アットウィキロゴ
プロポスレ@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

プロポスレ@Wiki

美鈴4

最終更新:

orz1414

- view
メンバー限定 登録/ログイン
春は曙。
春眠暁を覚えず。


そんな言葉がピッタリ当てはまるぐらいに眠くなるような天気の春。
そんなことはおかまいなしで、いつものようにいつものやつがやってきた。



「○○さん!敵がやってきました!配置について下さい!」



前方に見慣れた白黒(仮)の姿を発見する。
今日もまた、図書館あたりに用でもあるのだろうか。

こんなポカポカした春の一日ぐらい、寝かせてくれたっていいのに。


「了解した」


紅魔館から○○さんが出てくる。
配置は、私の後ろだ。主に、私のサポートをしてくれている。

「今日こそ・・・あの憎き魔法使いを倒しますよ!」
「ああ、もちろんそのつもりだ」


○○さんは紅魔館で働いている。
主な仕事は雑用や買出し係、料理などである。
ちなみに、私の協力もあって弾幕の腕はまあまあなので、私のサポートも担当している。


「来ました!○○さん!」

いつもの常套句から、いつものビームを打ってくる白黒(仮)。

「言われなくても、わかっている!」

避けながら、平然と言う○○さん。


最初は全く戦えなかった○○さんだったが、私が少し鍛えてあげましょうかと提案すると、彼は喜んで受けてくれた。

○○さんはすごかった。
私の教えをあっという間に飲み込んで、私には及ばないながらも、その辺の氷の妖精位なら倒せるようになっていた。

この間約2ヶ月。驚くべき成長だ。
おかげで、私も負けじと腕を磨き始めている。
切磋琢磨ってやつだろう。

「えい!」

いつもどおりの弾幕を放つ。
○○さんはそれを補助するかのように弾幕を放つ。
それを避け、憎き白黒(仮)も弾幕を放つ。

「美鈴、右!右!」
「く・・・・」

四方八方から襲ってくるレーザー。
主に、私が狙われている。

避けるのに力を使い始め、弾幕が疎かとなる。

こうなってくると、苦しい状況となる。

メインは私なのだから、私が攻撃しないと、サポートの○○さんの弾幕だけでは、力不足だ。

「美鈴、そっちに避けたらまずい!」
「!!」

追い込まれた。レーザーをかわした所に、お得意のマスタースパークが飛んできた。
これは・・・・避けられないか。

止むをえず腕をクロスさせて頭を隠して攻撃を受ける体勢へ。

と、次の瞬間。

「間に合え!」
「!?」

横から衝撃。
何事かと吹っ飛ばされながら見てみると、○○さんが私を突き飛ばしていた。

「な・・・・・」

そして、○○さんの姿はマスタースパークに飲み込まれた。






突き飛ばされて倒れる私。
勝利を確信し、門を突き抜けようとする白黒(仮)。
私を倒したと思ったのだろう。

このまま煙に紛れて攻撃してもよかったが、それ以上にやることがあった。


「○○さん!」

私が○○さんを探している間に白黒(仮)がもう通っていってしまったが、そんなことどうだっていい。

「○○さん!○○さん!どこですか!?」

煙のせいで姿を確認することが出来ない。
私は彼の名を呼び続けた。
すると、ようやく返事が返ってきた。

「ふぅ・・・やれやれ、危なかったな」
「○○さん!・・・・大丈夫ですか!」
「そんな大きな声出さなくても、大丈夫さ。なんとか避けれたみたいだ」

彼を見てみる。
少し服が破けているが、確かに外傷は見当たらない。

「あーあ、また負けちゃったな」

白黒が通ったほうを見ながら、彼は呟く。

「ごめん、美鈴。俺もまだまだみたいだ」
「そんなこと・・・・いいんです」
「・・・え?」

「どうして、あんな真似を・・・」
「・・・・?」
「どうして、あんな真似を、したんですか?」
「・・・あんな真似、とは?」
「・・・・どうして、私を・・・・・・庇ったんですか?」

私は妖怪である。
あのぐらいの攻撃なら、受けたってすぐ回復できる。

でも、○○さんは人間だ。
下手したら、・・・・今ので取り返しがつかなくなるような事が起きたって、不思議ではない。

「・・・・・男が女を守るのは、当然じゃないか」
「え・・・・?」

今彼に似合わない台詞を聞いてしまった気がする。
思ったとおり、彼は少し顔を赤くしていた。

「いや、だってさ、男が女に守られながら戦うって結構情けないわけだよ。
 だからさ、ここぞっていう時ぐらいかっこつけさせてくれたっていいじゃないか」
「・・・・・○○・・・さん・・・」
「まぁ、実際はそんなこと考えないで、体が勝手に動いちゃったりしたんだけどね・・・・・・って美鈴!?」

私は思わず彼に抱きついた。

「ちょ、美鈴、どうしたのさ!?」

逞しくなった彼の胸。
最初はあんなに弱そうだったのに、いつの間にこんなに成長したんだろう。

「・・・・すみません、何でもないんです。ただ、・・・・・・ちょっと今の言葉が嬉しくて」
「え?あれで?」
「・・・・・うん。あまり、女扱いされたこと、なかったから、私」
「・・・・・・・そうか」
「・・・・・・・うん」
「・・・・」
「・・・・」


・・・なんだか変な雰囲気になってしまった。
腕を放そうにも、腕が動いてくれない。

―――まるで、脳がずっとこのままでいいと言っているかのように。

「なぁ、美鈴」
「・・・・・・・・なんでしょうか?」

しばらく続いた心地よい沈黙を、彼が破った。

「俺さ・・・・強くなってるかなぁ」
「・・・・・最初に比べたら、強くなってますよ。私が、保証します」
「・・・・師匠が保証してくれるなら、心配ないか」
「そうですよ」

すると、彼は私を抱いたまま横になった。
ちょっと、恥ずかしい。というか、かなり恥ずかしい。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

真下に○○さんの顔。
必然的に見つめあう位置になってしまう。

「なぁ、美鈴」
「・・・・・は、はい!なんですか?」

本日2回目のこのやり取り。
思わず彼の顔に見とれてしまうところだった。

「大事な話があるんだ」
「・・・・・大事な・・・・・・・話ですか?」
「ああ」

彼は私を放し、体を起こして、座った。

「俺さ、実は・・・・・・・咲夜さんに誘われてるんだ」
「・・・・・え?」

今、彼はなんと言った?咲夜さんに誘われている?

「こっちのメイド隊に入らないかって、誘われてるんだ」
「・・・・・」

○○さんは今、門番隊に所属している。
私が、○○さんの修行のために、引き入れたからである。

「返事は・・・・・待ってもらっている。どうやら、俺のことを気に入ったらしいんだ」
「・・・そうですか」
「あとは・・・・・美鈴、君次第なんだ」
「・・・・どういうことですか?」
「・・・・・・・君は門番隊隊長だ。決める権利は、君にある」
「・・・・・・・・・○○さんは、どうしたいですか?」

私の考えは決まっている。

あとは、彼の意思次第。

「・・・・・・・・・・・やっぱり、今、言うしかないか」
「・・・・・?」

何だろうと思っていると、彼は急に真剣な顔になって座りなおした。
思わず、こっちも座りなおした。



「・・・・・・美鈴、よく聞いてくれ。
 ・・・・・・・・僕は、君のことが好きだ。師匠としてではなく、一人の女性として、好きだ。
 妖怪であってもいい。妖怪の、君が、好きだ。
 もし、君が僕と同じ感情を抱いていないのならば・・・・・・僕は潔く諦め、向こうの隊へ行ってくる。この話は忘れてくれても構わない。
 もし、それ以外なら・・・・・・・・・・・僕がここに留まることを、許して欲しい」


・・・・・聞いてしまった。彼の言うこと、全部。一字一句逃さず。
このときほど、私が真剣に話を聞いたことなんてないだろう。



私の返事なんて、とっくに決まっている。



「うわっ!」



―――私は、迷うことなく彼に飛びついた。


「・・・・・・・・ようこそ、門番隊へ。歓迎します!私の・・・・・・・・・弟子であり、恋人である、○○、さん!」
「・・・・・・・・ああ、これからも、よろしく頼むよ。俺の師匠兼、隊長兼、恋人の・・・・美鈴。」


そうして、自然と、私たちは唇を重ねあった。







・・・・・窓から、メイド長が見ているのも知らずに。


「あの二人は・・・・魔理沙に進入を許しておいて何をやっているのかしら・・・・」



このあと、お叱りを受けたのは言うまでもない話だ。

11スレ目>>535

───────────────────────────────────────────────────────────

紅魔館の門に一組の男女が眠そうに座っていた

「暇だねぇ・・・」
「そうですね・・・」

「・・・・」
「・・・・」

「でもこういうのもたまにはいいねぇ・・・」
「同感ですね・・・」

「・・・・」
「・・・・」

「やっぱり暇だねぇ・・・」
「そうですねぇ・・・」
「口調移ったねぇ・・・」
「そうですねぇ・・・」

「あ、白黒が来たねぇ・・・」
「そうですねぇ・・・」


ビューン!ドンガラガッシャーン!!


「・・・・・行っちゃったねぇ・・・」
「そうですねぇ・・・・」

「・・・通してよかったのかねぇ・・・」
「たまにはいいんじゃないですかねぇ・・・」
「そうかねぇ・・・」






「いいわけないでしょ?」



「!?」
「!!」


「あんたたち・・・門番の仕事もせずに幸せそうにダラダラと・・・・今週はおやつ抜き!」


「マジっすか~」
「マジなんですか~」
「はぁ・・・アンタが来てから美鈴も大分変わったわね・・・・・・」

11スレ目>>125

───────────────────────────────────────────────────────────


「わわっ!?」
突然吹き抜けていった風
その風は私の帽子を絡め取って、空まで持ち上げていった
お気に入りだったのに、そんなことを考えながら帽子を見送った
「よ、っと」
あんなに高い位置にあった帽子、不可能なはずの高さに届いた手
ぼすっ
深く積もっていた雪が、彼の着地によって踏み固められた
「○○さん・・・危ないですよ、というか何処から現れたんですか?」
彼は高い塀を指差して、笑った
「ほらよ、次は飛ばすなよ」
渡されたのは私の帽子、彼が取ってくれた帽子
「あ、ありがとうございます・・・」
塀を見てみた
高さは4m弱、帽子が飛んでいた高さはその倍ぐらいあったはず・・・波紋?
「こんなに寒いのにご苦労様だな」
「仕事ですから・・・○○さんがくれたコートもありますし」
○○さんがくれた(借りた)コートはとても暖かい
私が着ると膝を隠してしまうぐらい長くて大きい、私が二人ぐらい入るだろう
何でトレンチというかは知らないが、きっとトレンチさんが作ったんだろう
「このコートも、さっきの帽子も、色々お世話になりっぱなしで・・・」
「気にするな、俺が好きでやってることだ」
わたしの頭をくしゃくしゃと、撫でてくれた
それが思いのほか嬉しいというか幸せというか
「・・・今度何かお礼をさせてください」
「だから気にするなって」
「私がしたいからするんです、何か欲しいものとかして欲しいこととか・・・何かないですか?」
「あー・・・んー・・・そうだな・・・恋人は欲しいが・・・それは外法か」
ブツブツと独り言を繰り返す○○さん
特に何かあるわけではなさそうだ、それはそれで困るが
「そうだ!○○さん!甘いお菓子は好きですか!?」
「あ、ああ、嫌いじゃ無いが・・・?」
いつもお世話になっているのだから、こういう行事を有効活用しなきゃ
「ふふふ、2月の真ん中を楽しみにしててくださいね」
「あ、ああ?楽しみにしとくよ・・・??じゃあまたな」
○○さんはふらふらと何処かへと歩いていった
すぐに姿は見えなくなったけど、一時見えなくなった背中を眺め続けた

咲夜さんから聞いておいて良かった
バレンタインなんか全然知らなかった、でも今は知っている
チョコといっても色々あるらしいからなぁ
やっぱりあげ方にも工夫をしなきゃいけないのかな
胸に挟んであげるとか「溶けちゃった・・・全部舐め取ってくださいね」とかきゃーきゃー美鈴のエッチ!
「駄目ですよ○○さん、そこは違いますよ。うへへ」
「中国ー。みりん・・・美鈴っ!」
「は、はいっ!?」
「なに門前で涎たらしながらニヤニヤしてるのよ、気色悪いわね」
いけないいけない、へんな世界に入ってたらしい
しかし咲夜さんが呼びにきたとなると・・・
「冷えたでしょ?一緒に紅茶でもどう?もう交代の時間だし・・・」
咲夜さんは優しいなぁ、私の周りには優しい人がいっぱいいるなぁ、私は幸せだなあ
だからこそ、少しでも恩返しというか、感謝の気持ちを表すというか、そういうことがしたい
そうだ、咲夜さんにもチョコレートをあげよう
でもその前に色々とバレンタインについて聞かなきゃ、チョコをあげる日ということしか知らない
「喜んで、色々聞きたい事もありますし」
「何かしら?聞きたい事って」
「それは紅茶でも飲みながらゆっくりと」
ああ、来月が楽しみだ
それまでに色々な試練があったりなかったり
彼は喜んでくれるだろうか?そもそもどうやって入手しようか?
まぁ色々考えるのは話を聞いてからにしよう、それからでも遅くない

end

12スレ目>>287 うpろだ805

───────────────────────────────────────────────────────────

「美鈴、よければ俺も一緒に門番やらせてくれないかな。
 1日とかそんなじゃなく、出来れば君と、ずっとね」

11スレ目>>983

───────────────────────────────────────────────────────────
北斗神拳っぽい何かを使える程度の能力を会得したので、
スレの趣旨に反するがめーりんをいじめる事にした。


まずは能力を用いて彼女のスピードを上回り後ろに回る。
そして肩こりのツボを突きマッサージする。
後ろを取られるどころかみるみる間に上半身の力を奪われてしまえば、
拳法の達人であるめーりんはきっと恥ずかしいだろう。

上半身を無力化すれば次は下半身だ。
先程の攻撃で脱力しためーりんを押し倒し、
靴を脱がし、足のツボを責める。
全身のコリをほぐしながら意識を覚醒させるツボだ。
これによりめーりんは朦朧とする意識を無理矢理引き戻され、
長らく体がほぐれていく感覚を味あわされるのだ。
そして全身が弛緩しきっためー「○○君仕事サボって何書いてるんですか?」
「も、門番長!見ないで下さい・・・!」
「駄目ですよー、
 う・・・ふむふむ」
「え、あ、門番長。
 なんでそんな袖を捲くって手をわきわきと・・・」
「○○君がそんな趣味だとは知らなかったのですよ・・・
 人にやられて嫌な事は・・・自分が体感すれば一番分かりますね?」
じゃあなんでそんな笑顔なんですか門番長。
え、あ、ちょ、
肩気持ちいい、肩がアッー!

12スレ目>>89

───────────────────────────────────────────────────────────
駄目だ・・・
どうしても中国だと「血夜糊嶺闘」みたいな当て字の民明書房っぽいネタを連想してしまう。


「・・・という訳で敗者は勝者に手取り足取りで甘味を食べさせられるという屈辱を受けるのです!」
「てか民明書房の本て幻想入りしてたんだな・・・」
「じゃあまあとりあえずさっさと負けて下さい○○さん」
「いやいやもうちょっと目的の為に手段を選ぼうな?」
「え、つまり○○さんは私にフルボッコにされたいんですか?」
「いやまあそうなる結果は分かってるがせめて形式的にも倒すくらいしないと決闘にならないでしょうが」
「では全身の関節を外してひざ枕しながら食べさせるのと、
 全身の関節を外して口移しで食べさせるのならどちらが良いですか?」
「やっぱもう普通に渡そうぜ」

12スレ目>>508

───────────────────────────────────────────────────────────

「さーくやさんっ」
「ん?どうしたの美鈴」
休みの時間と睡眠時間を削り、いつもお世話になってるおふた形のために作った、カカオ練り菓子
「これを、どうぞ」
「これは・・・ああなるほど、今日はバレンタインだったわね」
咲夜さんは渡したチョコを一つ、口に放り込んだ
「んー、悪くないわね・・・これから本命の方へ?」
「ななななななにをを、唯私は日ごろお世話になっている咲夜さんと○○さんの為に感謝の気持ちを込めてチョコを作ったわけで別に○○さんにアプローチだとかせっかくのバレンタインを利用しない手は無いだとかチョコだけでなく色々な想いを込めてとかそういうことは一切無くてですね!」
「はいはい、今日は大目に見てあげるから、さっさと渡しに行って来なさい」



紅魔館を出て(咲夜さんに追い出されて)○○さんの家へ向かう
異性に対するチョコの渡し方はパチュリー様の所有する本で学習済みだ
今更恥ずかしいとか、そういう迷いは無い
皆がしているなら恥ずかしくないのだ
「○○さーん、美鈴ですー」
こんこんと、ドアをノックすると、中からばたばたと言う足音が聞こえた
玄関が開く、渡す準備はとっくに出来ている
さぁ!
「よぅ、どうし・・・た・・・」
「チョコをッ!渡しにきましたッッ!!」




まぁ聞いてくれよブラザー
美鈴が訪ねてきたんだ
何の用かと玄関まで足を運び、扉を開けたさ
まず思ったのは、胸、胸部、おっぱい
いやいや、美鈴の胸がでかい事ぐらい俺でも知ってるさ
まぁとりあえず胸に目が行ってね、その谷間になんか挟んであるのよ、よく見たらさ
ハート型のチョコレートらしき物体、カレールーと言う可能性も無きには有らずだけどね
チョコを渡すのに、胸に挟む必要が何処に有るのだろうか?
いや、ない
そんなのは成年向けのコミックスででもやってくださいって話ですよ
美鈴は羞恥に頬を染めて、ってそりゃ恥ずかしいだろうね、見てる俺のほうが恥ずかしいよ
俺が固まってると、美鈴が不安そうな顔になってしまったからね
チョコを取りましたよ、胸に触れない努力はした、努力はしたよ?結果だけを見つめる社会って嫌だねまったく

