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作品





意識のある庭



僕には世話をしてくれる
狭くて苦しい家に住む
女の人がいます

彼女は花を植えます ごく普通の花です
パンジーやらペチュニアやら
買ってきては植えます
最近僕は 手入れされる事が
ガーデニングと呼ばれるのを知ったので
何度も呟いてみたりします

植えるには掘らなくてはなりません
花と同じくらい普通の赤いスコップで
彼女は一生懸命穴を開けます
正直痛いので やめて欲しいですが
生憎僕には口が無いので
伝える以前の問題です
仕方なく僕は黙っています

ついでに 草抜きも嫌です
人間で言うならきっと
髪の毛なるものを引っこ抜かれるみたいなもので
昔はそんな拷問もあったと聞きます
壮絶です
ありもしない体がのた打ち回るようです
特に ストレス発散と名付けられた
勢いのある抜き方には 泣きそうです
実際僕は 叫ぶのですが
あくまで例えで 声など無いです
この時僕は 口が無くてよかった
と思うのですが
抗議できない事に 苛立つ事もあります


彼女は
そうやって痛めつけた僕を
自慢にしているらしいです
何故なら
必死で手入れしたからです
誰かに認めてもらいたいんです
僕は痛くても 彼女は何ともないし
それに 花があります
少なくとも花は綺麗です
お客が来ると
僕を見せに来ます
皆は
一応褒めていますが 僕は知っています
本当はぶっちゃけた話 どうでもいいんです
彼女にはガーデニングなど似合わないし
決して上手いとも言えませんので
そんな人の目は ひどく冷たいです
冬に撒かれる水に似ています
僕は そういう目を向けられるのは
霜ふる夜に似た辛さを感じるのですが
頑張って手入れしている僕が
こんな目を向けられていると知らず
見せびらかす彼女が すこし哀れなのと
ざまあみろ という気持ちが生えるのを
楽しく思うのです
それはまるで
人に飼い慣らされた従順な庭が
飽きられて荒廃していく様を見るようです
雑草に栄養を吸い尽くされて
打つ手も無く死んでいく庭を見るようです
僕はそんな楽しさを芽吹かせるのと同時に
密やかな憧れの花を咲かせるのです



474 名前:意識のある庭1[sage] 投稿日:04/07/09 18:51 ID:AO0Y7CVX
475 名前:意識のある庭2[sage] 投稿日:04/07/09 18:52 ID:AO0Y7CVX


【コメント】

501 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 12:35 ID:iPyZ+ShX
>>477-478 意識のある庭
本当に庭がしゃべっている(これも一興)のかと思ったが、「それはまるで/人に飼い慣らされた
従順な庭が/飽きられて荒廃していく様を見るようです」とあるから、庭は作者=僕の比喩だとわかる。
それでは、彼女とは誰か。母親か。
ともかく、発想が奇抜でおもしろい。これに哀しみが加わってくるようだと、この詩も
いよいよ本物だ。

504 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/07/12 02:00 ID:U0an9pYB
2点 >474 :意識のある庭1 :04/07/09 18:51 ID:AO0Y7CVX
  先の読めるような書き出しに、さて、さて、……と読み進めた。
「人に飼い慣らされた従順な庭が」<ここでちょっとがくッ ときた。
  最後は、詩人のやさしさがあいまいに話を終わらせてしまったようだ。庭は苦しみ
持ち主はあざけられ。……なのに時だけが過ぎていく。この詩チェーションの終り方ではなかった。

508 名前:山田 ◆jipx.wAXvs [] 投稿日:04/07/13 00:18 ID:3uVjBlWD
2点
>474-475  意識のある庭
「庭」というテーマに一番沿っているのがこれだと思う。
庭が喋っているのか、比喩なのか、作者の解説キボン。

509 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. [ ] 投稿日:04/07/13 01:00 ID:/3zyKun9
1点
>>474-475 発想がいいよね。最終部、能動的な庭が少し弱いかも。

521 名前:くみ。 ◆/DExt4SBtc [sage] 投稿日:04/07/14 06:59 ID:caMvWz1X
うわぁ…まさかチャンプになっているとは…。
皆様有難うございます。m(_ _)m

>>508
私としては、庭が喋っているつもりです。

では次のお題は「最後」でお願いします。


【得点】 6点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:1点
  • ななほし ◆lYiSp4aok.:2点
  • 山田 ◆jipx.wAXvs:2点
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.:1点





