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作品





皺



480 名前:皺[] 投稿日:02/11/19 21:57 ID:/JbUGGeJ
(はじめに)
顔がMだけを残しオちたとき
Jが憧れたとしても許せる深いたて皺がそこにあったんだが
Mまでが皺だけを残しオちたので
それがMの皺であるというか本当に皺であるかどうかも疑わしい

(それから)
Jが涙をオとそうとしたところ
もはや〃と成り果てた皺がJに「オレに続け」と言うから
Mの皺のないJだったが①涙、②顔、③M とオとし始めた

  (電気オルガン)

  (詩)
  『先輩2002・冬、7つの物語のその後で』

   背中が黒かったのはきっと服のせい
   階段を駆けあがったわたしのために
   モニターのように振り向いた
   先輩のでこに”層”という字が浮かんで消えた

   気のせいだったかしら  
   だったらよかったのかしらと
   カプセルパズルのピースを渡した


(てんじて)
Jは∫に成ったがそれは笑い涙の跡だったろう

(けっきょく)
そしてMはミケンだったろう




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人生の両端



482 名前:人生の両端[] 投稿日:02/11/20 01:17 ID:98OkWPjO
プロ野球選手になりたい 芸能人になりたい
小学校の卒業文集の将来の夢
なれるのはほんの一握りなのに
子供は本気でそれを書きます

やがては現実を知り夢を失い
将来何になりたいかと問われれば
学生はとにかく就職したいと答えます

家庭を持って親ともなると
夢を考える時間などほとんどなく
仕事と育児の毎日です

定年が過ぎ静かな日々
足が思うように動かなくなってきて
老人は公園のベンチで
駆け回る子供を眺めるのです

「憧」
それは童の心と
童を羨む老人の心






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手紙



486 名前:手紙(1[] 投稿日:02/11/21 15:32 ID:EFN3BTBz
冬の天気雨みたいな
古い時代は過ぎ
はやく死ぬことばかり考えていたあの日の少女は
東京の 扉だらけの街で快活な女性になった
社名入りの便箋に
変わらない幅広の文字で
引越 腰痛 新しい車と新しい彼氏についての
足早で簡潔な報告が綴られている
きみから手紙が届くのは
三年振りだ

結局のところ
あの自転車やあの海辺や
あの夜の眩しい静寂は
ありふれた歌謡曲そっくりの
しめった感傷でしかなかったのだろう
かつてのぼくらが
きそって集めた美しい言葉も
いつのまにか 行間は失われ
薄い辞書の一行ほどの
意味しか残ってはいない
ぼくらの過ごしたあの日々は
結局のところ
ひとつの眠りのような ものだった


487 名前:手紙(2[] 投稿日:02/11/21 15:32 ID:EFN3BTBz

もう死んでしまおう
と あの日のぼくが言うと
いつか結婚しよう
と あの日のきみは言った
ぼくらは波乱万丈の結婚生活を夢見た
キスのひとつくらいで
ぼくらはどんな契約よりも強く確信したのだ
今では悪い冗談も
みんな憧れだった
得ようとして得られない
死も生も
ぼくらを震わせた美しい言葉の数々も
あのころはみんな
まだ新しい憧れだった

平凡こそが波乱なのよ
と 今のきみならば言うだろうか
着なれたスーツで大きなビルの扉をくぐり抜け
日々積まれてゆく大きな仕事へと向いながら
言葉よりも鮮明なもの
現在よりも高い場所について
目覚めて語る のかもしれない


488 名前:手紙(3[] 投稿日:02/11/21 15:33 ID:EFN3BTBz

ぼくはといえば 夢見たまま
小さな街の小さな店の片隅で
小さなものばかり際限なく売りながら
小さな言葉のかたまりを
こうしていまだに寄せ集めては
濁す 汚す 捨てられずに
壊す まだ壊す 拾えずに