チョコを一口、かじってみた
予想通り甘かった、チョコの味がしたとしか言いようが無い
だけど、俺がチョコを食べる姿を見て、嬉しそうにしている美鈴を見ていると、チョコは何倍にも美味しく思えた
「美味しかったよ・・・ありがとな」
俺はいつもみたいに頭を撫でた
撫でると言うには乱暴に、くしゃくしゃと
美鈴は目を細めて、えへへ、と笑っていた
「ん?」
胸の谷間に、チョコが融けてついてる
俺が硬直して取るまでの間に融けてしまったらしい
「・・・美鈴」
「ひゃぁっ!?○、○○さん!?そ、そんなところ、んっ」
「だってほら、せっかく作ってくれたチョコだ、俺は残したくない」
「だ、だからって、んぅ、はぁ、んんっ」

「
         心の綺麗な人にしか見えない文字です
            (ドラッグしても見えません)
                                       」





「そうだ、来月にお返ししなくちゃな・・・何が良い?」
「・・・これは、いつもお世話になってる・・・お礼です、だから、お返しされたら、またお返ししなくちゃいけなくて」
「いいんじゃないか?お返しのお返しのお返しの・・・そうやって行けば」
美鈴は解らないといった感じで、首をかしげた
その仕草すら、可愛いと感じてしまう俺がいる
「何かをされたらお返しをせにゃならん、だからさ・・・与えるのと、お返しとで・・・ずっと一緒にいられるだろ?」
「あ・・・」
「だからさ・・・俺はお前とずっと一緒にいたいから、これからずっと一緒にいれば、与えてお返しの繰り返しだろ?それに・・・俺はお前に色々してもらってるしな」
美鈴は、何でか顔を赤くして、俯いてしまった
「どうした?」
「嬉しいですけど・・・恥ずかしくて」
彼女は言う
自分をここまで好きでいてくれる人が居る
そしてその人のに負けないぐらい、その人の事が好きだと言う事
その事が、幸せすぎて
少し前の私なら、受け入れる事すら恐れていた幸せを、こうやって噛み締めていられるのがとても・・・嬉しいのだ、と

そうやって話す彼女は、とてもいい女で
美鈴は俺の嫁
と叫びたくなったが、止めておいた

「○○さん・・・ホワイトデーなんですが・・・」
「おお、なんか欲しいのあるか?」
「その・・・ええと・・・子供」
「それは無理だ」


end

12スレ目>>948 うpろだ911

───────────────────────────────────────────────────────────
「……なんだ、これは?」
 俺は手渡されたものをまじまじと見つめた。
 箱。綺麗なピンク色の包装紙に包まれた掌よりちょっとばかし大きいかというくらいの箱である。
「こ、これは――あのー、その、チョコ……よ」
 チョコ。何故こんなときに――とも思ったがすぐに今日がバレンタインデイだと気づく。なるほど、嬉しいことをしてくれる。
「これは中国が作ってくれたのか?」
「ええ、そう――っていうか中国って言うな」
「まぁまぁ。それは嬉しいな、中国が俺のために作ってくれたチョコなんだろ?」
「勿論――ってだから中国って」
 中国――こと美鈴が言い終える前に俺はその口を唇で塞いだ。
「ありがとな、美鈴」
「――!……っもう」
 顔を真っ赤に染め、少し視線を逸らしながら彼女は言った。
 その仕草がなんだかすごく可愛らしくて俺は美鈴を抱き寄せた。

12スレ目>>911

───────────────────────────────────────────────────────────

「針よし、竿よし、仕掛けよしっと。うん、ちゃんと全部揃ってる」
 俺が幻想郷に迷い込んでからはや幾月が過ぎた。
 右も左もわからない俺がふらふら彷徨ってたまたま紅魔館を通りかかったところ
 レミリアに拾われてからここで住むことになった。
 最初はただの食料としか見ていなかったのだろうけれどいつの間にか紅魔館の住人の一人に落ち着いた。
 屋敷の中で唯一の男手として重い物の持ち運びなどの肉体労働の仕事を任されていて丁稚みたいな立場にいる。
 今日は久しぶりに貰えた休みということで冬の寒い日が続いている中珍しく暖かいので
 湖に釣りに行こうと準備をしているのである。
 釣具一式を持って門から出て行こうとするといつもそこに居る彼女の姿はなく代わりのメイドの姿があった。
「おや? 今日は美鈴いないんだ?」
「はい。今日は非番なんでさっき散歩に行くって言って出ていきましたよ」
「ふーん、そっか。じゃ俺も釣りに行ってくるから。お勤め頑張ってくれ」
「はい。お気をつけていってらっしゃい」
 門番の娘と軽く挨拶をして別れたあとお目当ての釣りポイントまで歩いていく。
 前に見つけた場所なのだが珍しく霧が薄く、天気がいいと日の光が差し込みぽかぽかと暖かいので俺のお気に入りの場所だ。
 餌を針に付け釣り糸をたらす。しばらくウキを見つめていると後ろから声をかけられた。
「釣れてますかー?」
「いや、さっき始めたばかりだから」
 振り向くとそこには紅魔館の門番である紅美鈴がいた。
 彼女は俺の隣りに座り込んでウキを見つめていた。
「で、美鈴はなぜここに?」
「いやー、せっかくのお休みなんですけど別にこれといった用もなくて
 ちょっと散歩していたら○○さんが釣りをしているのが見えたんでちょっと見学に」
「そっか」
「そういえば、○○さんびく持ってきてないんですか?」
「うん。あれば便利なんだろうけど、いらないかな」
「え? なんでですか? って引いてます! 引いてますよ!」
 慌てている美鈴を横目にウキを見るとたしかにチョコチョコと浮き沈みを繰り返していた。
 タイミングを合わせて竿を持ち上げるとそこには小さなハヤが針にかかってピチピチとしていた。
「小さいですね」
「ああ小さいな」
 俺は手早く針を外すと湖に魚を放した。
「とまぁ、こんな雑魚しか釣れないのでびくがいらないって訳」
「なるほど。ところで私もここにいていいですか?」
「別にかまわないけど、面白いことなんてないよ? 魚だってさっきみたいのばかりだし」
「構いません。見てるだけでも楽しいですから」
 その後他愛のない話をしながら釣りを続けて4、5匹釣れた後ぱったりと当たりが無くなった。
 となると、この陽気のせいでどうも眠くなってしまう。
 うつらうつらしながらウキを眺めていてふと隣りが静かなのに気がつき横を見るとすやすやと眠る美鈴がいた。
 スリットからのぞくふとももにちょっとドキッとしてしまったのは内緒だ。
 なんとか視線を戻しウキに注意を向けようとするがどうしても美鈴のふともものことが浮かんできて悶々としてしまう。
「う~ん、○○さん……」
 急に名前を呼ばれたため今まで変なことを考えていたこともあり、ビクッとして慌てて美鈴の方を見るが
 眠ったままでいるので寝言だと解り、釣りに戻ろうとしたが続けて出てきた言葉に俺は固まってしまった。
「○○さ~ん、わたし○○さんのこと好きです~。えへへ~言っちゃいました~」
 まさか俺のことをからかっているんじゃないかと思い、ほっぺをぷにぷにとつついてみたりうにょーんと伸ばしてみても一向に反応がないので本当に寝言だとわかった。
 しかし、寝言だとしても嬉しくないわけではない。どことなくとっつきにくい人ばかりの中で一番気さくな彼女だからこそ一番早く仲良くなれた。
 最初は友達みたいな感覚だった。でも太極拳の真似事をしたり一緒に食事をしたりしていつしか、もし彼女と恋人になれたらどんなにいいかと考えるようになっていた。
 けれども、もし断られたらどうしようかという不安があり、結局何の行動も起こせていないのである。
 むにゃむにゃと眠る美鈴の横でこれが起きてるときに言ってくれたならどんなに良かっただろうと俺は考えていた――



「美鈴、起きて、そろそろ帰るよ」
「う~ん、ふぇっ!? 私眠っちゃってました!?」
「うん、気持ちよさそうに眠ってたから起こさないでおいた。疲れていたんだろうね」
 周りの風景は黄昏色に染められ湖から少し霧が流れてきてちょっと神秘的だ。
「うわぁ、長い間眠っちゃってたんだなぁ。よだれ垂れてませんよね? 顔に跡ついてませんよね?」
 わたわたしている美鈴をみながら釣り道具の片付けをしながらちょっといじわるをしたくなってしまった。
「ああ、そういえば美鈴寝言で面白いこと言ってたよ。俺のこと好きだって告白されちゃったよ」
「ええええっ!?!? わ、わたしそんなこと言ってたんですか!?」
 夕日より真っ赤になって頭からぶしゅーと湯気を上げる美鈴。俺は更に言葉を続けた。
「それでさ、もしその言葉がただの寝言ならそう言ってほしい。俺も忘れる。でも美鈴の本当の気持ちなら今改めてその気持ちを伝えてほしい」
「えっ」
 しゃべりながら我ながら卑怯な手だなと思った。もし俺のことをどうでもいいと思っていたらこの恋心は捨ててしまえばいい。
 本当ならば願ったり叶ったりで美鈴と付き合えばいい。そしてその責任は美鈴に押し付けている形になっている。
 つくづく臆病でヘタレだな俺は、と自己嫌悪していると美鈴は覚悟を決めたのかしっかりと俺を見つめて口を開いた。
「……○○さん、もっといろいろなことが言えればいいんですがこれしか思い浮かびませんでした。○○さん、私はあなたが好きです」
 夕日を背負い、薄く靄がかかった景色の中しっかりと俺を見つめている美鈴はこのうえなく美しかった。
 まるでゲームで見た黄金の別離の中消え行く騎士王のように。
 ならば俺も彼女の思いに答えなくては――
「……俺もだ。いつからかはわからない。でも気がつくといつも君のことを考えていた。美鈴、君が好きだ。俺とずっと一緒にいてほしい」
 一瞬、しかし二人にとっては永遠のように感じられた時間が過ぎたあと、美鈴の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ始めた。
「め、美鈴?」
「うっ、ぐすっ、よ、よかったぁっ、こ、断られたらどうしようかとっ……」
 俺は美鈴に駆け寄りぎゅっと抱きしめた。
「うぅっ、こわかった、ほんとうはずっとまえからすきだったけど、こわくて、あしがすくんで、いえなかったんですぅ……」
 やれやれ、どうやら俺たち似たものどうしだったらしい。
「大丈夫だよ、美鈴。これは夢じゃないし、俺はちゃんとここにいる」
「う、うわあぁん、○○さん、○○さぁん……」
 縋りついて胸に顔をうずめて泣きじゃくる美鈴。俺はそっと背中を撫で続けた。
 優しい気持ちで胸がいっぱいになる。でもやっぱり美鈴は泣き顔より笑顔の方がいい。
 俺は美鈴の頬に手を当てると
「あっ――」
 そっと口をふさいだ――



 帰り道、美鈴は付き合っていることがバレたら恥ずかしいから内緒にしておきたいと言ってきたので二人きりのときしかイチャイチャしないことと約束したのだが
 ときおり、唇に手を当てて顔を赤らめていればだいたい何があったのかわかるし、数日後文々。新聞にあのキスしている場面をバッチリ捉えた写真が載っていたので
 隠すどころか幻想郷全ての公認カップルになってしまい、恥ずかしさのあまり美鈴はオーバーヒートして倒れてしまった。そして――

「針よし、竿よし、仕掛けよしっと。うん、ちゃんと全部揃ってる」
 久しぶりの休み、俺はまた釣りに出かけようとしていた。2人分の竿を持って。
「○○さ~ん、遅いですよ」
「悪い、準備してたら遅くなった」
 門には白いシャツ、洗いざらしのズボンという格好の美鈴がいた。彼女なりのおめかしらしい。けどそれが美鈴らしい。
「ふふふ、今日こそは○○さんより多くおっきい魚釣ってみますよ」
「おっ、言ったな。俺だって負けないぞ」
 軽い言い合いをして、けれども手はしっかりと繋いでいつもの釣り場に向かう。
 抜けるような青空、今日もいい釣り日和だ――

13スレ目>>102

───────────────────────────────────────────────────────────

『…よし、あとは包むだけか。』
俺○○はチョコレートを作っているまぁ慣れない事をしているので十回ぐらい失敗したが…
『…まぁそんなことはどうでもいいか』
などと独り言を言ってチョコの出来具合いを見てみる
『よし、我ながらいいできだ。』
ちなみにチョコレートの作り方はパチュリーさんに本を借りた。後でお礼言いにいかなくちゃな
などと考えながら作業しているといつのまにかできていた。
さぁ届けにいくかな紅魔館の門の前で毎日頑張っているあの愛しの人へ

13スレ目>>501

───────────────────────────────────────────────────────────

「隊長、○○さん来てますよ」
「早く行ってあげてくださいよ、ほらほら」

 紅魔館のメイド達にも、昼休みがある。
 だが門番隊に限っては、いつ来るかわからない侵入者に対処するため
 休憩は交代制だ。
 隊長である美鈴も例外ではない。
 館内で働いている○○とは必ずしも同じ時間に休めるとは限らないのだが、
 部下のメイド達の(多分におせっかいじみた)好意のおかげで、
 最近はよく二人で昼食を取っている。
 二人で過ごせる数少ない時間だ。
 今日も、休憩中に詰所に向かう○○の姿を見かけたメイドが美鈴を呼びに来た。

「……すみません、ちょっと抜けますね」
「ごゆっくりー」

 詰所へ走る。付き合い始めてもうしばらく経った今でも、
 これから会えるというだけで心が躍った。
 




「……ふぅ」
「あれ、○○さんどうしたんですか?」

 昼食のサンドイッチを食べながら、
 ○○が小さくため息をついたのを、美鈴は見逃さなかった。

「ん?いや、大丈夫。何でもな……ふあ」
 
 心配をかけまいと取り繕おうとする側から、あくびが一つ出る。

「疲れてるんじゃないですか?」

 以前からの仕事である館内の雑務に加え、
 最近の○○は空いた時間で鍛錬を行っている。
 美鈴と恋仲になってからは門番隊への転属を希望しているのだが、
 結界の外から来たただの人間である○○では、侵入者との戦闘を含む仕事には就けない。
 そのため、寝る間も惜しんで基礎訓練や魔法の勉強に励んでいるのだが、
 さすがに少しこたえているようだ。

「がんばってくれるのは嬉しいですけど、無理して身体を壊しちゃだめですよ?」
「うん……でも少しでも早く、近くで美鈴を支えられるようになりたいと思ってさ」
「……ありがとうございます」

 とは言え、疲労が溜まっているらしい○○のことが、美鈴は心配だった。

「―そうだ、○○さん中華料理は苦手じゃないですか?」
「いや、むしろ好きな方だけど……なんで?」
「良かった。○○さんのために、今度元気が出る秘伝の特製スープを作りますね!」
「え?美鈴って料理できるんだ」
「もう、失礼ですね。華人小娘の二つ名は伊達じゃありませんよ?
 三食付き住み込みのお仕事で作る機会は多くないですけど、
 咲夜さんが創作中華に凝った時だって結構アドバイスしたんですよ」

 確かに、○○は今まで美鈴が調理をしているのを見たことがなかったが、
 言われてみれば不得意なイメージは浮かばない。
 何より美鈴の手料理が食べられるのは嬉しかった。

「じゃあ、お願いしようかな」
「任せてください!えーと……四日くらいしたら時間ができるので、
 その時に作りますね」
「うん、楽しみにしてる。
 ……あ、そろそろ戻らないと」

 そう言って、○○は仕事に戻っていった。
 
「……よし」

 ○○が見えなくなると、美鈴は小さくつぶやいて気合を入れた。
 スープの材料はちょうど揃っている。
 ただ、四日後に作る、というのは嘘だ。
 遠慮させてしまうといけないと思って言わなかったが、
 完成まで三日三晩煮込まなければならない。
 
「○○さんには、元気でいてほしいですからね」

 今晩から始めれば四日後には出来上がりだ。
 勤務中は厨房担当のメイドに頼んで見ていてもらうことにして、
 時間が空いた時は自分で付いていればいい。
 美鈴は準備にとりかかることにした。




 ☆一日目

「……あら?」

 夜の巡回中、咲夜はふと足を止めた。
 何だか良い匂いがする。
 食欲をそそられるような匂いだ。

「何だろう。厨房の方みたいね」

 使うのは問題ないとしても、食事時でもないのに誰が使っているのか。
 夜勤のメイドが夜食でも作っているのだろうか。
 一応、確かめておく必要がある。
 咲夜は厨房に向かった。
 ―入り口にメイドが立っている。
 どうも門番隊らしい。

「あ、メイド長」
「こんな時間に何をやっているのかしら?」
「……咲夜さん?」

 奥から声が聞こえた。
 聞き覚えのある声だった。
 程なく声の主がやって来る。

「すみません、ちょっと厨房使わせてもらってます」
「それはいいけど……美鈴、もう遅いのにどうしたの?」
「ええ、ちょっと作りたいものが」

 そこまで言って、美鈴は横に立っているメイドに目をやった。
 ちょうど休憩時間で手の空いていた彼女は、厨房に入る美鈴を見て
 鍋の番を買って出てくれたのだ。

「ほら、大丈夫だから貴女はもう休みなさい?」
「えー、だって隊長の『手料理でラブラブ大作戦』がうまくいくかどうか心配で……」
「っ!?べ、別にそんなんじゃありませんよ!ほら、明日も早いんだから!」

 メイドを追い立てるように帰した後、横に咲夜がいたことを思い出したらしく、
 美鈴は顔を赤らめた。

「手料理でラブラブって……○○に?」
「ええ、そうですけど……で、でも別にそういうつもりじゃなくて、
 ○○さんが最近疲れてるようだから元気が出るようにと思って」

 なるほど、中では寸胴鍋が湯気を立てている。
 側に寄ってみると、良い匂いが一段と強くなった。
 だが覗き込んでも、鍋の中身がなんなのかよくわからない。
 ……底から浮かんでくる泡が虹色なのは気のせいだろうか?

