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作品
毘沙門天
杯を重ねる、その同じ手で
軍を指揮する、虎がいた
戦が好きか、と問えば
否、とは言えぬ
酒が好きか、と問えば
吽、と苦笑する
14で元服して30余年
義を失う戦いは、一切ない
虎は言う
"国など越後ひとつで、よい
だが
負けることは許されぬ
我が毘沙門天よ
松明のかわりに、道を照らせ
我に勝利の二文字さえあるならば
子孫の繁栄など、望みはせぬ"
疾風のごとくが、信玄ならば
虎は炎のごとくに、兵を統べる
誰も裏切らず
部下には慕われ
敵には信頼され
そして、一度も負けることなく
室町と江戸の間を駆抜けた
その愛おしいまでの強さは
それがそのまま、この国の歴史だ
同時代では、もっと怖れられるやり方で
思うがままに、生きて見せ
後世には、最も愛されるやり方で
思うがままに、死んでみせた
持国・増長・広目・多聞(*1)
虎の愛したものは、ただひとつ
そこには、一筋の迷いもない
まるで、鍛えられた棋譜を見るように
杯を重ねる、その同じ手で
軍を指揮する、虎がいた
何が好きか、と問えど
黙、として語らぬ
*1:仏教でいう四天王。順に東南西北を守護する。
毘沙門天は多聞天の別称。四天王の中で最強
と言われる。
524 名前:毘沙門天[] 投稿日:02/05/25 09:23 ID:wiYHY8iv
【コメント】
F
俺はそのドアを開けて朝の光をあびた瞬間に炎を纒うぜ
垂直にドカ降る雨だって
水平にブッ飛んでく吹雪だって
この炎を消す事なんて出来やしないぜ
この炎の燃料は最高純度なんだぜ
やっとの思いで手に入れたこの燃料
守る為なら地ベタだって這いずり回る
それに俺には秘密兵器もあるんだ
お前が完成する日が楽しみだぜ
僕はそのドアを開けて朝の光をあびた瞬間に炎を纒うのさ
太陽はぽっくり沈んで一日が終り
月明りがほんのり町に滲む頃
僕はひっそりと炎を内に秘めるのさ
僕はゆっくりとそのドアを閉めるのさ
やっとこさ椅子に腰かけたから
せめて缶ビールで余熱を冷まそう
それに昼間ごうごう燃えてる僕には
お前たちの視線は冷たいぐらいが丁度いいのさ・・・
さて
秘密兵器でも覗いてくるか
ガンバってるか俺の息子よ・・・
531 名前:「F」[sage] 投稿日:02/05/25 18:02 ID:???
【コメント】
峡谷
己の瞳に映る峡谷
己の瞳孔の裏側で鏡となり
凡て生命あるものに赤き火をゆらめかす
石楠花の淡紅色に
黒檜の濃緑色に
風にたゆたう小灰蝶の
青と灰との戯れに
渾碧の峡谷中赤き火をゆらめかす
薄暮をついて
不意の月が
山の陰より現れ空に
骨のように歪な円を描くと
次には
生命なきものに白き火が灯った
白くゆらめく丸石を踏み
己の胸の赤き火と
己の死骸に灯った白き火を
時の果てに同化すること認めれば
峡谷全体が
紅白の炎で己を包む
明日には
火もゆらめかぬ都会へ帰る
536 名前:峡谷[] 投稿日:02/05/25 23:12 ID:KJ+VmYt3
【コメント】
火ッキー
ただの引き篭り野郎ではない、火ッキーと呼ばれる引き篭りが
居ると聞きつけ、私は火ッキーに会ってみたいと思うようにな
った。なぜ火ッキーなのか? 答は火を見るより明らかなのだ
ろうか? 会ってみにゃ、わからん。次の朝早速、私は2ちゃ
んねるで得た数少ない情報を頼りに、広島県へと向かった。も
みじ饅頭が無性に食べたくなったこともある。しかし広島県と
はいっても、そう呼ばれる場所が意外に広すぎたことに呆然と
した私は、警察手帳ならぬ現代詩手帖を手に、聞き込みを開始
した。まず最初に訪ねた引き篭りは、デブで眼鏡をかけた、い
かにもな引き篭りだったが、彼はどうやら否ッキーであるらし
かった。つまり引き篭りではなかったのだ。私はそんなはずは
ないと詰め寄ったが、証拠品として彼が職場のソフトクリーム
ショップで愛想よく働いている現場を見せつけられると、すご
すごと引き返すしかなかった。次に訪ねた引き篭りは、痩せ気
味だがなかなかの好青年だった。見ず知らずの私を歓迎してく
れ、何の抵抗もなく自分の部屋に通すと、床に自動車の雑誌で
絨毯を敷き、凄まじい早口で私の知らない車の話を一人でまく