天体観測



空白とは言い難い面の上になるべく空白を頭に浮かべながら
崩れかけの3分の1拍子とそれを無視する右手が耳糞を丁寧にほじくり返して
空に投げつけたら神さまのおでこに反射して降ってきて
ノストラダムスの予言のことを説明して耳糞を再び追い返すと
空に散りばめる方向で神さまが和解を示したので僕の家の庭は
とてもとても素敵なプラネタリウムになったので
今夜僕はそのプラネタリウムで君を見つけようと思うだなんて臭いセリフを洗い流すために
パジャマを脱ぎ捨てて風呂場の蛇口を左向きに捻ったら愛が生まれた。
今夜僕は星を見ようと思います。



476 名前:天体観測[sage] 投稿日:04/07/09 23:12 ID:hwBE+D2F


【コメント】

501 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 12:35 ID:iPyZ+ShX
>>476 天体観測
シュールレアリスム、なんだろう。全体が2行で構成されている。一見、独りよがりの
ようで、ワケのわからなさがあるが、作者はきちんと計算している。最初の長~い一文は
最後の短い一文、キメ台詞を引き出すための序詞、枕詞と考えたほうがよいのかもしれない。
耳糞が星になるあたりも、詩になるかそうでないものになるかのキワドイところを冒険し
ている。このへんをみるにつけ、作者は相当の確信犯、と読んだ。

502 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 17:34 ID:Na5M97Xu
>>476 天体観測 の寸評の訂正。
「全体が長い2行で構成されている」は「全体が長い二文で構成されている」の誤りです。


【得点】 1点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:1点





不完全に気づいた時



ヌーディストビーチ 僕には恥ずかしいから
せめて壁の中で裸になる

開放感満喫 その後に眠るのは大好きな
香る花の匂いの中で

此処でなら いつまでも眠っていられそう
僕だけの庭で安らいだ

目を覚ますと 空行く鳥と目が合った
僕は完全に無防備で横たわる

何を思うかも知れない鳥にさえ羞恥を
感じる事が嫌だったけど

此処は僕だけの庭 壁に囲まれ守られる
何故裸であることに羞恥を抱かなければならない?

もっとリラックスしなくちゃ 






477 名前:不完全に気づいた時[sage] 投稿日:04/07/10 01:52 ID:EKuEr4nC





憧憬




浅くて幅広の石段が ほんの少し山にそって曲がりながら、寺へと続く。
色濃い木々に両側を囲まれ、参道が暗い。
その階段を20数段ほど上がった果てに、黒い質素な山門があり、
まるで額縁のように矩形に中の光景を切り出していた。

両側へ開かれた扉の向こう、
参道と異なり、広く敷地を拓いた寺内には陽が当たり、
白砂を敷き詰めた石庭が手前に置かれ、下からでは山門の額縁で区切られて、
他の構築物を見ることが叶わない。

暗い道を昇り、昇りて、彼岸の庭を垣間見る。



478 名前:憧憬[sage] 投稿日:04/07/10 04:51 ID:d87vjyMw


【コメント】

501 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 12:35 ID:iPyZ+ShX
>>478 憧憬
この詩は実景とみてもよいし、作者の心象風景とみてもよい。暗い道を昇って陽が当たった寺、
彼岸の庭にたどりつく展開は、むしろプラトン以来の西洋の天国を思わせる。

509 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. [ ] 投稿日:04/07/13 01:00 ID:/3zyKun9
1点
>>478 うん、シブい。実はよくある風景だったかもしれないね。


【得点】 1点
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.:1点





Sweet time



まだら模様の光の中 
眠ったふりで深呼吸
初夏の匂いを含んだ風が
浅い眠りを誘ってくる

水の香りに導かれ
木々と戯れる君を見つけた
声をかけずに待ってみよう
たまには気づいて欲しいから

ちょっぴり不機嫌顔をして
両手をあげて大きく背伸び
振り向いた君は微笑っている
視線をそらし また背伸び

悪戯好きのこどものように
意地悪っぽく微笑う君
どうやら全部見抜かれている
まったく君にはかなわない




479 名前:Sweet time[sage] 投稿日:04/07/10 12:44 ID:4hNkYI1f





つばさ



庭にいるから鶏と
ニワトリは呼ばれる 人がいるのはいいなぁ
小さな庭で我がもの顔でえばってる
ニワトリを無視してる犬もいる
のそのそ歩く猫もいる
飛び出せよ
その庭から