「変なもの入れてないでしょうね?」
「生薬とかは入ってますけど、身体に良くないものは入れてませんよ。
 本当は秘密ですけど、咲夜さんになら教えてもいいです。
 まずですね……」
「や、教えてくれなくていいわ」

 気にはなる。気にはなるが、知らない方がいいような気がして、
 咲夜は美鈴の言葉をさえぎった。 

「そうですか?まあ最終的にはスープを飲むもので、材料はほとんどダシなんですけどね。
 これは美味しくて、よく効きますよ。○○さんもきっと元気になってくれます!」

 目を輝かせてそう言う美鈴をしばらく眺めていた咲夜は、
 やがて肩をすくめると微笑を浮かべ、ぽんぽんと美鈴の肩を叩いた。
 
「ま、がんばりなさいな」

 それだけ言って、咲夜は厨房を後にした。
 途中、○○が向こうから歩いてきた。
 本を何冊も抱えているところを見ると、
 図書館から魔法の勉強用に本を借りてきたところらしい。

「…………幸せ者」

 すれ違いざまに、声をかける。
 何のことかわからないらしく、ぽかんとしている○○を置いて、
 咲夜は足早に立ち去った。





 ☆二日目

 今晩も、美鈴は誰もいない厨房で鍋の側に付いていた。

「うん、いい感じ」

 経過は順調だ。やっぱり愛情を込めているから、などと考え一人赤面する。

「……何を作っているのかしら?」

 と、いつの間にか誰かが厨房に来ていた。
 
「お嬢様!?」
「あら、美鈴なの。それは何?」

 やって来たのはレミリアだった。
 普段なら厨房に入ってくることなど滅多にないのだが。

「な、何故こんなところへ?」
「なんだか変わった、いい匂いがしたものだから。どれどれ……」

 そのままでは届かないので、少し浮かび上がって鍋の中を覗き込んでいる。
 
「えーっと、これは……スープですが」
「そう。美味しそうね」

 答えながら、美鈴は何となく悪い予感がしていた。

「これ、私がもらうわね」

 ……予感は的中してしまったらしい。

「あっ、あの!」
「何?」

 レミリアには何とかして諦めてもらわなければならない。
 こんなに一生懸命作っているのも、○○に食べてほしいからなのだ。

「まだ完成していないんです。何日か煮込まないといけなくて」
「そうなの?じゃあ出来上がってからもらうことにするわ」

 逆にカウンターで追い詰められてしまったが、ここで膝をつくわけにはいかない。

「ま、まだ入れてない材料があるんです」
「出来上がってからでいいと言っているでしょう?」
「いやその、それがですね」

 とにかく今は、何としても状況を打開したかった。

「―にんにく、なんですが……」
 
 本当は、にんにくを入れなければならないわけではない。
 が、ついそんな言葉が口をついて出た。
 聞いた瞬間、レミリアの表情が引きつる。

「ほう、にんにく……
 よりによって私の屋敷で、にんにく入りの料理を作ろうとしていたと言うの。
 それなりの覚悟はできているんでしょうね」

 怒りに満ちた声が、ゆっくりと、絞り出すように発せられた。

(あれ、私もしかして生命の危機にさらされてる?)

 言ってしまった以上取り消すこともできない。
 絶体絶命かと思われた時だった。

「ああお嬢様、こちらでしたか
 ……どうなさったんですか?」

 レミリアを探して入ってきた咲夜は、
 ただならぬ空気を察したらしく、レミリアに尋ねる。

「門番の謀反よ」
「ち、違いますよー!」
「じゃあその鍋は何なの!?」
「?……お嬢様、その鍋でしたら」

 咲夜は身をかがめると、レミリアに耳打ちした。

「は?手料理でラブラブ?」
「そうです」
「いや咲夜さん、だから私はただ」 
「……でもにんにくを入れるって言うのよ」
「……そうなの、美鈴?」

 昨夜のメイドの言葉をそのまま受け取っている咲夜に申し開きをしようとした美鈴は、
 突然飛んできた質問に黙ってしまった。
 今更レミリアの前で、とっさに思いついただけですとは言えない。
 お仕置きは覚悟の上で美鈴は小さく頷いた。

「事情が事情だから許してやってもいいけれど……
 このままここで作らせるわけにはいかないわね」

 意外にもレミリアは怒りを静めたようだ。
 部下の恋愛事情が、退屈しのぎになると思ったのかもしれない。

「ああ、それでしたらお嬢様。外に場所を移させては?」
「そうね。門の外ならまあいいでしょう」
「―そういうわけだから、美鈴。
 続きは何とかして外でやりなさいね?
 さ、お嬢様。お腹が空いているのでしたら、何か軽いものでも用意しますわ」

 そう言って、咲夜はレミリアを連れて行ってしまった。
 とりあえず、目前の危険は回避された。
 が。

「……どうしましょうか」

 外での煮炊きをどうするか。
 言った以上にんにくも入れなければならないが、
 もちろん紅魔館にはないので調達してこなければならない。
 厨房の隅で作る分には隠し通せたが、
 外で作っていれば目立つことこの上ない。
 ○○に見られて、外で作ることになった経緯を話すことになれば、余計な気を使わせてしまう。
 それでは最初に嘘をついた意味がない。
 問題は山積みだった。





 ☆3日目

 良い天気だ。
 春が近いせいか、風もそろそろ暖かくなってきた。
 さわやかな気候とはうらはらに、美鈴は疲れていた。
 昨夜の内に何とか門の脇にかまどを組むことができた。
 既に火を焚いて鍋を移し、風除けとカモフラージュのためにテントを張った。
 ○○が来ても、何とかばれないようにはできるだろう。
 にんにくは咲夜に昨日説明できなかった事情を話し、
 お使いの時に買ってきてもらうことになった。
 これで一通り対策を取ることは出来たが、
 一晩であれこれと動き回った結果、だいぶ消耗してしまっている。
 
「隊長、正門前方に飛行物体確認!霧雨魔理沙です!」

 そしてこんな時に限って、侵入者がやってくるのだ。
 
「……総員、迎撃体制の配置に着いて!」
「待ってください、館内から連絡です……
 今日は一応お客様なので、そのまま通せということです」

 ほっと息をつく。
 魔理沙を乗せた箒はすぐに門の前まで飛んできて、美鈴の前に着陸した。

「よぉ門番。今日はいつもみたいな出迎えはないんだな」
「館内から連絡がありましたからね。お客様だということで」
「ああ、フランと遊んでやる約束があったんだ。ところで」

 魔理沙は親指を立てて、美鈴の横のテントを指した。

「そりゃいったい何だ?中から美味そうな匂いがするんだが」
「……秘密です」
「……まあいいけどな。気をつけた方がいいぜ?
 色々寄ってきそうな匂いだからな」

 門の中へ入っていく魔理沙の背中を見送った美鈴は、
 急に不安にかられてテントの中を覗いた。
 中には誰もいない。異状もない。
 鍋の上の虚空から突き出た、お玉を持った手を除けば。

「……はっ!」
 
 一難去ってまた一難などという言葉が頭をよぎるのを隅に追いやり、
 牽制程度の力を込めて、弾を放つ。
 手は瞬時に消えて弾をよけた。
 そして次の瞬間、空中に現れたスキマから顔だけを出したのは八雲紫だった。

「紅魔館の方に何だか面白そうな気配がしたから来てみたんだけど……
 少しぐらい味見してもいいじゃないの」
「貴女に食べさせる分はないですよ。
 それは○○さんのための元気が出るスープです」

 構えを取る美鈴に対し、紫はあくまでも悠然と話しかけてくる。
 
「元気が出るって……貴方達そんなに毎晩がんばってるのかしら?」
「な……そういう意味じゃありません!」

 ついつい声が大きくなるが、相手はどこ吹く風といった様子だ。
 
「……まあ、そういうことなら私は退散するわ。
 ああ、それと先に謝っておくわね」
「?何をですか」

 紫は心底気の毒そうな顔で言葉を続ける。

「何も白玉楼に遊びに来てる時にスキマを開ける必要はなかったなと思って。
 このスキマは閉じるけど、時間の問題でしょうね」
「あ、ちょっと紫さんいったい何を……」

 姿を消そうとする紫に追いすがろうとした美鈴は、
 背筋に寒気にも似た感覚を覚えてテントの外に飛び出した。
 圧倒的なプレッシャーが近づいてくる。
 幻想郷屈指の大妖怪とはいえ、半ばからかいにきただけだった紫と比べ、
 これは強大な捕食者の存在感だ。
 
「……隊長!」

 部下のメイドが駆け寄ってくる。

「落ち着いて!どこから来るかわかりますか?
 正面?それとも裏から?」
「真上です!上空から何か近づいてきます!」

 思わず見上げた空から、ゆっくりと降りてきたのは、

「ごきげんよう、門番さん」

 ―西行寺幽々子だった。
 いつもどおりの柔和な笑顔だが、
 向かい合っているだけで押しつぶされそうな気迫を感じる。

「スキマからすごく美味しそうな匂いがしたから、
 ちょっと通してもらおうとしたのに、紫ったらスキマを閉じちゃうんだもの。
 ここまで来るのは大変だったわ~」

 後ろでメイドが倒れた。
 神経が耐え切れずに気を失ったらしい。

「一口だけで、いいのだけれど。
 そのテントの中にあるお料理を、私にもいただけないかしら?」
「幽々子さまっ!」

 息を切らせながら幽々子に続いて現れたのは、妖夢だった。
 
「美鈴さん、だまされてはいけません!
 幽々子さまの一口は並の一口では……あうっ」

 幽々子が手にした扇で妖夢を軽く叩く。
 それだけなのに、妖夢が吹き飛ばされた。

「失礼なことを言わないの。
 ……どうかしら?
 まあ、どうしてもだめと言うなら、
 ちょっと倒れてもらってその間にいただくことにするわ」

 折れそうな膝に力を込める。

「…………おおおおおおぉぉぉぉ!!」

 絶望的な戦いとはいえ、退くわけにはいかない。
 全ては○○のために。
 気合を込めた叫びと共に、弾幕ごっこが始まった。



「……門の前が騒がしいようね」
「白玉楼の西行寺幽々子が来た模様ですが、
 館内に侵入する意思はないようです」

 咲夜はレミリアの前に紅茶のカップを置きながら言った。

「許可をいただけるなら、私が出ますが」
「……いいわ。大体目的の察しがつくから」

 カップを持ち上げ、紅茶を一口飲む。

「門番、意外と善戦してるようね」
「ええ。格の違いを考えると、あっという間に勝負がつきそうなものですが」

 例の鍋を守ろうとするために普段より能率が良くなっているのはいいが、
 招かれざる客を増やしているのもあの鍋だ。
 なかなかうまくいかないものである。
 
「咲夜、やっぱり行ってもらえるかしら。
 これでまた作り直すなんてことになったら、いつまで経っても騒がしいことになるわ」
「……かしこまりました」






☆できあがり


「美鈴、いる?」

 ○○は門番詰所に来ている。
 昨日は侵入者が来ているということでここへ来られなかった。
 昼休みになったが、今日は会えるだろうか。

「……あ、○○さん!」

 美鈴は既に詰め所に来ていた。
 明るい笑顔だが、目の下には隈ができている。
 昨日の激闘のせいなのだが、○○には知る由もない。
 ただ、理由はわからなくても美鈴のことが心配されてならなかった。
 
「あの、美鈴大丈夫?何だか疲れてないか?」
「そ、そんなことないですよ!それより○○さん」

 部屋の隅にあった、毛布で包んだ何かを机の上に持ってくる。

「この間言ってたスープ、ちょっと作っておいたんですよ。
 良かったら食べてみてくれませんか?」

 保温のための毛布をはがすと、中からは寸胴鍋が出てきた。
 ……三日三晩かけて作ったことや、
 昨日ギリギリのところで咲夜が間に合い、ようやく復活した妖夢も協力して
 なんとか幽々子から死守したことは黙っていた。
 
「さ、どうぞ」

 蓋を取り、中のスープを鉢によそって○○の前に置く。
 
「いただきます」

 透き通っていて、見た目からは味が想像できない。
 れんげですくったスープを、○○は一口すすってみた。
 美鈴は期待に満ちた表情で彼を見つめている。

「これは……」

 うまい。うまいだけでなく、身体の底から力が湧いてくるようだ。
 一口味わうと、さらにもう一口食べたくなる。
 食べたくなくても食べてしまうとか、
 薬でトリップするような感覚だとか、そういった意味ではない。
 あくまで健康的に、身体が良い方向に引き上げられるような味。
 一説に蓬莱の薬というものは非常に美味であるというが、
 それにすら匹敵するのではないか。
 感動を言葉にしきれず、○○が発したのはただ一言だった。
 
「うまい!」
「……良かった、喜んでもらえたみたいですね」

 あっという間に平らげ、○○は一息ついた。

「まだおかわりありますからね」

 二杯目をよそってもらいながら、○○はふと思いついたことを聞いてみた。

「なあ美鈴、このスープって人間にしか効かない?」
「いえ、妖怪にも効果がありますけど……何でですか?」
「いや、美鈴にも一緒に元気になってほしいから」

 一匙すくって、美鈴に差し出す。

「はい、あーん」
「そ、そんな……恥ずかしいですよ」
「誰もいないみたいだから、いいかなと思って」

 詰所には他の門番隊がいてもおかしくないはずだが、
 確かに今は誰もいない。
 隊長に気をつかって席を外したらしい。

「……あーん」

 ためらいがちに開いた美鈴の口に、○○はれんげを滑り込ませた。
 口が閉じ、スープを飲み込むのを確認してゆっくりと抜き取る。
 美鈴はしばらく顔を赤くして○○の顔を見つめていたが、
 やがて○○の手に手を絡めて、れんげを自分の手の中へと移した。
 鉢から一匙すくい取る。

「お返しです。はい、あーん」
「……あーん」
「…………暑いわね、この部屋は」
「んむっ!?」
「さ、咲夜さん!?」

 ちょうど○○が口を閉じたところで、
 二人はいつの間にか横に咲夜が立っていたことに気付いた。

「―咲夜さん、どうしたんですか?
 あ、もしかして俺に急な仕事とか」

 何とか口の中のスープを飲み込み、落ち着いた○○が問いかける。
 さっきまでの光景を見られたと思うと顔が熱い。たぶん美鈴も、同じような状態だろう。

「逆よ。お嬢様から伝言。
 貴方と美鈴に明日の夜まで休暇を与えるそうよ」
「休暇?どうしてまた急に」
「にんにく入りのスープを飲んで館の中にいられると気分が悪い、
 ということにしておけと仰っていたわ」

 実際の所は、粋な計らい、というようなものらしい。
 普段なかなか二人で遠出する機会がないので、ありがたい。
 咲夜は心なしか居心地の悪そうな様子で、それだけ伝えると部屋を出て行った。

「……休暇なんて久しぶりですよ」
「せっかくだから満喫しないとな。どこに行こうか、美鈴?」
「あ、ちょっと待ってください○○さん。
 もう少しだけ」

 そう言って、美鈴は置いてあった鉢とれんげを取った。

「あーん」
「……あーん」





 ……結局出かける前に、鍋が空になるまで交互に食べさせあった。
 結果、過剰に元気になった二人が休暇をフル活用し、
 幻想郷中に甘い空気を撒き散らすことになるのだが、
 それはまた別の話である。

14スレ目>>31 うpろだ1017

───────────────────────────────────────────────────────────


 ある晴れた日のこと。
 男は少女への愛を、高らかに叫んだ。

「美鈴ー! 愛してる、君が好きなんだ。君の全てが愛おしいんだ! 美鈴! めいりーん!!」
「ああ、嬉しいです○○さん! 私も愛してます! だからお願いもっと言って! もっとー!」
「めーりーん!!」
「もっとー!!」

 そんな二人と少女たちのお話。






「由々しき事態です」

 夕闇の中のティータイム。
 十六夜咲夜は粛々と警鐘を鳴らす。
 彼女のお仕えするお嬢様、レミリアはぴくりと片羽を振るわせた。

「何の事かしら?」
「あの二人のことです。さすがにもう限界かと」

 あの二人とは○○と門番のことか。
 つい先日、紅魔館を震撼させた傍迷惑な告白劇はなかなかの見物だった。
 些細なすれ違いから、涙あり修羅場ありのラブコメディ。
 最後は関係者(一方的に巻き込まれた者も含めて)によるライスシャワーならぬ弾幕シャワーで締めくくられたそ
れは、レミリアのそれなりに長い記憶の中でも派手なものとして長く残るだろう。
 
「何か問題でも? あれでなかなか絵になるし、愉しいことじゃない」
「……そう、見えますか」
「ぁ、それがですね。本人たちとは違う所で多々問題が発生してるんです」

 目を伏せて言葉を詰まらせた咲夜に変わり、説明役をかって出るは後ろに控えていた小悪魔。
 胸元からメモ帳を取り出して咳払いを一つ。

「妖精メイドの皆さんから苦情が多く寄せられまして。曰く、『廊下でイチャイチャするな』『庭先でイチャイチ
ャするな』『厨房でイチャイチャするな』『門前でイチャイチャするな』『私の前でイチャイチャするな』『浴場
でニチャニチャするな』エトセトラエトセトラ……」
「全部同じじゃない」
「最近は直接行動に移るものも出てきたんですよ。攻撃を仕掛けたり、何を間違ったかサカったメイドが○○さん
に迫るなんてのもあります」

 前者は歯牙にもかけられず、後者は九割がた美鈴に撃墜されるのが関の山であるが。

「ですから、問題なんです!」

 咲夜、再起動。
 ちなみに発情メイドの残り一割ほどはナイフで仕留められている。

「現にメイドの業務に支障をきたしております。即刻、あの二人に何らかの罰則を! もしくは異動命令を!」
「異動って……○○は何か仕事してたっけ」
「本人の希望もあって庭で花壇の面倒をさせております」
「それがまた問題に拍車をかけてまして……」

 もともとは美鈴が門番長と兼任していた花壇の世話。
 ○○がそれに就くことで美鈴は門番の仕事に専念できる筈、だったのだが。

「勤務エリアがお互い目と鼻の先じゃないですか。暇さえあれば職務中もイチャイチャベタベタと……」
「……それは、問題ね」
「大問題なんです!」

 しかしここでふと思い至る。
 怠慢かと思われた門番、しかし近頃は侵入者は全く現れない。
 彼女の親友であるところの魔女も、最近は蔵書を盗みにくる黒白鼠が現れないといたくご機嫌であった。
 眼下に見える花壇も荒れてはいない。
 彼らの仕事に不備は見られないようだが。