で ぼくは考えている
きみからの手紙を どこにしまおうかと考えている
押入れにある古い箱 新しい机の引出し
遠い場所 こころの奥底 言葉の海

美しい
言葉の海




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アンダルシアに憧れて



489 名前:アンダルシアに憧れて(近藤真彦Side)[] 投稿日:02/11/21 19:08 ID:/u9k6o5K
ドアノブに手を掛ける 不安と希望の狭間で震えてばかりいた
アンテナから飛び出る電波を感じ取り ふと夜明け前に家を出た
ダダイストの自由をポケットに潜め 季節をいくつも綱渡りした
パルスの瞬きにも似て鮮烈なノゾミに 夢中になってしがみつく
メシアになりたくて でも聖者にはなれず 爆弾ばかりつくる
シアノ化合物を打ち込まれる日まで おねがい、夢を見続けさせて
彼に哀願する自分が居た 時計の音が古ぼけていたのを覚えている
憧憧の彼方に浮かぶお城で 僕はシンデレラとフラフラ踊り続けた
離れ離れになった心と体は 理想郷に辿り着けぬままひとつに溶けて
果てる瞬間 僕は満天の星空の下、ユメにお別れを言った 涙が出た


490 名前:アンダルシアに憧れて(真島昌利Side)[] 投稿日:02/11/21 19:09 ID:/u9k6o5K
アンパンかじって学校へ行く 今日もドア叩く シルクのドレスは汚れたけど
パンドラの箱から霧が立ちこめて カンカンスタイルの神様が現れた
未だダメな僕と君はうっとりしつつダンス  ダーツで刺されても血だけ流し
今日もルックス重視で歩く クールに決めてもルードな北風は髪型を乱すばかり
モノクロ シアターで機械仕掛けシンドローム ギシギシと軋む空の下
繭の中で アタマをまわして  アメリカンな 振りしてアップル缶を蹴っ飛ばす
失くした記憶に微笑み 底に沈んだ夢色サーカス団に願いを込めた夜
アンダルシアに憧れて 憧夢に真珠の首飾りをかけて 憧れの街に足を進めたが
銃声に先を急かされ れんがの街で見つけたバケモノは爛れた現実から逃げ出せず
ブッダに見捨てられて燃え落ちる太陽に叫んだ俺だが 溶けてしまっていた




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鐘



492 名前:鐘[] 投稿日:02/11/21 21:17 ID:7VUoEO2N
7年に一度
鐘が鳴って時間切れになる
どうやらDNAにそう書かれているらしい
そんな風に生きてきた

すべてが枯葉になって
音もなく
いっせいに散っていくのを
もう何度も僕は見てきた

なぜだろう?
あこがれはいつも
足の下の枯葉の立てる
微かなささやきに変わる

僕にはわからない
そんな風に生きてもなお、
生きることには何か意味が
あるのだろうか?

もうすぐ鐘が鳴りはじめる
僕だけの
夜の鐘がまた静かに
季節の終わりを告げようとしている
たぶん
この冬が終われば

そして
僕はまた寡黙な誰かになる




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憧れ



493 名前:憧れ[sage] 投稿日:02/11/22 00:04 ID:wCsLZaLG
僕は恒星軌道上を回転する
衛星になってしまいそうだ
と叫んだところで
それは間違って岩に引っ付いた
間抜けな小判鮫よ
と あなたも 呟いて
すこしの軽蔑とすこしの母性本能で
瞳にたたえた海の色をすこうし変えた

これは凪のやわらかな波か
それとも月夜の満ちた潮かと
ほんのすこしの思案をしだして
その正体を見極めようと
みつめつづけてゆくたびに
船をゆらりと押し出していく
ゆれゆく波間がみえた