庭にいるからニワトリ
道にいるのはミチトリ
心充ちとるならシアワセ
寒~いのも すべ~るのも 真実は
高~い 遠~い 所にあるのさ






いっしょに飛ぼうニワトリ
翼なんかじゃあない空想の飛翔
いっしょに飛ぼうミチトリ
やっぱりこの人危ない人だ

いっしょに飛ぼうニワトリ
翼なんかじゃあない明日への飛翔
いっしょに飛ぼうミチトリ
英雄は 腕自慢 力自慢
何よりも勇気がある

やさしさに涙する小さな庭
目が眩む広さの景観も
遠い 青い 青天井
みんな空の下

いっしょに飛ぼうニワトリ
気持ちだけまず 飛び出せよ
その庭から




480 名前:つばさ  1[] 投稿日:04/07/10 21:30 ID:PtiSXFDO
481 名前:つばさ  2[] 投稿日:04/07/10 21:31 ID:PtiSXFDO





幻想庭園




昨日と今日の 境界線で

うろうろして

うとうとして

月光の中で 見たものは

黄金虫でした

あの緑色に輝く翅を 震わせて

月へと向かって 飛んでゆく

黄金虫でした




482 名前:幻想庭園[sage] 投稿日:04/07/10 22:25 ID:PycFRa8H


【コメント】

508 名前:山田 ◆jipx.wAXvs [] 投稿日:04/07/13 00:18 ID:3uVjBlWD
点なしで次点
>482  幻想庭園
切り取った風景はよいと思うけど、風景だけなので
作者の主張が入ると、面白くなるかな。

509 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. [ ] 投稿日:04/07/13 01:00 ID:/3zyKun9
2点
>>482 この詩からエルンストの描く森を連想するのはぼくくらいなのかもし
れないけど…。ツボにはいってしまったのは確か。

510 名前:わに ◆Wani6uvhK. [sage] 投稿日:04/07/13 15:30 ID:7lqaOLuD
>482 2点 雰囲気が良い。
      色が目に浮かぶような庭ですね

427 名前:虚構の真実 [sage] 投稿日:04/07/14(水) 22:01 ID:03E5LmJS

くみ。 ◆/DExt4SBtcさん、
グリーンブック ◆yCYysoyX.Aさん、
チャンプおめでとうございます。

【幻想庭園】(>>482)を投稿した者(初参戦)です。

Canopus ◆DYj1h.j3e.さん、
わに ◆Wani6uvhK.さん、
山田 ◆jipx.wAXvsさん、
評価して頂き、ありがとうございます。

詩の方ですが、
文中には、「庭」,「草」等の文字を使わないようにして、
最低限の言葉で表現しました(「庭」を含むタイトルに依存)。
※主張を入れると、『詩を読んでいるという現実』に
  引き戻されてしまうので、主張は省いてあります。

今、ポエム大会2の方で、遊ばせてもらっております。
機会があったら、また投稿させて頂きますね。

関係者の皆様、ありがとうございました。


【得点】 4点
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.:2点
  • わに ◆Wani6uvhK.:2点





苗木



巣作りに翻弄する蜂と戯れる7月の風
雲はなく目眩を起こしそうなほど空は高い
狭い庭にも木はいまだまばらで
赤茶けた土壌に大輪もない

なんて見事に殺風景
16の時に植えた木はとっくの昔に枯れ果て
片隅で恥かしそうに俯いている
青々と垣根を越えて広がる枝を夢見たあの木は
22の時に植えて20年何も変わらず
蕾を固く今にも折れそうで

一本くらい育てばいいと
両親と恋人と親友と時にはひとりで
植えた木々は――


今また一人で木を植える
顧みることのなかった庭は荒れ果てて
満足に
思うが侭に
屹立させることは叶わないかもしれないが
それでも今度こそ
水をやり虫を取り観てやろう

台所の窓から妻が昼食に呼ぶ
「私もまた、パートをすればいいですし」
手を洗う横で妻が言う

28の時
妻と一緒に植えた木の横で
小さな苗木は
遮るものなく存分に日を浴び
どことなく頼りなくも誇らしげに
揺れている



483 名前:苗木 1/2[sage] 投稿日:04/07/10 22:53 ID:HroEUExK
484 名前:苗木 2/2[sage] 投稿日:04/07/10 22:53 ID:HroEUExK