「これはどういうこと?」
「えーっと……」

 人目もはばからず門前で乳繰り合う二人。
 そんな二人の邪魔をするような侵入者は、愛の障害とみなされる。
 愛に生き、愛を守るEX美鈴の指先一つでダウンさ!
 そもそも二人の成形する桃色素敵空間に入り込める輩はいない。
 恋符、愛に敗れたり。
 ここに紅魔館の門は鉄壁と化したのだ。

「結構なことね。機会があれば遠目に見てみようかしら」
「お嬢様!!」

 面白そうだし、と笑うお嬢様。
 目が潰れてしまいます、と騒ぐ従者。

「どうやらお嬢様はあの二人を甘く見られているご様子ですね」
「実害はないからいいんじゃない。どうせ妖精メイドだって役に立たないのは変わらないんだし、いっそ全部のメ
イドが○○に殺到するとか。それをばったばったと薙ぎ倒す美鈴。あら、割と愉しそうじゃない」

 パチェも喜んでるし、と付け加える。
 しかし流石はメイド長、待ってましたとばかりに小悪魔に目配せを送る。
 頷き、一度退室する小悪魔。

「……そんなこともあろうかと、パチュリー様を先に説得して参りました」
「説得って、どうやって? パチェが本より優先するものがそうあるとは思えないんだけど」
「今日の昼、あの二人に休憩時間は図書館でゆっくりしていくよう勧めました。そして……」
「その結果がこちらでーす」
「あら、パチェ?」

 戻ってきた小悪魔が小脇に抱えて運んできたのはパチュリー・ノーレッジその人。
 だらりと伸びた四肢に力はなく、椅子に座らせてもぐったりとして動かない。
 むきゅーの音も出ないとはこのことか。

「……れ、レミィ……」
「パチェ! どうしたの、しっかりなさい!」
「あの二人は……危険、よ……」
「パチェー!」
 
 警告を最後にがくりと崩れ落ちる魔女。
 それでも本を手から離さないのは流石だが、その本が恋愛詩集である辺りダメージを隠せない。

「バカップル糖分過剰摂取による動脈硬化、並びに消化吸収用のビタミンB不足によるものと思われますね」
「お解りいただけましたか、お嬢様。いま館内は危険度AAA。愛のモラルハザード馬鹿二匹を野放しにしている
状態。紅魔館改め桃魔館などと呼ばれてからでは遅いのです。何卒、御処置を」
「ふ、フフフ、面白いじゃない。ばかっぷるがどれだけのものよ。恐れてたまるものですか、私はレミリア・スカ
ーレットよ! こうなったら是が非でも見物したくなってきたわ!」

 駄目だこのお嬢様……早くなんとかしないと……。
 不適に微笑むレミリア、どうやら向かうところ敵なし状態の『ばかっぷる』なるものに刺激されたご様子。
 無駄にカリスマ溢れるその雄姿に咲夜は頭を抱えた。
 空回りする主従を尻目にふう、と乾いた息を漏らす小悪魔。

「わかりました。もう建前も大義名分も無しです」
「……? 貴女、何を」

 佇まいを改め、覚悟を決めた様子の彼女を何事かと見やる。
 これまでの報告にも誇張や虚偽はないがそれ以上の被害でもあるのだろうか。
 もともとこの場を設けたのは咲夜の提案、彼女はそれに追随する形だったのだが。
 怪訝そうな咲夜をちらりと見、胸の前で指を組み訥々と小悪魔は語り出す。

「……正直なところ、キツいものがありまして。恋に敗れた女としては、焦がれた殿方が他の女性と仲睦まじくな
されるお姿は、少し。ええ、少しだけちくりとしますね」

 彼女が○○という男に心身ともに熱烈なアプローチをかけていたのは周知の事実だ。
 であるならば彼の惚気ぶりを見て、心穏やかでいられる筈もなく。
 その心情を慮ってか黙り顔を見合わせる主従。
 小さく儚げに笑う彼女は、しかしやはり歴とした悪魔の眷属で。

「って咲夜さんが言ってました」
「んなっ!」
「へっ?」

 今ここに明かされる驚愕の真実。
 しのぶ恋、主にさえ気取られぬほど色も出さずに秘めるのが瀟洒たる所以か。
 しかしそれも今となっては、砂上の楼閣に等しい。
 鉄の仮面に入ったヒビは見る見るうちに綻びを大きくしていく。

「咲夜……あなた、そうだったの」
「ちちちち違います、違うんです! 言ってません私そんなこと言ってません!」
「恥ずかしがらなくてもいいですよー、咲夜さん。一緒に祝福のクナイ弾を雨霰とお二人にぶちかました仲じゃな
いですかー」
「貴女も黙りなさい!」
「その話、もうちょっと詳しく聞きたいわね」
「おじょーさまー!!」

 メイド長、大ハッスル。
 頬といわず耳まで赤く染めて、ぱたぱたと両手を忙しなく意味もなく振る様は普段の彼女からは考えられない。
 
「いいでしょう、お話します。あれはお二人が結ばれた夜、そして同時に想いは届かぬものとなった夜。傷心の女
は二人、涙でウオツカを割って、儚く散った悲恋を肴にグラスを傾けたのです」
「嘘よ誤解よ捏造よ出鱈目よー!」
「ほうほう、それでそれで?」

 お嬢様は興味津々。
 一方で槍玉にあげられた従者はもう半泣きだ。
 
「『気のせいだと、何かの間違いだと思ってた。ううん、そう思い込んでたのかしらね。それでも私は現状に満足
していた。十分だったのよ、彼とたまに顔を合わせて、それで笑って挨拶して、労いの言葉をもらって……。でも
いざああして突きつけられると、駄目ね。憎いとかじゃないのよ。本当。ただ、何をやってたんだろうって』」
「声帯模写っ? ていうかどこまで!」
「あなたそんな特技があったの」

 それにしてもこの小悪魔、ノリノリである。
 完璧な声真似に加えて物憂げな表情で再現されるそれは臨場感抜群。
 時折声を詰まらせ、酒に見立てているのか紅茶をあおるなどと芸が細かい。
 羞恥の小芝居は本人が泣こうが喚こうが耳を塞ごうが関係無しにノーカットで続けられた。

「――そして誓ったのです。いつか幸せをこの手に掴もうと! 私達、『正妻が駄目なら二号でもいいじゃない。
愛の人と書いてラ・マンと呼ぶのよ同盟』の名の下に!」
「ぁああああ! お黙れぇー!!」

 咲夜、殴る! 殴る!
 小悪魔、かわす! かわす!




「っ……! と、あの二人のせいでっ、色々と不都合が起きまして……っ!」
「いひゃいれふよ、ひゃふやひゃーん」

 小悪魔のほっぺたをギリギリとひっぱりながら。
 面の皮が分厚いのか伸びる伸びる。
 おまけにちっとも痛そうに見えない。

「まあ、いいか。咲夜を泣かせたとあれば、俄然興味も湧いてきたし。私自ら動いてみようじゃないの」
「泣いてなんかいませんっ!」
「むしろ鳴かせてほし……あんっ、ダメっ。耳は弱いんですぅ」

 無駄に艶っぽい声を上げるが、耳を引っ張られているだけだ。
 
「ともあれ、英断で御座います。この時間であれば、彼女は仕事中ですので……」
「○○は自室かしらね。そっちはそっちでなんとかなさいな。私は○○と話してくるわ」
「……お嬢様が○○に会うんですか? そちらは私から追って伝えるつもりだったのですが……」
「いけませんよー、咲夜さん。抜け駆け禁止って約束したじゃないですはひたたた」
「お・だ・ま・り・な・さ・い」

 じゃれ合う二人を放っておいて、意気揚々と立ち上がるレミリア。
 日はとっぷりと暮れていた。
 いつぞやもそうだったが、あの人間が関わる夜は風変わりなものになる。
 何にせよ、退屈しないのはいいことだ。

「ところで○○に異動を命じるとしたら、今度はどんな役職がいいと思う?」
「清掃班の人手はいつでも不足しておりますので、そちらに回すのがよろしいかと!」
「図書館勤務がいいと思いまーす!」

 しかし小悪魔の彼女はともかく、咲夜ですらああだとは。
 なかなかの拾い物だったのかもしれない。
 だとするのなら、或いは――

「――やっぱり私の側仕えとしておくのが、よかったかしらね」

 その場を後にした彼女の顔には小さく笑みが浮かんでいた。



「はっ、今どこかでフラグの立つ音がしました。新たなルート開拓の予感! 難易度はHardですよー!」
「訳のわからないこと言ってないで、貴女も来なさい!」

「……むきゅー……」

 そしてパチュリー置いてきぼり。



 紅魔館の前庭。
 夜風も涼しいその中で、三人の女が対峙している。

「あら、咲夜さんに小悪魔さんも。どうかしたんですか?」

 にこやかに対応する美鈴。
 もともと人当たりのよい彼女であったが、その笑顔はもはや後光が輝かんばかりだ。
 愛って素敵。

「くぅっ! なんて輝き。これが正妻の余裕だとでもいうのでしょうかっ?」
「私の後ろに隠れない」

 眩しいものでも見るかのように、手をかざしてよろめく小悪魔。
 恐らく正妻以前に、彼女にはやましい所が多すぎるのではないだろうかと咲夜は思う。
 まあ確かに、目の前の幸せいっぱい夢いっぱい、愛が豊かな胸いっぱい、な美鈴は直視に耐え難いものがある。

「……美鈴。貴女、最近は随分とご機嫌よね。今にも飛んでいってしまいそうなくらい」

 咲夜さんは最近ずーっと不機嫌ですよねー、と呟いた小悪魔がドタマをしばかれた。えらく軽い音がした。

「そりゃあもう、愛しい○○さんと結ばれた私は上機嫌も右肩上がり! 天まで昇る勢いです!」

 結ばれた、の辺りで小悪魔の目に濡れた色艶が瞬いた。
 一方で咲夜の目からは一切の色彩が失せた。

「……そのせいかしら。足元が見えていないみたいだけど?」
「そんな! つま先から髪の先まで、私の身体で○○さんが見てないところなんてありませんよ! やん!」

 いやだ私ったらなに言ってるんだろう、と恥じらう美鈴。
 やだこいつなに言ってるんだろう、と歯軋る咲夜。
 私も事故を装って何度も見せたんだけどなあ、と端っこに退避して小悪魔。

「……確認するのだけど、今この場に○○は居ないわね?」
「そうなんです。このあとお部屋で待ってる○○さんと二人っきりで、でへ、えへへへへぇ」

 あーたまんねえ、とばかりに息を荒くする美鈴。
 あーやってらんねえ、とばかりに溜め息を漏らす小悪魔。
 あーもういいや、とばかりに呼気を鋭くする咲夜。

「……もういいわ。もうたくさん。もう知らない」

 穏便に済ませる心積もりは、既に頭から消え失せた。
 惚気はもういい。
 惚気はもうたくさん。
 どうなろうと、知ったことか。
 取り出したナイフを一本、その切っ先を向ける。

「単刀直入に決めるわね、美鈴。貴女は、○○と別れる」
「……はい?」

 快刀乱麻、一刀両断。
 前置きも後書きも考えず、ただその一つを宣言した。

「ちょ、咲夜さん。もうちょっとやり方が――」
「囀らない」

 もう少し手管足管回してやるものと思っていた小悪魔が口を挟もうとする。
 しかしその口に銀のナイフが挟まった。
 かちりと歯が刃を噛む。
 これには流石の小悪魔も目を白黒と瞬かせてモールス信号で降参の意を表する。

「えーと、咲夜さん? 今、ものすっごい聞き捨てられるべき、且つ言い捨ててはいけないことを仰りませんでした?」
「一本釘を刺すだけでは足りない? 複刀でズタズタにしてあげるから、貴女は○○から身も心も引くの」

 美鈴を纏う気ががらりと変わる。
 咲夜も大量のナイフを周囲に浮かべた。

「なんでそんなこと言われなきゃいけないんですかっ!」
「○○の為にならないからよ。貴女が周りも向こうも見ないで振舞うから、彼までそれに影響される」
「○○さんは私のこと見てくれますもんっ!」
「ああそう、でもね――」

 それを言うなら私も見ていたのだ、あの時から、彼の背中を、横顔を、ずっと。
 でも今ではその度に、そのすぐ側に。

「貴女が見えるのが、とてもとても障るのよ!」

 ヘッドドレスを掴み、投げ棄てる。
 メイドから一人の女にフォームチェンジ。
 事ここに至って、美鈴の方でも気づくものがあったらしい。
 その様に少し怯んだが、それでも雄雄しく闘気を立ち昇らせる。
 愛を守るため、EX美鈴スーパーモードここに見参である。

「私と○○さんは愛し合ってるんです! 誰であろうと何であろうと、手出し口出し後出し無用っ!」
「一人勝手に先走っておいて! こうして表に出てるんだから、出るトコ出てあげるわよっ!」

 同時に地を蹴る二人。
 ここに女の威信をかけた、弾幕勝負が始まった。

 そしてその一方で。

「ひやー、修羅場ラバンバ。一人の男を巡って戦う二人の女、そしてそれを裏から見つめる私。どうしましょう。
ここはやはり、王道的に夕日をバックにクロスカウンターで共倒れしたお二方を、非道にも埋めちゃうとか。そし
て哀しみに暮れる○○さんの心のスキマを埋めてみましょうか。Let's漁夫の利っ☆」

 そこに降りかかる流れ弾! 流れ弾!
 小悪魔、安地! 安地!



 その戦闘は熾烈を極め、その弾幕は鮮烈を窮めた。
 弾と弾のぶつかり合い、魂と魂のぶつけ合い。
 妖精メイドによる勝者予想集計は、メイド長4割、門番長3割、小悪魔1割、そしてその他(パチュリー様が乱
入して収める、お嬢様が乱入して勝ち残る、妹様が乱入してぶっ壊れる、自分が最後に勝つ等)が2割である。
 そしてその結果は。

「○○さんは私が大好きーっ!!」
「見てるだけで何が悪いーっ!!」
「きゃー! ルール違反の相乗不可避弾幕! 皆さん見てる場合じゃないです逃げてー!!」 

 あたり一面総撃墜。
 勝者も敗者も観客も、相打ちどころか丸ごと全部ノックアウトと相成った。
 当然ながら、そんな状態で当初の目的が果たされることは無かったのである。






「全くもう。言い出したのは咲夜なのに、不甲斐無いったら無いわ」
「面目次第もありません……」

 数日後、そこにはどうにか持ち直した咲夜の姿があった。
 辛辣な言を愉しげに送るレミリア。
 さらに後ろに小悪魔も控えている。
 三名による、バカップル対策報告兼打ち上げのお茶会である。

「それにしても、さすがお嬢様ですねー。あのお二人もすっかり落ち着いて、苦情もサッパリなくなりました」

 有耶無耶になったかと思われた二人の件であったが。
 ○○と話し合ったらしいレミリアの采配により、屋敷内に所構わずイチャつくバカップル二人の姿はなかった。
 両名、自身の仕事に今まで通り励んでいる。
 仲のよさは相変わらず、愛も変わらずではあったが、時と場所を弁えるようにはなったらしい。

「○○のお願いを聞いてあげただけなんだけど。いや、それもこれもどれも私のカリスマの為せる業か」
「しかし、同じ部屋に住まわせただけでどうしてこうも変わるものでしょうか」

 主のカリスマとやらを疑う訳ではないが、彼女にはその理由がイマイチ判らないらしい。
 そう口にした彼女がやや憮然としているのはそれだけのせいではないだろうが。

「ふっふっふー。甘いですよ咲夜さん。適度な刺激こそが、愛しい二人をより燃え上がらせるのです!」
「……そういうものかしら」
「そういうものなの?」
「そういうものなんです」

 したり顔で不敵に笑う小悪魔。

「普段からずーっとべったりだとやっぱりマンネリですからね。敢えて会えない時間を作ることでメリハリをつけ
るんです。緩急ってやつです」
「せいぜい半日だけなのに?」
「たかが半日、されど半日ですよ、お嬢様。例を挙げてみましょう。○○さんと半日顔を合わせることが出来ず、
挨拶もされることのないままの咲夜さん。どうです?」
「あら、とんでもなく不機嫌」
「例になってないわよ!」
「ところがどっこい、その後廊下でばったり○○さんに出くわし二言三言会話する咲夜さん」
「あら、とてつもなく上機嫌」
「お嬢様ぁー!」

 ちなみに今日はいまだ会話なし。
 多分この後も会うことなし。

「そして何より! 同じ部屋でベッドは一つ! それでやっぱり枕は一つ!」
「枕は二つじゃないの?」
「腕枕って素敵だと思いませんか、咲夜さん?」
「私に聞かないでっ」

 たまに膝枕、どちらかと言えば肩枕、あるいはそれは胸枕。

「二人が中で何をしているか。気になりませんかお嬢様?」
「気になるわ。見てないの咲夜?」
「見てません。見たくもありません」
「家政婦は見るのが仕事らしいわよ?」
「私はメイドですっ」
「メイド長でしょう、あなた」