したてた。彼は火ッキーどころかヒッキーですらなく、カー・
オタッキーだったのだ。(続く)
(上からの続き) くたびれ果てて彼の家を出た私はもう
車はおろかどんな乗り物にも乗りたくなくなっていて、徒歩で
次の家を訪ねた。そこに居たのはビッキーだった。犬の着ぐる
みを着て私を待っていた。私が玄関の戸を開けるなり、自慢の
かわいいダンスを披露してくれた。私はすぐに戸を締め、次の
家に向かったところ、そこに居たのがミッキーだった。小さな
世界だっけかディズニーランドの曲。あれに乗ってダンスして
いるのを0・5秒目にしただけで私は退散した。畜生、私が探
しているのは火ッキーなのだ。次は何だ? ジャッキーだった。
自慢のクンフーで襲ってきたので、私は全力で逃げた。その次
がバッキー。こいつは名球会入りしていた。またその次がトラ
ッキー。なぜ広島県なのに阪神関係ばかりなんだと私は不審に
思いはじめた。そのうち夜になったので、ゾッキーが出没しは
じめた。もうだめだ。私には広島県がわからない。私がラーメ
ン屋台でうなだれた時、偶然にも、ついに火ッキーがそこに現
れたのだった。この続きは、また来週。
537-538 名前:火ッキー[sage] 投稿日:02/05/26 00:11 ID:???
【コメント】
身体
ライターの火に
腕をあててみて?
チクッとするでしょ?
それが
火
我慢することないのよ
火にすべてを任せて
その命を預けてごらん
ほら
もう服に乗り移ってる
あなたの皮膚がめくれて
めくれた端が焼け焦げて
次にそれはあなたの奥深く
潜って行くわ
湿った内臓も
脈打つ血管も
すべてその身を預けなさい
最後に焼けるのは身体であって
あなたの命は既にありません
もう痛みなんてないのよ
549 名前:身体[] 投稿日:02/05/26 22:01 ID:kClAv3yF
【コメント】
直径のない輪
君は生きる カロリーを燃やして生きる
君の涙腺がほんの少し開くのに
必要なカロリーの燃焼量は
遙かに僕と一緒に食べた
豚の耳のスープの思い出で
足りるだろうか
僕は生きる 君を燃やして生きる
死んでしまおうと思うとき
少し君をちぎって炙り
コップの酒に浸して眠る
距離が意味が
時間が渦が
僕らに直結していた頃
独りを忘れていられた頃
555 名前:直径のない輪[] 投稿日:02/05/26 23:39 ID:iJ3Mw/lL
【コメント】
同調
瞳の奥
刹那垣間見た紅
揺らめいたそれ
暗くて冷たい紅い色
今は小さくとも
いつか炎となって
自身をも巻き込み
全てを凍りつかせるのだろう
全てを見据えるそれ
触れればただで済むはずもなく
だがそれも悪くは無いと
初めて見るそれは
何よりも美しい色をしていて
触れてみたいと思った
この紅になら
滅ぼされても構わないと
瞳の奥
刹那垣間見た紅
揺らめいたそれ
深くて悲しい紅い色
ああ
どうかせめてもの慰めに
557,561 名前:名前はいらない[sage] 投稿日:02/05/26 23:57 ID:???
【コメント】
火葬
青い夜に浮かぶ満月が
電線に切り取られて時間が凍りつくころ
漂い始めるガソリンの匂い
冷たく肌に張り付いてくるシャツ
淀んだ川の異臭の汚水が
闇と夜空を貼り付けて虚像の月が流れてく
冷たく震える右手古ぼけたジッポ
そして乾いたマイルドセブン
火がともる
深夜の凍りついた時間
どぶ川に浮かぶ虚像の月
橋の上にあてもなく佇むわずかな希望
全てが燃え上がる
その後に残ったのは
慌しいサイレンと
炎に照らされたどぶ川と
路上に縫い付けられたボクの影
558 名前:「火葬」[] 投稿日:02/05/27 00:00 ID:GKOgeNWb
【コメント】
人は死ねば燃やされて
灰になってしまうの
あんなに偉かった人も
好きだったおじいちゃんも
誰だって結局は同じ
火の中に消えてゆく
誕生日ケーキのロウソクが
年々増えてゆくのは
自分を燃やす火力を
強くするため
ちゃんと灰になれるように、ね?
自覚しなきゃだめだよ
しわがもう一本増えてる
559 名前:名前はいらない[] 投稿日:02/05/27 00:02 ID:xA6FutIE
【コメント】
最終更新:2006年09月09日 18:12