作品
箱をめぐる考察
緋色の刺繍で織り込まれた絨毯の上に
乱雑に置かれている
イスラム教徒が嫌うような偶像ども
ワタシはアナタだけのもの
ボクはキミだけを愛すよ
神の前で誓うエイエンノアイ
そして
家族のため
住宅ローンのため
あくせく あくせく
ワカホーリック
それから
マイカー,マイコン,マイホーム
ルソーも嫌う私物化という物神崇拝
やつらは偶像が大好きで
何でもかんでも集めては箱に入れちまう
ここにはそうした箱で溢れかえっている
安っぽい包装紙にくるまれた
幾千,幾万もの箱
箱また箱
そうしているうちにも
またどこからか箱が運ばれてくる
同じような箱が上へ上へと積み重ねられ
バベルの塔は天上へ届くかという勢いだ
てっぺんのほうはグラグラして
危なっかしいったらありゃしない
傾きかけた箱の山のその下で
どいつもこいつも
これまたちいさい自分だけの箱を後生大事に抱えていて
ハムスターでも飼う少年のように
ときどき中を覗きこんでは
ニヤリと気色悪い笑みを浮かべる
鳴らないオルゴールの箱
それでもやつらには何かが聞こえるのか
必死に耳を当てている
あるいはやつらの棺桶か骨壷の箱か
ときどき揺り動かしては中身の感触を確かめている
やつらのいう幸福というものに形があるとしたら
おそらくこういうものだろう
わたしの箱はとうに誰かにあげてしまった
中に何も飼っておけなかったから
だいいち両手がふさがっちゃあ何もできやしない
それに
手で持てるぐらいの箱の中身なんか
たかが知れてるじゃないか
そして何より
わたしは容器というやつが面倒くさい
容器に形を決められるのが嫌なんだ
水は試験管に流せるが河は試験管には入らない
空気はビーカーに収まるが風はビーカーには落ち着かない
それでも容器は囲い込むことを止めようとしない
だからわたしは
試験管を壊したくなる
ビーカーを割りたくなる
そして箱は潰したくなる
特に後生大事に抱えているやつらを見ると
それを引っくり返し中身を暴きたくなる
それでさっきから箱が乗った絨毯の端を持ち
絨毯ごと引っくり返そうとしているのだけれど
どんなに息張っても絨毯ははがせない
それもそのはず
わたしの片足がまだ絨毯の上に乗っている
これではどう頑張ろうが
びくともしないわけだ
捨てたつもりが
囲うことへの未練をまだ断ち切れていなかったのか
誰か手伝ってくれ
周りを見回すが
みんな絨毯の上から降りようとしない
さてどうしたものか
片足を絨毯から降ろそうか
それともあきらめて
別の片足を絨毯の上に乗せて
みんなと同じ箱人間を決め込むか
わたしはハムレットにでもなったつもりで
しばし呻吟するのであった
【コメント】
184 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:16 ID:B1cAv+dU
>>153 箱をめぐる省察
‥‥よくわかりませんでした。
主人公がどこを向いているのか、作者の書きたかったものが何か。
194 名前:大木人 ◆KMcEIGIRgE [] 投稿日:04/05/19 17:36 ID:Umv/UD7A
△1点
>153-156:箱をめぐる考察
世間の矮小さに辟易しながらも、それを振り切れないでいる己の姿…、何か分かる気がします。
196 名前:ame ◆yUHAxrOw2c [sage] 投稿日:04/05/19 23:40 ID:pgGgt8Nd
2点
>153-156 箱をめぐる考察
構成として一番おもしろいのはコレだと思う。
そのあまりにも雑多な分裂気味のフラストレーションはどこに行くにも邪魔をされる、それが「箱」。
そしてその中にいる彼らが自分の足ごと転ぶまで、引っ張り続けなければいけない絨毯。
文章が分裂気味に書き綴られるが、その前の構成はきちんと、むしろ分かりやすく設定されている。
ただ、その意味では少々ストレートすぎるかもしれない。ちょっとした変化があれば嬉しかったところ、というわけでの2点。
382 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY [sage] 投稿日:04/06/22(火) 08:51 ID:4tE1+ArL