【コメント】

502 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 17:34 ID:Na5M97Xu
>>483-484  苗木
庭に植える苗木とは、希望の謂いである。これは言わずもがな。第5連の妻の台詞の
カットインがいい。初心者は思ったことの一から十をすべて書こうとするけれど、
この詩は違う。さりげなく部分を提示して賢い読者に全体を想像させる手法をとっている。
この作者、かなり詩を書き慣れていますな。庭とは、人間の理想と現実。ひとは希望を
持たなければ生きてはいけない。詩を書くということもまた、一本の苗木を植えること
なのだろう。


【得点】 2点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:2点





小さな庭の情事と朝焼け



海に浮かぶ一艘から放り出されるM

今は戦後最大級に揺れる時代
二人の男が人型の包みを持って
一人の女の大層な庭にやって来た

埋めるのかな
埋めるのでしょうね
フレンチドールが井戸端会議だ
それは野良犬が惹かれるパスポートである
ビザ無しかな
ビザ無しでしょうね
フレンチドールはもはや困惑気味だ

そうこうしているうちに
一仕事を終えた二人の男はライターを取出し
黙々と煙草の木の葉に火をつけたはいいが
真っ赤に濡れたナメクジが袖口から這い出し
男の指先をベロンベロンと舐め回した


おかげで
そりゃもう住民たちは絡み付くような熱に悶えるしかなかった

やがて炎は一人の女の体にも伝わり
昨夜初物を経験した彼女ならではのアイデアで
果汁100%ならではの勢いで

      ちょうどその時
       Mが海の底を叩いた!

二人の男は命の字が崩れたようにその場に倒れこみ
フレンチドールはすかさず受話器を取った
「大変です、手抜き工事です!」
そう、二人の男は皮肉なことに手抜き工事だったのだ


いたいけな少女が手の平で書き損じのラブレターを握り潰すかのように亀裂が走り
付近のハムスターは機を待ったのか、各々の弔い合戦を始めた
朝帰りのタクシーのメーターは誰も知らないところで1メーター増え
また遠くでは若いOLの腰の動きが激しくなった

土の中のそれはジャック顔負けの勢いでムクムクと隆起し
もう間もなく陽が昇り始める空を受けて
一人の女はいったん不思議そうな顔をしてから
その後、ゆっくりと微笑した



485 名前:小さな庭の情事と朝焼け 1[sage] 投稿日:04/07/10 23:05 ID:oYVLGcZv
486 名前:小さな庭の情事と朝焼け 2[sage] 投稿日:04/07/10 23:12 ID:oYVLGcZv
487 名前:小さな庭の情事と朝焼け 3[sage] 投稿日:04/07/10 23:20 ID:oYVLGcZv


【コメント】

502 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 17:34 ID:Na5M97Xu
>>485 小さな庭の情事と朝焼け
前編わからない。不思議な雰囲気をたたえた詩。タイトルの情事から牽強付会してみれば、
すべて性的なイメージがまとわりつく。「庭」「埋める」「火」「ナメクジ「熱」
「初物」「果汁100%」「工事」「ムクムクと隆起」など。それの極めつけが、
「Mが海の底を叩いた」。のぼりつめるだけでなく、底へ沈降するエクスタシーも
あるのだろう。この手の詩は意味を追いかけるより、イメージをどれだけ楽しめるか、
というのが本来の味わい方なのかもしれない。


【得点】 1点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:1点





Sky Fruits



背景は大きな太陽のおかげで
水色ひとつ

昼下がりの蒸れた暑さで
けだるくなった公園に立ち並ぶ
珍しくも無い ありふれた木々

  ふうふる

やわい風が吹き通り
疎らに揺れる色鮮やかな枝葉たち
茶色や緑色の彼らに全方位を取り囲まれ
産声あげる その隙間

  空へと直結した
  空気が走るトンネル
  透明に貫く光線

そこでは 常に形状を変化させながら
大小数え切れない『空』が実っている


僕は見た
果実を育むことの無い木々でほほえむ
晴れ渡る 瑞々しい空の欠片を

  名付けるならば
  スカイフルーツ


空と空が隣り合うけど空々しく無い
みな親しげな笑顔のスカイフルーツ
サワサワサワ
とおしゃべりする葉っぱたちと違い
肉声を発さず 空(ソラ)だけど空(カラ)じゃ無くて
実のある心と心で 静寂を保ち会話してるのかな