 最近のレミリアは頻繁に○○と話している。
 それは外界のことだったり、他にも、まあ色々。

「仕方ありませんねー。それでは不肖ながら小悪魔、ありのまま昨夜見てきたことを話しますっ!」

 いつの間に、どうやって見たというのか。
 鼻息荒い小悪魔を前に、咲夜の頭はどうにかなりそうだった。

「『ねえ、○○さぁん。今日も、その……シてくださいよう』」
「ん、なっ……」
「おおっ」

 毎度おなじみ小悪魔劇場。
 美鈴の猫撫で声が普段の惚気っぷりより糖分三割り増しだ。
 顔を真っ赤に染めて絶句する咲夜。
 身を乗り出してかぶりつくお嬢様。

「『わかってるよ美鈴。ほら、いつも通り後ろを向いて』」
「な、んななななな……」
「後ろ? いつも後ろなの?」
「『はい、お願いしますね……んッ』」

 一人二役、男声だってお手の物。
 そして美鈴の、明らかにあからさまに普段とは違う意味で甘い声。

「いいい、いけません。聞いてはいけませんお嬢様!」
「咲夜、目を塞がれると前が見えないわ」
「『あ、はぁっ……ふあ、んっ! 気持ちぃ、ひ、あんっ!』」

 完璧に似せた声色のせいで、寧ろ見えない方が生々しいが。

「『そんなにイイんだ? じゃ、ここをこうする、とっ……!』
 『ぅあンッ! あ、あーっ! すごっ、そこっ! スゴいのぉ……!!』」
「……○○ってそんなに凄いの?」
「わ、私に聞かれても困ります!」
「『美鈴だって、ほら。ここ、こんなになってる……』
 『やぁ……ん、言わないでェ……恥ず、かし、ぃ、あッ!』
 『ぴくぴくして、こんなにカタくして。凄いよ、美鈴の……』」
「…………」
「…………」

 ごきゅり、と。
 どちらともなく生唾を飲み込む。
 激しさを増す蜜夜の音声再現に、もはや相槌も静止もなく聞き入っていた。

「『美鈴の 肩 こ り 』」
「……肩」
「……こ、り?」
「『だってぇ、基本的に肉体労働ですもん。あっ、そこそこ。くぅあー、極楽ですねえ』」

 しおしおと、場の盛り上がりが萎れていくのが見て取れるようだった。
 要はただのマッサージ音声。
 確信的な犯行であることは間違いない。

「なんだ、つまらない。私も今度○○にやらせてみようか」
「……まあ、そんなことだろうとは思ったけれど。わかってたわ。本当よ?」
「『それにやっぱり、大きいとどうしても負担になっちゃいますし……やんっ、そこは違いますってばあ』」

 瞬間、咲夜の時間だけが空間ごと音を立てて止まった。
 寧ろヒビが入った。

「……という感じでしたー。羨ましいなあ、○○さんの肩もみ。私もして貰いたいですねえ」

 声真似を終えて小悪魔が大きく伸びをする。
 その動きに合わせて揺れる、たわわに実った二つのソレ。
 なるほど、彼女の肩にかかる重さも並々ならぬものがあるだろう。

「咲夜さんもお願いしてみたらどうです?」

 そう言ってちらりと目線をくれる。
 無論のこと彼女の魅力を損なう訳でもなく、全体からすれば美しいラインを誇るだろうがしかし。
 さほど負担にはならなそうな、咲夜のソレ。

「肩とか、凝りません?」

 ぺたぺたと自分のソレに手を当てるレミリアは置いておいて。
 強烈な皮肉であった。

「あああ貴女って娘はーッ!!」

 激昂した彼女の手に握られるは銀のナイフ。
 今にも投擲せんと振りかぶられたその時。

「ひゃ、危ないじゃないですかー。『咲夜さん』」
「う、あっ」

 ○○の声で名前を呼ばれ、ピタリとその挙動は静止する。

「『そんなに怒ることないですよ。それに咲夜さんのだって可愛くて、好きですよ。俺は』」
「な、何を……」

 ナイフはどこかに引っ込んだ。
 声真似だとはわかっていても、手が出せない。
 その声は、その言葉は、あまりにも咲夜にとって甘美に過ぎた。

「『ねえ、咲夜さん。いや、咲夜』」
「あ、あ。あぁ……」

 なんかもう本人よりいい声で、ウィスパーボイス。
 それだけで彼女は腰砕けだ。
 何よりその声で名前を呼び捨てというのは、クるものがあった。

「『かわいいよ咲夜。食べてしまいたいくらいだ』」
「駄目、駄目よ。○○……!」

 シチュエーションとしては、強引に迫る○○と受身の咲夜といったところか。
 全てにおいてありえない状況だが、意外にもツボに嵌ったらしい。
 身をよじり、形だけの拒否を口にする咲夜。
 目を瞑るのは逆効果だというのに。

「『いいだろう、咲夜。俺、もう我慢できないよ……』」
「○○、だめ……。し、仕事中なのよぉ……って。あ、れ?」

 目の前にいる、と錯覚した彼の胸を弱弱しく押す。
 無論のこと手応えはない。
 目を開けて確認してみれば、声の主たる小悪魔は声真似を止めてレミリアと談義に花咲かせていた。

「仕事中だと駄目なの?」
「いえいえ、これは所謂OKサインです。もう心も肢体(カラダ)も準備は万端なのです」
「そもそも咲夜ったらいつも仕事中じゃない」
「つまり24時間オールオッケーってことですよ。any time、any where、only to him!
 いやん、咲夜さんのエロス! もっと!」

 羞恥と期待の赤から、殺意の無色へ。
 果たして、一人の修羅がここに誕生した。



「彼の声で、醜い悲鳴を上げなさいっ!!」

 咲夜、ナイフ! ナイフ!
 小悪魔、かすり! かすり!






 そのまたさらに数日後。
 今日も今日とて紅魔館は程よく平和だった。
 心亡くさない程度に忙しいメイド長、咲夜は廊下の角を曲がったところで○○と遭遇することに成功した。

「こんにちは。お疲れ様です、咲夜さん」
「○○も、ご苦労様。これから休憩かしら?」

 それならお茶でも一緒にどうか、と。
 有りっ丈の勇気を込めて放たれんとした彼女の誘いは、しかしというかやはり。

「いえ、これからちょっと一大事がありまして」
「……あら、そうなの。頑張ってね」

 未然に終わったわけである。
 廊下を曲がり向こうに消える○○の背中に、彼女の溜め息は届かない。
 残念だけど。ああ、でも――

「それでも○○さんの笑顔とお疲れ様の一言で今日も頑張れる! 咲夜さんったら乙女チックー」
「……何を言っているの、貴女は」

 ○○の消えた角から当然のように現れる小悪魔。

「○○さんを見た瞬間、時間止めてまで顔合わそうとした甲斐がありましたね」
「何を見ているの、貴女は」

 廊下の端から端まで猛ダッシュ。
 その後もタイミングを上手く計ろうと秒単位での位置合せの成果だ。

「私もさっき、○○さんと故意にぶつかって勝負下着を見せちゃいました。ノーリアクションでしたけど」
「何をしているの貴女は!」

 黒のレースとガーター。
 咲夜は白のシルク、ガーター付き。

「全く。油を売ってないで、自分の仕事に戻りなさい」

 話はもう聞かないとばかりに咲夜は踵を返す。
 ○○が消え、小悪魔が現れた廊下へスタスタと歩を進める。
 特に他意はない。もともとこちらに用事があったのだ。
 これ以上茶化されては適わないと、話を聞かずに早足で。

「あー、咲夜さん。そっちには一大事な○○さんが……って、行っちゃった」

 聞いておけばよかったものを。



「美鈴ー! 愛してる、結婚しよう。これからはずっと一緒だよ! 美鈴! めいりーん!!」
「ああ、感激です○○さん! 私も愛してます! だからお願いもっと言って! もっとー!」
「子供は三人がいいかなー!!」
「もっとー!!」



「きゃー! 咲夜さん待って待って、八つ当たりはんたーい!!」
「……ッ! ~~っっ!!」

 咲夜、スペカ! スペカ!
 小悪魔、気合避け! 気合避け! 喰らいボム!



 どっとはらい

>>うpろだ1187

───────────────────────────────────────────────────────────

 月の綺麗なある夜のこと。
 吸血鬼のお嬢様は、変な人間に出逢った。

「貴女に、お願いがあります」
「ふうん? 試しに言って御覧よ。お前を試してあげるから」
「俺、いや私の願いは――」

 そんな二人だけのお話。






 鼻歌交じりに紅魔館の廊下を闊歩する小さな影。
 彼女こそがこの館の主、レミリア・スカーレットその人である。
 向かう先は紅魔館居候にして唯一の男手、そして門番長の紅美鈴と恋仲である○○の部屋。
 大変に仲睦まじいその二人だが、どうにも度が過ぎたらしい。
 なんとかしてくれと従者に泣きつかれてしまった。
 だがレミリアとしてはそちらはどうでもいい。
 寧ろ放置して楽しむべきだと思ったのだが、事態はそれよりもっと面白いことになっていたようで。
 彼女の従者、十六夜咲夜もまた彼に想い焦がれていたという(本人は必死に否定していたが)。
 ああ全く、どうして自分に教えてくれなかったのだろう。
 そんなに愉快で素敵な色恋沙汰、混ざりたかったし掻き混ぜたかった!
 だからこうして、直々に態々。
 張本人であるところの○○の部屋を訪ねることにしたのだ。

 別にレミリアは○○を咎める気など毛頭ない。
 仕事についても、色恋についても。
 何故ならば、彼は彼女の出した約定に今もまた忠実であるのだから。




 妖精メイド詰所から離れた客室の一つ。
 ○○の部屋のドアをレミリアは開けた。
 無論ノックはなし。

「今晩は、良い夜ね○○。元気にしてるかしら?」
「……これはこれはお嬢様、お蔭様で。今晩は、愛しい美鈴にかけて、良い夜ですね」

 机に向かってペンを手に何やら書いていた○○は、最初からこの調子だった。
 ぎしぎしと音を立てて椅子から立ち上がる。
 レミリアは半開きのドアに寄りかかり彼の反応をうかがった。
 こちらへどうぞと椅子を引かれてそれに腰掛ける。
 音など、立つはずもない。
 屋敷のそれの中では些か安っぽい調度品。
 付け焼刃ながらも不快とまではいかない彼の態度。
 特に目を引くものはない、ように見える。

「紅茶でよろしいですか? 普通のものしか出せませんが」

 不器用に紅茶を注ぐその手つきはしかし、いつぞやと比べれば大した進歩だ。
 いただくわ、と言いつつカップを取る。
 何の変哲もない香りと味。
 まぁ、それはいい。

「近頃はあまりかまってやれなかったけど、調子はどう?」
「絶好調です。何せ私には愛しい人がついているのですから。ええ、人はパンのみに生きるにあらず。愛を糧に生を
謳歌するのですね、ラヴ。世界の中心にはマントルが。しかし私と美鈴の中心にはそれよりもなお熱い愛が。先達は
素晴らしい言葉を遺して逝きました。我々の愛のために。ありがとう偉人、さようなら英雄。そしてこんにちは私の
可愛い恋人よ!」

 なるほど、彼はいつもこの調子なのか。
 聞いてもいない惚気をぺらぺらと語る○○。
 咎めはしない。
 彼女には視えていた。
 下手に突付けば、喜々として朝まで説明せんとする○○の姿が。
 机に置かれている、先程まで彼自身が手がけていた本。
 タイトルには『愛の日々』。

「咲夜に聞いたわ。あんまり仕事に身が入らないそうじゃない」
「――ああっ!」

 突如、大仰な悲鳴と共にその場に崩れ落ちる○○。
 何故かコマ送り。
 FPSが足りないのか彼とその周りだけ処理落ち気味だ。

「嗚呼、わかっているのです。職務に殉ずるべきだというのは。しかし、私めの言い分もお聞き下さいますかっ」
「言ってみなさいな」

 なんと自分の職務態度に問題があることは自覚していたという。
 崩れ落ちた姿勢そのままにさめざめと涙を流し、どこから取り出したのかハンカチを目に当てる。
 美鈴の姿絵が刺繍されたそれは彼のお手製だ。

「今日の仕事中のことなのですが――」

 薄闇の中、彼だけにスポットライトのような光が当たる。
 どこから、どんなものが、どうやっているのかは全くもって不明だが。
 どうやら回想が始まるようだ。
 カップを片手にお嬢様、気分は安い劇の観客だ。



 そう、今日の仕事中のことでございます。
 私はいつもどおり花の世話をしておりました。
 以前は美鈴自らが手がけた花壇は瑞瑞しく可憐で。
 私にとっても花の一つ一つは、まさに彼女との愛の結晶に思えてならないのです。
 しかし、悲しいかな。
 その花々も彼女一人には及びもしない!
 水をやり終え、ふと振り返ったその時です。
 なんという偶然でしょう。
 時を同じくして近くで警備の任に就いていた美鈴。
 彼女も全く同時に視線をこちらに向けたではありませんか!
 目が合う二人。
 花咲くよう、という喩えが御座いますね?
 けれども足りない。
 恥じらいを秘めながらも慈愛に満ちたあの微笑みには到底届きはしないのです!
 そんな彼女の元に走り寄り、抱きしめた私は愚かでしょうか。
 いえ、たとえ愚行であったとしてもそれは愛ゆえに!



「――という訳でして。ああ、愛が重い。しかしその心地よさを抱いていけるのなら私は、私は!」

 ウネウネと悶える○○。
 独り善がり極まるその回想はしかし、どこからともなくSEが鳴るわ響くわ舞台効果満載、に見えた。
 結局は惚気で手一杯頭一杯ということか。
 まぁ、彼女にとってそれさえもどうでもいいことなのだけど。

 一人芝居を満喫したレミリアはカップを傾けるが、既に飲み干した後。
 カップの底には美鈴と○○の相合傘が刻まれており、飲み終えるとそれが覗く仕様だった。
 御代わりを注ごうとする○○を手で制して立ち上がり、ふわりと音もなく浮かぶ。
 茶は尽きた。
 芝居の幕は下りた。
 次は彼女の番だ。

「……お嬢様?」

 くるりくるりと回りこんだは彼の背後、その首にしがみついた。
 瞬間、ぴたりと○○の挙動は静止する。
 その口からは惚気も芝居がかった台詞もでてこない。
 いや、息すらも潜めているのだろうか。

「素敵な寸劇だったわ。なかなか良い役者じゃない、○○」
「光栄、です」

 レミリアはクスクスと悪戯っぽく笑いながら背中に縋りつく。
 幼子が負ぶさるように、だが支配権は彼女に。
 腕の下から回した手は彼のさして厚くもない胸板をくすぐる。
 肩にあごを乗せ、頬をぴたりと合わせて囁く。
 
「本当よ? 大した役者振りだわ。役に嵌り、役に浸り、自分すら騙すなんて」

 タイをほどきボタンを外し、シャツの中に手を滑らせる。
 じっとりと冷や汗に濡れた胸に掌をあてれば、その鼓動は早鐘を鳴らしていた。

「……お気付きでいらっしゃった」
「震えないだけマシになったじゃない」

 思い出されるはいつぞやの夜。
 ○○という只人は紅い悪魔を前にしてガタガタと震え怯えながら。
 それでも一つの雇用契約を交わした。
 その日その時から、彼は彼女の愉快な玩具だ。
 運命の操り糸もないのに滑稽に踊るお人形。
 もっとも、ここまで愉しく踊るとは予想外だったけれども。

「弁えた者は好ましい。それでいて予測がつかないのが、〇〇の愉快な所だけど」
「ひたすらに、光栄です」

 耳元にあてた唇は弧を描いたまま、頬を伝って首筋へと。
 緊張に引き攣る筋肉を舌で舐りながら室内のある場所を指で差す。
 そちらに連れて行けという合図、いや命令か。
 ギクシャクと棒のような足を引きずりながら、常よりも幾分時間をかけて○○は漸く其処、ベッドにたどり着いた。
 途端、彼女はその上に彼を押し倒す。
 その力は強く、体格の差など意味を成さない。
 ギシリとベッドのスプリングが軋み、不恰好にもつれ倒れた○○を受け止めた。

「お嬢さ、ま……っ!」
「こっちを向きなさい、○○」

 ○○は抵抗しない。
 その上に覆いかぶさり強引に顔を身体ごと向かせて、レミリアは笑う。
 互いの吐息を感じられるほどの目の前で。
 それはそれは愉しげに、それはそれは嬉しげに、婉然と微笑みを浮かべた。
 紅い目が爛爛と輝いて、紅い舌がちろちろと覗いて。
 花咲くなどと生温い。
 其は花を枯らす笑みだ。
 全てを傲慢に吸い尽くした上で満足げに浮かべる、捕食者の哂いだ。

 さあ○○、いつかの続きをしようじゃないか?

「美鈴が好き?」
「はい」
「愛してる?」
「はい」
「小悪魔のあの娘より?」
「はい」
「咲夜より?」
「はい」
「……この私よりも?」
「……はい、お嬢様」

 レミリアの笑みが最早壮絶なまでに深まる。
 一方で、奥歯を噛み締めて頬を引き攣らせる○○。
 それもまた見方によっては笑っているように見えるかもしれない。

「この手で美鈴を撫でるの?」
「はい」

 身を離し、○○の上に馬乗りになる。
 シーツを握り締めていた彼の手を掴み、自らの白く滑らかな頬を撫でさせる。

「この腕で美鈴を抱きしめるの?」
「はい」

 ○○のシャツに袖口から指を差し込み、びりびりと裂いていく。
 露になる腕、その先の強張った指を口に含み、しゃぶる。
 唇を指先から掌へ。
 掌から手首へ。
 ゆっくりとゆっくりと、血の巡りを辿って頬を滑らせる。

「この胸に抱かれて美鈴は眠るの?」
「はい」

 腕を伝い、肩から胸へ。
 最早ボロ布となって纏わりつくシャツを、紙屑のように引き裂く。
 裸の胸に頭を乗せ、頬をぐりぐりと擦りつける。
 耳をピタリと当てれば鼓動が響く、それはちょうど心臓の上。
 息を深く吸えば、立ち昇る○○の血の匂いまでも嗅ぎ取れそうだ。

「――じゃあ、」

 胸元から名残惜しげに這い上がり、鎖骨を通って、首筋へ。
 胸と胸を合わせて頬と頬を擦らせて、頚動脈に鼻先を埋める。

「この血を、美鈴は飲んだ?」

 うってかわって縋るような問いかけ。
 両腕を背中に回し、○○が息苦しさを覚えるほどにきつく抱き、締める。
 彼からはレミリアの表情は伺えない。
 レミリアも、いま自分がどのような顔をしているかなど想像も出来ないだろう。

「いいえ、レミリア」

 そう、と彼女は吐息と共にそれだけを漏らした。
 身体の力が抜け、全てを委ねるように彼の身にしなだれかかる。
 いつの間にか開放された彼の腕は、彼女を抱き締めないけれど。

「ねえ、○○。貴方の血は――」

 ねえ、○○。
 あの娘も口にしたことのない貴方の血は。
 私への恐怖に怯える貴方の血は。
 あの娘への恋心に満たされた貴方の血は。
 私を前にしてなおも他の女への愛を謳う貴方の血は。

「きっと、歯が軋るほどに、甘いのよ」

 歯の先で血管を上からなぞる。
 ああ、どうしよう。
 このまま契約を反故にして、彼の血を思うが侭に啜ってみようか。
 このまま肉欲に溺れて、彼の身体を存分に味わってみようか。
 どうするの○○?
 何も言わないと、私は貴方をどうするかわからないよ?