山田さん、チャンプおめでとう。これからの詩作に弾みがついて何よりです。
さて、私も投稿4回目。「箱をめぐる省察」「Y氏の部屋」「父とは誰か 母とは誰か」
そして、「『言葉』屋」が今回のものでした。
【得点】 5点(準チャンプ作品)
- 構造 ◆/Cej999/v6:2点
- 大木人 ◆KMcEIGIRgE:1点
- ame ◆yUHAxrOw2c:2点
視線
私は外の光を受け入れられなかった
むしろ光が私を受け入れなかったのかもしれない
しばし自分と葛藤し、外の世界に飛び出す事にした
じりじりと刺すような視線
それは万物すべてから注がれていた
吐き気がした
どうやらこの私を形成している形がおかしいらしい
視線に刺され、薄れ行く意識の中で悟った
この視線は私だけに注がれているんだ
そしていまこの快感を留めておきたい衝動にかられた
気づくと駅のホームに立ってた
幾つもの視線が私を突き刺す
さぁ視線をもって私を射殺そうとするモノよ
この一瞬汝らの視線を我が物に
そして生涯忘れえぬ物として、その脳裏に焼き付けるとしよう
轟音と共に、私を形成していたものは消えうせ
そこにはただ、一点に注がれる視線のみ残った
157 名前:名前はいらない[] 投稿日:04/05/10 05:20 ID:kOmDvMoL
158 名前:157[] 投稿日:04/05/10 05:20 ID:kOmDvMoL
【コメント】
174 名前:MUJINA ◇FJ2unionJK[mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/05/15 01:00 ID:Z0Lz2GhD
>>157 視線
万物すべてから注がれる吐き気がするほどの視線とは、どんなものだろう。そして、それを快感と感じる作者の感性の鋭さに敬意を表する。
184 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:16 ID:B1cAv+dU
>>157 視線
何が描かれているのか、よくわかりませんでした。
おとぎ話のなかには、よくわからないものも多いですが、
でもはっとするような、何かしらの真実みたいなものがあったりしますが、
この詩が、そういうものであるような感じはありません。SFかしら?
【得点】 1点
ぽつぽつと秋のおと連れと共に
私の体からはきのこが生え
栗が実り
麦が風になびいた
そして
冬には
それらすべては枯れてしまい
私という私だけがここに残り
貪欲で傲慢な毛むくじゃらな生が寒さに震えていた
春のおと連れと共にまた私はつぼみをつけ花開き
夏には青々と私は生い茂った
159 名前:無題[sage] 投稿日:04/05/10 06:37 ID:j9d2m5vB
【コメント】
185 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:18 ID:B1cAv+dU
>>159 無題
一読して、心に世界がひろがりかけました。だから残念に思いました。
ひろがりや静けさや、生のさみしさなんかも、もっともっと
えがけたのではないでしょうか。もっともっと感じたかったです。
194 名前:大木人 ◆KMcEIGIRgE [] 投稿日:04/05/19 17:36 ID:Umv/UD7A
△1点
>159:無題
静かな語りですが、木という主体に詩を読ませたことでシンプルさが逆に染みます。
生そのものにピントを絞り込んだ作者の潔さに1点。
195 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/05/19 21:38 ID:XDj9YVtF
1点 >159 :無題 :04/05/10 06:37 ID:j9d2m5vB
唐突に救いという言葉を思い出した。ねぇ……聞いていいかな? 前回の批評で
「私の、救いにはならない」となぜ発想したの? 連想かな? ……今回は??
人は自分の生きる意味を求めているんだろうねぇ。青山にも生きる意味があったら、
まして自分には生きる意味があるはずだと安心するんだろうか?
