前だよね。
するとリリカは僕の肘に抱きついて
「○○と一緒ならどんな部屋でもいいんだよ♪」と満面の笑みで言ってきた。
嬉しいこと言ってくれるじゃない・・・恥ずかしいけどね
「それじゃ僕は先にシャワー浴びてくるね」
にやけた顔のごまかしも含めてそう言い残し僕は脱衣所へはいる
――数分後
「ふぅ、僕は出たけどリリカも入る?」
「それよりすごいねー!ベッドふっかふかー!!」
「・・・あれ?」
おかしい、さっき二つあったベッドが一つしかない
本来ベッドがあるべき場所には・・・
巨大なスキマがその口を閉じようとしていた
「こらああああああああああああああああああああああ!!!!!」
なんていうか、まったく、あの人は・・・
「リリカもなんで気付かないのさ、真横でベッドが落下してるんだよ?」
「ん?あたしは気付いてたよー」
―――あぁ、もう、この子は
「でさっ!ひっじょーに残念ながらベッドは一つしかないから」
―――本当にずる賢くて
「一緒に寝よ?」
―――本当に
「あぁ、ベッドが一つしかないんじゃしょうがないな」
―――本当に可愛い僕のお姫様だ
翌朝布団を全部はがれ、僕が風邪をひいたけれどそれはここで話すことでもないだろうし、別の機会に。
新ろだ64
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