「レミリア」
「! ん、ぁふ……」

 ここにきて初めて、彼がレミリアを抱きしめた。
 今夜初めて、彼自ら彼女を求めた。
 戦慄くように翼が震えた。
 脆弱で貧弱な腕の力に締められて、熱い息が漏れる。
 小さな耳に唇が寄せられ、くすぐったげに肩をすくめた。

「……お願いが、あります」
「聞くわ」

 刹那の惑いもなく即答する。
 彼の提案は、彼女にとって時に何よりも優先される。
 血も肉も、遂には埋めること叶わなかった、紅い吸血鬼の退屈を満たすが故に。

「私と美鈴に、部屋を一つ下さい。そこで二人が暮らすための」
「……それだけ?」

 よくわからない頼み。
 拍子抜け、期待外れ。
 寧ろそれはどちらかといえば咲夜の領分だ。
 彼女が耳を貸すには値しない。

 それだけじゃあつまらない。
 それだけじゃあ不合格だ。
 これはあの夜の再試なんだよ、○○!
 そんなことで、レミリア・スカーレットは満たされないよ。

 期待はそのまま失望に、そして新たに湧き上がる暗く純粋な欲望。
 翼が夜を覆うように大きく広げられる。
 犬歯が、今にもその首に突き刺さらんと鋭く伸びる。



「いいえ、もう一つ。私と美鈴の結婚式。その主催をお願いしたいのです」



 瞬間、時が止まった、ように感じられた。
 少なくともレミリアにとって。
 彼の血ではなく、その言葉を舌の上で転がして咀嚼して、漸く言葉を解する。
 パッと起き上がり、完全に毒気を抜かれた顔つきでパチパチと目を瞬かせる。
 まじまじと○○の顔を見つめた。
 その顔は冗談を言う顔じゃない、大真面目なもので。
 またこの男は、彼女の予想を表から切り捨ててくれたのだ。

「っふふ、くふ、ふふふ。ふはっ、あは、ははは。はふっ、ぅく、くくくくっ……」

 堪えきれなくなったのか、レミリアは遂に吹き出した。
 そのまま彼の上で笑い転げる。
 童女のように、鈴を転がすように、ころころと笑い続けた。

「――ふぅっ、はぁー。私も泣かされちゃったわ」

 何とか呼吸を整え、目尻に浮かんだ涙を拭う。
 もう先程までの威圧感はレミリアから失せていた。
 無邪気な少女のように、いまだ抜けきらぬ余韻にくすくすと小さな笑いを漏らす。
 もっとも、相変わらず半裸の○○の上に馬乗りになっているのが今となっては些か不釣合いだ。

「いい加減、どいてはいただけませんかね……」
「んー? んー、ふふっ」

 含み笑いを浮かべ、また胸の上に寝そべった。
 手を伸ばして○○の顔を両手で挟む。
 ぎくりと音が聞こえるくらいに表情を強張らせる○○。
 まだ彼女を満足させるには足りなかったのかと。

「ああ、心配しなくてもいいよ。○○の願いを聞いてあげる。レミリア・スカーレット、一世一代の結婚式典を催して
あげるわ。愉しみになさいな」
「それはそれは、有難いことです」

 それはそれとしてもう一つだけ。
 今夜最後の質問を、報酬代わりに受け取ることにする。
 顔を、今度は互いの吐息を吸い込めるくらい近づけて。

 これくらいはいいでしょう、○○?

「ねえ、この唇で、美鈴とキスはしたの?」

 答えようと開いた口を、自らの小さな口で塞ぐ。
 そのまま唇を深く深く、貪るようにぐいぐいと押し付けた。
 ○○の目が驚きに見開かれ、レミリアの目は恍惚に細められる。

「んっ――は、はぁ。んぅ、んんっ、んはっ、ぁは、ふっ。んむ――」

 なんて気持ちがいいのだろう。
 触れ合わせた唇は、ぴりぴりと電気が走るよう。
 絡ませた舌と舌は、蕩けて一つになったみたい。
 こうすれば○○に何も言わせることなく血を吸えるのではないかと、酷く魅力的で絶望的な案を思いついた。
 けどきっと無理だろう。
 こんな、こんなにも気持ちのいいことをしながら、他の事なんて何も出切るわけがない!




「――ん、ちゅ、じゅっ。ぷ、はぁ――」

 暫くの間、息をするよりも優先させて○○の唇を貪り続けた。
 そうして漸く満足したのか、彼を解放する。
 酸欠に喘ぎ息も絶え絶えといった感の○○。
 彼の胸から退き、ご満悦といった様子のレミリア。
 僅かにその頬が赤みを帯びているのは、決して酸欠などではないだろう。
 それをいうなら○○も同様ではあるが。

「は、ふぅ、はぁ。お嬢さ、ま? お帰り、ですか?」

 スキップでもしそうな足取りで扉へと向かう彼女に、ベッドから身を起こして尋ねる。
 僅かに期待と安堵が視えたが、今の彼女はそんなことを気にもとめないくらい上機嫌だ。
 この部屋を訪ねた時より、遥かに。

「えぇ、今夜はもういいわ。本当に、愉しかったわよ? ○○」

 お休みなさい、とかけられた労いに。
 同じく返そうとした○○だが、ふと思いとどまる。
 人は夜に休む。
 明日を迎える為、その次の夜を待つ為に。
 ならば、彼女は?
 夜に生き、夜を謳歌する彼女にかけるに相応しい挨拶は?
 少し考えてこう言った。

「お愉しみくださいませ、お嬢様」

 明日の夜を、そのまた次の夜を。

 バタンと閉められる扉。
 今夜最後に、○○が見たレミリアの表情は。
 夢に出るくらい可愛らしい微笑みだった。




 ○○の部屋をあとにするレミリアの頭の中は、式の計画で一杯だった。

 日取りは?
 こういったことは早いほうが良いに限る。
 いや、しかしあまりに急だと余裕がないように感じられるか。
 もったいぶるのが大物らしいかもしれない。
 そう、○○が焦れて焦れておねだりをしそうになったくらいが丁度いいかも。
 招待客は?
 招かなくとも来る連中は放っておこう。
 盛大な式に音楽はつきもの、樂団を忘れてはいけない。
 記事を書かせるためにもブン屋は――待てよ、事前に嗅ぎつけられては堪らないな。
 だとするなら、招待状は直前に。
 都合が付かない奴は……もういいや、召喚状ということでいいだろう。
 神前でなど誓わせるものか。
 私の名の下に――いや待て待て。
 あくまでも私は主催者なのだから、兼任するのは美しくない。
 いつぞや咲夜に聞いた閻魔とやらにやらせるか、それっぽい仕事をしてた気がするし。
 料理は? 規模は? そもそも結婚式ってパーティーと何が違うんだっけ?
 ああもう、決めることがあとからあとから前からも。
 本当に、本当に――

「愉しみで、しょうがないじゃない」

 歩みを止めれば、窓から差し込む月明かり。
 今夜も幻想郷から見える月は美しい。
 奇しくも月の形は、あの夜と同じものだった。






 それは邂逅の夜、始まりの夜。

「――貴女の屋敷に置いてください。それが、私の願いです」

 いったい何を言っているのだろう、この人間は。
 こんなにもみっともなく震えているのに。
 目の前の彼女をこんなにも畏れているのに。
 その住処に連れて行けという。
 私が怖くはないのかと、彼女は尋ねた。

「怖い、怖いけれどそれよりも何よりも、」

 屋敷の住人に恋をした、それが何よりも大事だと。
 レミリア・スカーレットを前にして、只の人間が。
 命乞いの一つもせずに、恋をしたとほざいてみせたのだ。

「愉快なことを言うのね、お前」

 変な人間、可笑しな男、愉快なことをいう奴。
 初めて見る種類の人間に興味が湧いた。
 よって彼女は一つの条件を出し、それを契約とした。

「その調子で、面白いことを言いなさい。
 そしたら私は貴方を置いてあげる。
 これは約束よ。レミリア・スカーレットの名に誓う。
 貴方が私を愉しませている限り、私は貴方を殺さないわ」

 彼に是非があろう筈もない。
 ここに契約は成った。

 それで、貴方の名前は?
 ――そう、○○。
 じゃあよろしくね○○。
 そしてようこそ。私の屋敷へ、私の夜へ。
 他でもない私が、貴方を歓迎するわ。



 闇夜における全てを哂う、三日月の映える夜のことだった。


>>うpろだ1188

───────────────────────────────────────────────────────────

 夕暮れ、と言うには少し暗くなりすぎた道を走る男が一人。

 まぁ、俺なわけだが。

 俺は我が家に向かって走っていた。
 とにかく早く我が家に帰りたかった。

 なぜなら───

================================================================================

「ただいまっ!」

 息せき切って玄関をくぐると、美鈴がいつものようにぱたぱたと小走りにやってくる。

「美鈴!」
「はい?」
「火の元の始末は!?」
「えっと… もう大丈夫ですよ?」

 ぎゅうっ。

 聞くが早いか俺は美鈴を抱きしめた。

「ひゃっ!? ど、どうしたんですか急に?」

 さすがに少し驚いたらしい。
 目を白黒させている。

「ごめん。しばらくこのままにさせてくれないかな」

 自分の声があまりに弱々しい事に気づく。
 そして美鈴を抱いた腕にはますます力がこもっていた。

「何があったかわかりませんけど… あなたの気が済むまで、いいですよ」

 やさしい声と体の温もりが心地よい。

 俺は、すうっ、と美鈴の髪の香りを嗅いだ。

「ああ…、いつもの、いつもの美鈴の匂いだ…」

 愛しくて愛しくて。
 どこまでも愛しい妻が俺の腕の中にいる、という事実を改めて噛みしめる。

 美鈴は何も言わず俺に抱かれたまま。


 たっぷり10分はそうしていただろうか。
 少し未練を残しながら美鈴から離れる。

「ごめんな、ご飯が冷めちゃったかもしれないな」
「大丈夫です♪ 今日も頑張っちゃいましたから、早く食べましょ♪」

 美鈴は笑顔で俺の手を引いた。

================================================================================

「おー、すげぇ」

 今日のメインディッシュは兎肉のソテー。
 具だくさんのポテトサラダにクリームスープ。
 そして籠にはこれでもかと盛られたロールパン。

「今日は何かあったっけ?」
「んー、そういうんじゃないんですけど、なんとなく」
「なんとなくでこんな豪勢な晩飯になるの?」
「いいじゃないですか。たまには♪」

 そんなやりとりをしながら夕餉は進み、食後のお茶の時間になった。

「それで」
「ん?」
「今日はどうしちゃったんです?」

 心底心配している顔だ。
 美鈴はいつもこうだ。
 俺が笑うと一緒になって笑い、俺に元気がないと一緒にしゅんとする。

「んー… 聞いても笑わないでくれるか?」
「笑うわけないじゃないですか」

 意を決して。

「実はだな」
「はい」
「甘えたくなった」

「…」
 ちなみにこの三点リーダーは俺と美鈴の二人分だ。

「ぷっ」
 しばしの沈黙の後、辛抱たまらなくなったのか美鈴が吹き出した。

 俺は少しむくれて
「何だよ、笑わないって言っただろ」
「ふふっ、ごめんなさい。何て言うかその、すごく可愛い理由だなって思ったら、つい」
「悪かったな」
「ほらほら、機嫌直して下さい♪」

 さも楽しそうに微笑む美鈴。

「今日、仕事しててさ、弁当食べて一服してたら」
「ええ」
「ふと、美鈴の事を考えてて」
「はい」
「なんでだかわからんけど、急に不安になったんだ」
「?」
「本当になんでだかわからん。で、気が付くと美鈴の事で頭がいっぱいでさ」
「はぁ」
「それでだな、甘えたくなった」

「本当に脈絡がないですけど… でも、嬉しいです」
 目を細め、どこまでも暖かな笑顔。
「あなたの初めてを、また知っちゃいましたから♪」

================================================================================

「じゃ、今日はずーっと甘えちゃって下さい♪」

 お茶を飲み終え、少しまったりしてきた所で美鈴はそう言った。

「いや、そこまで張り切らなくても」
「だって可愛い旦那様が求めてるんですから、それに答えるのが妻というものです♪」

 すっかりやる気満々だ。
 つーかだな。

 その。
 なんだ。

 可愛すぎて、困る。

「んしょ」

 隣に座ると、えへへと笑って俺の頭を自分の胸元へ抱き寄せ、すんすんと俺の髪の匂いを嗅ぐ。

「タバコも吸うし、今日は汗かいてぐちゃぐちゃになってるから色々臭いだろ?」
「あなたの匂い、私は好きですよ?」
「そりゃどうも」

「…そう言えば」
「ん?」
「私に甘えてくれるのって、初めてですよね」
「あー、そうだったっけか」
「そうですよ、だから今日はちょっとびっくりしてるんです」

「初めてついでに、洗いざらい話ちまうかな…」
「…」
「俺さ、ここに来てから… その、家族、っていなかっただろ?」
「…」
「紅魔館のみんなは、こんな俺に家族みたいに良くしてくれてさ」
「…」
「でも、どこかにどうしようもない“線”ってのがあるなって思って」
「…」
「やっぱり“他人”なんだよな、ってのがあって遠慮、というか何というか」
「…」
「でもさ、美鈴は何かにつけて俺の話を聞いてくれて」
「…」
「気づいたら、そんな美鈴が大好きになった」
「…」
「美鈴も俺を受け入れてくれた」
「…」
「“家族”になってくれた」
「…」
「前に言ったよな、俺は人間で、美鈴は妖怪だ、って」
「…」
「俺は何の取り柄もない、美鈴に何かあっても守ってもやれない弱い人間だ。でもな」
「…」
「俺は命を賭けて美鈴を愛する。心の底から」
「…」
「…まぁ、虫の良い話だよな。 ああ、俺は何の話をしてるんだろうなぁ」

 思わず自嘲してしまう。

 ぎゅっ。

 美鈴の腕に力がこもった。
 しかしそれはどこまでも優しく、暖かさに満ちた抱擁。

「辛かった、んですね」
「ごめん、あー、なんかダメだなぁ。すっげぇ弱っちかったんだな、俺」
「誰だって、そうですよ。私だって」
「ごめんな」
「謝る事なんてありませんよ。私、とっても幸せなんですから」
「ああ、俺だって幸せだ。幸せすぎて怖いくらいに」

 その時、俺はなんだか急に泣きたくなった。
 なぜだろうか、さっぱりわからない。
 何かの感情が爆発しかけていた。

 そうだ。
 しばらく忘れていたそれは───


「何度も“ついで”が出来ちゃって悪いけど、俺、泣くぞ」

 美鈴は全てをわかったように微笑み、俺は美鈴の腕の中でしばらくぶりに泣いた。
 悲しい涙じゃない。
 悔しい涙でもない。

 幸せに満たされた心を確かめるように、噛みしめるように泣いた。
 その涙を、その気持ちを。

 全て、美鈴にさらけ出す。

================================================================================

 ぱちり。

 目を覚ますと、美鈴の顔が見えた。

「可愛い寝顔でしたよ♪」

 どうも泣き疲れて少し寝てしまっていたらしい。
 その間、美鈴は膝枕をしてくれていた。
 のそりと体を起こす。

「今、何時くらいだっけか」
「えっと… 9時前くらいでしょうか」
「うへ、すぐ風呂沸かすから、ちょっと待っててくれな」
「はい♪」

 速攻で風呂を沸かし、それまで長々とわがままに付き合ってくれた美鈴を先に入らせる。
 その間に片づけを忘れていた湯飲みなどを洗っていると、なんだかいつもより早く上がってきた。

「お風呂、ごちそうさまでした」
「妙に早かったんじゃない?」
「ふふっ♪」

 含みのありそうな笑い。

「さ、早く入らないとお湯がぬるくなっちゃいますよ?」
 色々考える間もなく、風呂場に押されて行ってしまった。


「ふぃー…」
 たっぷりとした湯に肩までつかり、おもわず口から溜息が漏れる。
 昨日今日と久々に重労働だったからなぁ… 精神的に。

 だからなのかねぇ、アレは。

 とりとめもない事に色々と思いを巡らせていると

「お邪魔しまーす♪」
「待てぇーーーーーーーーーーーーーーい!」

 すかさずツッコミを入れてしまう。

「背中でも流してあげようかなーって思って」
「その前にその格好は何だっ!?」

 スクール水着。
 ご丁寧に胸の部分に名札がついている

 3-1 紅 美鈴

 妙に達筆だし。

 つーかだな、この家のどこにそんなもんがあったんだよ。

「えーっと、紫さんが『マンネリにならないように』とか言って、この間」
「あんのスキマ妖怪は全く…」

 にしても。
 色々と反則だ。
 微かに幼さの残る愛らしい顔に、色々と“女性”を主張する体つき。
 ふくよかな胸、適度に引き締まったウエスト、安産型のヒップライン。
 そして適度にむっちりとした太もも。

 正直に言おう。
 全てが俺好みだ。

 間違っても、断じて、“そういう体だから美鈴を好きになった”んじゃない。
 俺が好きになった美鈴がそういうプロポーションだった、というだけの事だ。

 それをさらに強調するかのように包む紺色。

「えっち」

 少しジト目だ。

「悪かったな。美鈴だからだよ」
「冗談です♪ さ、体洗いますよー♪」


 美鈴はそう言うと、問答無用で俺を湯船から引きずり出し───


 疲れを取ろうと風呂に入ったのに、さらに疲れてどうすんだ。

 ああ、精神的に満たされたからいいのか。
 お互いに。

================================================================================

 月が、高い。
 気づけばそれなりに遅い時間。

 風呂から上がって一息ついて、あとは寝るだけだ。

 奥の部屋には布団が一組。

「一緒に寝ましょ♪」

 いい笑顔の美鈴。


 二人一緒に布団に入る。
 冷たかったのは最初だけで、あっという間にぬくぬくになった。

「今日の仕上げと行きましょうか」

 そう言うと美鈴は俺の頭を自分の胸に寄せた。

 とくん、とくん。

 静かな夜の静寂。
 かすかに聞こえる心臓の鼓動。
 どこかで聞いたような懐かしい音。
 とてもとてもやさしい音。

 だんだん瞼が重くなってくる。


 美鈴は静かに歌い出した。

 初めて聞く歌だが、何かの子守歌だろうか。
 彼女の名前のように、軽やかで心地よい鈴のように澄んだ美しい声。

 俺は無意識に美鈴を抱きしめていた。
 それに応えるように美鈴も。

 心がもっと温もりを求めている。
 こんなにも好き合っているのに、心も体も何度も重ねているのに。

 それなのに、今日はどうしちまったんだろう。
 わがままだ。
 どうしようもなく。

 ふと、顔を上げると美鈴と目が合った。
 今は蝋燭の灯火だけの部屋。
 その火に照らされた美鈴の瞳はどこまでも澄んでいて。

 いつも見ている顔なのに、俺はいつもドキドキする。
 手を握る度に、抱きしめる度に、笑顔を見る度に。

 ああ、多分、俺は───



 今でも美鈴に“恋”をしてるんだな。



 そんな事を考えていたら

「おやすみなさい、私の大事な旦那様♪」

 その言葉と同時に、俺の額に熱い点ができた。





                         End.