【得点】 2点
- 大木人 ◆KMcEIGIRgE:1点
- ななほし ◆lYiSp4aok.:1点
きしゃのたび
さあそろそろ 引っ越す時間だ
持ちすぎた何もかにもを
ひとつひとつと 捨てていくのだ
この手に持てる荷物はひとつ
たったひとつの 自分の・・・
所有とは 独り占めに他ならず
モズクガニのように 大量の
ぼろを身に寄せ 大きくなったと錯覚すること
さあそろそろ 軽くなる時間だ
溜めすぎた情念を 太った思い出を
もっともっと そぎ落とすのだ
服は要らない 本も要らない
写真も ファイルも 携帯も 車も
あなたは わたしのものじゃない
わたしも 誰かのものじゃない
その子も どの子も 親のものじゃない
国のものじゃない 誰かのものじゃない
思うことで 重くなるなら 感じることで 縛られるなら
何も思わず 何も感じず 早く早く生き急ぐのが楽
歩いていくのに 必要なのは
たったひとつの 自分の・・・・
まとわりつくのは 自分自身の・・・・・・
まごうことなき、生き物としての、懐かしい匂い
(否定できない、どこかにつながってる、土にも、空にも、
風にも、山にも、あの子にも、あなたにも、あなたにも、
明日は流れてはいない、でも昨日は固まってはない、
今しか、見えないものは、信じられない、この一瞬で
一体何を信じろと、息を吐ききったら、外に出られますか、
生きているものに会えたら、存在を実感できますか、
これを続けることが、何か実を結びますか、どうして、
まだ、言葉が出るのでしょうか、他人の役にも、
立たないこの日々、所業、でも、でも、でも、でも、)
全て捨てたら 引っ越す時間だ
持ちすぎた何もかにもを
いつになったら捨てられるのだろう
160 名前:きしゃのたび(1)[sage] 投稿日:04/05/10 20:28 ID:lF9xkkio
161 名前:きしゃのたび(2)(おわり)[sage] 投稿日:04/05/10 20:28 ID:lF9xkkio
【コメント】
174 名前:MUJINA ◇FJ2unionJK[mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/05/15 01:00 ID:Z0Lz2GhD
>>160~161 きしゃのたび
まさに捨て聖ですな。仏教を感じる。捨てた末に感じる「生き物としての懐かしい匂い」を嗅ぐことができるのは、作者が覚者ではなく、詩人だから。作者は原点に立っている。
185 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:18 ID:B1cAv+dU
>>160 きしゃのたび
いくつも、良いなと思うような、かっこいい言い回しがあって、
「ちょっと良いコラム」を読んでいるような、そんな感じを受けました。
でも最後の三連で、何だか分散してしまいました。
えがこうとする世界全体を見渡しながら進んでいく集中力が、
途切れたのかもしれない、と思いました。
「服は要らない」とありますが、その極端さが、"全てを"捨てられない
原因じゃあないかなぁとかいう感想は、ピントはずれでしょうか。
194 名前:大木人 ◆KMcEIGIRgE [] 投稿日:04/05/19 17:36 ID:Umv/UD7A
○2点
>160:きしゃのたび
颯爽とした印象がとても心地良いです。
ここまで態度が明確だと、こちらまで清々しい気分になって旅に出たくなります。
195 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/05/19 21:38 ID:XDj9YVtF
1点 160 :きしゃのたび(1) :04/05/10 20:28 ID:lF9xkkio
なんとなくいい感じ……なんだけど。なぜ? きしゃなの???