ほんのり写るひかりは
うようよ泳ぐ夜光虫なの
それとも映った星ぼしかな
さらに迷いつづけてゆく
それよ ちがうわと
私の視点から幾たびも
これら光をかきまぜ

こらえきれずに
一瞬目をそらした刹那に

海から遠ざかった船に溜まった
ほんの僅かな潮をのぞくような




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あこがれ



495 名前:あこがれ[] 投稿日:02/11/22 01:50 ID:TGTK3+IM


アンズ色にくずれていく 夕空に誓った
うす汚れた ラクガキ  あんな喜びじゃないんだ
あこがれていた 人は  見つめていた 夢は

覚えたてのメロディー  歌っていた 夢のなかで
愛なんて一番 古い遣り方で 君はぼくを撃ち抜いた
目覚めたら このままだったら こわいね

つまみ出された     子供の幽霊
気持くらい 楽しく   チャラチャラして
守るために 答えも   憎しみに変わる

いっそ消してほしい   あそこが自由
冷たい風 気持よく   ほほに刺さって かなりこたえた
あこがれ あこがれる  あこがれられたい

アンズ色にくずれていく 夕空に誓った
時間より 人に流されて 大きい夢のなか 人を好きになって
胸のなか 暖かい星   憧れられたい







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涙



501 名前:涙    [] 投稿日:02/11/24 04:34 ID:/Wl1zEGS
涙が欲しかった
僕は泣けないから
泣き方を知らなかったから

僕を作ってくれた制作者たちは
僕にその機能を付加してくれなかった
「奉仕者」にそれは必要ないモノだったから
たぶん僕は不良品だったのだ
不必要なはずのそれに
それこそ要らない「憧れ」を抱いた僕は

品質検査も見落としたそんな自分の
「欠陥」に気づいたのは
三人目に仕えた主人の涙を見たときだった
涙腺からこぼれる液体をじっと見つめている僕を見て
彼女は言ったものだ
「涙がそんなにめずらしいの。そうね、ロボットは泣けないものね」
製造されてから十五年目の事だった
涙がめずらしいわけはない
主人の思考を推測するためのデータ収集は
ヒトに仕えるべき僕たち「奉仕者」に与えられた重要な機能だから

ただ純粋に
泣いてみたいとそう思ったんだ



502 名前:涙    [] 投稿日:02/11/24 04:35 ID:/Wl1zEGS
そう
笑うことはできた
もちろん笑いたいからじゃない
主人の心に安心感を与える機能として必要だったから
偽物でも笑いは笑いだ
いつでも僕は
笑顔をはりつけて主人の前に立っていた

でも泣くことはできなかった
それは要らない機能だったから
それからの僕は待機状態の時はいつでも
部屋の片隅で思い続けたものだ
泣くことについて

僕は狂っていたのかも知れない
禁じられている自己改造を行ったのは
二十年目の事だ
自作の涙腺を密かに取り付けて
自動的に眼球部分から水が零れるようにした
感情回路にリンクしたそれは
ある条件を満たしたときに流れるのだ

だが
相変わらず僕は泣けなかった
条件とは「悲しみ」を感じること
たとえ涙腺を埋め込んでも
悲しみに縁のない僕に泣けるはずはなかった


503 名前:涙    [] 投稿日:02/11/24 04:36 ID:/Wl1zEGS
悲しみが欲しい
僕は五人目の主人に
ついに思いを打ち明けた
人造人間である僕を実の孫のように可愛がってくれた主人
百五十才を超える老人だった彼は
90%以上を人工部品に置き換えた身体で
僕に言ったものだ
「悲しみは、深い喪失感から生じるものだ。
  かけがえのないものをなくした時、お前は本当の悲しみを知るのかもしれない」

そして主人は僕に言ったのだ
自分を生まれ故郷の山へ連れて行ってくれと
生も死も厳密に管理されたこの社会で
主人は生きることに疲れ果てていた
彼が死ぬつもりであることを
僕の電子頭脳は冷静に計算していた

自殺幇助など本来の僕ならできるはずもない
だが僕は狂っていたのだ
かいがいしく主人の世話をしながら
僕は主人を連れて彼の故郷へと向かった

青白い月光を浴びながら
主人は僕に礼を言い
さよならを告げた
「お前が泣けるといいなあ」
その言葉を最後に主人の身体は
谷底深くどこまでも落ちていった
赤外線の眼は最後までその姿を捉えていたが
この期に及んでも僕の顔から笑みが消えることはなかった


504 名前:涙(完)    [] 投稿日:02/11/24 04:42 ID:/Wl1zEGS
僕は月を仰ぎ見た
青白いその顔は滲んでぼやけて見えた
いつの間にか
静かに音もなく
そして止めどなく
涙は流れ続けていたのだ

泣き笑いの不細工な顔を晒しながら
僕は何故泣いているのだろうと
自動的に計算を始めた

月の光を涙の滴で跳ね返しながら




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最終更新:2006年11月05日 10:17