=============================





「私が少し指を動かすだけで、あなたはずっとその娘といられるのよ?」
 扇子で隠された口からくっくっ、とさも愉快だという風な笑い声が聞こえる。

「お断りします」

 きっぱりと言った俺は内心、怒り狂っていた。
 目の前の大妖怪に。


「───何ですって?」
 ピクリと眉が上がり、声のトーンが変わった。


「はっきり言っておきましょう。俺は人間として美鈴を愛し、人間として死にます」

(追加妄想終了)


うpろだ1498

───────────────────────────────────────────────────────────

「「ふあぁ~…」」

しばらくぶりに晴れた今日は小春日和。
俺と美鈴は縁側で並んで茶をすすっていたのだが、あまりの陽気に揃ってあくびをして
いた。

「美鈴?」
「ふぁい?」
「すまんけど、膝を貸してくれ」

 突然の申し出に半分船をこいでいた美鈴は『いつでもいいですよ♪』と言うように膝を
ぽんぽんと叩く。



「あ」
「ん?」
「なんだか唇が荒れてませんか?」

 俺の顔をのぞき込み、ちょっと心配そうな口ぶり。

「あー、冬だしなぁ。なんか荒れやすいんだ」
「いつも使ってるのはどうしたんです?」
「とうとう昨日弾切れしたよ。こっちじゃ手に入らないから半分諦めてる」

 眉間に皺を寄せ、しばし考え込む。
 しばらくの間の後にはたと手を打って

「そうだ。蜂蜜だ」
「蜂蜜…ですか」
「寝る前に蜂蜜を唇に塗って寝るといいとか、前に聞いた事がある」


 そんなわけで縁側に蜂蜜を持ってきたのだが、美鈴は壺から蜂蜜を取り出すやいなや
自分の口に塗り始め、

「塗るのは寝る前なんだけどなぁ」

 とボヤく俺に───





「そういうの、反則だぞ」

 言いつつも頬が緩んでいる俺に、少し頬を染めた美鈴。

「潤ったところで、お昼寝の続きはどうですか?」
「いい夢が見られそうだよ」


 ───急速潜行。


================================================================================

 その30分ほど後の事。

「…」

 影がひとつ。

「やれやれ、今日の紅茶は砂糖抜きで決まりね」

 ポツリと呟き、そのまま引き返す。





 眠っている二人の手は、しっかりと握られていた。



                               End.

うpろだ1500

───────────────────────────────────────────────────────────

 死んで花実が咲くものか。


『明日も仕事かぁ…』

 俺はどこを見るでもなく、虚空を仰ぐ。
 指には紫煙たなびくタバコが一本。

 ここ2週間、仕事場と我が家を往復するだけの日々。
 家を出る時の美鈴の顔は少し寂しそうで。
 それなりの立場になると、色々と好き勝手も言えなくなる。

 改めて“男の甲斐性”という物に思いを巡らせていた。

 幸い、今日は早めに上がれたので店を少し見て歩く事にした。

 最初は気分転換のつもりだったのだが───


「ん?」

 店先の一際目立つ場所に、それはあった。
 周りの花と一緒にゆらゆらと揺れている。
 そう言えば紅魔館の花壇にも咲いていたなと思い、近くで見る事にした。

「その子が気に入ったの?」

 ややハスキーなよく通る声に振り向くと、

「ああ、風見さんでしたか」
「ごきげんよう。仲良くやってるかしら?」

 トレードマークの日傘は閉じている。

「おかげさまで…と言いたい所なんですが」
「あら、喧嘩でもしたの?」
「いえ、ここんとこ仕事が立て込んでて、美鈴が寂しがってるんじゃないかなと…」
 俺は自嘲するように目を細めていた。

「そう」
 彼女はそう言うと、手元の籠から何かを取り出し俺の手に握らせる。

「…球根、ですか」
「その子は切り花だから長くは保たないわ。あなたにその気があるのなら、この子を育ててみなさい」
 手のひらのそれを見ていた俺の顔に不安があったのだろうか。
「心配しなくても、その子はきっと応えてくれるわ。手間を掛けた分だけね」
 意味ありげに微笑む。


 ほどなくして彼女と別れると、永遠亭の兎達が何かを配っているのが見えた。
 それは俺にも半ば押しつけられるように渡される。

『竹林の中心で愛を叫ぶ』

 わら半紙の上中央にデカデカとした文字。
 やけに達筆だ。

 要するに伴侶に宛てて愛のメッセージを伝えよう、というイベントをやるらしい。
 開催場所は永遠亭。
 参加者は男性限定。
 ご丁寧に『参加者の行き帰りの安全は保証される』との文言も。


================================================================================


「お邪魔するわ」
「あ、今日はどうなされたんですかお嬢様?」
「一緒に図書館に来なさい」
「はぁ…」


================================================================================


 迷いの竹林の入り口に兎が一羽。
 提灯が吊された竹竿を前足で持ってちょこんと佇んでいた。
 見ればたくさんの明かりが奥へ続いている。
 なるほど、こういう事か。


 半時間ほど歩いただろうか、一際明るい一角。
 そこにはいかにもという日本建築の屋敷が。
 ここが永遠亭だろうか。

 見ると机が置いてあり、そこにも兎がいる。
 どうやら参加者はそこで記帳する事になっているらしい。
 すでにそれなりの人数が来ているようだ。
 見知った名前もある。

 記帳を追え、兎の先導で会場へ向かった。


================================================================================


「今日は何かありましたっけ? フラン様にパチュリー様に咲夜さんにこぁちゃんまで」
「これから面白いものが見られるから、一緒にどうかと思ってね」
「面白いもの…ですか」
「さ、パチェ、映してちょうだい」
「…受信感度は良好のようね」
「ここは…永遠亭?」
「そう。ここでのイベントを見ようと思ってね」
「男性限定だって言うから私たちは入れないのよ」
「ところでどんなイベントなんですか?」
「その内わかるわ」


================================================================================


 みんなすげぇなぁ。


 俺は驚嘆していた。
 愛する女性への想い、というものがいかに重い事か。
 皆、それぞれの形で叫ぶ“愛”。
 ただ真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに叩き込まれる言葉の威力。
 単なる声の大きさなどではなく、自分の愛する存在へ向ける純粋な想い。

 一人が叫び終える毎に起こる拍手。
 幽霊、天狗、亡霊、騒霊、妖精、妖獣…
 種族は違っても、ここでの立場は皆同じ。
 叫び終わった者同士で酒を酌み交わし、惚気話に花を咲かせていたりもする。

 やがて俺の番がやってきた。

 何て言おう。

 どう言おう。

 ええい、考えても仕方ない。
 意を決した俺はステージへ上がった───


================================================================================


「あっ!」
「今日のメインイベント、という所かしらね」
「メイリン顔あかーい♪」
「ほらほら、近づき過ぎよ」


================================================================================


「えーと…」

 気分を落ち着けるために深呼吸をひとつ。
 周りからは声援が飛んでいる。

「俺の嫁は…良く気が付いて、料理も上手くて…そしてとても、とても綺麗で」

 目を閉じると、美鈴の姿が鮮やかに浮かぶ。

「優しくて、厳しくて、甘えん坊で、怒りん坊で」

 思えば美鈴との生活は彩りに満ちて、退屈した覚えがない。

「俺なんかには勿体ないくらいの出来た嫁で」

 あの日誓った約束。

「そんな彼女に、思い切り、叫びます」


 精一杯息を吸い、そして。





「美鈴ーーーーーーーーーーーーーーー!」

「最近忙しくて! かまってあげられなくてごめんなーーーーーーーーー!」

「これからすぐ帰るから待っててくれーーーーー!」

 喉は張り裂けんばかり。
 肺がビリビリと震えるのがわかる。
 酸素が足りない。
 情けない事なのだが。

 でも、まだだ。

 まだ言ってない言葉がある。
 本人の前で何度も言っている言葉だけど。
 言い過ぎて安っぽくなっていないだろうか、少し心配している言葉だけれど。

 いや、待て。
 『安っぽい』だと?
 冗談じゃない。
 この気持ちは“本物”だ。
 これっぽっちも揺らぎなどしない。

 さぁ、言え。
 見せつけてやれ。

「いつも! いつも! 本当にありがとうーーーーーーーーーーーー!」





 幻想郷中に知らしめてやれ。





「愛してるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」





================================================================================


「いや… これはこれは…」
「咲夜、紅茶をお願い。濃いめのストレートで」
「…私もー」
「ではストレートを5杯、ですね」

「まぁ、美鈴は紅茶どころじゃなさそうだし…」


================================================================================


 律儀に家までついてきてくれた兎に労いの言葉と人参を渡して家に入ると

『みんなと図書館にいます』

 という書き置き。

 頭に「?」を発生させつつ行ってみると───




 そこにはニヤニヤ顔の5人と、机に突っ伏している美鈴。




「どういう状況ですか…?」

 おそるおそる尋ねると



「「「「「ごちそうさまでした」」」」」



 その声は完全にシンクロしていた。


================================================================================


「恥ずかしくて死にそうでしたよ…」
「まさか中継までされていたとは…」

 七曜の魔女が語ったところによると、天狗と河童が組んであのイベントの一部始終を生中継していたそうだ。
 叫び終わった後にブン屋がインタビューしてきたのはそれ絡みだったのか…

「でも」

 その声に振り向くと

「あの時、あなたが言ってくれた“愛してる”は一番…嬉しかったですよ?」

 掛け値なしの美鈴スマイルがあった。

「そう言ってもらうと、俺も行った甲斐があったってもんだ」

 まだ擦れが取れない声。
 でも、不思議と疲れが消えている気がする。

 あれ?
 何か忘れているような…



 ああ、思い出した。



「美鈴」
「はい?」

「明日も仕事なんだ」
「お弁当ですね?」
「ああ、頼むよ」
「明後日は?」


 俺はニヤリとして言った。

「そんな先の事はわからないな」

 美鈴はあっけに取られたような顔。

「冗談だよ。休みの予定だから久々にのんびりしようか?」


================================================================================


「ところで“渡したいもの”って?」
「ああ、これ」
「あ、球根ですね。どうしたんですか、これ」
「花屋の前で風見さんと会ってね。切り花よりは、って話になってこれを貰ったんだ」
「お休みになったら植えましょうか」
「じゃあ、花壇を作らないとなぁ」
「ふふっ、土いじりも久々ですねぇ」
「スコップどこにやったっけ…」

 そんな話をしていると

「ごきげんよう」

 ひょっこり顔を出したのはメイド長。

「お嬢様から手紙を預かってきたわ」

 そう言って差し出された封筒。

 表には
『その花が咲いたら開封する事』
 と、書かれてあった。

「どういう事なんでしょうね?」
「お嬢様は“運命を読んだ”と言ってたわね」
「…うーん、まぁ、この球根に関係があるだろうってのは判るけど」
「ともかく植えて、花が咲くまで待ちましょうか」
「それしかないだろうなぁ」


================================================================================



 チューリップ

 ピンク


 ───不滅の愛



================================================================================









(この先あとがき。読んでも読まなくても)





























 というわけで、よめーりん話の4回目です。
 2週間ぶっ続けってのがそろそろキツくなってきたお年頃です。(何

 今日は「愛妻の日」という事で、その辺を絡めて書いてみました。
 てか、ネタを振ったからには書かないとw

 なんかいつにも増して内容がイチャイチャしてねぇなと。

 美鈴とはイチャイチャよりも静かで確かな愛を育むのがいいかなぁと最近思うようになりました。

 はー、美鈴と結婚してぇ。

 俺、明後日休みだったら免許の申請しに行くんだ…

 ともかく、明日も精一杯。

 次は多分バレンタインネタになる予定。







================================================================================

(この先、ちょっとしたオマケ)






















「そう言えばもうすぐ節分ですけど…」
「あー…」
「住まいは別ですけどねぇ」
「さすがに“鬼は外”とか言えないしなぁ」


うpろだ1501

───────────────────────────────────────────────────────────
~~~~紅魔館-紅 美鈴 私室~~~~

「げほっ・・・ごほっ………うぅ」
『よぅ、門番。大丈夫か?』
「あれ、○○s、げほっげほっ…うぅ。」
『様子見に来ただけだ。元気なやつは各部屋を回ってみている。俺はお前や門番隊が主な担当だからな』
「そう・・・ですか・・・げほっげほっ、なんで妖怪の私が風邪を……ごほっごほっ…うぅ」
『風邪をひいているのはお前だけじゃない。
紅白や白黒、メイド長をはじめ、パチュリー様や小悪魔さん、
果ては吸血鬼であるレミリア様やフラン様までもが風邪をひいている。
風邪をひいていないのは一部の者だけだ。それもあまり多くないし、調子も優れないみたいだ』


幻想郷では今、人妖問わず風邪が流行している
俗に言う幻想風邪である(嘘)
妖怪はもとより、体の弱い里人は惨状ともいえるほど酷いらしい
原因はおそらく何かのウィルスだろうが未だわかっておらず、
永遠亭の八意 永琳をはじめとした解析チームが原因解明と治療に向けて調査等が行われている

「でも、何で○○さんは風邪をひかないんでs、げほっげほっ!」
『さぁな?俺は外来人だから免疫を持っていたのかもしれん。
それとも俺は人間でもなければ妖怪でもないから罹らないのかも知れんな』

俺は元々外界の人間だったがみょんなことでこちら側の世界に迷い込んだ。
気付けば紅魔館の近くの湖にいて、彷徨っているうちに[そーなのかー]とかいう妖怪に襲われ、
命からがらここにたどり着いた。
しかし着いたは良いものの、即座に館の主に食事になり吸血鬼になった
・・・はずなのに、なぜだか解らないが俺は半人半吸血鬼として蘇った


「でも人間の咲夜さんも吸血鬼のレミリア様も罹っているのに半々のあなたがどうし罹らないんですか?
もしかしてばk『だーれが馬鹿だって?中国ぅ!?』(シャキーン
「あうううう、ごめんなさいごめんなさい、お願いだから刃物は勘弁して下さい。
あと私は中国じゃなくって紅 美鈴です!!」
『はいはい、そうですか。クレナイ ミスズさん、あのチルノですら風邪で寝込んでいるんですよ
この病気は頭の善悪で発病するものじゃないんですよ。・・・それにどちらかといえば貴女の方が頭は悪い』
「読み方違います!!ホン メイリンです!クレナイ ミスズじゃありません。
しかもさりげなく酷いこと言わないでください!!」
『ん?じゃぁ正面から言ってやろうか?』
「ごめんなさい。もう二度とあんなこと言いません」
『解ればヨロシイ…………んん~、少し熱があるな。うん、とりあえず安静しとけよ、じゃぁな』
「え?何処に行くんですか?看病してくれるんじゃないんですか?」
『それだけ話せたら看病は不要だろ?後は自力で治せ』
「そんなぁ」
『冗談だ。永遠亭に行ってくる。薬が無いか聞くのとあそこの薬師とすこし話をしてくる』
「あ、そうですか。道中お気をつけて。」
『俺が帰ってくる頃には、お前だけはくたばってるかもな。
それと、ここに林檎おいとくぞ。気休め程度にはなる。食っとけ
…………帰ってきたら看病してやるよ』
「……え?」
『な、なんでもない、じゃぁな』
・・・(バタンッ!

自分で言ったものの恥ずかしくなったので急いで俺は部屋を出て永遠亭に向かうことにした



~~~~紅魔館⇒永遠亭~~~~



『こんにちわ、永琳先生。あれから何かわかりましたか?』
「原因と特効薬は解ったんだけど、肝心の材料が見つからないわ」
『材料、といいますと?』
「ワクチンよ。元気な人からワクチンが出来ないか調べてみたけど感染してないだけでワクチンになりそうな物は見つからなかったわ。ホントは他にも色々あるけど・・・」
『ワクチンですか……』
「何が月の頭脳よ。結局材料がなくちゃ何もできないじゃない。ハァ」
『そう悲観しなくても……』
「…………」
『…………』
「…………」
『あー、そうだ。永琳先生』
「?なにかしら」
『私のなかにはワクチンになりそうな物ないですかね?』
「・・・罹ってないから無いとは思うけど一応調べてみるわ」