【得点】 4点
- MUJINA ◆iXws.WGCLY:1点
- 大木人 ◆KMcEIGIRgE:2点
- ななほし ◆lYiSp4aok.:1点
他我
街の夕暮れがほっぺに突き刺さる日
○が△や×にすりかわる日
反省と後悔の区別がぼやけて
泣くだけの塊になっても
最後の手段を、始めの一歩と
履き違えないでおくれ
何度も何度も迎えるチャンスを
見逃しただけのことだ
死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな
寛大な平原を見たけりゃ稼ぎな
琵琶湖なら一人でもいける
ナイフや酸素が告白してる
手を伸べた先は誰だい
死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな
俺の言うことが首に突き刺さるか
俺と君とでは比べられないから
いかないで
162 名前:他我[sage] 投稿日:04/05/11 00:44 ID:h4E3TmTV
【コメント】
174 名前:MUJINA ◇FJ2unionJK[mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/05/15 01:00 ID:Z0Lz2GhD
>>162 他我
作者は重い実体験を抱えてこの詩を書かれているのは、心中を察するにあまりあるものですが、一言苦言を。他我という思い切ったタイトルを選ぶには、よほどの分析と覚悟が
必要です。そういう意味で、このタイトルは変えたほうがよかったのでは。
185 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:18 ID:B1cAv+dU
>>162 他我
死ぬな、というメッセージ。
絶望する人の心の、かゆいところに、というか痛いところに、
繊細に手が届いていると思いました。
胸を打たれました。が、「良い詩だ」という評価では、ちょっと違うな
という気がするんです。
水平線に向かって浅瀬を歩く
振り返るとたくさんの僕が倒れていた
ここまでくるのに何度自分を殺しただろう
数え切れない
どうすることもできなくて
何度も何度も泣いていた
自分だけの為に泣いていた
雫は地面を湿らせてやがて浅瀬ができていた
水平線の終わりはまだ見えそうにない
きっとそのうち全ては沈む
歩き続ける限り僕は僕を殺し続ける
涙が枯れることはない
163 名前:無題[sage] 投稿日:04/05/11 02:09 ID:CM1/J2Jk
164 名前:163[sage] 投稿日:04/05/11 02:38 ID:BrVWyEIC
【コメント】
174 名前:MUJINA ◇FJ2unionJK[mistyage@nifty.ne.jp] 投稿日:04/05/15 01:00 ID:Z0Lz2GhD
>>163 無題
泣くな。殺した末、否定した末に見えてくるものがある。
185 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:18 ID:B1cAv+dU
>>163 無題
「僕」と書いたとき、それが作中の主人公だけの物語、
作中の主人公だけの心象風景ではなくて、
すべての人、すべての「僕」がそうである、というふうに、
書けたら、というのがわたしの思う理想なのですが、
この「僕」が、まだ「作中の僕」だけのものであるような気がします。
バイバイ
明日 僕は電車に乗って
あのまちへ行くよ
夢に見たあのまちへ行くよ
今日はいい天気でした
丘から見えるこのまちは
とても綺麗で綺麗で
明日 僕は あのまちへ行くよ
一人きりだけど 大丈夫かな
みんないなくて 大丈夫かな
あぁ
みんなでよく集まったあの古風な喫茶店
今日のうちにコーヒー飲んでおこう
もう飲めないから
みんな心配ないよ
僕は平気だよ
みんないなくて 一人ぼっちでも 元気にやってみせるから
僕の場所はいつまでも変わらない
あのまちに行ったって変わりはしない
みんながいるこのまちが僕だけの 僕の 居場所だから
僕の場所はいつまでも変わらない
みんないつも通りバイバイって言おう
僕の場所はこのまちだけ だから
165 名前:バイバイ[sage] 投稿日:04/05/11 19:28 ID:ZKRXjhO3
【コメント】
186 名前:Z ◆eBWUIXUMPI [sage] 投稿日:04/05/17 16:20 ID:B1cAv+dU
>>165 バイバイ
ひとつのシーンをえがききっているという感じはしました。
読んで、良い気持ちはします。悪い気持ちはないです。
しかし詩情の有無を思ったとき、それは無いんじゃないかなぁと思うのです。
最終更新:2007年05月16日 02:17