今 僕が魅了されたせいか
吊り人形となって操られて
頭 両手両足が一本の木の根元に近づく
目の届く範囲で スカイフルーツが最も鈴なりの木だ

それはきっと 至近距離で
手に取るように まじまじと観察したくなった
というよりも
木によじ登り
本当に一つ 手に取って
頭上へ掲げ
力強く スカイフルーツを握りつぶし
頭髪から土踏まずまで その果汁のシャワーを浴びたくなったから
頬を湿らすであろう果汁も舐め ガラガラ痛む喉も癒したい

しかしどれもこれも
この暑さが原因で
そうでもなければ
こんなことを僕は
考えずに済んだ
はず


木陰に入った


根元から見上げても
スカイフルーツは遠い宝石
幹から伸びる小枝も 手近に皆無
樹皮に爪を喰い込ませても
上へ上へと登るきっかけは作れず

汗を吸い続けるTシャツの重みで
乾いた地面は沼地のように陥没し
バランスを崩し
果汁の代わりに
僕の頬へ砂粒が
流れ込んできた


顔を地面から離し
汚れも構わず直立すると
周囲が異様にうるさく感じ
顎を上げれば 大きな太陽
あいつだ あいつのせいだ
苛立つ僕は左手の指五本をめいっぱい広げて
やかましいその丸みを覆い隠そうと
綺麗な水色の上へ載せてみた
とき

あることに気づいた

  僕の指と指の隙間
  発芽したばかりの
  空の果実


  底辺を持たない
  縦長の三角形で
  まだ開放されたままの
  スカイフルーツとは呼べ無い
  未熟なものが四つ
  並んでる 

  空の中
  左右に何度 手を振っても
  地上へ逃亡せず
  僕の指の隙間に留まってる
  可愛らしいその笑顔


果樹園経営者の気分になって
おしべとめしべを受粉させるように
親指と人差し指の先端を 期待を込めて繋ぎ合わせると
円とも四角ともいえる 不恰好なスカイフルーツが一つ
空で 僕の指間で 成熟を迎えた

思いがけず スカイフルーツを手に入れた僕は
当初の計画通り 水分を求めて 果汁のシャワーを浴びるため
握りつぶそうと
手のひらに力を
込めようとした


けれども
なぜか 力は一向に入らず
挙手したまま 銅像みたく凝固してしまった
唇は開いたまま動作せず 息はできるが
助けが呼べ無い




   ああ
   僕は
   この公園で佇む木に
   なってしまったのか

   あるのか
   無いのか
   わから無い
   ような
   スカイフルーツを
   人間の身体に寄生させたため
   自分は一本の木として
   生まれ変わったのか

   自分の姓は
   『木』から始まる
   珍しくも無い アレだ
   より相応しい容姿に
   落ち着いたのか


   動物模様のバックを提げた
   幼稚園児らしき子ども達が
   僕に話しかけず
   前方を横切った

   僕の姿は
   見えている?
   彼らの目には
   自然の一部として
   映っている?

   中学生くらいの女の子が
   飼い犬に引っ張られて
   こちらへ向かって来る

   お尻をもぞもぞせたあの犬
   まさか 僕という木へ
   小便をしかける気じゃ?

「こらっルーシー」


   リードはぴんと張られ
   首輪が抜けそうなほど
   躍起になって犬は前進する
   女の子の抑止は無視


「そっちには、木があるだけでしょ」


   隣の小部屋での野蛮な遊びが
   厚い壁から不覚にも漏洩したようだった
   音量は微々たるものだった
   しかしそのフレーズは
   僕の血液中へ不法侵入し
   体内を何度も駆け巡った

   ・・・そっちには、木があるだけでしょ・・・

   ・・・そっちには、木があるだけでしょ・・・

   ・・・そっちには、木があるだけでしょ・・・

   ・・・

   ・・

   ・

   赤の他人により
   遂に証明されてしまった
   本物の木なのだ
   僕という奴は


   あはは!



    (風を切っている)

    (走っている ようだ)

    (それぐらい わかる)

    (どこへ行くのか)

    (それだって 知っている)

    (さあ ひねるんだ)

    (おもいっきり)




ばしゃばしゃばしゃー

顔面を叩く水流の冷たさで我に返った
スカイフルーツが破裂したんじゃ無い
水源は公園の一角にある上向いた蛇口
一分間ほどスピード全開で浴び続けた


止水して辺りを見渡すと
さっき自分のいた場所――木陰で
犬が伏せして 隣に女の子がいた
彼女は僕と目が会うと軽く会釈をし
犬を連れ立って公園の出口へ歩いていった


相変わらず今日は暑くて困る
スカイフルーツを握りつぶせば
水分補給は常時可能だった
しかし僕はそうしなかった
できなかったんじゃない
しなかったんだ

僕はこの空想の果実を手にしたまま生きる

つぶそうと思えば つぶせるものを
一生一度もつぶさずに育ててみたい
一時の欲求で手放したくは無い


腕を垂れ下げたままの姿勢で
親指を人差し指の先端を繋いだ
勢いよく青空の中へ放り投げる

一つのスカイフルーツが実る


思い通りの展開に満足すると
僕は蒸れたズボンのポケットへ

そっと それを仕舞いこんだ


  ふうふる


風が吹いていることを
すっかり忘れていた

どうでもいいな

ペッ

唾を吐き捨てた


僕の立ち去った数秒後 その跡で花が咲くことは無かった
数年後咲くことは あるのかもしれない



488 名前:Sky Fruits (1/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:30 ID:bLfsl8kg
489 名前:Sky Fruits (2/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:31 ID:bLfsl8kg
490 名前:Sky Fruits (3/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:32 ID:bLfsl8kg
491 名前:Sky Fruits (4/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:32 ID:bLfsl8kg
492 名前:Sky Fruits (5/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:33 ID:bLfsl8kg
493 名前:Sky Fruits (6/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:34 ID:bLfsl8kg
494 名前:Sky Fruits (7/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:34 ID:bLfsl8kg
495 名前:Sky Fruits (8/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:35 ID:bLfsl8kg
496 名前:Sky Fruits (9/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:36 ID:bLfsl8kg
497 名前:Sky Fruits (10/10)[sage] 投稿日:04/07/10 23:36 ID:bLfsl8kg


【コメント】

502 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/07/11 17:34 ID:Na5M97Xu
>>488-497 Sky fruits
大長編力作。木の枝間に見える空間を果実に見立て、これをスカイフルーツと命名した
ところにオリジナリティーを感じる。そして自分の指でつくるスカイフルーツ。ここまでは
よい。ただ、その果実が熱さを癒す水分、果汁を求める心性にだけ直結している、というのは
どうか。もちろん、その後、自分が木になる展開につながるのだけれど、そこのあたりが
やや強引な気もしないではない。やはり、もう少し短く圧縮・整理したほうがよかったのでは。
着想がいいのだから、その切れ味を生かすには、詩は短ければ短いほどよい、というのは個人的な
意見。

504 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/07/12 02:00 ID:U0an9pYB
3点 >488 :Sky Fruits (1/10) :04/07/10 23:30 ID:bLfsl8kg
  長くて読みにくいけど、庭にいる植物の気持ちなんてこんなもんでしょ?

508 名前:山田 ◆jipx.wAXvs [] 投稿日:04/07/13 00:18 ID:3uVjBlWD
1点
>488-497  Sky Fruits
人間が木になる夢をみた、というのは誤解釈?
発想は面白いけど、長さがやはり気になります。
同じ事を言うなら短いほうがいい、と思いますね。

509 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. [ ] 投稿日:04/07/13 01:00 ID:/3zyKun9
1点
>>488-497 内容のわりに長すぎると思うんだけど、構成の妙があるよね。
ちょっとしたスパイスのような表現も、いい感じ。

420 名前:グリーンブック ◆yCYysoyX.A  [sage] 投稿日:04/07/14(水) 02:28 ID:wIN5R8ID
(本スレの方、一人で進行させちゃいました。流れが読めなくてスミマセン。ご了承ください)

「Sky Fruits」を書いた者です。同率チャンプ嬉しいです!
評価してくださった皆様、どうもありがとうございました♪
審査員の皆様、大変お疲れ様です♪

今回は久しぶりの投稿で、力み過ぎて、長々となってしまいました。。
失敗した!と思ったのは、個人的にラストの締めです。ストレートに書きすぎて、
全体のイメージを壊していますよね。。。うーん、まだまだ修行が足りないようです。
皆様の感想・寸評を熟読し、次の詩作に生かしていきたいと思います。
未熟者の俺ですが、次回は審査員として参加致します。
審査員経験はあるのですが、再度宣言しておきます。
皆様、よろしくお願いします☆


【得点】 6点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:1点
  • ななほし ◆lYiSp4aok.:3点
  • 山田 ◆jipx.wAXvs:1点
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.:1点



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最終更新:2007年04月15日 23:29