--青年調査中--


『……で、どうでした?永琳先生』
「……一つ聞いていいかしら?」
『何でしょうか?』
「あなた・・・何者?なんで感染して無いのにあるのよ!!」
『あー、やっぱり。ありましたか』
「…………は?」
『いやね、外界にいたとき、色んな投薬・細菌実験とかをさせられましてね。
多分、それが理由だと思いますよ。』
「………………」
『まぁ、そんなことはどうでもいいんですがね。
さっさと特効薬作って幻想郷に活気を取り戻しましょうや、先生』
「…………そうね…………ハァ」
『(なにか悪いこと言ったかな?)多分特効薬できるのは材料と時間がかかると思うので解熱剤や鎮痛剤とかもらって帰りますね。それじゃぁ…………』(ガチャッ
「……?」

(ザシュッ!……ボトっ)

「!!!!!あなた、一体何を!?」
『大量に必要だろうと思って、供給源として私の腕を代価にしようと……』
「…………ありがたいことはありがたいんだけど……」
『はい……?』
「あなたは馬鹿なの?なんでそんなことまでするのよ!?」
『…………アイツのためですよ』
「アイツ?」
『簡単に言えば好きな人ですよ。その子も風邪を引いてしまい、苦しんでいるので、少しでも早く治してやろうと思いまして……』
「…………あなたも無茶するわねぇ。特効薬完成したらすぐに持って行かせるわ」
『ありがとうございます。今は手持ちがないので薬が完成したらその時に一括してお願いできますか?』
「ハァ……お金ならいいわよ。貴方がくれた腕一本で十分よ」
『あ、そうですか。すみません。ならもう一本いりますか?どうせすぐに再生するので(シャキーン』
「!もういいわ!二つあっても邪魔になるし!!!……いくら再生するからとっても無茶は禁物よ」
『かまいませんよ。愛しい人のためならば……』
「そう……じゃ、お大事に」
『では、失礼します』

~~~~永遠亭⇒紅魔館-中央広間~~~~

『元気な者は永遠亭からもらってきた薬を病人に飲ませてやってくれ。
まず、近衛メイド隊はメイド長とパチュリー様、レミリア様、フラン様を。
とくにフラン様を担当するものは気を付けてな。
A隊は妖精メイド各員へ。B隊は図書館従事者に、C隊は……………、で俺は門番隊各員を担当する。
……今、紅魔館で動けるのは我々だけだ。風邪をこじらせ亡くなってしまった者もいると聞く。
辛いものは決して無理をせずに休め。死んでしまっては元も子もない
今、この紅魔館と永遠亭の八意 永琳先生の協力によって、特効薬が完成しようとしている。
皆!もう少しの辛抱だ。無理をせず、かつ頑張っていこう!!』
「「「「ハイ!了解しました。」」」」


~~~~中央広間⇒門番隊宿舎~~~~


……
…………
………………

…………(ガチャ
『ふぅ、これで門番隊は終わりか。あとは……美鈴だけだな……』



『美鈴、入るぞ』
「あ″、○○ざん、お見舞いでずが?」
『まぁ、そんなとこだ。って声大丈夫か?』
「何とかでず、うぅ」
『ハァ、無理するな。お前は紅魔館を守る門番だろう?早く治せよ…………んと、ほらよ』
「あい?○○さん、これは?」
『永遠亭から薬を貰ってきた。どこまで効くかは分からないがある程度は効くだろう。……ほら水だ』
「あ、ありがとうございます。…………○○さん、今日は何だかとても優しいですね。」
『んん~、聞き捨てならんなぁ。それは普段の俺は優しくないということか?』
「うぅ~、普段の○○さんも優しいですよ」
『解ればヨロシイ。一応お前も病人だからな。俺はどんな相手であろうと病人、怪我人には優しいんでな』
「うーん、じゃあ、ずっと病気したり、怪我しようかな?」
『…………ハァ??』
「ごめんなさい、冗談です」
『まぁいい、スリ林檎だ、これも飲んどけ。それと少し席を開けるぞ』
「あ、はい、ありがとうございます。……何処へ行くんですか?」
『ん、まぁ、ちょっと……な』


-30分後-

『美鈴、入るぞ?』
「あ、はい・・・って何ですか?それ?」
『お粥……食事だ。調理係がほぼ壊滅状態で、俺が一人で作ったから味はそこまで美味くないがな。』
「え?○○さん、料理できたんですか?」
『あっちの世界では一人暮らしだったからな、家事の大半のことは出来るぞ。
なんなら今度、ご馳走してやろうか?』
「え?いいんですか?」
『時間と材料があればの話だがな。・・・食べないと冷めるぞ。』
「え、あ、そうですね。じゃ、いただきまーす」


「ごちそうさまでした」
『お粗末さま。っと言ったところか?知らんが……んん~と』
「……あ」
『熱もだいぶ下がったな。まだ安心は出来ないな。
もうすぐ特効薬が完成するから。ってどうした?顔赤いぞ、まだ熱があったのか?』
「/////」
『うん?どうした?』
「○○さんのおでこと私のおでこが……キャー///」
『ッッッ!!!////』
「///……アレ?○○さんも顔赤いですよ?」
『うっ、うるさい!さっさと寝ろ!悪化するぞ!!』
「えー、もっとお話しましょうよ、○○さぁーん」
『やかましいわ!!病人はさっさとおとなしく寝てろ!話なら治ってからいくらでもしてやる!』
「え?じゃ、治ったら、もっとお話ししましょうね♪○○さん!」
『!!!~~~帰る!』バタン


~~~~門番隊宿舎⇒○○私室~~~~
…………完全に墓穴を掘った。喋る度にミスを生む。
ヤバいな、顔、真っ赤だ。見せられたものじゃない
心臓は破裂しそうだ。叫んでしまいそうだ。完全にアイツのペースだ
これは非常にマズい。とりあえず落ち着け、俺
他人が俺を見たら何ていうんだろう
…………ツンデレか
そんなつもりじゃないんだけどな
アイツの前だと、どうしても正直なれないな
………………ハァ。もう寝よう
腕は……もうすでに完治したか
明日には特効薬完成するといいな。アイツのためにも




//////////////翌日 紅魔館-美鈴私室/////////////

『美鈴、入るぞ』
「はーい♪」
「病人のわりには元気ねぇ」
「アレ?永琳先生?」
「治療しにきたわよ。でもその必要もなさそうだけどね」
『そうおっしゃらずに、ぶり返したら大変なので一応お願いします。』
「はいはい、わかったわ。じゃ、門番さん、腕だして」
「え″?注射ですか?」
『そんな露骨に嫌な顔をするなよ。せっかく特効薬ができたんだ。うってもらって完全に治せ
それとも、ぶり返して、また苦しみたいのか?』
「う″!それは……嫌です」
『じゃ、さっさと注射受けて治せ』
「……はぁーい」
「あらあら、随分と仲が良いのねぇ。やっぱり好きな人の前だと態度が違うわねぇ」
「え?」
『ちょっ!!永琳先生!!なんてことを言うんですか!?』
「○○さん、それってどういういみでs、痛っ!」
「……はい注射終わり。少なくとも2日間は安静にしてなさい。どんなに治ったと思ってもね」
『あ、永琳先生、ありがとうございます。』
「ふふ、どうも、こちらこそ抗体提供、感謝するわ。」
「え?それってどういうことですか?」
「この特効薬を作るのに○○の中にあった弱ったウィルスと抗体を使ったのよ。彼ったら凄いわよ。
自分の身体にあるって分かったら、自分で腕を切り落としたのよ。
『好きな人のためだ』って言ってね。羨ましいわ。ねぇ、門番さん」
『ちょっ!!永琳先生!!そのことは言わないで下さいと最初言ったじゃないですか!?』
「あらそう?聞こえなかったけど……♪」
『絶対わざとだ、この人…………』
「あのぅ、○○さん?」
『所で永琳先生。抗体使ったって言ってましたけど、他人の抗体って使っても大丈夫なんですか?
血液感染とか色々あるんじゃないんですか?特に私は半分吸血鬼ですし』
「一応加熱処理とかしてあるから大丈夫よ。因幡達でも問題無かったし」
『(この人は実験に因幡を使ったのか!?鬼だな…)』
「それに抗体使ったといっても貴方の居た世界とは違う手法で使ったから問題もないわ」
『さいですか……』
「じゃ、お大事にね、門番さん。」
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃ、私は帰るから。」
『どうもありがとうございました。永琳先生』

…
……
………
…………

『じゃ、永琳先生も帰ったところで、俺も失礼するかな……』
「…………さい」
『ん?どうした?』
「○、○○さん。さっきの永琳先生の言ったことって……本当ですか?」
『さぁて?何のことだか?///』
「顔、紅くなってますよ」
『う、うるさい///』
「えへへ、○○さん、可愛いですよ。○○さんは言葉はキツいけどいつも優しいから好きですよ」
『!?!?!?』
「また、紅くなりましたよ?○○さんは私のこと好きですか?」
『え、あ、そ、それは……うんと……』
「私は○○さんの事が大好きです!○○さんは私の事どう思ってますか!?」
『っ!!…………きだ』
「聞こえませんでした」
『永琳先生の言ったことも本当だ。お前が苦しそうだったから、早く治すために材料調達に協力した。
ただそれだけだ。お、お前が好きだからとかそんなんじゃなくて、なんというか…。
そうだ、他に苦しんでいる人の為に協力しただけだ。
決してお前のことが好きだから、お前の為にやったんじゃなくて、その、な・・・レミリア様や咲夜さんの為であって、なんというか、かんというか……』
「じー)……私のこと嫌いですか?私の為じゃないんですか?」
『(そんな目で見ないでくれ)え、あ……お、俺は……』
「じー)…………」
『あー、もう!!俺はお前のことが大好きだ!さっき言ったことは全部嘘だ。
レミリア様や咲夜さんや苦しんでる連中の為じゃなくお前の為に全部やったんだ!!
俺は、俺は…!!』
「○○さん…ちょっといいですか?」
『な、なんだよ!?』
「ん…んん」
『!!!』
「えへへ、キスしちゃいました///」
『ななななななな』
「もう1回しますか?」
『………///』
「冗談ですよ///風邪直ったらキチンとしてくださいね♪」
『……あ、ああ……』
「これからよろしくお願いしますね、○○さん♪」
『こここちらこそよろしく……ちょっとリリ、リンゴでも持ってくるわ。』
「リンゴより○○さんがいてくれる方がいいなぁ……」
『……う、うつされても困る。よって…帰る!!』
「えぇー!…私のこと嫌いですかぁ?」
『や、やかましい///風邪治したらいくらでも一緒に居てやる!!だから寝てろ馬鹿!!』
「じゃぁ、約束ですよ♪」
『(また墓穴を掘った…)』

後日治った門番の横には男が居たそうだ


うpろだ1504

───────────────────────────────────────────────────────────

 良薬は口に苦し。



 俺は何年かぶりで派手に風邪をひいていた。
 春一番も吹いたってのに。
 夕べから熱が出始め、今朝になって本格的に。
 体温計がないが、かなり熱があるのはわかる。
 
 と言うか、頭が回らない。

 とりあえず床に臥せっているという事だけが今の俺が自覚できる全てだ。

 美鈴は仕事場の頭領へ連絡に行っている。


 波が来た。
 俺はたまらず枕元の桶を引き寄せる。


 胃液しか出てこない。
 まぁ、派手にぶちまけるよりははるかにマシなのだが。
 すでにほとんど効かなくなっている鼻にツンとした臭い。
 久しぶりなだけに、これだけでもかなりクる。


 何分くらい経ったのか、それとも数時間過ぎているのか。
 朦朧とした頭にうんざりする。


 美鈴───。


 こりゃマズイ。

 そう思ったとたん、俺の意識は途絶えた。


================================================================================


 冷たい感触に目を覚ますと、ぼんやりとした視界の端に何か見える。

 紅い髪。

 微かに香の匂いがした。


「美鈴…?」

 呼びかけると、とたとたという聞き慣れた音。

「よかった… お薬が効いてきたみたいですね」
「…薬?」

 はて、俺は薬を飲んだ覚えはないんだが。

「永琳さんが来て、注射してくれたんですよ」

 ああ、そういう事か。
 妙に右腕にうずきがあると思ったら。

 緩やかに意識が戻ってくる。
 目の焦点も。


「美鈴、目が赤いな…」

 えっ、という表情をすると、目をぐしぐしと擦る。

「あー、いや… その、急だったんで、慌てちゃって…
「ごめんな、心配かけちゃって」
「そんな事、気にしないで下さい」
「あー、ホント久しぶりだからなぁ、風邪ひいたのって。俺もびっくりだ」


「そういや、美鈴、仕事はどうした?」
「今日はお休みです。第一、病気の旦那さまを放り出して行けるわけないでしょう?」

 目尻をつり上げ、少し怖い顔をしてみせる。
 まぁ、いつもがいつもなのでまるっきり怖くないのだが。


================================================================================


「お粥作ってきますね」

 その言葉に俺はピクリとした。
 実は俺はお粥が大の苦手だったりする。

 大概は好き嫌いなく食べられるのだが、お粥だけはどうやってもダメだ。
 どう嫌いなのか詳しく説明すると余計に気持ち悪くなるくらいダメなのだ。

「お粥じゃなきゃダメかなぁ」

 言ってはみたものの、幻想郷には気の利いた流動食などはないので、結局お粥に頼る事になるのではあるが。

 美鈴はしばし考え

「雑炊っぽくしてみましょうか」


 ああ、その手があった。


 程なくして土鍋を持った美鈴が戻ってきた。


「雑炊“っぽく”じゃなくて雑炊だな」

 俺が見た限りでは少なくともそう見えた。

 一口。
 よく噛んで、ゆっくりと飲み込む。

 やっぱり雑炊だ。
 しかし、今の俺の体にはまだ少し辛かったらしい。
 少々胃が騒いでいる。

 だが、旨い。
 もう一口。

 落ち着いて、ゆっくりと。

「うん、旨い」


 じんわりと体が温まって行く。


================================================================================


 結局、二人で用意された全てを平らげ、食後の薬を飲んだ俺は再び布団の住人となっていた。
 朝よりは楽になったが、さすがに布団からはまだ出られるような体調ではないのだが。


「ちょっと体を拭きましょうか」

 美鈴はお湯の入った手桶と手拭いを用意していた。
 そう言えば寝間着がじっとりとしている。

「うん、頼むよ」

 どっこいせ、と体を起こすと美鈴が俺の寝間着の上をはだけさせる。


 静かな午後。
 聞こえるのは鳥の声と、手拭いを絞る時の水の音。

 首から肩、胸から背中、腹と美鈴は何も言わずに俺の体を拭いていく。

「ありがとうな」
「いえいえ、これくらい何ともありません♪」

 しばしの時間の後、随分とさっぱりした俺は再び布団の中へ。
 すぐ横で美鈴が付き添っている。

「今の俺の横にいたってつまんないぞ?」

 半分寝ている俺に

「じゃあ、添い寝してあげましょうか♪」
「風邪が移るぞ」
「私の頑丈さを知らないわけじゃないでしょう?」

 にこやかな顔で布団に入ってくる。
 と、少し顔が厳しくなった。

「まだ寒気とかするんですか?」
「んー、ちょっと」

 そう言うと、美鈴は俺をぎゅうっと抱きしめる。
 体の震えも、寒気も一気に消えていく気がした。


 あったかいな。


 いつしか俺は眠っていた。


================================================================================


 再び目を覚ますと日はすでにかなり傾き、暗くなりはじめていた。

 何やら甘い香りが漂っている。

 そう思っていると、美鈴が襖を開けて入って来た。
 手には大きめのカップが二つ。

「どうしたんだい、それ?」
「アリスさんに教えてもらったんですよ。ホットチョコレートです」
「そうか… なんだか懐かしいなぁ。こっちに来てからは始めてのチョコレートかな」
「そうですね、去年はバレンタインどころじゃありませんでしたからねぇ」

 二人で顔を見合わせ、思わず苦笑してしまう。
 一緒になってから数ヶ月は色々と大変だった事を思い出した。


「でも、後悔なんてしてませんけど」
「する気もないぞ」

 微笑む。

 ああ、美鈴のこの笑顔は俺にいつも幸せをくれるんだ。


 体を起こしてカップを受け取る。

 甘く、やさしい香り。
 美鈴とは違うが、どことなく似ているような。

 一口。


「あつっ!」

 こういう時に猫舌はイヤだ。
 わかっていたのに、まだ頭が回ってなかったらしい。


「大丈夫ですか?」
「うん、ごめん。ちょっとうっかりしてた」

「じゃあ」


 美鈴がカップから一口。


 そして───



                               End.



================================================================================






(この先、おまけとか後書きとか。読んでも読まなくても)





























================================================================================




「アンタ、とんでもないバケモノを好きになっちゃったんだねぇ」

 ニヤリと嫌らしい顔。
 そこには笑みと、ほんの少しの哀れみを含ませたような。


「今───、何と言った?」

 俺は気力を振り絞って、言った。

「んー?」
「何と言った、と聞いてるんだ」

 辛うじて動く顔をそいつに向け、精一杯睨みつける。

「あら、まだ動けたのね。人間って中途半端に頑丈だから困るわ」
「答えろ」

 くっくっと耳に付く笑い声。

「あの門番の事よ。まったく、あんなバケモノだったなんてね」


「ふざけんな」

 地べたに這い蹲ったまま、声を絞り出す。

「バケモノだと? 美鈴が? ふざけてんじゃねぇぞ。その言葉を取り消せ」

 煮えくり返った腑をぶち撒けるように。

「あら、バケモノをバケモノと言って何が悪いのかしら」
「取り消せ」
「五月蠅い人間ねぇ」
「取り消せ」

 動け、動いてくれ。
 ほんの少しの時間だけでいい。
 体を動かさせてくれ。
 立ち上がらせてくれ。

 指が、手が、腕が、足が。
 言う事を聞いてくれない。

 だったら無理矢理にでも動かしてやる。
 必死に運動命令を送ってやる。

「取り消せ」

 指が動いた。

「取り消せ」

 手が動いた。

「美鈴は美鈴だ」

 腕が動いた。

「美鈴は、美鈴だ。 紅美鈴だ」

 膝が動いた。

「俺が愛した、ただ一人の女、紅美鈴だ」


うpろだ1506

───────────────────────────────────────────────────────────
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー