唯心論


概説

唯心論(spiritualism; idealism)とは観念論の一種で、物質的なものは実在ではないと考え、心的なものだけが実在であるとする哲学の立場。その反対が唯物論である。類似の思想的立場に現象主義があるが、現象主義は経験主義から出発し、実在や神など人が経験できないものは不可知であるとするのが大きな違いである。

歴史的には三世紀頃、新プラトン主義の哲学者プロティノスが唯心論的な形而上学を残している。プロティノスの思想はプラトンのイデア論を受け継ぎながら、その二元論を克服しようとしたものである。 プラトンの『パルメニデス』に説かれた「一なるもの」(to hen)を重視し、これを神と同一視した。 彼によると、唯一にして無限の宇宙的意識である「一者」が存在し、万物(霊魂、物質)は「一者」から流出したヌース(理性)の働きによるものである(流出説)。人間個人の意識は、その統一的意識が宇宙を眺める時の一視覚・一視点に過ぎないのである。彼の発想には後のドイツ観念論の多くが先取りされている。

プロティノスの思想は、後のアウグスティヌス、スピノザ、フィフィテ、シェリング、ヘーゲルなどに影響を与え、彼らは自らの観念論を展開させた。

近代において、論理的な思考方法で唯心論を主張したのはジョージ・バークリーである。彼は自分に経験できるものは、客観的に実在しているとされる物質でさえ一種の知覚であることから、実在という概念が観念発生を説明できていないと考え、唯心論的な観念論を主張した。この唯心論は独我論と同一視される。

仏教の唯識論との違い

仏教にも華厳経に唯心(三界唯一心)が説かれたことから、唯識論が生れている。しかし仏教ではその識(心の作用)も仮のもので夢幻の存在であるとして否定する。


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最終更新:2013年03月27日 20:21